続・真心戦隊トゥハート
〜アルバイト・トゥ・ハート〜


written by 李俊
※この作品は、真心戦隊トゥハートの続編です。
 読まれていない方は、まずそちらをお読みください

〜前章〜『稼げ!トゥハート!』

…おなじみトゥハート作戦本部。
その会議室に、戦隊のメンバー全員が集められていた。
「司令、俺たち全員集めて、一体何なんですか?」
浩之が立ち上がって長瀬に聞いた。
「君たち全員を集めたのは他でもない、言っておくことがあるのだ。それは…」
長瀬は真剣な表情だ。
みな、固唾を飲んで見守る。
「…戦隊の予算がなくなった」
………。
誰も声を発しようとはしない。
緊迫した空気が張り詰めた。
だが。
「仙台の養蚕がなくなったんですか!?」
ずでででで…。
理緒の言葉に、ほぼ全員がずっこける。(律義にセリオまで)
「あのー、養蚕ってなんですかー?」
「ヨーサンなくなっちゃ、グッドなシルクができないネ!」
平気なのはマルチとレミィだけ…。

「…君たちも知っている通り、我々『真心戦隊トゥハート』は、来栖川グループから分配される予算から成り立っている。しかし、相次ぐリーフの出現により我が戦隊の経費が増大し、破綻をきたしてしまったのだ。このままでは活動できないので、なんとか資金をひねり出さねばならない」
ずっこけから立ち直った長瀬が、財政が苦しいことを全員に告げる。
緊迫した雰囲気だ。
「主任、セリフが長いですー」
「…うるさいぞ、マルチ」
「はいー」
…今のやりとりで、いくぶん雰囲気がなごやかになった。
「…戦隊の窮状はわかりました。でも俺らには責任はないわけですし…」
その浩之の言葉をさえぎり、長瀬が叫んだ。
「いや!あるのだ!」
長瀬はゴホンとひとつ咳をして、言葉を続けた。
「出動のたびに使われるタクシー代、勝利のたびに行う宴会費、戦闘のたびに支払っている器物破損の弁償費、その他諸々、君たちのために払っているのだからね!」
しんと静まり返る一同。
…みな、思い当たるフシがアリアリだった。
「私も造花の内職でがんばってはいたのだが…膨れ上がる経費には、焼け石に水だった」
「…確かに造花じゃ無理やな」
長瀬の言葉に、智子がつっこむ。
「あ、来栖川先輩にカンパしてもらうってのどうです?ちょろっと百万ほど」
これは名案といった口調で、志保が手を挙げて提案した。
…来栖川芹香は来栖川家の娘である。月に百万くらいの小遣いは貰っているだろう。
しかし、長瀬は首を横に振る。
「長岡くん。私がその程度のこと、思い付かなかったと思うかね?」
「…と言うと?」
「すでに借りているのだよ、2百万ほどね。それでも足りないのだ」
その言葉に、芹香がつぶやくように話す。
「………」
…聞こえない。
「――『力になれず、すみません』っておっしゃってます」
隣りにいたセリオが代弁した。
「いえ、芹香くんには感謝してますよ。だが、それでも追いつかないのが現状でね…」
長瀬の言葉に、また静まり返ってしまう。
「それで、私たちは何をしたらいいのでしょうか」
葵が立ち上がって発言。
その瞳には、使命に燃える炎が見えた…ような気がした。
長瀬はそれにうなずき、答える。
「うむ…君たちには、しばらくの間アルバイトをしてもらいたい!」
「えーっ!?」
驚きの声を上げる一同。
「『えー!?』じゃない!いいかね、これは絶対命令だ!」
声を張り上げる長瀬。

絶対命令。
それは、どんなに誤った命令であっても絶対に従わなくてはならないという、恐ろしい命令である。
例えば『ケツ触らせろ』という命令も、嫌でもその場は従わなくてはならない。…ただし、後でセクハラで訴えられるが。
とにかく、絶対的な命令なのである。

「チョット!それって横暴ネ!アメリカじゃ労働法に引っかかるヨ!」
レミィがシュプレヒコールをあげる。…日本でも労基法に引っかかると思うが。
「…なんとでも言いなさい。命令は絶対なのだ」
冷酷に言い放つ長瀬。
それに対して浩之が口を開いた。
「ハゲ!馬ヅラ!モテない男NO.1!」
「…藤田くん!悪口は言うな!」
長瀬の注意にも、しれっと答える浩之。
「でも事実じゃん」
ぴくぴくぴくっ!
長瀬の青筋がまるでミミズのように…。
「あっ、あのっ、司令。アルバイトって、どんなことすればいいんですか?」
両者の緊張を見かねて、あかりが話をそらした。
…気を取り直して長瀬が解説する。
「あ、ああ…。とりあえず、全員分の求人を集めてきた。ま、ファミレスやコンビニなどだが」
「その中から、好きなのを選んでよろしいのでしょうか…」
長瀬のすぐそばに座っていた琴音が質問する。
それに答える長瀬。
「うむ…だが選ぶ順番は、日頃の貢献度で決めさせてもらった。これからそれを発表する」
「えー!何それ!」
志保が抗議する。…が、長瀬は無視。
「1番目、芹香くん。これは2百万融資してもらってるから、当然だ」
ぺこ。…おじぎする芹香。
「2番目、あかりくん。みんなをまとめている点、戦闘での安定した戦いぶりから決まった」
「ありがとうございます」
「3番目、葵くん。個人での戦闘成績はNO.1だ」
「そんな…ありがとうございます」
「以下、4番目セリオ、5番目保科くん、6番目姫川くん、7番目マルチ、8番目雛山くん…」
「ちょっと待てい!俺はどうした!」
なかなか名前の出てこない浩之は立ち上がって抗議する。
「ああ、藤田くん。君は日頃の口の悪さが災いして9番目だ」
得意顔で話す長瀬…。
…ずいぶんと嬉しそうだ。
「な、なにょ〜」
悔しそうな浩之…。
「10番目、長岡くん。最後11番目、レミィくん。以上だ」
「ちょっと!なんで私がブービーなのよ!戦闘成績はまあまあのはずでしょ!」
長瀬の発表に、今度は志保が抗議する。
その彼女に、長瀬は鋭く言い放つ。
「…長岡くんにレミィくんは、貢献度を損害度が上回っているんだ。戦闘で物を壊しまくっているからね」
「…あ、あらぁ、そうなんですかぁ…ははは…」
志保は笑うしかなかった。
「ワタシ、壊すのダイスキだからネ。しょうがないヨ」
「しょうがなくないぞレミィくん…君はダントツのビリなんだぞ」
レミィの天然ボケにジト目でつっこむ長瀬。

それぞれがバイト先を決めていった。…中には不満な者もいるようだが。

「…いいかね、リーフが現れたらそちらを優先してくれ。バイトの責任者方にも、了解を得ている」
長瀬は全員に言い渡した。
うなずく全員。…浩之と志保以外は。
「…わかったかね、藤田くん、長岡くん」
念を押す長瀬。
「へいへい…」「わかってますよぉー」
2人ともやる気のない返事だ…。
「よし、ではみんなの健闘を祈る。解散!」
長瀬の言葉で、全員、それぞれのバイト先へと散っていった…。


☆☆☆☆☆



一方ここは、世界征服を企む悪の秘密結社『リーフ』のアジトである。
そのある一室で…。
「ほーら、ベム。エサだよー」
一人の男が、ハムスターにエサをやっていた。
「ほら、お前の好きなレタスだよー」
楽しそうにエサを与える男。
ぱっ。
しゃりしゃりしゃりしゃり…。
一心不乱にエサを食べるハムスターのベム。
「うーん、お前は食べるのが早いなー。今度はキャベツだよ」
ぱっ。
しゃりしゃりしゃり…。
すぐに食べ終えるベム。
「ははは、お前は食いしん坊だなあ。もっと欲しいのかい?じゃあ、今度はトウモロコシだ」
ぱっ。
がりがりがりがり…。
またたく間にトウモロコシ1本を食い終えた。
「うーん、やっぱり身体が大きいと、エサを食べ終えるのも早いなー」
「シャギャー!」
男の言葉に、ベムはハムスターには全然似つかわしくない声を出す。
「…これはやっぱり、放射能汚染物質のせいかな?この大きさでは、そろそろこの部屋で飼うのも限界かな。ははは」
…自分の身長ほどもあるハムスターを前に、笑う男。
「しゃぎゃー!」
「おーよしよし。そろそろ行くよ、仕事が始まるんだ」
しかし、男が部屋を出ようとすると、ベムは騒ぎ出した。
「しゃぎゃー!しゃぎゃー!」
「…聞き分けのない子だなあ。あんまり言うことを聞かないと、脳ミソかき出して代わりにヌカミソ詰めるよ」
怖いことをさらっと笑顔で言う男。
「しゃ…きゅいーん、きゅいーん…」
「よしよし、いい子だ。じゃあね」
男はそう言うと、壁に掛けてあったマントをはおり、部屋を出る。
ういいいん。
自動ドアが開くと、そこには2人のリーフ戦闘員が立っていた。
「リーフ!」
「うむ。ごくろうだ」
男は先程の声がウソのように、感情のない声を発する。
コツコツと通路を歩き出す男。
男−リーフ3幹部の1人、マサシ伯爵−は、そのままホールへと向かった…。

「アヤカ将軍。何か変わったことはなかったか?」
ホールに入ると、マサシはそこにいたアヤカに話し掛ける。
「あら、マサシ。…面白いことがあるわ」
アヤカが話そうとする…その時。
「何、トゥハートの奴らがアルバイトしている?」
「…何で知っているのよ」
マサシの言葉にアヤカが眉をひそめた。
「…いや、どうせそういう話の展開になるのだろうと思ったからなのだが」
無表情でしれっと言う。
「…まあいいわ、そうなのよ。諜報活動をしている勧誘員の話によれば、予算の赤字を埋めるためにしょうがなくやってるそうだけど」
「ふむ…チャンスだな。これを機に、一気に奴らを倒すか…」
そう言って彼は腕を組み、思案する。
そこへ、ドタドタと何者かが現れた。
「トゥハートを倒すのは、わしだ!」
そこには、包帯をぐるぐる巻きにした、セバス大佐の姿があった。
「きゃあ!ミイラ男!」
「誰がミイラかあっ!」
怒鳴るセバス。
そのセバスを一瞥して、マサシは口を開いた。
「…セバス大佐。安静にしてなくてよいのか?」
「そんなことはどうでもいいのだ!トゥハートは、わしにやらせろ!」
しかし、マサシはその言葉に首を振った。
「ダメだ。今回は私の作戦に従ってもらおう。奴らが別々の場所にいるこの状況を、うまく使わねばならん」
「うぐぐ…」
前回失敗しているだけに、セバスには何も返す言葉はなかった。
「バラバラになっている奴らを我らそれぞれで戦う。その間、他の奴らは怪人と戦闘員で押さえる。
そして倒した奴をエサに、残った奴らを一網打尽にする…。単純な作戦だが、これが一番確実だ」
マサシの言葉に、セバスが首をかしげる。
「…それで単純なのか?わしには少し手が込んでいるように思えるが…」 それに半ば呆れて話すアヤカ。
「そう考えるのはあなただけね。…それでいいわよ、マサシ」
「…わしもそれでいいぞ」 セバスも一瞬イヤな顔をしたが、マサシに同意した。

…その時。
ビコーンビコーンビコーン。
リーフの像の目が、赤く点滅する。
「…リーフ様だ!」
全員、その場にひざまずいた。
ぶうぅぅぅぅぅん。
やがて目は青く光り出した。
「どうだ、最近はうまくいっておるのか」
低い声が響いてくる。
『リーフ』の声だ。
それに対しマサシが、ひざまずいたまま答える。
「ははっ、順調にございます。これもリーフ様がおられるからこそ…」
いつも通りの答えを返すマサシ。
「順調か…それにしては、トゥハートとやらに苦戦しておるのではないのか?」
「!!」
3人はこれ以上ない驚きを覚えた。
ひた隠しにしていたトゥハートを、なぜリーフが知っているのか!?
「…ト、トゥハートの件、ご存知でございましたか」
マサシの言葉にも、動揺が隠せない。
「うむ。奴らを放っておくわけではあるまいな」
「…滅相もございません。これより奴らを抹殺すべく、作戦を開始する予定にございました」
なんとか取り繕うマサシ。
「…わかった。だが、もし失敗した時は…」
「し、失敗した時は…?」
動揺のため、思わず復唱してしまうアヤカ。
「…もし失敗した時は、1時間ぶっ通しで全身くすぐりの刑だ!わかったな…」
ぞおおおっ。
あまりの恐ろしさに3人とも顔が青ざめる。
「わ、わかりましたリーフ様。必ずやトゥハートめを討ち倒して参ります…」
リーフはマサシの言葉に納得したのか、
「…吉報を待っているぞ…」
そう言い残し、去った。

「…まさか知っていようとは…」
つぶやくマサシ。
「これで、失敗はゆるされなくなったわね」
アヤカの言葉に、うなずく2人。
「必ずやトゥハートを倒し、くすぐりの刑から逃れよう!」
「おうっ!」
なんか目的が違ってきたような気もするが…。


☆☆☆☆☆



「うんしょ、うんしょ…」
とあるマンション。
その一室に、大きな箱を持った浩之が入っていく。
彼の着ている服は、某引越しセンターの制服だ。
「あ、先輩。大丈夫ですか?」
葵が部屋の中から問い掛ける。
葵も某引越しセンターの制服を着ていた。
「いや、これくらいの荷物…うんしょ!ふー。大丈夫だよ」
荷物を床に置き、汗を拭く浩之。

2人は、引越しセンターのバイトをしていたのだった。
時給はなかなかいい。

「…でも葵ちゃん、何でまたこんなバイトを選んだんだ?他に楽そうなのあっただろうに」
「いえ、自己鍛練のために、力を使う仕事の方がいいと思いまして…」
浩之の問いに答える葵。
「ふーん。努力家なんだなぁ、葵ちゃんは」
葵の答えに浩之は感心する。
「でも、レストランのウェイトレスも、ちょっとあこがれましたけど」
「ファミレスかあ。葵ちゃんの制服姿、見てみたかったけどな」
(そんでもって制服のまま、くんずほぐれつ…でへへ)
下品な想像をする浩之…。
葵はそれには気付かないようだ。
「でも私、人前でしゃべる仕事って苦手なんです」
「だったら、セリオやマルチみたいにメイドの仕事なら…でも、あれはあれでキツイかな」
(ムチで叩かれたり、ハイヒールで踏まれたりするんだよな…)
浩之…お前のメイドの知識は偏り過ぎている…。

それぞれトゥハートの面々は、バイトにいそしんでいた。
浩之と葵は引越しセンター。
芹香は、家庭教師。
あかりと琴音はファミレスのウェイトレス。
智子は近くのコンビニ。
セリオとマルチはある屋敷のメイド。
理緒は牛丼の吉○屋。
そして志保とレミィは…。

「しかし、まだ俺の方がよかったかな。レミィや志保と比べてみりゃ」
浩之が一休みして葵に話し掛ける。
「そうですね…ずっと立ちっぱなしっていうのはキツイものがありますから…」

一方…当人のレミィと志保は。
「ふ…ふぁっくしょん!」
くしゃみをする志保。
『シホ、どうしたの。風邪引いた?」
手に持ったレシーバーからレミィの声が聞こえてくる。
「違うわよ…どうせバカヒロが私の噂でもしてるんでしょ!…ったく、なんで私が警備員のバイトなのよ!」
…2人は、道路工事のための車の誘導員をやっていた。
評価がブービーとビリのこの2人は、当然のごとく余った警備員のバイトをやらねばならなかったのである。
『しょうがないネ。ワタシと志保で、損害のほとんどを出してるからネ。…軽自動車が一台行くヨ』
「ほとんどって、あんたが7で私が3!一緒にしないでよね!…バイクが2台よ!」
『でも、ブービーはシホね。それは変わらないヨ。…コッチは来てないネ』
「それはそうでも…だからってねー、女の子がやるバイトじゃないでしょーが。…はい、大型トラックが通るよ」
『でも、時給はいいヨ。…自転車が行くよ、注意して』
「そうだけど、私らが貰えるわけじゃないでしょ。…こっちからは、リーフ戦闘員が走ってきたわ…」
………。
『…シホ。リーフ戦闘員?』
「…そうよ!リーフ戦闘員よ!」
志保の見ている方向からは、数人のリーフ戦闘員が走ってきた。
「リーフ!リーフ!リーフ!」
…独特の奇声をあげながら。
「うわああああああっ!リーフだ!リーフが出たぞおっ!」
工事現場のおやじたちは、我先に逃げようとする。
「皆さん!落ち着いて!あれくらいなら私が撃退するわ!」
それを落ち着かせる志保。
「おおうネェちゃん!あいつらを倒すってェ?若ェのにやるじゃねェか!」
逃げようとしていたおやじ軍団の1人が志保に声をかけた。
「ふっ!まっかせなさーい!ブランニューハート、チェィィィィンジ!」
志保が変身する。
次の瞬間、志保はシホイエローへと姿を変えていた。
「真心戦隊トゥハート、シホイエロー見参!」
「おおー!いいぞネェちゃん!」
おやじ軍団が拍手する。
シホはそれを制して言った。
「見てなさい!この志保ちゃんの手にかかれば、リーフ戦隊員の2人や3人くらい…」
どどどどど…。
「リーフ!」「リーフ!」「リーフ!」
後方から新たに戦闘員が現れる。
「ふっ、6人や7人…」
どどどどど…。
「リーフ!」「リーフ!」「リーフ!」
まだ現れる戦闘員。
「…10人や20人…」
どどどどど…。
「リーフ!」「リーフ!」「リーフ!」
まだまだ現れる…。
「………(たら〜り)」
…いつのまにか、リーフ戦闘員は30人以上になっていた。
「いけやー!ネェちゃん!」
おやじ軍団にせかされるシホ。
しかし、30人という人数は志保の戦闘許容範囲を超えていた。
「え、えーと…」
「シホ!迷うことはないヨ!その程度一気に倒すネ!」
その時。
ちょっとの間、姿を見せなかったレミィの声が聞こえた。
彼女はレミィゴールドの姿で、近くの家の屋根上に立っている。
どうやら、戦闘員の出現と同時に登っていたようだ。
…マメなことである。
「レミィ!いくらあんたでも、この数を相手には…」
志保の注意を無視して、矢をつがえるレミィ。
「いくヨ!ギャラクティカ・ブラスト・アロー!」
「ちょっ…!何そんなアブナイの使ってんのよ!」
しかし、今のレミィには何も聞こえない。
「フフフ…。エモノ、エモノ、エモノがいっぱいネ…。よりどりみどりあほうどりネ!」
…すでにイッちゃってます。
「おやじさんたち!逃げて!死ぬわよ!」
「わ、わかったぜ!」
説得不能とみるや、おやじ軍団を逃がすシホ。
「リ…リーフ…?(なんだ、あいつ…?)」
「リーフ、リーフリーフ!(やばいんじゃねえのか、目がイッちゃってるぞ!)」
リーフ戦闘員も不安を隠せない。
「ハンティング!GO!」
ついに矢を放つレミィ!
…放たれた矢は、ヘロヘロと頼りなく戦闘員たちの中心へと飛んでいく…。
「…リーフ!リーフ!(…なんだ!こけおどしかよ!)」
「リーフ!(驚かせやがって!)」
やっと、矢は地面に到達する…。
…その瞬間。
…ちゅどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!
すさまじい爆風!
近くにいたリーフ戦闘員たちは、跡形も無く吹っ飛ぶ!
ひゅううううううう…。
…しばらくして、爆風も静まった。
「HAHAHAHAHA!!どう!?スゴイでしょ!」
「『スゴイでしょ』じゃなーい!」
ばしいぃぃぃぃっ!
笑うレミィを、シホはどこから出したかハリセンでぶっ叩いた。
「アウチ!…ナッ何するネ、シホ!ワタシの貴重な脳細胞が100万個は死んだヨ!」
頭を抱え、文句を言う。
「あんたねぇ!この惨状を見て何も思わないの!?」
そう言ってシホは周りを指差した。
…着弾した半径10メートルは跡形も無くクレーターのようになっており、その周りも家屋の倒壊、道路の破壊、その他諸々とヒドイものである。
「ね、ね?これ見てどう思う!?」
「…ベツに、何も?」
がぁくぅぅぅぅん。
レミィのあっけらかんとした返答にガックリくるシホ…。
「どーしたネ?シホ。ナニいじけてるの?」
わけがわからないといった風のレミィ。
「…だからあんたはビリなのよぉ…」
地面に『の』の字を書きながら、彼女はそうつぶやいた…。


☆☆☆☆☆



「納豆カレーにコーヒースカッシュですね?少々お待ちください」
注文をとるあかり。
彼女と琴音の2人は、ここのファミレスでバイトをしていた。
「…ふう。そろそろ休憩時間ね」
「あ、あかりさん」
とてとてと琴音が近付く。
「あ、琴音ちゃんも休憩時間?」
「はい…あれ?通信が入ってますよ」
琴音の言葉に、腕の通信機のスイッチを入れるあかり。
「はい、こちらあかりですが…」
「あ、あかりくん!ヘンタイだ!」
いきなりの長瀬司令の言葉に、さすがのあかりもムッとなる。
「司令、ヘンタイってなんですか?」
聞き返すあかり。
その言葉に、長瀬は慌てて言い直す。
「す、すまん、タイヘンとヘンタイを間違えた。…大変なんだ!」

「…え?リーフ戦闘員が!?」
『そうなんだ!幸い…幸いというか、災いというか…レミィくんが周りごとふっ飛ばしたらしいのだが、奴らがそれだけで終るわけがない!彼女らが損害を増やさないうちに…じゃない、奴らの2次攻撃の前に、早く合流してほしいんだ!』
長瀬は涙声になっていた…。
「落ち着いてください、司令。…わかりました、琴音ちゃんと一緒に合流します」
『頼む…』
そう言って通信を終える長瀬。
切れる瞬間、『こうなったら自分が死んで保険金を得るしか…』と聞こえた気がしたが、たぶん空耳だろう。
「あかりさん…何か嫌な予感がします」
そばにいた琴音が、青ざめた表情で言う。
「そうね…。みんなのところへ行きましょう!」
あかりたちは店の外に出た。
しかし、そこには…。
「どこへ行く気かね?アカリレッドにコトネピンク」
そこにはひとり、マサシ伯爵がいた。
「…バイトの時間は、まだ終りじゃなかろう?」
マサシはそう言うと同時に、猛然と琴音に向かってショルダータックルをかける。
がんっっっっ!!
「ぐっ!」
壁に叩き付けられる琴音。
「はっ!」
そしてすぐさまあかりに回し蹴りを見舞う。
がっっっっ!
すんでのところでガードするあかり。
「きゃっ!」
しかし、そのパワーを受け流すことはできず、後ろにふっ飛ばされた。
ざざっ。
なんとかふんばって、壁に激突するのを避ける。
「くっ、ここままじゃやられるわ…。琴音ちゃん、変身よ!」
「は、はいっ」
あかりの言葉に、琴音もよろよろと立ち上がり構えた。
『ブランニューハート、チェーンジ!』
2人の声がハモる。
次の瞬間、彼女たちは変身を終えていた。
「真心戦隊トゥハート、アカリレッド!」
「同じく、コトネピンク!」
ちゃきーん!
決めポーズをとる2人。
「フン…2人で何ができるというのだ」
アカリに向かってダッシュするマサシ。
「…来る!」
身構えるアカリ。
「はっ!」
しかし、マサシは途中で軌道を変えた!
それはまるで、ドリブル中に相手ディフェンダーをフェイントでかわすような、すばやい動き。
「なっ!」
その先には、コトネが…。
アカリに向かうと思っていたコトネは、一瞬油断していた。
どすぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!
マサシの膝蹴りが、コトネのみぞおちに入った。
「うぐぅぅぅぅぅっ!」
ガクンと膝を折るコトネ。
「こっ、琴音ちゃん!」
「他人の心配より、自分の心配をしろ!」
びゅっ!
マサシはすぐさま足の裏蹴りを放つ。
どすうっ!
「ぐうっ!」
蹴りは見事にアカリのみぞおちに入った。
腹を抱えてうずくまるアカリ。
「フフ…どうした。おまえらの力は、この程度なのか?」
不敵に笑うマサシ。
…その笑みは、見る者を恐怖に駆らせた。
「つ、強いです…」
うめくようにコトネが言う。
「これが…リーフ幹部の力なの?全然ケタが違いすぎるわ…」
アカリの言う通り、両者の力の差は明らかであった。
「さて…楽しませてくれよ。フフフ…」
ゆっくりと2人に近付いていくマサシ…。


☆☆☆☆☆



一方、芹香は…。
「フフフ…あなたには、死んでもらうわ」
簡素な住宅街の端で、リーフ3幹部の1人、アヤカ将軍と対峙していた。
「………」
「『どいてください』、ですって…?そうはいかないわ。それにどうせ、他の奴らも倒されるんだから行くだけムダってものよ」
アヤカはフッと笑うと、手にしたムチを地面に叩き付けた。
「………」
「え?『みんなを死なせるわけにはいきません』?笑わせてくれるわね。先にあなたが死ぬというのに…」
その言葉に芹香は、すうっと目を細める。
「…フフ。やる気になったみたいね…いくわよ!」
ムチを振り上げ、芹香に叩き付ける!
しかし芹香は、それをスッとかわす。
「なにっ?」
アヤカは驚いた。
…芹香は、全くムダのない動きでアヤカのムチをかわしたのだ。
ぼーっとしているように見えた芹香が、である。
その驚いているスキをついて、芹香が動く。
「………」
『ブランニューハート、チェンジ』と言っているようだ。
代弁者がいないと、寂しいものである。
「…しまった!」
次の瞬間、芹香はセリカブラックへと変身を終えていた。
「………」
名乗りをあげるが…またも聞こえない。
しょうがなく彼女の代弁をするアヤカ。
「『真心戦隊トゥハート、【セリカブラック】です』…ね。はいはい」
そしてアヤカはムチを捨て、ファイティングポーズをとる。
…にらみあう2人。
ひゅううううううう…。
風の音だけが響く。
「…たあぁぁぁぁぁっ!」
アヤカが先に仕掛けた!
ヒュッと風を切る音と共に、アヤカの後ろ回し蹴りが飛んでくる!
「………!」
しかし、またもスッとかわすセリカ。
「なっ!またか!?」
焦るアヤカ。次々と蹴り、パンチを繰り出す。
しかし、全て当たりそうに見えて、全く当たらない。
「…どういうこと!?この私が…?」
驚愕の色を隠せないアヤカ。
仮にもリーフの3幹部である自分が、一度も攻撃をかすらせることすらできないとは。
「………」
「『もうおやめなさい』!?バカにしないで!」
セリカの言葉に逆上するアヤカ。
なりふりかまわず、力任せに体当たりする。
どんっ!
さすがにこれはかわしきれず、2人はゴロゴロと転がった。
「………!」
しばらくもみ合いが続いたが、さすがに力ではアヤカの方が上であった。
ついにアヤカは、セリカの上に馬乗りになる。
「ふふっ、てこずらせてくれたわね!でも、もう終りよ!」
そう言ってアヤカは腕に隠していた仕込み刀を振りかざした。
「………」
セリカが何かをつぶやく。
「…え?」
一瞬、アヤカは自分の耳を疑った。
「今、何て言ったの…?私が妹ですって!?」
こく。…うなずくセリカ。
「何を…私を惑わそうとしてもムダよ!」
だがその言葉とは裏腹に、アヤカは動揺していた。
「くっ…くそっ、死ね!」
アヤカは、手にした短刀を振り下ろそうとした。
…がしぃぃぃっ!
「…なっ!」
何者かに腕を掴まれる!
「――芹香お嬢様を殺させるわけにはいきません」
「なっ…貴様は!?」
振り返るとそこには、セリオブラウンの姿があった。
「――セリカお嬢様は、戦隊の大事な資金源ですので」
きっぱりと本音を言うセリオ…。
「あんたね、『大事な仲間だ』くらい言ったらどう?…はっ!」
アヤカはセリオの手を振りほどき、飛び退く。
「…しかし、戦闘員どもが相手をしているはずではなかったのか?」
作戦では、30人の戦闘員たちがセリオ、マルチの足止めをしているはずであったのだが。
「リ…リーフ…(ア…アヤカ様…)」
そこへ、ズタボロになったリーフ戦闘員が…。
「…!おまえは戦闘員ハの25番!どうした!」
「リーフ…リーフ…(我が隊は…全滅いたしました…奴ら…予想以上の強さです…)」
すでに戦闘員ハの25番は虫の息だ。
「くっ…またも戦闘力を見誤ったのか…」
「リーフリーフ…(私ももうダメです…)」
「何を言うの戦闘員ハの25番!まだ大丈夫よ!」
戦闘員ハの25番の手を握るアヤカ。
「リ…リーフリーフ…リーフ…(いえ…私はもう助かりません…アヤカ様ご無事で…)」
がくっ…。
「戦闘員ハの25番!?戦闘員ハの25ばーん!…くぅっ…」
…返事がない。ただのしかばねのようだ。
「ううっ、お前の死はムダにはしないわ…」
「――あの。そろそろ、よろしいですか?」
…ひたっているアヤカにセリオが声をかける。
「ああっ、うるさいわね!…ここはひとまず退いてあげるわ!憶えてなさいよ!」
アヤカは捨てゼリフを残し、逃げ出す。
(それにしても先ほどのセリカブラックの言葉…私が妹だと?)
ただの心理作戦だと思いつつも、何か心に引っかかるアヤカであった。

「芹香さーん!大丈夫ですかぁー!」
マルチグリーンが、とてとてと走って現れる。
…足の遅い彼女は、セリオに置いていかれたのであった。
「………」
「大丈夫ですかー。よかったですー」
ホッと胸をなで下ろすマルチ。
「………」
「え?『やさしいんですね』?そんなことないですー…えっ?」
なでなで…。
やさしくマルチの頭を撫でるセリカ。
「そ、そんな…き…きもちいいですぅー」
なでなで…。
「きゃうぅぅぅん…そんなところ…ダメですぅー」
…声だけ聞いていればかなりエッチだ。
「――セリカお嬢様。早く皆さんと合流しませんと…」
その2人の間にセリオが割って入る。
…こく。
撫でるのをやめ、セリカはうなずいた。
「――では行きましょう」
すたすたと歩き出すセリオ。
…無表情なはずの彼女の瞳に一瞬だけ、嫉妬の色が見えた…ような気がした。
「ああっ、セリオさん。待ってくださいー」
慌てて走り出すマルチ。セリカもそれについていく。
3人は、他の隊員たちと合流すべく急いだ…。


☆☆☆☆☆



集合命令を受けた浩之と葵。
だが、途中でリーフのフンコロガシ怪人『フンコロリン』の妨害にあっていた。
「フンコローッ!」
「だあああああっ!」
フンコロリンのデンジャラス・ダンゴシュートをすんでのところでかわす浩之!
べちょ!
そのままダンゴは壁に当たってつぶれ、鼻の曲がるような異臭を放つ。
「…く、くさーっ!」
鼻をつまむ浩之&葵。

デンジャラス・ダンゴシュート。
これは、サッカーボール大にしたフンを、目標を目掛けて蹴るという、非情に危険で恐ろしい技である…。

「こんなものが少しでも当たったら…」
葵はダンゴを食らった自分の姿を想像する…。
「い、いやーっ!」
「どうした葵ちゃん!」
いきなり叫びだした葵に戸惑う浩之。
…所詮は葵も女の子である。
「フンフンフン♪」
変な踊りを踊るフンコロリン。
「このやろー、バカにしてやがる…」
浩之は歯がみするばかり。
「こうなったら…葵ちゃん!突撃だ!」
…悩んだ末に浩之は、非情な命令を発した。
「えええええええ!い、いやですー!」
当然のごとく拒否する葵。
だが、浩之はなおも命令する。
「やるんだ!葵ちゃん!君がやらずに誰がやる!」
「い、いやです!そんなことできません!」
なおも拒否する葵に、浩之は説得する。
「どうした葵ちゃん!世界一の武闘家になるんじゃなかったのか!?」
「世界一…!?」
『世界一』という言葉に反応する葵。
しかし、その表情にはまだ怯えが見えた。
「でも、怖いんですっ」
その葵の両肩を叩き、浩之は言い聞かせる。
「怖がるな葵ちゃん!いいか、葵ちゃんは強い!あんなやつ、一撃でコロッだ!」
「先輩…!?」
「葵ちゃんは強い!葵ちゃんは強い!葵ちゃんは強い!」
すーっと深呼吸する浩之。
「あぁおいちゃんはぁ、つぅよぉいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
浩之は言い終えると、ぜぇはぁと肩で息をする。
「…さあ…葵ちゃん…。…攻撃だ!」
「はいっ!」
葵は自分の拳を見つめ、キッとフンコロリンを睨みつける。
「フ、フン…?」
あまりの気迫に気押されるフンコロリン。
しばらくにらみ合う2人…。
そして。
「…やっぱりダメですーっ!こわいーっ!」
「だああっ!」
葵の言葉に浩之は思わずずっこけてしまった。
「フンコロ!」
そこにチャンスとばかりに、フンコロリンはデラックスデンジャラス・ダンゴシュートを放つ!

デラックスデンジャラス・ダンゴシュート。
これは、先程のデンジャラス・ダンゴシュートと同じようなものである。
だが、真新しいフンを使っている分、臭さも恐ろしさもパワーアップしている…。

「し、しまった!」
ダンゴは猛スピードで浩之にぶつかる…。
…その瞬間。
びしゃああああああああああああっ!
何者かが現れ、ダンゴをパンチで破壊してしまった!
「フンフン…フン!?」
ダンゴを浴びたであろうと思っていたフンコロリンは驚いた。
その人物は、拳どころか身体のどこにも、ダンゴの残りをつけてはいなかったのだ。
「すごい!風圧であのダンゴを破壊してしまうなんて!」
すさまじい臭いに、葵は鼻をつまみながら解説した。
「え?そうなの?」
浩之は、その人物をしげしげと見る。
その人物は、空手の胴着を着た女であった。
「…あんた、誰なんだ?」
「…坂下」
浩之の問いにそれだけ答えると、次の瞬間彼女はフンコロリンに向かってダッシュする。
「フ…フン!?」
あまりのスピードに対処できないフンコロリン。
どぼおぉぉぉっ!!
正拳突きがフンコロリンのみぞおちを襲った。
「フ…フゥーン…」
ばたっ。
なんと一撃で、彼女はフンコロリンを倒してしまった。
「な…素手で怪人を!?」
浩之は驚いた。
変身後のトゥハートでさえ、一撃で倒すのは難しいというのに。
「あ、ありがとうございま…」
「あなたたちがトゥハートね」
葵の礼の言葉をさえぎって、坂下が話す。
「別に礼には及ばないわ。だけどこれだけは憶えておいて…あなたたちにリーフを潰させるわけにはいかない…ってことを」
坂下はそれだけを言うと、かき消えるようにその場を去った。
「えっ、おい!今の言葉は…」
浩之は坂下の謎の言葉に戸惑う。
(リーフを潰させるわけにはいかない…どういうことだ…?)
「しかし無愛想だけど、かわいかったな…スタイルもけっこうよかったし…」
「先輩…鼻の下がのびてますよ…」
浩之の不謹慎な発言に呆れる葵。
(んん…?かわいい子…?)
「もっ、もしや!」
浩之は何かを思い付いたようだ。
「もしや、なんですか…?」
聞きたそうな顔の葵。
「彼女は、リーフに恥ずかしい写真を握られているんだ!」
「え、ええっ?」
葵は浩之の言葉に驚く。
「リーフに捕まり、あーんな写真やこーんな写真を撮られてしまった彼女は、リーフに復讐しようとしているんだ!」
浩之は自分の推理を熱く語った。
「で、でも、それじゃ、私たちに潰させないっていうのは?」
ふと疑問を投げかける葵。
…しかし浩之は自信たっぷりだ。
「フッ、それは…リーフ本部には彼女の写真が山ほどあるんだ。それを見られたくないということなんだろう」
「す、すごいです先輩!見事な推理です!」
浩之の推理に感動した葵は拍手する。
浩之は満足げだ。
「ふふふ…古畑先生も真っ青の推理だったろう。…よし!とっととリーフ本部を潰し、彼女の恥ずかしい写真をゲットだぁっ!」
握り拳を作り、気合を入れる浩之…。
「なぁにが『ゲットだ』かぁぁぁぁぁぁぁぁっ!このヘンタイィィィィッ!」
どこからともなく坂下の声が聞こえた。
「ど、どこだ!?どこから声が…」
「ここだあっ!」
いきなり浩之の目の前に『靴の裏』が広がる!
めりっ。
坂下の、目にも止まらぬライダーキック…じゃない、飛び蹴りが顔面にヒット!
「うみょ…」
ばたん!
倒れ込む浩之。
「言っておくが、そんな事実はないぞ!憶えておけ!」
そう坂下は言うと、かき消えるように去った。
呆然とする葵。
「な、なんてスピードなの…」
一方、浩之は大量の鼻血を出し、その意識は遠くなりつつあった。
「は…はなぢぴゅ〜…」
がくっ。
「先輩っ!?」


☆☆☆☆☆



場面は変わり、再びアカリ・コトネVSマサシに戻る。

マサシの攻撃の前に、アカリもコトネもボロボロにされていた。
「遊びは終りにしようか…。死ね!」
マサシは片手でコトネの首ねっこをつかむと、そのまま吊り上げた。
「ううっ!…うぐぅっ!」
「こ、琴音ちゃん…」
すでにコトネには、マサシの手を振りほどく力は残ってなく、またアカリも、助けに入る程の力は残っていなかった。
「フフ…苦しいか?すぐに楽にしてやるぞ…」
マサシが力を入れようとしたその時。
「あかりーっ!」
遠方よりシホとレミィが走ってきた。
「ちっ…少々時間をかけすぎたか…」
舌打ちするマサシ。
だが、すぐに普段の無表情に戻ると、
「…まあいい、コトネピンクは預かる!はあっ!」
そう言い残しコトネを抱えたままジャンプし、建物の影に消えていった。
「…クッ、アイツ、コトネを抱えて逃げたヨ!」
せっかくのエモノが逃げたレミィは悔しがった。
「…あかり!大丈夫、あかり!?」
一方シホはアカリを助け起こす。
「う、うん、なんとか…それより琴音ちゃんを…」
シホに支えられてよろよろと立ち上がるアカリ。
そこへ、浩之、アオイ、セリカ、セリオ、マルチが走ってきた。
…浩之はどうやら、鼻血ブーから立ち直ったようだ。
「大変だ!いいんちょが、リーフに連れ去られた!」
浩之が、衝撃的な発言をする。
鼻に詰められたティッシュが、坂下との戦闘の跡を生々しく残している…。
「ええっ?戦隊の中でも一番気性の荒い保科さんが!?」
…シホが、本人が聞いたら『人を馬みたいに言うなや!』とか言いそうなことをを言った。
「ああ、さっき司令から通信があって、リーフ幹部にやられて連れ去られたらしいんだ」
「…コッチはコトネがさらわれたヨ!」

智子と琴音、この2人を取り返すべく、8人は追いかける!

さて…。
一度も出てこなかった理緒。
彼女は…。
「今のうちよ、良太!たくさん食べておきなさい!」
「わかった、姉ちゃん!」
リーフの出現により誰もいなくなった牛丼屋で、弟と一緒に牛丼を食っていた…。
「ただで牛丼食べられるなんて、こんなチャンスめったにないわ!」
…すでに正義の心など、ない。
「…あと十杯は食べておくのよ!」
「わかった!」

〜後章〜『反撃!必殺トゥハートフォーメーション!』にGO!


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