○ 第六章 「楚国の体制」 ○ 
222年1月

  ミニマップ・小沛

小沛。
許昌での禅譲の儀を終え、金玉昼らのいる
小沛へと戻ってきた金旋。
だが、皇帝となった彼に休息の時間はなかった。

   金旋金旋   金玉昼金玉昼

金玉昼「帰ってきてお疲れのとこ悪いけど……。
    明日は百官との謁見の儀、それが終わったら
    各方面の戦略の打ち合わせをしまひる。
    明後日は、泰山に登って封禅の儀を行って、
    その後はたまった決済を処理してもらうにゃ」
金 旋「ちょ、ちょっと待てえい!
    何なんだ、そのハードスケジュールは!」
金玉昼「うーん……。これでも削れるところは
    だいぶ削ったんだけどにゃー。
    とある皇帝は睡眠3時間だったらしいから、
    父上も頑張ってほしいにゃ」
金 旋「3時間だけで体が休まるわけないだろ。
    誰だよその皇帝」
金玉昼「ま、そこまでは要求してないにゃ。
    順調にこなせば、6時間は眠れまひる」
金 旋「順調にこなしてそれか……。
    しかし、泰山なんて1日で登れるのか?
    霊峰泰山って呼ばれてるくらいなんだから、
    かなり険しいんじゃないのか?」
金玉昼「別に山頂まで行く必要はないにゃ。
    『封禅の儀』を行うことこそが大事だからにゃ」
金 旋「封禅の儀……。
    確か漢では武帝が最初に行ったんだよな。
    皇帝即位を天と地に報告する儀式、だっけ」
金玉昼「流石はちちうえ。
    そういうムダ知識はよく知ってるにゃー」
金 旋「無駄とか言うな!」
金玉昼「ま、別に儀式はてきとーでいいのにゃ。
    『楚国皇帝金旋は封禅を行った』という
    事実さえできれば、目的は達成されまひる」
金 旋「……バチ当たりだなあ」

    下町娘下町娘

下町娘「その封禅の儀、私も同行しますね」
金 旋「町娘ちゃんも参加か。
    まあ百官ぞろぞろ行くわけだから別にいいが」
金玉昼「あー。
    百官が参加するのは明日の謁見の儀だけで、
    封禅の儀に行くのはごく一部だけになりまひる」
金 旋「ええぇぇぇ!?
    お前、封禅の儀を何だと思ってるんだ!
    武帝も光武帝も他の皇帝も、百官をぞろぞろ
    連れて登ったって記録が残ってるんだぞ!?」
金玉昼「漢の習慣を丸ごと受け継ぐ必要はないにゃ。
    それに、今は戦時下なのを忘れていまひる。
    いつ敵が攻め寄せてくるかわからないのにゃ、
    防衛の任に当たる諸官は早目に帰さないと、
    取り返しのつかないことになりまひる」
金 旋「む、むむう……」
下町娘「大丈夫ですよぉ、金旋さま!
    少ない人数で登ったほうが気楽ですって。
    私もお弁当作っていきますから♪」
金 旋「君もなんか勘違いしとるよな? な?
    ピクニックじゃないんだぞ!」

納得のいかない様子の金旋であったが、
結局は金玉昼のプランに乗るしかないのだった。

    ☆☆☆

そして翌日。
小沛に続々と楚国百官が集まってくる。

 小沛周辺

   甘寧甘寧   魏延魏延

甘 寧「よお」
魏 延「ん? ああ、甘寧か。久しぶりに顔を見たな」
甘 寧「ムダに元気そうで何よりだな。
    どうだ、腕のほうはナマってないか?」
魏 延「戦場を駆け巡っている私を捕まえて何を言う。
    お前こそ、最近は船上での戦いが多いらしいが、
    地上での戦い方を忘れてはあるまいな?」
甘 寧「ふん、ぬかせ。
    この鈴の甘寧は、水陸両用の男だぜ。
    陸での戦いとなっても引けはとらんわ」

小沛城内に急遽こしらえられた、謁見の間。
そこに、楚国のほとんどの将が集まってきていた。
ここに来ていないのは、各防衛線の留守居を
任された、数名程度しかいなかった。

   鞏恋鞏恋   魏光魏光

魏 光「いやあ、懐かしい顔もいますね。
    さながら楚国同窓会会場ってとこでしょうか」
鞏 恋「……まだ始まらないの?」
魏 光「鞏恋さん……。
    謁見の儀が始まる時間はもう少し後ですよ。
    あっ、どこへ行くんですかっ!?」
鞏 恋「時間まで昼寝」
魏 光「ちょ、鞏恋さんってば!」

鞏恋の背中を追いかけていく魏光。
そこに、横から声がかけられた。

   ??????  霍峻霍峻

???「フフ、貴殿らは相変わらずだな。
    魏光どのが彼女をモノにするのは、
    まだまだ先になりそうだな、なあ霍峻」
霍 峻「はは、そうですねえ」
魏 光「え? あ、霍峻さんと……あれ?」
???「おっと、あれに見えるは黄祖どの。
    荊州水軍の長老に挨拶してくるとしよう。
    霍峻、魏光どの、また後でな」
霍 峻「はい」
魏 光「あ、は、はい」

男は一礼すると、黄祖の所へ挨拶に向かう。

   ??????  黄祖黄祖

???「黄祖どのー。お久しぶりにございます」
黄 祖「おお……? お、おう、久しぶりじゃな!」
???「お元気そうで何よりです」
黄 祖「お、おぬしこそ! 元気そうじゃな!」

魏 光「……あの方、誰でしたっけ」
霍 峻「え? 文聘どのですよ、見忘れましたか?」
魏 光「文聘どの? なんか、以前と顔が違うような。
    以前は眼鏡をかけていたような気が……」
霍 峻「眼鏡はやめたようですね。
    まあ、確かに以前より精悍な顔付きになった
    感じはしますが、忘れるほどでしょうか」
魏 光「いや、だいぶ変わりましたよ……。
    黄祖将軍もわかってないみたいだし」

   文聘 before → 文聘 after

黄 祖「……で、お主、誰だっけ」
文 聘「黄祖どの、まだ耄碌されては困りますぞ」

一方、会場傍の一室では、金玉昼と司馬懿が
二人で密談をしていた。

   金玉昼金玉昼  司馬懿司馬懿

金玉昼「……という感じになってるけど、よいかにゃ」
司馬懿「よろしいでしょう。
    しかし。別にこれは私の確認を要する事項とは
    思いませんけれども……」
金玉昼「……貴女は楚国を支える大きな柱だからにゃ。
    後で変にこじれたりしないように、前もって
    意図を伝えておきたかったのにゃ」
司馬懿「それは要らぬ心配かと。
    私の忠は、常に陛下に向いております故。
    その命であれば、死すら受け入れましょう」
金玉昼「……そういう言葉がスラスラと出てくるから、
    私はあまり貴女を好きになれないのにゃ」
司馬懿「フフフ、軍師さまは正直でいらっしますね。
    後でこじれたりしないようにと言いながら、
    そういう言葉を平気で口にされるのですから」
金玉昼「うっ……」
司馬懿「そういうまっすぐなところは実に父君に
    似てらっしゃいますね。
    さて、そろそろ謁見の儀も始まる時間。
    早めに並んでおくべきかと思いますが」
金玉昼「……了解にゃ」

    ☆☆☆

こうして家臣一同がほぼ揃った会見場に、
楚国皇帝となった金旋が姿を現す。

 『皇帝陛下のおなーりー』

ざざっ、と皆が手を合わせ皇帝の方を仰ぎ見る。
そして静寂の中、皇帝の衣装に身を包んだ金旋が、
上段中央に用意された玉座に歩み寄り、座った。

    金旋金旋

金 旋「……ゴホン。朕が、楚国皇帝金旋である。
    諸君らはこれより、朕、ならびに楚国のため、
    その忠誠を注いでほしく思う」

そこまで、金旋は硬い表情のままだったが、
その緊張を緩めて再び告げる。

金 旋「……とまあ、こう言えという原稿があるんだが、
    形式ばった文言はどうも息苦しくてかなわん。
    とにかく、皆、これからもよろしく頼むぞ。
    俺が皇帝だからとて、堅苦しくする必要はない。
    ざっくばらんに行こうぜ!」

どっ、と会見場が湧く。

   徐庶徐庶   郭淮郭淮

徐 庶「やはり、この人はこうでなくちゃな」
郭 淮「ははは……。前代未聞の皇帝陛下ですな」

金 旋「さて、この国の体制についてだが。
    基本は王の時と大して変えるつもりはないが、
    新たに決めておかねばならぬことがある。
    俺が皇帝となった以上、それを継ぐ者が必要だ」

それを聞いた家臣たちはざわめく。

   馬謖馬謖   司馬望司馬望

馬 謖「皇位継承、皇太子問題か。
   順当に見れば、長男の金目鯛どのだが……」
司馬望「しかし長子以外が継いだ例も多くあります。
   金満どのの才は、長幼の序を覆すだけのものが
   あると、私は思いますが」

   楊儀楊儀   孟達孟達

楊 儀「……二人だけとは限りませんぞ。
   男女区別なく重用されている陛下のこと……。
   軍師どのを跡継ぎに、と選ぶやも」
孟 達「むう、無いとは言えぬな。
    あるいは一足飛ばして、皇孫の金閣寺どのを
    次の皇帝に、と考えることもできる」

金 旋「……まあ、色々な考え方もあるだろうが。
    皇太子は、金目鯛に決めた。
    理由は、長子であり、子が既にいることだ」

    金目鯛金目鯛

金目鯛「仕方ねえな……。あんまり気は乗らないが」
金 旋「なあに、俺でも務まるんだから大丈夫だ。
    困ったら優秀な部下に頼ればいいんだからな」

    鞏志鞏志

鞏 志「……陛下、おそれながら。
    それ以降の皇位継承順位はどうされますか。
    もし、皇太子殿下に不慮の事態が起こり、
    皇位の継承ができなくなってしまった時は、
    如何すればよろしいのでしょうか」
金 旋「それは今決めておく必要はない。
    必要になったその時に決めればいいことだ」
鞏 志「はっ、承知いたしました」

金旋は皇太子を長子の金目鯛とした。
また、亡き妻である李杏に李皇后の号を、
また同様に今は亡き金満の生母、馬花梨に
馬夫人の号を贈った。

また、楚の首都は許昌に置くこととした。

金 旋「許都は、あくまで暫定の首都だ。
    全てのカタがついたら、また新たに考える。
    さて、続いて……爵位についてだな」

   費偉費偉   馬良馬良

費 偉「来ましたな、本日最大の関心事が」
馬 良「丞相を誰にするか、ですか。
    序列がそのままであれば、軍師どのを
    丞相とするのが妥当ではありますが……」

   于禁于禁   李厳李厳

于 禁「しかし、丞相・司空・太尉・司徒は
    武官と同様の権限が与えられる。(※)
    軍を率いたことのない軍師どのを、そのまま
    丞相にしてしまって良いものかどうか」
李 厳「しかし武官上位をその任に当てるとなると、
    丞相の任は司馬懿が務めることになる。
    だが、今でも彼女の影響力は大きいものが
    あるのに、丞相にまでしてしまっては、
    抑えられる者がいなくなるのではないか」

(※ 丞相・司空・太尉・司徒は文官爵位でありながら
 同位武官と同様の55000の兵を率いることができる)

   凌統凌統   蒋欽蒋欽

凌 統「司馬懿の能力は確かに優れてはいる。
    だが何を考えているのか分からぬ所もある」
蒋 欽「軍師どのを選ぶか、司馬懿どのを選ぶか。
    果たして、陛下はどう考えたのであろうか」

金 旋「丞相と三公は武官権限もある。
    そういうわけで、全土統一が成るまでは
    武官をその任に当てることにする。
    ま、あくまで戦時特例というところだ」

金旋が発したその言葉を聞いて、
皆の頭の中に描かれていた天秤が一方に傾いた。
だが、次に金旋が告げた内容は、皆の予想とは
全く異なっていた。

金 旋「ということで、丞相の任は……。
    燈艾に任せることにする。
    司空が司馬懿、太尉が徐庶、司徒が郭淮だ」

    トウ艾燈艾

燈 艾「……え?」
金 旋「聞こえなかったのか? 燈艾が丞相だ」
燈 艾「あ、いや、その……。
    丞相は司馬懿どのではないのですか」
金 旋「それも考えたんだがな。
    丞相職は能力底上げが大きいから(※)、
    お前のほうがいいと思ったんだ」

(※ 丞相は統率・武力・知力・政治が全て+5)

燈 艾「そ、そんな理由ですか……」
金 旋「ちなみに鞏恋を抜擢しようかとも思ったが
    流石にそりゃ無茶かと思い直してな。
    ありゃ? そういや鞏恋の姿が見えんが」

    魏光魏光

魏 光「きょ、鞏恋さんはトイレです! トイレ!」
金 旋「そうか、トイレなら仕方ない。
    そういうわけだから、燈艾、頼んだぞ」
燈 艾「は、はい。
    統一が成るまで、ということであれば……」
金 旋「うむ。さて、他の爵位は次の通りだ」

☆ 文 官 爵 位 ☆
丞 相燈艾
司 空司馬懿
太 尉徐庶
司 徒郭淮
光禄勲金玉昼
大司農鞏志
衛 尉費偉
廷 尉馬良
尚書令潘濬
太 僕劉巴
太 常韓浩
光禄大夫魏劭
中書令劉曄
御史中丞張既
執金吾蒋済
少 府崔炎
秘書令司馬孚
侍 中董允
留府長史陳矯
太学博士厳峻
謁者僕射伊籍
都 尉楊儀
黄門侍郎孟達
太史令何晏
郎 中司馬望
従事中郎庖統
長 史金魚鉢
司 馬馬謖
太楽令諸葛瑾
大倉令董昭
武倉令顧雍
衛士令魯粛
主 簿下町娘
諌議大夫諸葛恪
侍 郎張昭
中 郎楊阜
  
  
  
  
☆ 武 官 爵 位 ☆
大都督魏延
衛将軍甘寧
驃騎将軍朱桓
車騎将軍霍峻
征東将軍金満
征南将軍于禁
征西将軍金閣寺
征北将軍李厳
鎮東将軍満寵
鎮南将軍金胡麻
鎮西将軍韓当
鎮北将軍呉懿
安西将軍魯圓圓
安南将軍文聘
安西将軍周泰
安北将軍蒋欽
左将軍李典
右将軍太史慈
前将軍凌統
後将軍司馬師
軍師将軍金目鯛
安国将軍鞏恋
破虜将軍髭髯龍
討逆将軍厳顔
威東将軍孫瑜
威南将軍髭髯豹
威西将軍髭髯鳳
威北将軍黄祖
牙門将軍孔奉
護 軍文欽
偏将軍関興
裨将軍張苞
忠義校尉閻柔
昭信校尉卞柔
儒林校尉朱拠
建議校尉橋麗
奮威校尉費耀
宣信校尉陳到
破賊校尉廖化
武衛校尉(空位)

   魏延魏延   甘寧甘寧

魏 延「……(この私が……大都督……)」
甘 寧「何ニヤついとるんだ」
魏 延「に、にやついてなどいないっ」

金 旋「なお、司馬懿の長子である司馬師が、
    今年成人したので後将軍の位を与えている。
    ほれ司馬師、挨拶しろ」

    司馬師司馬師

司馬師「皆様、よろしくお願いします」
金 旋「いいかー。ガキのくせに才能あるからって、
    妬んだりいじめたりしないようになー」

   魯圓圓魯圓圓  雷圓圓雷圓圓

魯圓圓「「ガキのくせにって……。
    陛下のほうが妬んでるんじゃないかしら」
雷圓圓「「これは暗に苛めろということですね!
    というわけで司馬師を逆立ちさせましょう」
魯圓圓「「どうして?」
雷圓圓「「上から読んでも下から読んでも司馬師!
    っていうネタをやるんですよー」
魯圓圓「「……やめときなさい」

   蛮望蛮望   公孫朱公孫朱

蛮 望「まっ、なかなかカッコイイ子じゃなーい。
    ねえねえ、アンタもそう思わない?」
公孫朱「えっ!? い、いや、私は別に……。
    歳もだいぶ離れているし」
蛮 望「火遊びに歳の差は関係ないわーん♪
    ああんもう、どうにかしてぇーん」
公孫朱「……。(このままどうにかなったほうが、
    世のためなのでは……)」

金 旋「張昭の子の張休も成人してたな。
    ……えーと、あとは何かあったっけ?」
下町娘「賞与ですよ賞与」
金 旋「ああ、それが残ってたか。
    コホン、それでは頑張ってる者にご褒美だ。
    これから名前を呼ばれた者は前に出てこい」

金旋は、金玉昼、鞏志、韓浩、燈艾、徐庶、
郭淮、文欽、関興、張虎の名を呼んだ。

金 旋「金玉昼、鞏志、韓浩、徐庶には書を与える。
    これらを読んで政治を強化してくれ」

金玉昼には史記(政治+10)
鞏志には春秋左氏伝(政治+10)、
韓浩には戦国策(政治+5 造営)、
徐庶には商君書(政治+8)が与えられた。

金 旋「燈艾、郭淮、文欽、関興、張虎。
    お前たちにはこの武器を与える」

燈艾には鉄鞭(武力+2)が、(※1)
郭淮には龍淵(武力+8)が、(※2)
文欽には鉄脊蛇矛(武力+2)が、
関興には太阿(武力+6)が、
張虎には豪曹(武力+9)が与えられた。

(※1 鉄脊蛇矛は程普、鉄鞭は黄蓋が以前所持)
(※2 龍淵、太阿、豪曹は戦国時代の伝説の名剣)

   関興関興   張苞張苞

関 興「おおっ! ありがとうございます!
    張苞! お前のに負けない名剣だぞー!」
張 苞「むっ……う、羨ましくないもん」

   張虎張虎   楽淋楽淋

張 虎「なんという名剣……。これならば、
    楽淋と並んで戦っても見劣りはしないな」
楽 淋「張虎、お前……。
    剣もらった途端、顔まで変わった気がするぞ」
張 虎「そうか? 責任感の表れかな」
楽 淋「責任感でそこまで変わるのか……?」

   張虎 before張虎 after

さて、皆が喜んでいる中、一人首を傾げる者がいた。
文欽である。

    文欽文欽

文 欽「勇将程普の蛇矛、か……。
    うーむ、俺なんかが貰っていいのかね?
    ま、嬉しいのは確かだが……」
金 旋「文欽のそれは、おめでた祝いだ。
    嫁さんが現在、身重だと聞いているぞ」
文 欽「あ、はあ。確かにもう少しで産まれるッス」
金 旋「名前は決めてあるか?
    まだ決めてないのなら、鳥にちなんだ名にしろ。
    大空を羽ばたくように、大きくなるようにな」
文 欽「ウス。考えておきます」

この年、文欽の子、文鴦が生まれる。
この子が将来、勇将趙雲の再来と呼ばれるほどの
将軍に成長するのだが、それはまた別なお話。

    ☆☆☆

謁見の儀が終わり、任地が遠方の者たちは
すぐに帰り支度を整えて、小沛を後にする。

   韓当韓当   周泰周泰

韓 当「ほれ、急げ周泰!
    倭がいつ揚州へ攻め寄せるかもわからんのだ、
    ぐずぐずしている暇はないぞ!」
周 泰「お、お待ちくだされ、韓当どの。
    妻への土産くらいは買わせてくだされ」

    朱桓朱桓

朱 桓「……おや、周泰どのは恐妻家だったかな?
    揚州一の勇将が、妻への土産を買いに走る。
    いや、なかなか面白いですな」
周 泰「朱桓か……。喧嘩を売っているならば、
    帰ってから買ってやる。だが今は駄目だ」
朱 桓「いえいえ、喧嘩なぞ売ってませんが。
    しかし、私は任地が変わりますゆえ、
    帰ってからの喧嘩は無理でございますな」
韓 当「任地が変わる? それはどういうことかな」

    朱異

???「それは私からご説明しましょう」
周 泰「ん、お主は?」
朱 桓「ははは、何を言われる、周泰どの。
    我が子の朱異にございますぞ」
朱 異「はい、以前から何度も顔を合わせている
    はずですけども……」
周 泰「朱異?」
韓 当「……こんな顔だったかのう。
    まあいい、それよりその説明を聞こうか」
朱 異「はい。父と私の部隊と、黄祖どのの部隊は、
    こたび新たに我ら楚のものとなった広陵港に
    配置変えとなりました」

 広陵周辺

朱 桓「兵力は3万を曲阿より異動させて当てます。
    今後の水軍は、甘寧どのの軍と私の軍、
    2段の構えで対応することとなります」
韓 当「なんと。……兵を3万も割り振ったのでは、
    曲阿の防備は薄くなってしまうのではないか」
朱 桓「そこは両軍で連携し、敵を共同で倒す。
    そういう対応になりましょうな」
周 泰「うーむ。
    口では簡単だが、本当に上手く行くのか?」

    孫瑜孫瑜

孫 瑜「何とか上手くやるしかないのでしょうな」
韓 当「孫瑜どの」
孫 瑜「それだけの働きを期待されているのです。
    我らは、その任を全うするのみ」
韓 当「確かにそうだが……しかし孫瑜どの。
    いつの間にか、えらく渋い顔になりましたな」

   孫瑜 before孫瑜 after

孫 瑜「……そうですかな?」
韓 当「うむ。ご立派になられた」

    甘寧甘寧

甘 寧「孫瑜も色々と苦労してるからな。
    孫家のまとめ役も楽ではなかろう」
孫 瑜「いえ……この程度は苦労の内に入りません。
    孫姓を名乗る者として、出来る限りのことを
    果たしていかなければ」
朱 桓「我らも、やれることをやるのみ。
    それが、陛下への忠誠の証でありますからな」
甘 寧「そうだな。
    とにかく、楚の水軍こそ最強だってことを、
    これからも見せてやろうぜ」

揚州北部の曲阿、徐州東南の広陵の2港には、
以下の者たちが配された。

●曲阿(兵:4万5千)
 甘寧、留賛、留略、蘇飛、凌統
 韓当、朱治、蒋欽、周泰、吾粲
 孫瑜、孫匡、孫朗、孫奐、董襲
 魯粛、駱統

●広陵(兵:3万)
 朱桓、朱異、朱拠、陳表、陳武
 黄祖、黄射、孔奉、劉綜、橋麗
 張允

対する敵は、主に倭軍となるであろう。
楚水軍の者たちは、倭を討ち果たすことが
できるのだろうか?

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