221年07月
彭城にて城塞を建設するため、金旋は寿春を出た。
これは楚王金旋とその建設部隊を餌に、徐州の魏軍を
釣り出す、金玉昼の作戦である。
金旋の2万の建設部隊が出てからしばらくして、
再び寿春から部隊が出撃する。
今度出たのは、純粋な戦闘部隊である。
魏軍の部隊が金旋を狙って出てくればそれを叩き、
出てこなければそのまま彭城に完成する城塞へ
入る予定となっている。
なお、その内訳は次の通りだ。
徐庶隊(公孫朱・孔奉・廖化・金魚鉢)2万
金満隊(鞏恋・周倉・糜威・金玉昼)2万
金胡麻隊(魏光・張苞・関興・顧雍)2万
金閣寺隊(髭髯豹・髭髯鳳・向寵・劉基)2万
髭髯龍隊(髭髯虎・髭髯蛟・張昭・張常)2万
……さて、その出撃したうちの金胡麻の部隊では、
なにやら騒がしい様子だが。
魏光
張苞
魏 光「何でだー!」
張 苞「何でだー!」
関興
関 興「……急に叫んだりしてどうしたんです」
魏 光「だって! だってだよ!?
なんで私は鞏恋さんと違う部隊なんだ!?」
関 興「知りませんよ、そんなの。
部隊の編成は軍師あたりが決めてるんでしょ。
ああ、ということは、張苞のほうも……」
張 苞「なんで俺と公孫朱さんは違う部隊なんだ!?」
関 興「やっぱりな。……諦めろ。
お前と彼女は、そういう運命にあるんだよ」
張 苞「うるさい! このデキチャッタ結婚野郎!」
関 興「黙れ色ボケバカ野郎」
二 人「誰が色ボケだ!?」
関 興「あー、もう……」
さて、一方の徐庶隊では……。
廖化
公孫朱
廖 化「何でだー!」
公孫朱「……どうしたんです、大声で叫んで」
廖 化「何で私は関興どのと一緒じゃないんだ!」
公孫朱「知りませんよ」
廖 化「徐庶どのー! 関興さまと一緒にして欲しいと
何度も何度も頼んでいたでしょうがー!」
徐庶
金魚鉢
徐 庶「あのなぁ。一緒の部隊になりたいってだけで
すぐ一緒にできるほど、甘くはないんだよ。
大体、今回の編成はほぼ軍師の考えだしな」
金魚鉢「そうですよ廖化さん。編成した叔母上も、
いろいろ考えた上でこうしたのでしょうから。
わがまま言っちゃいけませんよ」
廖 化「し、しかし……」
金魚鉢「あんまりしつこいと、あのことバラしますよ」
廖 化「うっ!? そ、それは勘弁してくれい」
徐 庶「あのこと?」
廖 化「い、いや何でもない! 何でもないから!
今回の編成については文句言いません!」
金魚鉢「……だそうですよ、徐庶さん。
そういうわけですので、行きましょうか」
徐 庶「何だか良くわからんが……。
お前さんは敵にしないほうがいいようだな」
その頃の金満隊、軍師の金玉昼は……。
金満
金玉昼
金 満「姉上、今回の部隊割りについて、どうも不満が
ある方々がいるらしいですよ」
金玉昼「そう言われても、金閣寺隊・髭髯龍隊の
おヒゲさんたちは満足してるようだし」
金 満「……まあ、どこかが満足すればどこかで
不満も生まれるのが道理ではありますけど」
その頃の金閣寺隊では。
髭髯豹
髭髯鳳
髭髯豹「皇子!
今回の出陣、俺に任せておいてくれ!」
髭髯鳳「皇子!
また貴方に率いてもらえるとは、光栄の至り!」
金閣寺
金閣寺「あまり皇子皇子言わないでください……。
恥ずかしいですから……」
髭髯鳳「何を恥ずかしがっておられるのですか!?
もっと胸を張ってくださりませ、皇子!」
髭髯豹「そうだぜ皇子! もっと自信を持ってくれ!」
金閣寺「はいはい……」
同じく、髭髯龍隊では。
髭髯龍
張昭
髭髯龍「いや、光栄の至りです! 貴方様のような、
見事な白髭を持った方と一緒になれるとは!
張 昭「そうかのう。
この程度の髭、他にもいそうなものじゃが」
髭髯虎
髭髯蛟
髭髯虎「いやいや張昭どの。
これほど綺麗な白髭はそうはおりませんぞ」
髭髯蛟「そうそう! 俺は以前は魏にいたんだが、
こうも見事な白髭を持った人物はいなかった。
アンタこそ、白髭ナンバーワンだぜ」
張 昭「まあ、そう褒められては悪い気はせんがの」
髭髯蛟「しかし、こうして義兄者たちと一緒に戦える
日が来るとは、正直思っていなかったぜ」
髭髯虎「はっはっは、俺もこうして義兄弟全員が
揃うとは、夢にも思わなかったぞ」
以前から楚に仕えていた髭髯豹、髭髯鳳、髭髯龍。
そして滅んだ呉からの投降組である髭髯虎。
そして先頃、魏から登用された髭髯蛟。
2つの部隊に、最強の髭髯軍団が集結していた。
金満
金玉昼
金玉昼「それぞれの部隊が効率よく動けるように、
最善だと思う兵法の組み合わせにしたのにゃ。
なのに、それに文句を言われちゃ困りまひる」
金 満「そ、そうですよねー。ははは」
金玉昼「……満〜? もしかして、アンタもこの
組み合わせが気に入らない一人なのかにゃ?」
金 満「い、いえっ、そのようなことはないですっ!
年上の女の人が多くて弄られて困っている……
なんてことは全くありません! 本当です!」
鞏恋
糜威
鞏 恋「ふーん、困ってるんだ」
糜 威「それって私も入ってるんですかね?」
金 満「うわあああ!?」
☆☆☆
7月下旬。金旋の建設部隊が寿春を出たとの報が、
小沛を守る夏侯淵へともたらされた。
夏侯淵
費耀
夏侯淵「むう。金旋自ら、彭城に城塞を作る気か」
費 耀「これを見逃すと、この小沛により近い場所に
敵の拠点が出来てしまうことになります。
ここは撃って出て、追い払うべきでしょう」
夏侯淵「ふむ。張哈、程立どの、貴殿らはどう見る」
張哈
程立
張 哈「費耀の申す通り、見逃すことはできません。
ただ、楚王金旋、彼自らが出てきていることは、
何やら別な意図は感じられますが……」
程 立「おそらく、これは囮でしょうな。
わざと自らの身を晒して、それに釣られた我らを
誘き出そうとしている。そう見るべきでしょう」
夏侯淵「罠か。ふむ、言われてみればそうも見える。
では、控えたほうがいいのか?」
程 立「そうですな。迎え撃つための部隊の準備は、
すでにできておると見るべきでしょうな。
とはいえ、敵施設の建設を見逃してしまっては、
これまた不利となるは必定ではありますが」
夏侯淵「むう……。
どちらにしても、状況の悪さは変わらぬか」
議論が紛糾する中、新たにその場にやってきた者が。
先頃、こちらに異動になっていた武統である。
武統
武 統「失礼致します」
夏侯淵「武統か。どうした?」
武 統「は……。寿春に放っておりました密偵から
新たな一報が届きました」
夏侯淵「新たな一報?」
武 統「金旋が建設部隊と共に出撃したその後、
新たに5つの部隊、総勢10万の軍が北へ向け
出立したとのことです」
張 哈「10万……!?」
費 耀「なんという大軍か」
夏侯淵「うむむ。こいつは参った。
それほどの大軍が後ろに控えておったのでは、
金旋を叩くどころではなかろうな」
程 立「いや、夏侯淵どの……。
これは逆に面白いことになるやもしれませんぞ」
夏侯淵「面白い? どういうことだ、程立どの」
程 立「金旋が2万を率い、新たに10万の軍が出た。
おそらく寿春は今、ほとんど空の状態でしょう」
夏侯淵「空の寿春を狙えというのか?
その前に10万の部隊が行く手を阻んで来るぞ。
寿春に届く前に、全て殲滅されてしまうわ」
程 立「いえいえ、そうではありません。
我らはその10万の軍を引きつけてさえおれば、
それで済むのです」
夏侯淵「引きつける……?」
武 統「そ、そうか! その手がありましたか!」
程 立「おお、武統どのは気付いたようじゃな。
では、後の説明は武統どのに任せるとしよう」
武 統「は、はい。では、失礼しまして」
程立に促された武統は、地図を指差しながら、
程立の意図するであろう策を皆に説明する。
武 統「つまり、こういうことですね。
まず小沛にいる我らが、寿春からの10万の軍と
戦い、その注意を引きつけておく……。
その間、こちらに寿春を突いてもらおう、と」
そう言って指差したのは、汝南。
費 耀「……そうか!
汝南の味方に、留守の寿春を襲わせれば、
出てきた奴らは退路を絶たれることになる!」
張 哈「なるほど。汝南には夏侯惇どのがいる。
また、兵力も4万超と余裕がある……」
夏侯淵「なんという慧眼! 凄いぞ程立どの!
不利な状況をひっくり返す、大逆転の策だな!」
程 立「いやいや、喜ぶのは早いでしょうな。
この策は、我らがどれだけ敵軍をひきつけるか。
それにかかってくるのですぞ」
夏侯淵「フフフ、その点は心配はいらぬ。
必ずや敵軍を釣り上げてみせようぞ……」
決断は早かった。
夏侯淵は汝南の夏侯惇に書状を送ると、すぐに
小沛の3万の兵を率い、張哈、程立、費耀、
武統といった将を伴い、南へと向かった。
☆☆☆
金 旋「出てきたか。よーし建設中止!
後は他の部隊に任せて、撤退するぞ!」
夏侯淵隊が出てきたのを見て、金旋の建設部隊は
すぐに機材をまとめて撤退を開始した。
撤退を始めた頃にはもう敵は目の前に迫っていたが、
脱兎のごとく逃げ出して難を逃れた。
撤退する彼らの脇を味方の10万の軍が進み、
迫る夏侯淵隊と交戦を開始する。
金旋
下町娘
金 旋「始まったか」
下町娘「後は、皆に頑張ってもらうだけですね」
金 旋「そうだな。俺らの役目は終わりだ。
さて、寿春に帰って温かい飯を食うとしようか」
金旋は他の味方に戦闘を任せ、寿春へと戻っていく。
だがその道中で、彼のもとに驚くべき情報が届いた。
李 豊「大変です! 汝南より夏侯惇隊3万が出撃、
現在、寿春へ向けて進軍中との由!」
金 旋「な、なにーっ!?」
金 旋「汝南から……! すっかり存在を忘れてたー!
寿春は今はもぬけの殻だ、早く戻らないと!」
下町娘「で、でも、私たちが戻っても、城を守る兵は
2万にしかならないんですよ!?
主な武官は皆、出払っちゃってますし」
金 旋「じゃ、じゃあ玉に急使だ!
汝南の軍が寿春を狙ってるから、救援として
一緒に行った何部隊かを回してくれって!
そ、それでなんとかするしかない」
金旋は慌てて寿春へ戻っていった。
だが、しばらく待っても金玉昼からは何の連絡もなく、
戦っている部隊が戻ってくるという報告もない。
金 旋「ど、どうなってるんだー!?」
寿春、そして金旋はどうなってしまうのか。
そうこうしているうちに、夏侯惇隊がどんどん城へ
迫ってきていたのだった……。
☆☆☆
金旋の急使は、金玉昼のもとにたどり着いてはいた。
だが、当の金玉昼が、何も返答しなかったのだ。
金玉昼「まず目の前の夏侯淵隊を打ち破りまひる」
金 満「いいんですか、姉上。
父上に返事くらいは出したほうがいいのでは?」
金玉昼「どうせすぐ知ることになるんだし。
それより目の前の敵に集中するのにゃ」
金 満「分かりました、姉上。
他部隊と連携し、敵軍の守備陣形を削り取る!」
楚軍10万と魏軍3万。
通常ならば多勢に無勢、魏軍に勝ち目はないが……。
夏侯淵
夏侯淵「最初の一撃を目の前の部隊に叩きつけろ!
包囲される前に、出鼻をくじくのだ!」
寡兵を補おうと、まず目の前の金満隊を急襲する。
急襲を得意とする夏侯淵らしい、神速の用兵だ。
鞏恋
鞏 恋「……やらせない」
金満隊の先鋒を務める鞏恋は、その真っ向に立ち、
襲い掛かる夏侯淵隊を受け止めようとする。
養由基の弓を構え、矢を次々に速射する。
魏軍の先頭の兵がその矢を受けて倒れると、
武器をバットに持ち替えて馬を駆けさせた。
鞏 恋「やああっ!」
そのまま、魏兵を打ち倒していく。
一人で夏侯淵隊の勢いを完全に失わせた。
夏侯淵「ええい、女一人にやられるとは!」
鞏 恋「久しぶり。再戦を希望するわ」
夏侯淵「再戦? ああ、一騎打ちのことか……。
なんだ、また負けたいというのか」
鞏 恋「今度は負けない」
7年前、鞏恋は夏侯淵と一騎打ちをして敗れた。
(※金旋伝、第五十七章を参照)
その復讐戦を挑みたい、ということらしい。
夏侯淵「よかろう、望むところだ!」
鞏 恋「いくよ!」
鞏恋:武力95 VS 夏侯淵:武力93
夏侯淵「どりゃあっ!」
鞏 恋「えいやっ!」
ガキン、と夏侯淵の槍と鞏恋のバットが交差する。
夏侯淵「むっ、得物を変えたのか?
以前の一騎打ちの時は槍であっただろう」
鞏 恋「こっちの方が戦いやすい! はっ!」
夏侯淵「なるほどな! 片手で持てる鈍器ならば、
速さで負けることもなく、打撃の力でも落ちぬ。
だが刃がないことで不利ともなる! でえい!」
鞏 恋「そこは、腕で補う!」
べきべきっ!
鞏恋の一撃は、夏侯淵が構えた槍の柄を折る。
続けて頭を狙って、バットを水平に振った。
夏侯淵「なんのっ!」
鞏 恋「なっ……!?」
夏侯淵は頭に向かってきたそのバットの先を、
自分の腕で跳ね上げて頭に当たるのを防いだ。
腕は痛むが、致命傷を受けるのは避けられた。
夏侯淵は剣を抜きながら、不敵な笑みを見せる。
夏侯淵「刃のある武器ならこうはできないからな!
武器のせいで、わしを倒す好機を逃したな」
鞏 恋「くっ! はあっ!」
夏侯淵「むっ!?」
鞏恋は夏侯淵に向けてバットを放り投げた。
夏侯淵は一瞬驚いたが、なんとかそれをかわす。
夏侯淵「逆上して得物を投げつけるとはな!
だが武器を捨ててしまって勝てると……」
鞏 恋「私にはこれがあるっ!」
夏侯淵「なっ……弓!?」
鞏恋は弓に三本の矢を同時につがえ、放った。
まさかこの瞬間に弓を使われるとは思わなかったか、
夏侯淵の対応が遅れる。
1本は剣で弾いたが、2本は腕と腹に突き刺さった。
夏侯淵「ゆ、油断した……っ!
まさか、このような手でくるとは思わなんだ」
鞏 恋「この勝負は私の勝ちだね」
夏侯淵「仕方ない。確かにこの勝負はお前の勝ちだ。
だが、我らは負けるわけにはいかん……!」
鞏 恋「負け惜しみ?」
夏侯淵「負け惜しみではない……。
出番だ、張哈!」
鞏 恋「なっ!?」
張哈
張 哈「はっ! お任せあれ、夏侯将軍!」
鞏 恋「連戦で来るなんて……!」
張 哈「このような形で勝負するのは不本意だが、
この戦いに勝つには仕方ないのだ! でやっ!」
鞏恋:武力95(連戦) VS 張哈:武力93
曹操より貰い受けた眉尖刀(武力+2)を振るい、
張哈が襲い掛かってくる。
対する鞏恋は、夏侯淵との戦いで得物を失い、
体力も消耗した状態だった。
張 哈「トアーッ!」
鞏 恋「ぐっ……!」
張哈のひと薙ぎが、鞏恋の胴を捉えた。
ごく浅くではあるが、傷を負ってしまう。
鞏 恋「勝負、預けたっ!」
鞏恋は敵に背を向けて逃げるしかなかった。
張哈も深くは追わなかった。
この勝負は、張哈の勝利となった……。
張 哈「フフ、次は差しで勝負したいものだな」
鞏 恋「くっ、いずれ決着をつける……!」
夏侯淵は負けてしまったが、その次の張哈が勝って
挽回したので、夏侯淵隊は士気が向上する。
だが、その士気向上のすぐ後、横から怒涛のように
金胡麻の部隊が突っ込んできた。
魏光
魏 光「鞏恋さんに何を怪我負わせてんじゃー!?
おのれらー! 連弩ぶちかませーっ!」
魏光、怒りの連弩。3千の兵を打ち減らした。
費耀
費 耀「ぐわーっ!」
夏侯淵「ひ、費耀!?」
費耀はその矢を何本も浴び、命を落としかける。
なんとか一命は拾ったが、重傷となってしまった。
張苞
張 苞「すげえ……。これが連弩か!」
(張苞、連弩習得)
魏 光「見たか!
これが鞏恋さんに捧げる、愛の連弩だ!」
張 苞「いや、愛とか言うのは流石にどうなんでしょ」
魏 光「甘いぞ張苞!
自分の愛をこうしてはっきり公言すればこそ、
彼女にアッピールできるというものなのだ!」
張 苞「そ、そうなのか、関興!?」
関興
関 興「俺に聞くな」
そうこうしてるうちにも戦況は動いている。
夏侯淵隊に次々襲い掛かる楚軍の部隊。
公孫朱
公孫朱「突進! いけっ!」
徐庶隊の公孫朱が突進を敢行して4千近くを減らす。
糜威
廖化
糜 威「こちらも突進! 突っ込め!」
廖 化「女たちばかり活躍させるな! 行くぞ!」
また、金満隊の糜威が突進、2千5百の兵を減らし、
さらに徐庶隊の廖化が突破、2千を倒した。
夏侯淵隊の兵士、現在1万。
夏侯淵「3万の兵がこうも減らされてしまうとは!」
張 哈「救援として曹休どのがやってくるようです!
それまで辛抱して守り抜きましょう」
小沛から曹休が1万を率い出陣してきたようだ。
だが、楚軍の攻勢はさらに勢いを増す。
髭髯豹
髭髯鳳
髭髯豹「髭髯軍団、3番隊隊長、髭髯豹だ!」
髭髯鳳「同じく4番隊隊長、髭髯鳳! 参る!」
金閣寺隊、髭髯豹・髭髯鳳の突進。
髭髯龍
髭髯蛟
髭髯龍「こちらからも行くぞ!
髭髯2番隊、髭髯龍の突進だ!」
髭髯蛟「5番隊、髭髯蛟も行くぜーっ!!」
さらに髭髯龍隊、髭髯龍・髭髯蛟の突進。
両翼から髭のおじさんたちの突進が決まり、
夏侯淵隊の残る1万の兵も一気に殲滅された。
髭髯虎
張昭
髭髯虎「はーっはっは! 見たか!
これが最強の髭髯軍団の力なのだ!」
張 昭「お主は何もしておらんじゃろうが」
髭髯虎「うぐっ……!
こ、これは、トドメを私が刺そうと思ったら、
もう部隊がやられてしまったからで……」
張 昭「口だけなら何とでも言えるのう」
髭髯虎「て、手厳しい……」
一方、殲滅された夏侯淵隊。
将たちはなんとか小沛へ逃れようとしていたが。
夏侯淵「もはやこれまでか……」
張 哈「将軍、諦めなさるなっ! 脱出を!」
夏侯淵「ダメだ、傷の痛みが酷くてな。
お前だけならば、何とか逃げられるだろう。
早く行け、張哈」
張 哈「将軍……!」
夏侯淵「心配はいらん。
傷が癒えたら牢を破ってすぐ脱出してくる」
夏侯淵、費耀が楚軍に捕らえられた。
夏侯淵隊を破った楚軍の5部隊は休む間もなく、
近づいてくる曹休隊へと向かっていく。
寿春に戻ろうとする気配は、全くなかった。
金玉昼
金玉昼「この機会に、小沛の兵を削れるだけ削るにゃ」
小沛からは曹休隊に続いて、王粛隊・周魴隊、
1万ずつの部隊がやってくる。
金玉昼は、それを全て蹴散らすつもりだった。
☆☆☆
さてその頃、寿春では……。
金旋
下町娘
金 旋「アワワワワワ……」
下町娘「金旋さまー! アワアワ言ってないで、
どうにかしてくださいよ!」
夏侯惇の部隊、3万が寿春に迫ってくる。
対する寿春は、金旋が連れ帰った2万のみ。
まともな武官がいない中で、どう戦うのか?
金 旋「どうにかってどうすりゃいいんだー!?」
下町娘「け、計略で退却させるとか……」
金 旋「お、おおう。そうだった!
武官はいないが、頭がいい奴らは残ってる!
よし、庖統と馬良を呼ぶんだ!」
庖統
馬良
庖 統「計略など、かける必要はありませんぞ?」
馬 良「魏軍が汝南から攻めてくることは、はなから
織り込み済みですからね」
金 旋「なにっ? どういうことだ」
庖 統「軍師が考えた今回の策略、これは実は、
二段構えの策だったのです。
彭城の城塞建設を餌に、小沛の軍を釣る策……
そう思わせて、実の狙いは別にあったのです」
金 旋「別っていうと」
馬 良「もちろん小沛の軍を削る目的もありますが、
それ以上に汝南の魏軍が残ることが厄介です。
そこで、空の寿春を餌に汝南から攻めさせる。
それがこの策の真の目的でした」
金 旋「そ、そうなのか。なーんだ。
それじゃ、玉たちも戻ってくるんだな」
庖 統「いえ、戻りません」
金 旋「な、なに?」
庖 統「正確には戻ってきますが、目の前に迫る敵を
受け止めるには間に合わないでしょうな」
金 旋「じゃ何か、俺がそれを受け止めるのか!?
俺の戦下手を知らないわけはないだろう!
2万の兵くらいはすぐにやられてしまうぞ!」
下町娘「偉そうに言うことじゃないですけど」
馬 良「その点はご心配には及びません。
今回は助っ人がおります」
金 旋「助っ人?」
李厳
李豊
李 厳「李厳、廬江よりまかりこしました」
李 豊「閣下、父にお任せくださいませ」
金 旋「おお李厳! そうか、お前がいたのか!」
庖 統「李厳どのは廬江より、駐屯していた兵4万を
連れてくる役目を負っておりました」
金 旋「なるほど、これで兵は6万。
うむ、これなら勝てるな。任せたぞ」
庖 統「何をおっしゃられますやら」
金 旋「は?」
庖 統「李厳どのが率いる部隊だけでは、夏侯惇隊を
止めることはできないでしょう。
敵軍を受け止める役目は、閣下、貴方にも
担ってもらうことになっております」
金 旋「だ、誰が決めたんだ、そんなこと」
庖 統「軍師ですが、何か」
金 旋「ぐう、玉め〜。どこまで君主をこき使う気だ」
庖 統「私もあまり閣下を前面に出さない方がいいと、
進言しましたが、軍師が首を縦に振りませんで」
金 旋「……あれか。やっぱ人を疑うことを考えろ、
と暗に言ってるのかな」
庖 統「は?」
金 旋「いや、何でもない。
……ほれ、どうせ段取りは出来てるんだろう?
とっとと出陣するぞ!」
庖 統「はっ」
下町娘「いってらっしゃーい」
金 旋「何を言ってるか! ここまで来たらもう
町娘ちゃんにも着いてきてもらうぞ!」
下町娘「ええーっ!?」
8月上旬。
寿春より金旋・李厳の隊が出撃した。
金旋隊は諸葛瑾・馬良・下町娘・姜勝が付き、
兵3万、方円陣を採用した防御型陣形の部隊。
李厳隊は馮習・庖統・諸葛恪・卞質が付き、
兵2万、錐行陣を採用した攻撃型陣形の部隊。
夏侯惇隊を金旋隊が受け止め、横から李厳隊が
チクチクと攻撃していこうという戦法だ。
金 旋「フッ、そう上手くいくと思うな!」
下町娘「ちょ、そんな不安になっちゃうようなことを
言わないでくださいよう!」
寿春の西の地点で、楚軍は夏侯惇隊を迎え撃つ。
夏侯惇
李通
夏侯惇「……どういうことだ。
寿春の楚軍は兵がいないのではなかったか!
5万もいるとは、話が違うぞ!」
李通娘「後方都市から連れてきたのでしょう。
ですが、それを率いているのは金旋です」
夏侯惇「勝ち目はそこにしかないか。
ええい、こうなれば一気に突き崩すぞっ!」
夏侯惇隊を防ぎきることはできるのか!?
頑張れ金旋、負けるな金旋。
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