○ 第九十一章 「最強は俺だ!」 ○ 
221年07月

7月中旬、武関。
于禁隊3万は馬騰隊4万を迎撃する。

 馬騰VS于禁

その戦闘中、馬騰隊の中に庖徳を見つけ、
斬りかかっていった楽淋。

だが、対する庖徳はそれをまともには受けず、
受け流して距離を取った。

   楽淋楽淋   庖徳庖徳

楽 淋「どうした庖徳! 怖気づいたか!」
庖 徳「愚かな。我らの目的は武関を落とすが第一。
    このような一騎打ち、何の益にもならぬ」
楽 淋「確かに井蘭なんか持ってくりゃそうだろうな。
    だが男なら、挑まれた勝負は断らんだろう!」
庖 徳「ふっ、青いな。そのような青臭いことを
    言っていては、将は務まらんぞ」
楽 淋「なんだと!? すかしやがって!
    本当は怖いんだろう! 違うか!」
庖 徳「何とでも言うがいい……。
    弓騎隊! この隙に飛射を見舞ってやれ!」
涼 兵「ははっ!」

  びゅんびゅん ぐさぐさ

楚 兵「ぎゃー! 楽淋さまー!」
楽 淋「ああっ!? こ、こんの野郎〜っ!」
庖 徳「ふっ、これが戦というものだ。
    覚えておくがいい、青二才!」

庖徳は楽淋に構わず、飛射で于禁隊を攻撃。
于禁隊はこれだけで3千の兵を失った。

   于禁于禁   牛金牛金

于 禁「やってくれたな、庖徳……。
    だがその技、覚えたぞ!
牛 金「おおー。すごいぜ大将!」

 (于禁が飛射を習得した)

一方、楽淋のほうは、自分を無視されたことで
庖徳に対する怒りを募らせていた。

楽 淋「てめえ……。それでも男か!
    キ○タマついてんのか、ああん!?」
庖 徳「ふっ、そのような言葉で挑発されるほど、
    この庖徳は甘くはない……!」
楽 淋「こ、このスカシ野郎! ハゲチョビン!
    インキン! 水虫! うおのめ!」
庖 徳「やれやれ、なんという低次元な挑発か。
    子供の喧嘩じゃあるまいし」

涼 兵「なんて冷静さだ……流石は庖徳さま!
    涼州一の知性派武将なだけはあるぜ!
    そこにしびれるあこがれるゥ!」
楚 兵「楽淋さまぁ……。
    すごく、すっごくみっともないです〜」

楽 淋「馬鹿! 阿呆! 間抜け! ウンコたれ!
    オタンコナス! ノータリン! 屁こき太郎!
    えーと、えーと、それから……」
庖 徳「どうした、ネタ切れか。それで終わりか」
楽 淋「や、やろう……。こ、この、この……。
    このデベソ野郎!

  ピキィィィィィン

庖 徳「……今、何と言った?」
楽 淋「へ? デベソ野郎って言ったんだが……」
庖 徳「デベソ……。デベソか。
    デ ベ ソ と も う し た か

楽 淋「……ははーん。アンタ、本当にデベソか」
庖 徳「貴様は、言ってはならないことを言った。
    覚悟はできておるのだろうな?」
楽 淋「へっ、最初からそうやってればいいんだよ!
    いくぜ庖徳! 勝負だっ!」
庖 徳「私を怒らせたこと、後悔させてやる!」

楽淋:武力90 VS 庖徳:武力94

庖徳が渾身の力を籠めて長刀を払う。
楽淋も負けじと七星宝刀を振るう。

武力90以上の将同士の対決は、見る者を圧倒した。

    張虎張虎

張 虎「あいつら、名前の見辛さも半端じゃないが(※)、
    その強さも半端じゃないぜ!」

(※ このリプレイでは当て字で表記しているが、
 楽[糸林]、[广龍]徳、共に第二水準漢字の入った
 名前になっているため、PCなどでは見辛い)

   馬騰馬騰   楊阜楊阜

馬 騰「頑張れ庖徳! 負けるな令明!
    行けっ、そこだ、やれっ!」
楊 阜「涼公、もう少し総大将らしくしてください。
    それでは喧嘩好きなただのおじさんです」
馬 騰「何を言う、ここで応援せずにどうするのだ!
    よし、そこでぶちかませーっ!」
楊 阜「……はぁ」

両軍の将兵が見守る中、二人の勝負は次第に
庖徳のほうが優勢になっていった。

元々、武力差では庖徳のほうが有利なのだ。
このような状況になるのも、不思議はない。

庖 徳「はっ、どうしたどうした!
    大口を叩いた割に押されているではないか!」
楽 淋「う、うるせぇ! この程度、すぐ巻き返す!」

口ではそう言ってはいるものの、形勢はどんどん
悪くなるばかりで、挽回することはできない。
ホウ徳の攻撃に押され、次第に体力を削られていく。

庖 徳「そらそらそらっ!」
楽 淋「ぐっ……! このままではっ……」
庖 徳「隙が大きいぞ! でえいっ!」
楽 淋「ぐあっ……!」
庖 徳「フハハ、結局は口先だけだったな!
    さあ、デベソ野郎と言った報いを受けるがいい!
    このガクガクチ○コ野郎!

  ズギュュュュュュュュン

楽 淋「言ったな……」
庖 徳「む?」
楽 淋「言ったな……。俺の昔のあだ名……。
    子供の頃、苛められていた時代のあだ名を」
庖 徳「むむ、これはどうしたことだ。
    先ほどまでの奴とは、全然様子が違うが……」
楽 淋「貴様だけは……。
    たとえ、この命が燃え尽きたとしても……。
    貴様だけは許さん!
庖 徳「ふん……。随分な怒りようだな。
    だが、怒っているのはわしとて同じことだ」
楽 淋「……うるせえ、このデベソ野郎」
庖 徳「まだ言うか。
    だが、お前の体力はほとんど尽きているだろう。
    よってこの勝負、わしの勝ちだ!」
楽 淋「……何を勘違いしてやがる。
    俺はまだ、奥の手を出しちゃいないぜ!」
庖 徳「はっ、何を言っている。
    たとえどんなすごい奥の手を持っていようとも、
    もはやたった一撃で倒れる状態ではないか!」

  楽淋スーパーモード
     しゃきぃぃぃぃぃん!

楽 淋うおおおおおおおお!!
    楽家奥義! スーパーモードだあああっ!!」
庖 徳「むう、スーパーモードだと……?」

怒りの力で、スーパーモードを発動させた楽淋。
その様子を見て、勝負を見守っていた于禁が
顔色を変えた。

   于禁于禁   牛金牛金

于 禁「あやつ、スーパーモードを発動させおった!
    使わぬよう、釘を刺しておいたのに……」
牛 金「負けそうだったんだし、仕方ないんでは?」
于 禁「そのまま負けたほうが良かったかもしれんぞ。
    ……早く、やつを止めねばっ!」
牛 金「ああっ、大将!?」

スーパーモードで全身が金色に光っている楽淋を、
庖徳はいぶかしげに睨み返していた。

庖 徳「珍妙な技を使う奴だ……。
    だが、そのようなこけおどしでビビると思うな」
楽 淋「いいから来い、このデベソ野郎!
    あんたの怒りと俺の怒り、どっちが強えのか。
    はっきりと見せ付けてやんよ!」
庖 徳「舐めるなよ若造……!
    この庖徳が負けるわけがなかろうっ!
    望みとあらば、ぶった切ってくれようぞ!」
楽 淋「来いや!」

庖徳の長刀、楽淋の七星宝刀が煌めく。

……この時、庖徳は勝利を確信した。

たった一太刀浴びせれば、楽淋の体力は尽きる。
それを見越し、彼は神速の一撃を放ったのである。

だが、楽淋はそれを七星宝刀で受け止めた。

庖 徳「なにっ!?」
楽 淋「残りの体力がどうとか関係ねぇ!
    お前のその一撃ごと、粉砕してやる!
      うおおおおおっ!

  ガギィィィィン

その一薙ぎで、庖徳の長刀は粉砕され、
持っていた庖徳は吹っ飛ばされてしまった。

地面に大の字になって倒れている庖徳。
楽淋が近寄ってきても、起き上がる様子はない。
ただ信じられないという表情で、空を見上げていた。

庖 徳「なん……だ……と……?
    長刀ごと、わしを吹っ飛ばしただと……」
楽 淋「み、見たか、こいつがスーパーモードの力だ。
    楽家に伝わる、究極の奥義を見たか……!
    さあ! これで終わりにしてやるぜ!」
庖 徳「くっ……、身体が動かぬ……」
楽 淋「死ねや!」

楽淋の剣が振り上げられる。
……だが、それは振り下ろされることはなかった。

    于禁于禁

于 禁「やめよ、楽淋」
楽 淋「な……。離せ!」

振り上げた楽淋の腕を、于禁が掴んでいた。

于 禁「もはや庖徳は立ち上がることすらできん。
    この勝負は、お前の勝ちだ、楽淋」
楽 淋「は……。そうか、勝ったか。
    へへ、そうか……俺は勝ったのか」

楽淋はズルズルと倒れこんだ。
体力の限界はすでに越していたのだろう。
地面に倒れこんだまま、気を失ってしまった。

于 禁「……今回は確かに勝った。
    だが、次はどうなるかはわからんぞ」
楚 兵「御大将……?」
于 禁「なんでもない。
    それより、庖徳を護送車に放り込んでおけ」
楚 兵「ははっ」
于 禁「さあ、まだ馬騰隊を倒したわけではないぞ。
    全軍、攻撃を続けよ!」
楚 兵「おーっ!」

楽淋の勝利で于禁隊は士気が上がった。
一方、馬騰隊は庖徳が捕らえられたことで
一気に兵の士気が低下してしまった。

   馬騰馬騰   楊阜楊阜

馬 騰「庖徳がやられるとは……!」
楊 阜「勝負というのは時の運。
    こういう結果も、十分にありうることです」
馬 騰「くそっ、武関は目の前だというのに!
    それよりも、韓徳隊は何をやっておるのだ!?
    行ったり来たりを繰り返すだけではないか!」

 韓徳ウロウロ

楊 阜「どうやら敵の偽報にかかっているようです。
    偽の命令を何度も掴ませられているのでしょう」
馬 騰「早く来いと伝えよ!」
楊 阜「は、伝令を送っておきます。
    その命令でちゃんと来てくれれば良いですな」
馬 騰「ああ? 楊阜、貴様は軍師だろう!
    お前は、韓徳を監督する立場ではないのか!
    それが何だ、その言い草はっ!」
楊 阜「……はぁ、申し訳ありません」
涼 兵「涼公!
    敵将張虎と夏侯徳、突破を仕掛けてきました!」
馬 騰「突っ込んでくるのなら迎え撃て!
    それくらい言われなくともやれぬのか!」
涼 兵「は、ははっ! 申し訳ありません!」
楊 阜「……(負けるな、これは)」

張虎と夏侯徳の突破により、3千余りの兵を失う。
そこからさらに、牛金が突進してきた。

   牛金牛金   張虎張虎


牛 金ずももももー!
張 虎「おおっ、あれが牛金どのの突進か!
    よーし、しっかりと覚えたぞ!」

(※張虎・夏侯徳、突進を習得)

涼 兵「牛金の突進で、さらに3千がやられました!」
馬 騰「全く情けない! 馬が牛に負けてどうする!」
涼 兵「ああ、今度は武関から郭淮隊が……」

馬騰隊が弱ってきたことを見てとったのか、
武関から郭淮が2万の兵を率いて出撃してきた。
(その少し前に、宛から増援の兵が到着している)

だが、涼軍にも援軍が到着。
馬騰の三男の馬鉄が、潼関より1万5千の兵を率い
父のもとへやってきたのだ。

 両軍増援

馬 騰「おお、馬鉄が来たか!
    よーし、一気に敵を武関に押し戻すのだ!」
張 虎「やらせるかー! 突破だ!」
馬 騰「ふん、そのようなヘロヘロ突破が効くか!」
張 虎「な、なにー!?」

張虎・夏侯徳の突破を防いだ馬騰。
いくら兵が半減し、士気が低下しているとはいえ、
そこは流石に涼軍の総大将である。
楚軍優勢ではあるが、戦いの趨勢はまだ決しない。

後から参戦した馬鉄隊、王甫隊も踏ん張っており、
まだウロウロしている韓徳隊や、後続で来る
馬秋隊、戴陵隊などが合流できれば、いくらでも
ひっくり返すことは出来る……そう思えたが。

 ワーワー

馬 騰「どうした、騒がしいぞ!
    それに陣形も乱れている、どういうことだ!?」
涼 兵「敵の撹乱と思われます!
    士気が低下し、陣形も崩れてしまってます!」
馬 騰「な、なにー!?」

    司馬懿司馬懿

司馬懿「さて、これで勝負は決したようなものですね。
    後の始末は郭淮どの、于禁どのにお任せして、
    私は許昌に戻るとしましょうか……」

無陣状態となった馬騰隊に攻撃が集中する。

   郭淮郭淮   満寵満寵

郭 淮「ここが勝負の分かれ目。各員、奮闘せよ!」
満 寵「おお、郭淮どの、お見事!
    奮闘はあのようにやれば良いのだな!」

郭淮隊の奮闘。(それにより満寵が奮闘を習得)
そして再び牛金が突進をぶちかまし。
そしてトドメに……。

涼 兵「うわー! 落とし穴だー!」
馬 騰「おおおお!? どうなっておるのだー!?」

    劉曄劉曄

劉 曄「それ、このまま埋め立ててしまえ!」

郭淮隊の劉曄の仕掛けた穴罠に嵌ってしまい、
馬騰隊はほぼ壊滅状態に陥った。

馬 騰「お、おのれ……撤退するっ!」

後続部隊が来るまで待てず、馬騰隊は敗れた。
馬騰は撤退、娘の馬雲緑と軍師楊阜が捕らえられる
という敗北を喫してしまったのだった。

楚 兵「馬騰隊を殲滅しました!」
于 禁「よし、次の目標を向かってくる韓徳隊とする!
    よいか、馬騰を倒したとて油断するなよ!
    まだまだ他の涼軍は残っているのだからな!」
楚 兵「はっ!」

馬騰隊は倒したが、まだ他の涼軍は残っている。
于禁、郭淮らが安心して休息を取れるのは、
まだ先のことになりそうだった。

    ☆☆☆

さて、武関の楚軍が涼軍と激しく戦っている時。
魏興城塞の魏延らは何をやっていたのか。

魏興城塞へ攻め寄せていた呂鶴隊は
魏延隊・金目鯛隊・呉懿隊の活躍により粉砕した。
だが彼らが休む間もなく、隣りの商県を行軍中の
涼軍の部隊がいるという情報が入った。

 魏興

   金目鯛金目鯛  呉懿呉懿

金目鯛「旗に馬の文字、兵3万の部隊か。
    これって、やっぱりアレだよなー」
呉 懿「旗飾りに錦がついているとのこと。
    そしてそれは西の天水方面からやってきた。
    ……となれば、答えはひとつだけでしょう」

    魏延魏延

魏 延「馬超孟起。奴が現れたか」

以上、各隊の手旗信号によるやりとりを翻訳しました。

……さて、その馬超。
西の天水で炎軍と睨み合っていたのではないか?
北上を狙う炎軍を放っておいて、楚軍と戦うことに
なってしまうが、それで良かったのだろうか。

   馬超馬超   馬忠馬忠

馬 超「仕方が無いだろう。父上の頼みなんだ」
馬 忠「ですが……。蜀炎軍は饗嶺が敗れた後も、
    着々と軍備を整えつつあるのですぞ。
    今、天水の兵を割いてしまっては……」
馬 超「くどいぞ、馬忠。陳倉の馬岱ならば、
    炎が攻めてこようとも当面は凌げるはずだ」
馬 忠「しかし」

馬超は、渋い顔のまま馬忠に告げる。

馬 超「武関を落としさえすれば、すぐ戻れる。
    今は前だけを向いていろ、いいな」
馬 忠「は……」
馬 超「涼州馬一族のお前なら分かるだろう。
    一族の長である父上の命は、絶対なのだ。
    たとえそれが、意に沿わぬ命であってもな」
馬 忠「いや、私は蜀出身なんですけど」
馬 超「こうなれば速やかに武関を落とさねばならん。
    お前の馬一族の力、見せてもらうぞ」
馬 忠「いや、ですから、一族関係ない……」

こんな様子で、馬超隊3万は進んでいた。

   魏延魏延   呉懿呉懿

魏 延「さて、どうするべきか……」
呉 懿「どうやら彼らは武関へ向かう様子。
    我らの第一目的の『魏興城塞を守る』という
    意味では、戦う必要はない、と言えます」

手旗信号だけで会議をするのも何なので、
一時、集合して協議する楚軍の面々。

   金目鯛金目鯛   鞏志鞏志

金目鯛「だが、武関は激戦が続いているみたいだ。
    ここであの部隊と戦い、兵を減らすことは
    武関の味方を助けることになるだろ」
鞏 志「確かにそうですが……。
    我らの兵も、先ほどまでの戦いで疲れています。
    苦しい戦いになってしまいますが」
呉 懿「そうですな。
    特に金目鯛どのの隊は、戦える兵が1万を
    割り込んでいる状態ではありませんか」
金目鯛「……確かにそうだが、一度魏興に戻っては
    奴らを逃してしまうことになるぜ」
呉 懿「ですが、その相手はあの馬超なのです。
    一筋縄では行かない相手ですぞ」

第一目的は魏興を守ること。
ならば、ここで兵を減らすことは避けておきたい。

だが、武関の味方のことを考えるのならば、
できれば武関へ向かうのは阻止したい。

魏 延「ううむ。馬謖はどう思う?
    おや、馬謖はどこへ行ったんだ」
鞏 志「彼なら、山頂から敵の様子を見てくる……
    と言って、止めるのも聞かずに偵察へ」
魏 延「山頂って。周りの山の頂上は全部険しいぞ。
    しかし、参ったな。こういう時こそ、あいつの
    知を頼りたかったのに……」
鞏 志「そうですね。あ、それから、蛮望どのも
    面白そうだと言って着いて行きました」
魏 延「いや、それは別にいい。
    そいつはこの場にはいらないからな」

その頃、どこかの山頂付近では。

   馬謖馬謖   蛮望蛮望

馬 謖ファイトォォォ!!
蛮 望いっぱぁぁぁつ!!

……偵察より山登りが主目的になってる二人は
さておき、馬超隊と戦うか、見逃すか?

???「ふ、何を迷っておられるのか?」
魏 延「だ、誰だ!」

    太史慈太史慈

太史慈「眼前の敵は粉砕するのみ。
    例えそれがどんな相手であっても……」
魏 延「お前は……」
呉 懿「私の隊の太史慈どのです。魏延どのとも、
    以前に顔を合わせたことがあるとか」
魏 延「ああ、敵同士だった頃に会ったな。
    しかし太史慈、無責任な発言は謹んでもらおう。
    無謀な戦いは仕掛けるわけにはいかんのだ」

魏延の言葉を聞いて、太史慈は笑みを浮かべた。

太史慈「無謀……ですか。猪突猛進が代名詞の
    魏延どのの言葉とは思えませんなあ……。
    以前に戦場で出会った時は、もっと雄々しい
    武将であったと思いますが」
魏 延「今はこの地域の統括を任されている身だ。
    自重もするし、大局を見なければならん」
太史慈「そうですかな。もし大局を見るのならば、
    尚更、見逃すわけにはいかんのでは?」
魏 延「むう」
太史慈「それでも軍を進めないとは。
    なるほど、よほど馬超が怖いと見える」
魏 延「……なんだと?」
太史慈「確かに馬超は涼州で名を馳せた将。
    鞏恋も一騎打ちにて彼に敗れたと聞きます。
    怖がるのも無理はないとは思いますが……」
魏 延「誰が怖がっている!?
    例え鞏恋を破ったとしても、楚軍最強は私だ!
    馬超など簡単に捻り倒してくれる!」
鞏 志「魏延どの、興奮しすぎですぞ」
魏 延「いいや、こうなれば実力で証明するのみ!
    全軍前進だ! 馬超隊を打ち破るぞ!」

金目鯛「よし、そう来なくっちゃな!」
呉 懿「総大将の判断ならば致し方なし」

太史慈の言葉に乗せられた格好だったが、
ともかく魏延は迷いを吹っ切ることができた。

商県を東へ行軍する馬超隊を打ち果たすため、
総勢4万5千余の軍は北へ向かう。

    ☆☆☆

行軍中の馬超隊の兵が騒ぎ出す。
南に敵である楚軍の部隊が現れたのだ。

   馬超馬超   馬忠馬忠

馬 超「敵か! 規模はどれくらいだ!?」
馬 忠「魏興方面からの楚軍です。
    魏延隊1万5千、呉懿隊2万、金目鯛隊1万!
    概算ですが、総勢4万5千の軍です!」
馬 超「ちっ、疲れもあるから見逃すと思っていたが。
    流石は楚国一の猪武者、魏延というべきか。
    俺を相手にして、勝つつもりらしい」
馬 忠「どうなさいます?」
馬 超「奴らも万全の体制というわけではなさそうだ。
    ここはひと当たりして強さを見せてやろう。
    敵わぬとみれば、退かざるをえまい」
馬 忠「はっ。……弩隊、発射準備だ!
    挨拶として弩連射をかましてやれ!」

まずは馬忠の連射が、魏延隊の頭上に見舞われた。
それにより魏延隊の千5百の兵が倒れる。

    魏延魏延

魏 延「ええい、怯むなっ!
    弓騎隊! お返しに飛射を見舞ってやれ!」

魏延はお返しに、以前に覚えた飛射を放った。
だが……。

馬 超「はーっはっは、それが飛射だと!?
    ひょっとしてそれは冗談でやっているのか」
魏 延「なっ、防がれた!?」

弓騎は馬超の最も得意とするところ。
魏延の飛射をこともなげに防いでみせた。

馬 超「甘いな魏延!
    その程度の腕で、俺に勝てると思ったのか!」
魏 延「くっ……。
    確かに弓騎の熟練では奴のほうが何倍も上か」

    太史慈太史慈

太史慈「舐めるな、馬超!
    次はこの太史慈の突進を食らってみろっ!」
馬 超「むっ、太史慈だと?」
魏 延「おおっ、太史慈! やってくれたな!」

呉懿隊の太史慈が、突進。
今度は流石の馬超も防ぐことはできなかった。

馬 超「くっ……。太史慈の武名は聞いているぞ。
    そうか、奴は楚についたのか」
涼 兵「御大将、かなり押されております!」
馬 超「慌てるな、この程度ならすぐに押し返せる。
    俺が全面に出れば……」
魏 延「そうはさせんぞ、馬超」
馬 超「むっ……!?」

いつのまにか、馬超の目の前に魏延がいた。

   馬超馬超   魏延魏延

馬 超「ほほう……。
    先頭を切って大将が突っ込んできたか」
魏 延「ふん……。
    貴様を止められるのは私くらいのものだからな。
    貴様に前に出てきてもらっては困るのだ」
馬 超「なるほどな。だが俺の武は……
    涼州一の我が武は、お前でも止められん」
魏 延「やってみなければ分かるまい。
    来い、馬超。楚軍一の私と、涼軍一の貴様。
    どちらが強いのか、はっきりさせてやる!」
馬 超「望むところだ。返り討ちにしてくれるわっ!」
魏 延「行くぞっ!」

 魏延:武力97 VS 馬超:武力98

魏 延「ぬうりゃっ!」
馬 超「はっ! そいやっ!」
魏 延「ていや! どりゃっ!」
馬 超ヤッ!
魏 延ハッ!
馬 超ソイヤソイヤソイヤ!
魏 延セイヤセイヤセイヤ!
馬 超ソイヤソイヤ、ソリャソリャ!
魏 延ソイヤソイヤ、ソリャソリャ!

   金目鯛金目鯛  孟達孟達

金目鯛「祭りの掛け声かよ」
孟 達「当人たちは真面目に戦ってるようですが」
金目鯛「まあ確かに、やってるうちに相手と同じような
    拍子になってきちまうことはあるがなー」

馬 超「ハッ! 楽しいぞ、魏延!
    ここまで俺を本気にさせる者がいたとは!」
魏 延「楽しい? 馬鹿か!
    負けるわけに行かぬ勝負をしているというのに、
    楽しんでいられるわけがなかろう!?」
馬 超「ふっ、そこがお前の限界かもな」
魏 延「むっ!?」
馬 超「勝負を楽しむ余裕のある者とない者の差!
    それが勝敗を分ける! セイセイセイ!」
魏 延「ぬうっ!? ここにきて速度を上げた!?」

両名とも限界が近くなっていた。
だが、馬超はそこからまた手数を増やしてくる。

魏 延「なっ……なるほどっ……。
    涼軍一の強さはここにあるということか」
馬 超「どうした魏延! もう息が上がったか!?」
魏 延「くっ、舐めるなっ!」

 ぎんっ!

刃と刃が一際大きくぶつかり合った。
その拍子に、二人の間合いが大きく離れる。

馬 超「フウ……。
    流石に、どちらも体力が無くなってきたか。
    あと一撃……。それで決着が付くな」
魏 延「はぁ、はぁ……」
馬 超「一合。それで終わりにするとしよう。
    これ以上、時間はかけていられまい」
魏 延「いや……、望むならまだまだ……」
馬 超「そうはいかない。お前が俺を抑えている間に、
    他の部隊の展開をさせるつもりだろう?」
魏 延「……ちっ、分かっていたか」
馬 超「さあ、これで最後だ! 行くぞっ!」
魏 延「はあはあ……はあっ!」

二人とも、騎馬を駆けさせた。
すれ違いざまに最後の一撃を放つつもりだ。

この勝負……一体どちらが勝つ!?

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