221年07月
7月中旬、武関。
于禁隊3万は馬騰隊4万を迎撃する。
その戦闘中、馬騰隊の中に庖徳を見つけ、
斬りかかっていった楽淋。
だが、対する庖徳はそれをまともには受けず、
受け流して距離を取った。
楽淋
庖徳
楽 淋「どうした庖徳! 怖気づいたか!」
庖 徳「愚かな。我らの目的は武関を落とすが第一。
このような一騎打ち、何の益にもならぬ」
楽 淋「確かに井蘭なんか持ってくりゃそうだろうな。
だが男なら、挑まれた勝負は断らんだろう!」
庖 徳「ふっ、青いな。そのような青臭いことを
言っていては、将は務まらんぞ」
楽 淋「なんだと!? すかしやがって!
本当は怖いんだろう! 違うか!」
庖 徳「何とでも言うがいい……。
弓騎隊! この隙に飛射を見舞ってやれ!」
涼 兵「ははっ!」
びゅんびゅん ぐさぐさ
楚 兵「ぎゃー! 楽淋さまー!」
楽 淋「ああっ!? こ、こんの野郎〜っ!」
庖 徳「ふっ、これが戦というものだ。
覚えておくがいい、青二才!」
庖徳は楽淋に構わず、飛射で于禁隊を攻撃。
于禁隊はこれだけで3千の兵を失った。
于禁
牛金
于 禁「やってくれたな、庖徳……。
だがその技、覚えたぞ!」
牛 金「おおー。すごいぜ大将!」
(于禁が飛射を習得した)
一方、楽淋のほうは、自分を無視されたことで
庖徳に対する怒りを募らせていた。
楽 淋「てめえ……。それでも男か!
キ○タマついてんのか、ああん!?」
庖 徳「ふっ、そのような言葉で挑発されるほど、
この庖徳は甘くはない……!」
楽 淋「こ、このスカシ野郎! ハゲチョビン!
インキン! 水虫! うおのめ!」
庖 徳「やれやれ、なんという低次元な挑発か。
子供の喧嘩じゃあるまいし」
涼 兵「なんて冷静さだ……流石は庖徳さま!
涼州一の知性派武将なだけはあるぜ!
そこにしびれるあこがれるゥ!」
楚 兵「楽淋さまぁ……。
すごく、すっごくみっともないです〜」
楽 淋「馬鹿! 阿呆! 間抜け! ウンコたれ!
オタンコナス! ノータリン! 屁こき太郎!
えーと、えーと、それから……」
庖 徳「どうした、ネタ切れか。それで終わりか」
楽 淋「や、やろう……。こ、この、この……。
このデベソ野郎!」
ピキィィィィィン
庖 徳「……今、何と言った?」
楽 淋「へ? デベソ野郎って言ったんだが……」
庖 徳「デベソ……。デベソか。
デ ベ ソ と も う し た か」
楽 淋「……ははーん。アンタ、本当にデベソか」
庖 徳「貴様は、言ってはならないことを言った。
覚悟はできておるのだろうな?」
楽 淋「へっ、最初からそうやってればいいんだよ!
いくぜ庖徳! 勝負だっ!」
庖 徳「私を怒らせたこと、後悔させてやる!」
楽淋:武力90 VS 庖徳:武力94
庖徳が渾身の力を籠めて長刀を払う。
楽淋も負けじと七星宝刀を振るう。
武力90以上の将同士の対決は、見る者を圧倒した。
張虎
張 虎「あいつら、名前の見辛さも半端じゃないが(※)、
その強さも半端じゃないぜ!」
(※ このリプレイでは当て字で表記しているが、
楽[糸林]、[广龍]徳、共に第二水準漢字の入った
名前になっているため、PCなどでは見辛い)
馬騰
楊阜
馬 騰「頑張れ庖徳! 負けるな令明!
行けっ、そこだ、やれっ!」
楊 阜「涼公、もう少し総大将らしくしてください。
それでは喧嘩好きなただのおじさんです」
馬 騰「何を言う、ここで応援せずにどうするのだ!
よし、そこでぶちかませーっ!」
楊 阜「……はぁ」
両軍の将兵が見守る中、二人の勝負は次第に
庖徳のほうが優勢になっていった。
元々、武力差では庖徳のほうが有利なのだ。
このような状況になるのも、不思議はない。
庖 徳「はっ、どうしたどうした!
大口を叩いた割に押されているではないか!」
楽 淋「う、うるせぇ! この程度、すぐ巻き返す!」
口ではそう言ってはいるものの、形勢はどんどん
悪くなるばかりで、挽回することはできない。
ホウ徳の攻撃に押され、次第に体力を削られていく。
庖 徳「そらそらそらっ!」
楽 淋「ぐっ……! このままではっ……」
庖 徳「隙が大きいぞ! でえいっ!」
楽 淋「ぐあっ……!」
庖 徳「フハハ、結局は口先だけだったな!
さあ、デベソ野郎と言った報いを受けるがいい!
このガクガクチ○コ野郎!」
ズギュュュュュュュュン
楽 淋「言ったな……」
庖 徳「む?」
楽 淋「言ったな……。俺の昔のあだ名……。
子供の頃、苛められていた時代のあだ名を」
庖 徳「むむ、これはどうしたことだ。
先ほどまでの奴とは、全然様子が違うが……」
楽 淋「貴様だけは……。
たとえ、この命が燃え尽きたとしても……。
貴様だけは許さん!」
庖 徳「ふん……。随分な怒りようだな。
だが、怒っているのはわしとて同じことだ」
楽 淋「……うるせえ、このデベソ野郎」
庖 徳「まだ言うか。
だが、お前の体力はほとんど尽きているだろう。
よってこの勝負、わしの勝ちだ!」
楽 淋「……何を勘違いしてやがる。
俺はまだ、奥の手を出しちゃいないぜ!」
庖 徳「はっ、何を言っている。
たとえどんなすごい奥の手を持っていようとも、
もはやたった一撃で倒れる状態ではないか!」
しゃきぃぃぃぃぃん!
楽 淋「うおおおおおおおお!!
楽家奥義! スーパーモードだあああっ!!」
庖 徳「むう、スーパーモードだと……?」
怒りの力で、スーパーモードを発動させた楽淋。
その様子を見て、勝負を見守っていた于禁が
顔色を変えた。
于禁
牛金
于 禁「あやつ、スーパーモードを発動させおった!
使わぬよう、釘を刺しておいたのに……」
牛 金「負けそうだったんだし、仕方ないんでは?」
于 禁「そのまま負けたほうが良かったかもしれんぞ。
……早く、やつを止めねばっ!」
牛 金「ああっ、大将!?」
スーパーモードで全身が金色に光っている楽淋を、
庖徳はいぶかしげに睨み返していた。
庖 徳「珍妙な技を使う奴だ……。
だが、そのようなこけおどしでビビると思うな」
楽 淋「いいから来い、このデベソ野郎!
あんたの怒りと俺の怒り、どっちが強えのか。
はっきりと見せ付けてやんよ!」
庖 徳「舐めるなよ若造……!
この庖徳が負けるわけがなかろうっ!
望みとあらば、ぶった切ってくれようぞ!」
楽 淋「来いや!」
庖徳の長刀、楽淋の七星宝刀が煌めく。
……この時、庖徳は勝利を確信した。
たった一太刀浴びせれば、楽淋の体力は尽きる。
それを見越し、彼は神速の一撃を放ったのである。
だが、楽淋はそれを七星宝刀で受け止めた。
庖 徳「なにっ!?」
楽 淋「残りの体力がどうとか関係ねぇ!
お前のその一撃ごと、粉砕してやる!
うおおおおおっ!」
ガギィィィィン
その一薙ぎで、庖徳の長刀は粉砕され、
持っていた庖徳は吹っ飛ばされてしまった。
地面に大の字になって倒れている庖徳。
楽淋が近寄ってきても、起き上がる様子はない。
ただ信じられないという表情で、空を見上げていた。
庖 徳「なん……だ……と……?
長刀ごと、わしを吹っ飛ばしただと……」
楽 淋「み、見たか、こいつがスーパーモードの力だ。
楽家に伝わる、究極の奥義を見たか……!
さあ! これで終わりにしてやるぜ!」
庖 徳「くっ……、身体が動かぬ……」
楽 淋「死ねや!」
楽淋の剣が振り上げられる。
……だが、それは振り下ろされることはなかった。
于禁
于 禁「やめよ、楽淋」
楽 淋「な……。離せ!」
振り上げた楽淋の腕を、于禁が掴んでいた。
于 禁「もはや庖徳は立ち上がることすらできん。
この勝負は、お前の勝ちだ、楽淋」
楽 淋「は……。そうか、勝ったか。
へへ、そうか……俺は勝ったのか」
楽淋はズルズルと倒れこんだ。
体力の限界はすでに越していたのだろう。
地面に倒れこんだまま、気を失ってしまった。
于 禁「……今回は確かに勝った。
だが、次はどうなるかはわからんぞ」
楚 兵「御大将……?」
于 禁「なんでもない。
それより、庖徳を護送車に放り込んでおけ」
楚 兵「ははっ」
于 禁「さあ、まだ馬騰隊を倒したわけではないぞ。
全軍、攻撃を続けよ!」
楚 兵「おーっ!」
楽淋の勝利で于禁隊は士気が上がった。
一方、馬騰隊は庖徳が捕らえられたことで
一気に兵の士気が低下してしまった。
馬騰
楊阜
馬 騰「庖徳がやられるとは……!」
楊 阜「勝負というのは時の運。
こういう結果も、十分にありうることです」
馬 騰「くそっ、武関は目の前だというのに!
それよりも、韓徳隊は何をやっておるのだ!?
行ったり来たりを繰り返すだけではないか!」
楊 阜「どうやら敵の偽報にかかっているようです。
偽の命令を何度も掴ませられているのでしょう」
馬 騰「早く来いと伝えよ!」
楊 阜「は、伝令を送っておきます。
その命令でちゃんと来てくれれば良いですな」
馬 騰「ああ? 楊阜、貴様は軍師だろう!
お前は、韓徳を監督する立場ではないのか!
それが何だ、その言い草はっ!」
楊 阜「……はぁ、申し訳ありません」
涼 兵「涼公!
敵将張虎と夏侯徳、突破を仕掛けてきました!」
馬 騰「突っ込んでくるのなら迎え撃て!
それくらい言われなくともやれぬのか!」
涼 兵「は、ははっ! 申し訳ありません!」
楊 阜「……(負けるな、これは)」
張虎と夏侯徳の突破により、3千余りの兵を失う。
そこからさらに、牛金が突進してきた。
牛金
張虎
牛 金「ずももももー!」
張 虎「おおっ、あれが牛金どのの突進か!
よーし、しっかりと覚えたぞ!」
(※張虎・夏侯徳、突進を習得)
涼 兵「牛金の突進で、さらに3千がやられました!」
馬 騰「全く情けない! 馬が牛に負けてどうする!」
涼 兵「ああ、今度は武関から郭淮隊が……」
馬騰隊が弱ってきたことを見てとったのか、
武関から郭淮が2万の兵を率いて出撃してきた。
(その少し前に、宛から増援の兵が到着している)
だが、涼軍にも援軍が到着。
馬騰の三男の馬鉄が、潼関より1万5千の兵を率い
父のもとへやってきたのだ。
馬 騰「おお、馬鉄が来たか!
よーし、一気に敵を武関に押し戻すのだ!」
張 虎「やらせるかー! 突破だ!」
馬 騰「ふん、そのようなヘロヘロ突破が効くか!」
張 虎「な、なにー!?」
張虎・夏侯徳の突破を防いだ馬騰。
いくら兵が半減し、士気が低下しているとはいえ、
そこは流石に涼軍の総大将である。
楚軍優勢ではあるが、戦いの趨勢はまだ決しない。
後から参戦した馬鉄隊、王甫隊も踏ん張っており、
まだウロウロしている韓徳隊や、後続で来る
馬秋隊、戴陵隊などが合流できれば、いくらでも
ひっくり返すことは出来る……そう思えたが。
ワーワー
馬 騰「どうした、騒がしいぞ!
それに陣形も乱れている、どういうことだ!?」
涼 兵「敵の撹乱と思われます!
士気が低下し、陣形も崩れてしまってます!」
馬 騰「な、なにー!?」
司馬懿
司馬懿「さて、これで勝負は決したようなものですね。
後の始末は郭淮どの、于禁どのにお任せして、
私は許昌に戻るとしましょうか……」
無陣状態となった馬騰隊に攻撃が集中する。
郭淮
満寵
郭 淮「ここが勝負の分かれ目。各員、奮闘せよ!」
満 寵「おお、郭淮どの、お見事!
奮闘はあのようにやれば良いのだな!」
郭淮隊の奮闘。(それにより満寵が奮闘を習得)
そして再び牛金が突進をぶちかまし。
そしてトドメに……。
涼 兵「うわー! 落とし穴だー!」
馬 騰「おおおお!? どうなっておるのだー!?」
劉曄
劉 曄「それ、このまま埋め立ててしまえ!」
郭淮隊の劉曄の仕掛けた穴罠に嵌ってしまい、
馬騰隊はほぼ壊滅状態に陥った。
馬 騰「お、おのれ……撤退するっ!」
後続部隊が来るまで待てず、馬騰隊は敗れた。
馬騰は撤退、娘の馬雲緑と軍師楊阜が捕らえられる
という敗北を喫してしまったのだった。
楚 兵「馬騰隊を殲滅しました!」
于 禁「よし、次の目標を向かってくる韓徳隊とする!
よいか、馬騰を倒したとて油断するなよ!
まだまだ他の涼軍は残っているのだからな!」
楚 兵「はっ!」
馬騰隊は倒したが、まだ他の涼軍は残っている。
于禁、郭淮らが安心して休息を取れるのは、
まだ先のことになりそうだった。
☆☆☆
さて、武関の楚軍が涼軍と激しく戦っている時。
魏興城塞の魏延らは何をやっていたのか。
魏興城塞へ攻め寄せていた呂鶴隊は
魏延隊・金目鯛隊・呉懿隊の活躍により粉砕した。
だが彼らが休む間もなく、隣りの商県を行軍中の
涼軍の部隊がいるという情報が入った。
金目鯛
呉懿
金目鯛「旗に馬の文字、兵3万の部隊か。
これって、やっぱりアレだよなー」
呉 懿「旗飾りに錦がついているとのこと。
そしてそれは西の天水方面からやってきた。
……となれば、答えはひとつだけでしょう」
魏延
魏 延「馬超孟起。奴が現れたか」
以上、各隊の手旗信号によるやりとりを翻訳しました。
……さて、その馬超。
西の天水で炎軍と睨み合っていたのではないか?
北上を狙う炎軍を放っておいて、楚軍と戦うことに
なってしまうが、それで良かったのだろうか。
馬超
馬忠
馬 超「仕方が無いだろう。父上の頼みなんだ」
馬 忠「ですが……。蜀炎軍は饗嶺が敗れた後も、
着々と軍備を整えつつあるのですぞ。
今、天水の兵を割いてしまっては……」
馬 超「くどいぞ、馬忠。陳倉の馬岱ならば、
炎が攻めてこようとも当面は凌げるはずだ」
馬 忠「しかし」
馬超は、渋い顔のまま馬忠に告げる。
馬 超「武関を落としさえすれば、すぐ戻れる。
今は前だけを向いていろ、いいな」
馬 忠「は……」
馬 超「涼州馬一族のお前なら分かるだろう。
一族の長である父上の命は、絶対なのだ。
たとえそれが、意に沿わぬ命であってもな」
馬 忠「いや、私は蜀出身なんですけど」
馬 超「こうなれば速やかに武関を落とさねばならん。
お前の馬一族の力、見せてもらうぞ」
馬 忠「いや、ですから、一族関係ない……」
こんな様子で、馬超隊3万は進んでいた。
魏延
呉懿
魏 延「さて、どうするべきか……」
呉 懿「どうやら彼らは武関へ向かう様子。
我らの第一目的の『魏興城塞を守る』という
意味では、戦う必要はない、と言えます」
手旗信号だけで会議をするのも何なので、
一時、集合して協議する楚軍の面々。
金目鯛
鞏志
金目鯛「だが、武関は激戦が続いているみたいだ。
ここであの部隊と戦い、兵を減らすことは
武関の味方を助けることになるだろ」
鞏 志「確かにそうですが……。
我らの兵も、先ほどまでの戦いで疲れています。
苦しい戦いになってしまいますが」
呉 懿「そうですな。
特に金目鯛どのの隊は、戦える兵が1万を
割り込んでいる状態ではありませんか」
金目鯛「……確かにそうだが、一度魏興に戻っては
奴らを逃してしまうことになるぜ」
呉 懿「ですが、その相手はあの馬超なのです。
一筋縄では行かない相手ですぞ」
第一目的は魏興を守ること。
ならば、ここで兵を減らすことは避けておきたい。
だが、武関の味方のことを考えるのならば、
できれば武関へ向かうのは阻止したい。
魏 延「ううむ。馬謖はどう思う?
おや、馬謖はどこへ行ったんだ」
鞏 志「彼なら、山頂から敵の様子を見てくる……
と言って、止めるのも聞かずに偵察へ」
魏 延「山頂って。周りの山の頂上は全部険しいぞ。
しかし、参ったな。こういう時こそ、あいつの
知を頼りたかったのに……」
鞏 志「そうですね。あ、それから、蛮望どのも
面白そうだと言って着いて行きました」
魏 延「いや、それは別にいい。
そいつはこの場にはいらないからな」
その頃、どこかの山頂付近では。
馬謖
蛮望
馬 謖「ファイトォォォ!!」
蛮 望「いっぱぁぁぁつ!!」
……偵察より山登りが主目的になってる二人は
さておき、馬超隊と戦うか、見逃すか?
???「ふ、何を迷っておられるのか?」
魏 延「だ、誰だ!」
太史慈
太史慈「眼前の敵は粉砕するのみ。
例えそれがどんな相手であっても……」
魏 延「お前は……」
呉 懿「私の隊の太史慈どのです。魏延どのとも、
以前に顔を合わせたことがあるとか」
魏 延「ああ、敵同士だった頃に会ったな。
しかし太史慈、無責任な発言は謹んでもらおう。
無謀な戦いは仕掛けるわけにはいかんのだ」
魏延の言葉を聞いて、太史慈は笑みを浮かべた。
太史慈「無謀……ですか。猪突猛進が代名詞の
魏延どのの言葉とは思えませんなあ……。
以前に戦場で出会った時は、もっと雄々しい
武将であったと思いますが」
魏 延「今はこの地域の統括を任されている身だ。
自重もするし、大局を見なければならん」
太史慈「そうですかな。もし大局を見るのならば、
尚更、見逃すわけにはいかんのでは?」
魏 延「むう」
太史慈「それでも軍を進めないとは。
なるほど、よほど馬超が怖いと見える」
魏 延「……なんだと?」
太史慈「確かに馬超は涼州で名を馳せた将。
鞏恋も一騎打ちにて彼に敗れたと聞きます。
怖がるのも無理はないとは思いますが……」
魏 延「誰が怖がっている!?
例え鞏恋を破ったとしても、楚軍最強は私だ!
馬超など簡単に捻り倒してくれる!」
鞏 志「魏延どの、興奮しすぎですぞ」
魏 延「いいや、こうなれば実力で証明するのみ!
全軍前進だ! 馬超隊を打ち破るぞ!」
金目鯛「よし、そう来なくっちゃな!」
呉 懿「総大将の判断ならば致し方なし」
太史慈の言葉に乗せられた格好だったが、
ともかく魏延は迷いを吹っ切ることができた。
商県を東へ行軍する馬超隊を打ち果たすため、
総勢4万5千余の軍は北へ向かう。
☆☆☆
行軍中の馬超隊の兵が騒ぎ出す。
南に敵である楚軍の部隊が現れたのだ。
馬超
馬忠
馬 超「敵か! 規模はどれくらいだ!?」
馬 忠「魏興方面からの楚軍です。
魏延隊1万5千、呉懿隊2万、金目鯛隊1万!
概算ですが、総勢4万5千の軍です!」
馬 超「ちっ、疲れもあるから見逃すと思っていたが。
流石は楚国一の猪武者、魏延というべきか。
俺を相手にして、勝つつもりらしい」
馬 忠「どうなさいます?」
馬 超「奴らも万全の体制というわけではなさそうだ。
ここはひと当たりして強さを見せてやろう。
敵わぬとみれば、退かざるをえまい」
馬 忠「はっ。……弩隊、発射準備だ!
挨拶として弩連射をかましてやれ!」
まずは馬忠の連射が、魏延隊の頭上に見舞われた。
それにより魏延隊の千5百の兵が倒れる。
魏延
魏 延「ええい、怯むなっ!
弓騎隊! お返しに飛射を見舞ってやれ!」
魏延はお返しに、以前に覚えた飛射を放った。
だが……。
馬 超「はーっはっは、それが飛射だと!?
ひょっとしてそれは冗談でやっているのか」
魏 延「なっ、防がれた!?」
弓騎は馬超の最も得意とするところ。
魏延の飛射をこともなげに防いでみせた。
馬 超「甘いな魏延!
その程度の腕で、俺に勝てると思ったのか!」
魏 延「くっ……。
確かに弓騎の熟練では奴のほうが何倍も上か」
太史慈
太史慈「舐めるな、馬超!
次はこの太史慈の突進を食らってみろっ!」
馬 超「むっ、太史慈だと?」
魏 延「おおっ、太史慈! やってくれたな!」
呉懿隊の太史慈が、突進。
今度は流石の馬超も防ぐことはできなかった。
馬 超「くっ……。太史慈の武名は聞いているぞ。
そうか、奴は楚についたのか」
涼 兵「御大将、かなり押されております!」
馬 超「慌てるな、この程度ならすぐに押し返せる。
俺が全面に出れば……」
魏 延「そうはさせんぞ、馬超」
馬 超「むっ……!?」
いつのまにか、馬超の目の前に魏延がいた。
馬超
魏延
馬 超「ほほう……。
先頭を切って大将が突っ込んできたか」
魏 延「ふん……。
貴様を止められるのは私くらいのものだからな。
貴様に前に出てきてもらっては困るのだ」
馬 超「なるほどな。だが俺の武は……
涼州一の我が武は、お前でも止められん」
魏 延「やってみなければ分かるまい。
来い、馬超。楚軍一の私と、涼軍一の貴様。
どちらが強いのか、はっきりさせてやる!」
馬 超「望むところだ。返り討ちにしてくれるわっ!」
魏 延「行くぞっ!」
魏延:武力97 VS 馬超:武力98
魏 延「ぬうりゃっ!」
馬 超「はっ! そいやっ!」
魏 延「ていや! どりゃっ!」
馬 超「ヤッ!」
魏 延「ハッ!」
馬 超「ソイヤソイヤソイヤ!」
魏 延「セイヤセイヤセイヤ!」
馬 超「ソイヤソイヤ、ソリャソリャ!」
魏 延「ソイヤソイヤ、ソリャソリャ!」
金目鯛
孟達
金目鯛「祭りの掛け声かよ」
孟 達「当人たちは真面目に戦ってるようですが」
金目鯛「まあ確かに、やってるうちに相手と同じような
拍子になってきちまうことはあるがなー」
馬 超「ハッ! 楽しいぞ、魏延!
ここまで俺を本気にさせる者がいたとは!」
魏 延「楽しい? 馬鹿か!
負けるわけに行かぬ勝負をしているというのに、
楽しんでいられるわけがなかろう!?」
馬 超「ふっ、そこがお前の限界かもな」
魏 延「むっ!?」
馬 超「勝負を楽しむ余裕のある者とない者の差!
それが勝敗を分ける! セイセイセイ!」
魏 延「ぬうっ!? ここにきて速度を上げた!?」
両名とも限界が近くなっていた。
だが、馬超はそこからまた手数を増やしてくる。
魏 延「なっ……なるほどっ……。
涼軍一の強さはここにあるということか」
馬 超「どうした魏延! もう息が上がったか!?」
魏 延「くっ、舐めるなっ!」
ぎんっ!
刃と刃が一際大きくぶつかり合った。
その拍子に、二人の間合いが大きく離れる。
馬 超「フウ……。
流石に、どちらも体力が無くなってきたか。
あと一撃……。それで決着が付くな」
魏 延「はぁ、はぁ……」
馬 超「一合。それで終わりにするとしよう。
これ以上、時間はかけていられまい」
魏 延「いや……、望むならまだまだ……」
馬 超「そうはいかない。お前が俺を抑えている間に、
他の部隊の展開をさせるつもりだろう?」
魏 延「……ちっ、分かっていたか」
馬 超「さあ、これで最後だ! 行くぞっ!」
魏 延「はあはあ……はあっ!」
二人とも、騎馬を駆けさせた。
すれ違いざまに最後の一撃を放つつもりだ。
この勝負……一体どちらが勝つ!?
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