220年10月
徐盛を捕らえ、士気上がる金満隊。
さらに、東からは始新城塞から出撃してきた
李厳隊・金閣寺隊がやってきていた。
李厳隊には馮習、張南、忙牙長などがおり、
金閣寺隊には髭髯軍団の3人と孟達がいる。
李厳
金閣寺
李 厳「こちらは会稽城の攻撃を始める。
金閣寺どの、そちらは陸遜隊をお願い致す」
金閣寺「承知した! 髭髯軍団、そして孟達どの!
目標は眼前の陸遜隊だ!」
孟達
髭髯鳳
孟 達「はっ! 各隊、野戦準備!」
髭髯鳳「陸遜隊など、一気に片付けましょうぞ!」
髭髯豹
髭髯龍
髭髯豹「よおし、やってやるぜーっ!」
髭髯龍「どうした豹、いつになく張り切ってるな」
髭髯豹「なんたって皇子が見ているからな!
俺がただの武力馬鹿ではないってことを、
今、見せてやるぜ! うおおおおっ!!」
髭髯豹は馬を駆けさせながら、矢を何度も放つ。
これまで見せたことのない、見事な飛射だ。
金閣寺「顔に似合わず、高度な技を見せてくれる!
確かに、ただの武力馬鹿ではないですね!」
孟 達「弓の得意な武力馬鹿ですな」
髭髯豹「なんでそうなるーっ!?」
陸遜隊は、それまでずっと金満隊の連弩によって
かなりの兵をやられていたが、髭髯豹の必殺の
飛射によって、壊滅的な打撃を受けた。
陸遜
陸 遜「……ここまでだな。
呂拠! 諸葛恪を連れ、会稽城へ戻れ!」
少し離れたところにいる呂拠にそう叫んだ。
呂拠
呂 拠「城へ戻れだって……?
貴方は一体どうするつもりだ!?」
陸 遜「私は大将だ、すでに幾重にも囲まれている!
ここから城へと戻るのは至難の業だろう!」
呂 拠「み、見捨てろというのか!
孫皎さまを失い、徐盛どのを捕らわれて、
今また貴方を見捨てろと!?」
陸 遜「この陸遜、死にはせぬ! それより今は!
孫皎さまが討たれたこと、貴殿が城へ伝えよ!
あの方の死を、戦いの糧とするのだ!」
呂 拠「くっ、それでも……」
陸 遜「呂拠! 大将の命が聞けぬか!?」
呂 拠「……ええい、承知っ!!
諸葛恪、我らは城へと戻るぞっ!」
陸遜隊の呂拠と諸葛恪は、部隊が壊滅する混乱を
脱し、会稽城へと戻っていった。
陸 遜「そうだ……。貴殿らだけでも戻るのだ。
若い者たちが無駄な血を流すことはない……」
鞏恋
雷圓圓
鞏 恋「貴方もかなり若いと思うけど?」
雷圓圓「そうですよねー、全然差が感じられませんよ」
陸 遜「いやいや、私はもう30代後半ですから……。
20代の彼らには負けます」
雷圓圓「もうそんな歳!?」
鞏 恋「若づくり……」
陸 遜「見た目が若いのは否定しませんがね。
若く見られて損することもあるのですよ」
魯圓圓
金満
魯圓圓「何をのん気に話し込んでるんですか。
陸遜将軍、貴方はもう完全に包囲されてます。
おとなしく、我々に投降なさい」
金 満「そうです、これ以上戦っても無意味です。
楚王金旋が子、金満が身柄の安全を保障
致しますから、すぐに降伏してください」
すでに四方を金満隊の将たちに囲まれていた。
陸 遜「やれやれ……。
前門の虎、後門の狼どころではないな」
鞏 恋「虎は私ね」
雷圓圓「じゃあ私が狼ですねー」
魯圓圓「それでは、私は何でしょう?」
陸 遜「前が虎、後が狼、左が狐という所か……」
魯圓圓「狐……。微妙ですね」
金 満「で、では私は?」
陸 遜「そして右が……栗鼠だーっ!!」
金 満「えっ……」
包囲され、それまで大人しくしていた陸遜が、
いきなり金満に向かって切りかかっていった。
陸 遜「孫皎さまの命の代償!
金旋の子の血であがなってもらうっ!!」
金 満「う、うわあああ!?」
ガキーン!
魏光
魏 光「全く、危なっかしい。
腕っ節の弱い大将は前に出ないでほしいな」
金 満「魏光さんっ!!」
振り下ろされた陸遜の剣は、魏光の肉包丁が
しっかりと防いでいた。
陸 遜「くっ、左にいたのは栗鼠だけではなかったか」
魏 光「ふっふっふ、そうだな……。
私は熊とでもしておいてもらおうかな」
鞏 恋「……せいぜい熊猫(パンダ)あたりかと」
魏 光「な、何言ってるんです、知らないんですか?
パンダも結構、凶暴なんですよ!?」
鞏 恋「へえ、そうなんだ」
雷圓圓「ぱんださんは人間襲うよー」
魯圓圓「いや、本当にパンダでいいんですか?
もう少し見た目重視の選択を……」
金 満「リスとパンダはどちらも可愛いですからね。
お仲間ですね、お仲間」
陸 遜「(な、なんなのだ、これは。
これが我らが何度戦っても勝てなかった、
あの楚軍の将たちだというのか……!?)」
陸遜はすっかり毒気を抜かれてしまった。
金満への不意討ちが失敗に終わってしまった彼は、
結局、金満隊の捕虜となってしまった。
☆☆☆
会稽城になんとか逃げ込んだ呂拠たち。
息を切らせながら、陸遜に後を任されていた大将の
程普に、部隊の壊滅、そして孫皎の死を伝えた。
程普
周泰
程 普「なんと……孫皎さまが!?
わしのような老人こそ、まず先に死ななければ
ならぬのに! なんという痛恨の極みかっ!」
周 泰「おまけに陸遜と徐盛も捕らえられたか。
兵も当初の数からすでに三分の一となっている。
一体、どうやってこの会稽を守ればよいのか」
呂拠
呂 拠「陸遜どのは、孫皎さまの死を戦いの糧とせよ、
と言ってましたが……」
程 普「確かにそれで将兵は発奮するであろう。
だがそれでも、今の兵の数ではどうにもならん。
楚軍は未だ10万以上の兵が残っておるのだ。
せめて、あと2万ほど兵がおれば……」
ワー ワー
程 普「どうした!? 騒がしいぞ!?」
呉 兵「た、大変です!!
偽伝令が飛び交い、兵が混乱しております!」
程 普「なんと!?」
……その頃、城外の霍峻隊。
馬謖が霍峻へ、策の成功を伝えていた。
馬謖
霍峻
馬 謖「呂拠らの退却時に潜り込ませた間者が、
上手く城内を混乱させたようです」
霍 峻「ふふ、流石は馬氏の五常の末弟ですね」
馬 謖「いえいえ、当然の結果です。
私の知は、ますます冴え渡って来てますよ」
霍 峻「それはそれは、これからが楽しみですね。
……各隊、この隙を逃さず、弩を連射せよ!」
混乱が成功し、馬謖の知力が上がった。
(知力+1→93 ※官職ボーナス含む)
城内の混乱に乗じて放った霍峻の連射が、
容赦なく呉軍の兵たちの頭上に降り注ぐ。
呉兵A「うわああっ!!
お、俺たちはどうすりゃいいんだ!?」
呉兵B「おかしな命令がいくつも届いて、
どれを信用していいんだかさっぱりだ!」
楚間者「(へっへっへ、馬謖さまの言った通りだ。
どれ、この調子でもっと混乱させてやるぞ)」
???「そこのお前、待て」
楚間者「へ、へい!? なんでしょう……」
ズバッ!!
孫尚香
劉備
孫尚香「チッ、このような計略を用いてくるとは。
楚軍め、狡い手を使ってくれるじゃないの!」
劉 備「しかしよく気付きましたな、こやつが間者だと」
孫尚香「すぐ判ったわ。雰囲気が全然違うもの。
計が成功して気が緩んでたんでしょう」
劉 備「まあ、何にせよ落ちる前に来れて良かった。
朱治・呂岱の増援も到着したようですな」
孫尚香「そうね。まず司令部へ行かないと」
呉郡からやってきた孫尚香と劉備は、
程普たちのいるであろう司令部へと向かった。
☆☆☆
孫尚香らと2万の増援の到着を喜ぶ程普たち。
だが、孫尚香は従兄弟である孫皎の死を知って
胸を締め付けられる思いに駆られた。
孫尚香
劉備
孫尚香「孫皎兄様……あの優しかった従兄様がっ!
許さない、楚軍め、絶対に許さない!」
劉 備「孫家は有力な血族を一人、失ったか……」
孫尚香「程普! 出撃するわ!
この怒りを、奴らに叩きつけてやる!」
程普
程 普「待ちなされ、お嬢。
確かにその激しい怒りは奴らを苦しめるだろう。
しかし、冷静さを欠いたまま戦っては、結局は
奴らにつけ込まれてしまうぞ」
孫尚香「冷静に怒れるほど器用じゃないわ!!
このまま篭城しろとでも言うの、程普!?」
程 普「部隊は出す。だが、お嬢には残ってもらう」
孫尚香「私以外に大将の任に相応しい者はいないわ!
一体、他に誰がいると言うのよ!?」
劉 備「フフフ、何をおっしゃる、ここに……」
孫尚香「黙ってろ、このスカポンタン!」
劉 備「す、すかぽんたん!?」
ふう、と一つ溜め息をつき、程普は言葉を紡ぐ。
程 普「よいかな、お嬢。
孫皎さまを失った今、呉軍に残っている
孫家の血族は、孫権さま以外には、孫皎さまの
弟御の孫奐どの、そして貴女しかおらんのだ」
孫尚香「兄上の子がいるじゃない!」
程 普「成人前の方を数えるわけにはいかんよ。
とにかく、お嬢には絶対に残ってもらうぞ。
……大将はわしが務めることにしよう」
孫尚香「程普が!?」
程 普「呉の重鎮たるわしであれば、相応しかろう。
お嬢、城の守りは頼んだぞ」
孫尚香「しかし……」
周泰
呂岱
周 泰「程普将軍の言うとおりです。
ここは我ら歴戦の将にお任せくださいませ」
呂 岱「孫皎さまのカタキを取ってきましょうぞ」
朱治
朱然
朱 治「わしも連れていってもらおうかの。
お嬢! この城、しっかり守るんじゃぞ」
朱 然「義父上が参るのなら、私も行きましょう」
孫尚香「……わかったわ。
程普、ここはあなたに任せましょう」
程 普「ありがたい……。では、参る!」
すでに月は11月に入っている。
呉随一の宿将であり、齢70になる程普は、
副将4人と1万5千の兵を連れ出撃した。
☆☆☆
程普隊は南門を出て、まず城に取り付いていた
霍峻隊を攻撃すべく、部隊を動かしていく。
馬良
霍峻
馬 良「程普隊1万5千が城を出ましたな。
どうやらこちらに向かってくる様子ですぞ」
霍 峻「構わずにいて結構です。
こちらは城への攻撃を継続します」
馬 良「放っておくと言われるのですか?
程普は呉きっての老練老巧な宿将です。
こちらも迎え撃たねば、無駄に兵を失いますが」
霍 峻「そちらは二人の王子に任せるとしましょう。
自分の歳の何倍も生きた相手ですからね。
この戦いの中で学ぶことも大いにあるでしょう。
また、張苞や関興などには、守る難しさを
勉強してもらいたいというのもありますし」
馬 良「……以前より思ってましたが、将軍は、
若い将たちの育成に力を入れておいでですね。
時には、兵を失うことさえ厭わないようにも
見受けられますが……」
霍 峻「流石、馬良どのは鋭いですね。
私は山越討伐の命を受けてからというもの、
若い方たちの育成を第一にしてきています。
戦いながら後の楚を支える人材を育てるのが、
私の役目だと思っていますから」
馬 良「……そのためには、自らが危険に陥るのも
仕方がないことだと」
霍 峻「ある程度は。本当に危なくなれば、
なりふり構わず勝つ戦いをしますけれども」
馬 良「そうですか……。
将軍がそういうお考えで戦うというのであれば、
私もそのつもりでいなければなりませんね」
馬良は、霍峻が大きな視野を持ちながら指揮を
取っていることに感心しつつも、その余裕を
程普に食い破られないかという不安も抱いていた。
霍峻は再び、会稽城に対して弩を連射。
だが、これは孫尚香によって察知されていた。
孫尚香
孫尚香「連射が来る! 各員、藁の束を掲げよ!
城壁の兵は大盾をもって矢を防げ!
盾のない者はすぐに建物の影に身を隠せ!」
矢は虚しく藁束に突き刺さっていく。
霍峻の連射による攻撃は失敗に終わった。
関興
関 興「流石は孫尚香どの。
弓腰姫のあだ名は伊達ではないな……。
だからこそ、俺の妻になるに相応しい方だ。
……ん、奴はなんだ?」
関興は、彼女の側に近付く一人の将を見咎めた。
あいにく関興には面識がなかったが、それは
孫皎の弟で孫尚香の従兄弟でもある、孫奐だった。
孫尚香
孫奐
孫尚香「ふう……。ん、奐?」
孫 奐「お見事! 従姉上、素晴らしい判断でした」
孫尚香「ありがとう。でも、私がもう少し早くここに
到着していれば、従兄様(孫皎)も死なずに
済んだかもしれないのに……」
孫 奐「……従姉上、貴女がいくら後悔し続けた所で
兄上は生き返ることはありません」
孫尚香「それは、確かにそうだけど」
孫 奐「兄上の魂……誇りやその生き様は、
従姉上にもしっかりと受け継がれたはずです。
ですから、前だけを向いて生きてください。
兄上も、そう望んでいるはずです」
孫尚香「奐……。そうね、私も孫家の者だもの。
過去のことより、未来をどうするかのことを
考えるようにするわ」
関 興「だ、誰なんだ!?
あんなに親しげな顔で話をしているなんて。
くそっ、何だか許せなくなってきた!」
関興は弓を引き絞り、孫奐に向けて矢を放つ。
その矢は、孫奐の腹部に突き刺さった。
孫 奐「ぐわっ!?」
孫尚香「奐!?」
孫皎に続き孫奐も!?
……と、それを見ていた呉軍の誰もが想像した。
孫 奐「し、心配はございません……。
めちゃくちゃ痛くはありますが、大丈夫です」
だが、孫奐の意識ははっきりしており、
傷は浅くはないが、命に別状はないようだった。
それでも、血族を傷つけられた孫尚香は
その怒りを爆発させる。
孫尚香「矢を放ったのは誰!?
私の弓で、射殺してやるわ!」
関 興「(う、うわ、なんかめちゃくちゃ怒ってるぞ)」
楚兵A「関興将軍が敵将を負傷させたぞーっ!」
楚兵B「見たか、呉軍め!
関興将軍の弓は天下一だぜーっ!」
関 興「あ、馬鹿、お前ら……」
孫尚香「……関興! お前かーっ!!」
関 興「ひっ!?」
滅多なことではビビることはない勇将関興も、
その般若のような眼光を自らに向けられては
一瞬身を竦ませてしまうのも無理もないだろう。
だが、孫尚香が矢を放つより先に、程普隊が
雷撃のような一撃を霍峻隊に叩きつけた。
周泰
周 泰「待て待てーっ!! 妹君のその怒り、
この周泰が肩代わりさせてもらうぞ!」
周泰の奮迅は、霍峻隊の一角を切り崩していく。
さらにこの時、霍峻隊は何者かの計によって
無陣状態に陥ってしまう。
霍 峻「そんな……!?
会稽城はすでに交戦状態になっているはず、
どこから計略を仕掛けてきたというのか」
馬 良「会稽でないのなら、呉郡しかありませんな。
同時に二都市を攻撃する作戦だということで、
呉郡に対する警戒が薄れておりましたな」
馬良の言ったとおり、この計の実行には
呉郡の庖統が暗躍していたという。
呉郡の城はまだ交戦状態にはなく、そのため
計略を実行する余地があったのだ。
無陣となった霍峻隊に、さらに攻撃が加えられる。
孫尚香「弩を一斉連射! 怒りを叩きつけよ!」
程普
朱然
程 普「見よ! これが孫呉の底力じゃーっ!」
朱 然「行くぞ、このまま押し込めっ!」
会稽城より孫尚香が弩の連射を放ったかと思うと、
程普が自ら奮闘、楚兵を次々と打ち倒していく。
さらに朱然も奮闘、霍峻隊は甚大な損害を受けた。
霍 峻「窮鼠、猫を噛むというが……。
窮しているのが虎であれば、噛まれる痛みも
尋常ではないということですか……」
楚 兵「お知らせ致します!
周泰の攻撃より続いている呉軍の攻撃で、
1万ほどの兵が死傷、現在の兵数は2万です」
霍 峻「承知した。まずは陣形の回復を急げ」
楚 兵「はっ」
霍 峻「……さてさて、一方的にただやられ続けるほど
こちらもヤワな軍ではないはず。
若い力に期待したいところですが……」
しかしその場を救ったのは、霍峻の期待した
若い力ではなかった。
金閣寺隊の1人の将が、程普隊の前に立ちはだかる。
48歳のその将が、大音声で名乗りを上げた。
髭髯龍
周泰
髭髯龍「楚軍髭髯軍団の髭髯龍、推参ッ!!
我が大刀、受けられる者は呉軍にいるか!?」
周 泰「むっ……!?
いつぞやの髭髯なんたらの片割れか!(※)
貴様のナマクラ刀など、私がへし折ってやる!」
(※彼は以前、髭髯鳳と一騎討ちを経験している。
詳しくは金旋伝92章参照)
突き進む程普隊の先頭を行っていた周泰が、
そのまま髭髯龍の挑戦を受けた。
髭髯龍:武力97 VS 周泰:武力93
たちまち、何合も打ち合う両者。
髭髯龍「ほほう、髭がないのになかなかやる。
髭を生やせばもっと強くなれるだろうに、
惜しい男だ。実に惜しい、髭があれば……」
周 泰「ええい、ヒゲヒゲうるさいわ、このっ!!」
ガギィィン!
髭髯龍「なかなかの勇者だ、それは認めよう。
だが、所詮は髭のないお主が、髭の皇子を
擁する我らに勝てるはずがないのだ!」
周 泰「な、なにぃ!?」
髭髯龍「今こそ見せよう、私の奥の手をっ!!
秘技! 三・刀・流!!」
髭髯龍は大刀の他、長刀、短刀を取り出し、
驚くべきことにそれを全て構えたのだった。
右手に大刀、左手に長刀。
そして髭に短刀を。
周 泰「普通、両手の次は口だろうが!」
髭髯龍「フフフ、素人の意見だな……。
口に装備したら喋れないであろうが!!」
周 泰「わ、訳判らん!」
髭髯龍は、三本の刀を装備し、構えを取った。
だが、周泰は意外に冷静だった。
周 泰「髭につけた刀など、操れるわけはない……。
どうせこれはこけおどしに過ぎぬだろう。
実質二刀流にすぎん……一気に行くッ!」
髭髯龍「そちらから来るか!
ならば、私の力を存分に思い知るがいいっ!」
髭髯龍はのけぞるような格好で周泰を迎え撃つ。
周泰から腕の動きは全く見えず、どの刀が
最初に振るわれるのかは判らなかった。
周 泰「(だが、使い慣れている大刀が一番先!
最初の一撃は、間違いなくそれだろう!)」
周泰は、髭髯龍の右手の動きに警戒しながら、
切りかかっていった。
そして、髭髯龍が放った最初の一撃は……。
意外! それは髭ッ!
周 泰「なっ!?」
髭髯龍「くらえいっ! 死髭舞剣!」
ズバッ!
髭髯龍は、首の動きで巧みに髭の先の短刀を操り、
思わず顔をかばった周泰の腕を傷つけた。
周 泰「ぐっ、ぐおおおおっ……。
ついに64個目の傷がついてしまったか」
髭髯龍「ほほう、よく腕で守ったな……。
何もしなければ、顔面で短刀を受け止める
羽目になっていただろうに」
周 泰「やられた……。まさか、ここまで髭を
巧みに操れるとは思わなかった……」
髭髯龍「どうだ、髭のありがたみがわかったか」
周 泰「くそ、悔しいが今回は私の負けだ。
ここは一旦引かせてもらうっ!」
髭髯龍「フフ、いい判断だ。そうした方がいい」
周 泰「くっ……。一時、後退するっ!」
髭髯龍が周泰を退かせたことで、霍峻隊は
陣形を回復する時間を得ることができた。
☆☆☆
呉軍の撹乱による無陣状態を回復させた
霍峻隊は、すぐに反撃の態勢を整える。
馬謖
霍峻
馬 謖「霍峻将軍! こちらは準備出来てます!」
霍 峻「馬謖どのか、ならばすぐに実行を!」
馬 謖「はっ、お任せを! 会稽城と程普隊の連携、
完全に崩してご覧にいれましょう!」
再び会稽城内に間者を放った馬謖。
その的確な指示の下、城内は混乱に陥ってしまう。
孫尚香「また、敵の間者か……! 劉備!
貴方は兵を連れ、混乱を収拾してきなさい!」
劉 備「は、はあ、了解です。
しかし今、私がいなくなってしまっては、
城壁の守りが辛くなるのではないですかな」
孫尚香「何言ってるの。
貴方がいてもいなくても変わりないわ」
劉 備「ひ、ひどっ」
孫尚香は劉備らを混乱収拾に向かわせる。
そのため、城壁の守りが若干手薄になった。
張苞
張 苞「よしっ、今だ! 弩を連射せよ!」
張苞は、守りの薄くなった所に連射を仕掛ける。
混乱している会稽城の兵は、次々倒れていった。
孫尚香「くっ、程普隊に攻撃を受けていながら、
なかなかやってくれるわ……!
呂拠! 霍峻隊に対する攻勢を強めよ!」
孫尚香は、弩兵を指揮していた呂拠に
兵員の配置換えを命じた。
呂拠
呂 拠「は、しかしながら、西方から連弩による
攻撃を続けている李厳隊も無視できません」
孫尚香「李厳隊など二流の将の集まりでしょう。
いいから、弩兵を動かしなさい!」
李厳
李 厳「……誰が二流かぁぁぁ!
馮習や張南ならともかく!」
馮 習「ええっ!?
李厳どの、それはあんまりなお言葉!」
張 南「そうですそうです!
我らも1.5流くらいはあります!」
李 厳「四捨五入すればどっちにしろ二流だろうがっ!
とにかく、この屈辱はすぐに晴らさせてもらう!
連弩隊! あの小娘を狙え! 発射ッ!」
李厳、怒りの連弩。
大量の矢が、孫尚香に向かって飛んでいく!
孫尚香「なっ……」
孫尚香、絶体絶命……!
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