○ 第六十七章 「汚い? 策略とはこういうものです」 ○ 
220年4月

夏が到来した。
山越討伐の任にある高昌陣の楚軍にも、
夏の日差しは等しく降り注ぐ。

 高昌

 『本当の夏が来た〜♪
  生きている眩しさ〜♪
  本当の夏が来た〜♪
  もう友達じゃない君がいる〜♪』

   魏光魏光   鞏恋鞏恋

魏 光「おや……珍しいですね。
    鞏恋さんが歌を口ずさむなんて」
鞏 恋「この歌詞の最後の部分って……。
    私と魏光の関係と同じだね」
魏 光「え、ええっ? ど、どういう意味ですか。
    もしかして、それって遠回しな告……」
鞏 恋「悲しい歌だよね、これ」
魏 光「な、なんでです!?
    かなり前向きな歌詞だと思いますけど!?」
鞏 恋「友達じゃないってことは、もう赤の他人。
    私と魏光も、そういう関係」
魏 光がぁぁぁぁぁんっ!!
鞏 恋「冗談。他人なんかじゃない」
魏 光「……じょ、冗談? そ、そうですよね!
    多少は関わり合いのある関係ですもんね!」
鞏 恋「ご主人様と下僕の関係」
魏 光「げ、げぼっ、げぼくぅ!?
    ……い、いいですよ、それで、別にいいっす。
    赤の他人よりは十分マシな関係っす……」

   金満金満   張苞張苞

金 満「今日もいじられてるなあ、魏光さん。
     あんな扱いで本人は構わないんでしょうか」
張 苞「マゾなんですよ。
    いじめられて快感を覚えるタイプっすね。
    俺にゃーわからん感情ですなー」

    関興関興

関 興「そうか?
    お前さんも結構Mの気があるかと思うんだが」
張 苞「ハァ? 何言ってんだよ関興。
    俺はそういうのとは真逆の性格だってよ。
    いじめで快感を覚えるなど、ありえん」
関 興「まあ待て、そう結論を急ぐな。
    いいか、目を閉じろ。そして想像してみるんだ」
張 苞「想像? 何をだよ」
関 興「ピンヒールを履き、皮のボンテージ姿に
    なった公孫朱さん。下着同然の姿だな」
張 苞「……うひ。いい、いいな、こりゃ」
関 興「お前は全裸で四つんばい状態になっている。
   そこにピンヒールで背中をぐりぐりと踏まれる」
張 苞「むむっ……痛いかもしれないが、幸せだ」
関 興「そして彼女はお前の尻を叩いてこう言う。
    『ワンとお鳴き、このドMの犬畜生』と」
張 苞「1回と言わず、何度でも言ってやる!
    ワンワン! ワオーン!
金 満「うわぁ……」
張 苞「……はっ!? い、いや、違う、違うんだ!
    今のは関興の言葉に乗せられただけで!
    大体、そういうシチュエーションになったら
    誰だってワンと鳴くだろうが!」
関 興「いや、それはどうだろう」
張 苞「なんだとー!?」
金 満「十人十色とは言いますけど……。
    性癖にも色々あるものですねぇ……」

   雷圓圓雷圓圓  魯圓圓魯圓圓

雷圓圓「何やら、楽しそうですねー」
魯圓圓「何の話をしてるんですか?」
関 興「ああ、張苞が変態のドM野郎って話」
張 苞違う!
雷圓圓「ええーっ!?
    ちょ、張苞さんがお尻に大根を突き刺して
    喜ぶような変態野郎だったなんて!?」
張 苞違うっちゅーに!
魯圓圓「お、お尻に大根を突き刺す……?
    いやだ、明日から大根食べられなくなるわ」
雷圓圓「明日から食べられなくなるんですか。
    それじゃ、今日食べれば問題なしですよ」
金 満「……えーと。
    一体どこからツッコめばいいんでしょうか」
雷圓圓「じゃあ、お尻に。さあどうぞ」
張 苞「待て、なぜ俺の尻を皆の方に向けようとする」
関 興「とりあえず尻から離れろ。
    どっから尻に大根とか出てきたんだ……」

   霍峻霍峻   馬良馬良

霍 峻「えー、お楽しみのところすいませんが。
    これから軍議を始めます。お静かに」
馬 良「はいはい皆さん。
    くっちゃべるのはそれくらいにしてください」
雷圓圓「はーい。わかりました、先生」
魯圓圓「先生?」
馬 良「はい、そこの二人も席についてー」
鞏 恋「はーい、先生」
魏 光「先生?」

    馬謖馬謖

馬 謖「きりーつ、れい、ちゃくせーき。
    ……なぜ私がこんなことを?」

霍 峻「さて、先の戦いで発生した負傷兵も回復し、
    作戦行動に支障がなくなりました。
    そこである作戦を開始することにします」
馬 良「名付けて、『尻穴カモン作戦』です」
金 満「な、なんなのですか、その作戦名は!?」
馬 良「いや、ただの冗談です。
    皆さんの話を聞いていて思いつきました。
    正しい作戦名は『山越軍鮎釣り作戦』です。
    略して『真夏の美人局大作戦』
金 満「全然、略されてないー!!」
馬 良「だまらっしゃい。
    とにかく、作戦名は変えませんからね」

作戦名を伝えられたものの、諸将は皆、
首をひねって考えることしかできなかった。

関 興「鮎釣り……真夏の美人局?
    さっぱり意味が分からないんですが」
張 苞「お、おお、関興でも分からないのか。
    じゃあ俺が分からなくてもしょうがないな!
    いやあ、良かった良かった」
関 興「良くないわ、馬鹿」
張 苞「ば、馬鹿言うなぁ!(涙目)」
霍 峻「えー、この作戦の内容ですが……。
    まずは南城に砦を築く部隊を派遣します。
    兵は5千、大将は向寵どのにお願いします」
向 寵「承知」
金 満「わわっ!? し、向寵どのもいたんですか」
向 寵「はい、初めのあたりからすでに」
金 満「そ、そうでしたか。全然、気付かなかった」
馮 習「我らもいるぞ!」
張 南「いるぞ!」
忙牙長「イルンダゾー」
馬 良「はい皆さん、自己主張はそのへんで」
魯圓圓「……すいません、ちょっと質問いいですか?」
霍 峻「はい、構いません。どうぞ」
魯圓圓「兵5千で砦を建設するんですか?
    数が足りなくて造営速度が遅れませんか。
    最低でも1万は欲しいと思います」
霍 峻「ごもっとも。確かにそうですね」
魯圓圓「でしたら……」
馬 良「しかしながら、兵数の変更はしません。
    兵5千で出発してもらいます」
魯圓圓「増やさない? それでは、護衛部隊を
    多く連れていくということですか?」
馬 良「いえ、護衛はつけません。
    向寵隊、単独で行ってもらいます」
魯圓圓「護衛無し!? そ、それじゃ、
    山越軍に返り討ちにされてしまいますよ!」
馬 謖ところがどっこい!
魯圓圓「な、何がどっこいなんですか」
馬 謖「いえ、それは機密事項ですので言えません」
魯圓圓「なんですか、それは!?」
霍 峻「作戦の詳細に関しては、今は伏せておきます。
    山越軍に知られるとまずいですからね。
    話しても支障のない段階になれば説明します。
    ですので今は、ただ命に従ってください」
魯圓圓「はあ……そういうことでしたら」
霍 峻「では向寵どの。砦建設部隊5千を率いて、
    南城の建設予定地へ向かってください。
    なお、行軍ルートはこの地図に記してあります。
    必ず、このルートを通るようにしてください」
向 寵「は、了解であります……。え?」

地図を見た向寵は、驚いた様子で霍峻の顔と
地図とを交互に見る。
それを見て霍峻は念を押すように言った。

霍 峻「いいですね? か・な・ら・ず、
    この通りのルートで行軍してください」
向 寵「は、承知しました……」
霍 峻「これは最重要機密事項ですから。
    他の人にはばらさないようにお願いします」

魯圓圓「(小声)あの地図、何が書いてあるのかな?
    向寵どのが驚いていたようだけど……」
雷圓圓「(小声)多分、あれですね。
    タルるートくんの絵が書いてあるんですよ」
魯圓圓「そりゃルート違いだって。絶対ない」

霍 峻「では、そのほかの皆さんへの命令です」
張 苞「お、待ってました!」
関 興「別働隊を動かすつもりか? 腕が鳴るな」
霍 峻「いえ、別働隊ではなく。
    向寵どのの建設部隊の壮行会を開きます。
    元気に送り出すための大きな宴会にするので、
    その準備をしっかりとお願いします」
張 苞「は?」
関 興「ちょ、ちょっと待ってください。
    宴会の準備が、命令だと言うんですか」
霍 峻「その通りです。
    祝いの宴です、皆で大いに楽しみましょう」

関興や張苞の他、そこにいた半分以上の者は
何をトチ狂ったのかと思ったに違いない。
戦いの前の宴など、軍紀が乱れる元にしかならない。

馬 謖ところがどっこい!

これこそが今回の作戦のキモであった。

    ☆☆☆

山越。
先の戦いで楚軍に大敗を喫した山越大王だったが、
この地にはまだ3万余の兵が健在である。

 「大王、大王ーッ!!」

   山越大王山越大王  山越武将A山越武将A

山越王「何ダネ。騒々シイデスヨー」
越将A「ハイ、高昌ニ潜リ込マセテイタ密偵カラ、
   伝書鳩ガ来タノデスヨー」
山越王「デンショ鳩?
   ソレハ普通ノ鳩ヨリモ、デリシャス?」
越将A「オゥ大王、食ベテハイケマセーン。
    潜入シテイタ密偵ノ、楚軍ノ様子ヲ伝エル
    手紙ヲ、ココニ届ケテクレタノデース!」
山越王「オー、I understand。
    デハ、ソノ手紙ヲ見セナサーイ」

その手紙の内容はこうだ。

 『楚軍は、高昌から南城に向け、兵5千を
 砦の建設部隊として出撃させる模様。
 現在、その部隊のためと称して宴会を開き、
 ドンチャン騒ぎをしている。いい酒だこりゃ』

どうやらこの密偵は、そのドンチャン騒ぎに紛れ、
情報の収集をしていたようである。

越将A「酒……ジュルリ」
山越王「ヨダレ拭キナサーイ」
越将A「オオ、失礼シマシター」
山越王「シカシ、楚軍メ。コチラニ来ル気デスカ。
    ダガ、砦ノ建設ナド絶対サセマセンヨー!
    5千程度、一気ニ潰シテクレマショウ!
    早速、出撃ノ準備ヲ進メナサイ!」

   山越武将B山越武将B  山越武将D山越武将D

越将B「マタデスカー?
    大王ノ命令ハ、イツモ突然デース」
越将D「全クデース。
    フォーリンラブト同ジデスネー」
山越王「黙ラッシャイ!!
    前回ノ恨ミヲ晴ラスノデース!!
    武将A&Bハ私ノ供ヲシナサーイ!」
越将A「ラジャー!デアリマス」
越将B「ショウガナイデスネー」
越将D「私ハドウシマス、大王?」
山越王「留守番ト、武将Cノ植毛ヲ続行デス!」

先に雷圓圓にハゲにされた山越武将Cは、
埋め込み技術による植毛手術を受けていた。

山越大王は2人の将と2万の兵を連れ出撃。
南城へ向かってきていると思われる楚軍の
建設部隊を探しながら西進する。

 山越軍西進

越将A「敵部隊ハ、マダ見ツカリマセーン」
越将B「本当ニ此方ニ来テルンデスカー」
山越王「オソラクハ向カッテ来テル最中デスネ。
    マア、我等ガ西ニ向カエバ、ソノウチ嫌デモ
    ブツカルハズデスヨー」
越将A「大王ガソウ言ウナラ間違イナイネ」
越将B「大王ハ我々ノ中デハ知力No.1
    (知力39)デスカラネー」

しかし行けども行けども、向寵の隊は現れない。
南城はとっくに通り越し、高昌の地を進んでいく。

 山越軍西進しすぎ

越将A「コノ辺ハ、コノ前ニ負ケタ所デスヨー」
越将B「チョットオカシイデース。
    コンナ所マデ来テモ敵ガ居ナイナンテ」

その時、山越大王の元に伝書鳩が飛んできた。

山越王「オゥ、美味ソウナ鳩デース」
越将A「大王、食ベチャ駄目デス!
    密偵カラノ手紙ヲ持ッテマスヨ」
山越王「オ、オオ、イッツアジョーク。冗談デース。
    サテ、ドンナ報告内容デスカネー」

その手紙には『高昌の陣から2部隊4万が出撃。
大王様には気をつけられたし』とあった。

山越王「新シイ部隊ガ出撃シテキタ……。
    シカシ、マダ建設部隊ハ来テナイ。
    トイウコトハ、コノ部隊モマダ来ナイ!」
越将A「大王、ソレ何カ、オカシイデスヨー」
越将B「ソウソウ、何デ建設部隊ガ来ナイデスカ」
山越王「ソンナコト聞カレテモワカリマセーン!」

 「その疑問、教えてやろうか」

山越王「オオ、助カリマース!
    是非トモTeach Me、プリーズ!」
越将A「待ッテクダサイ大王、今ノ声ハ?」
越将B「ドコカラ聞コエテ来タデスカー?」

    張苞張苞

張 苞「テメエらは罠にかかったってことだよ、
    この山越野郎ども!! バーカバーカ!」

その張苞の声を合図に、鞏恋・金満の部隊が
大王らの前にその姿を現した。

    ☆☆☆

その少し前の、高昌。

    霍峻霍峻

霍 峻「山越大王隊、2万が向かってきています。
   そのため、これより迎撃部隊を出撃させます。
   部隊は、鞏恋、金満の2部隊2万ずつです。
   副将は前回と同じ配置にします。
   鞏恋隊に、魏光、魯圓圓、雷圓圓、忙牙長。
   金満隊に、張苞、関興、馮習、張南」

   張苞張苞   関興関興

張 苞「センセー、質問ー」
関 興「センセー?」
霍 峻「はい、張苞君。どうぞ」

霍峻は、手を挙げた張苞に発言を許可する。

張 苞「先に出ていった向寵隊はどうしたんスか」
関 興「あ、それは俺も知りたい」
霍 峻「ああ。彼らなら、今頃は南昌からこちらへ
    戻っている最中でしょう」
張 苞「は? 南昌つーたら、こっから北じゃん」
関 興「南城へ砦を築きに行ったはずでは……?」
霍 峻「彼らには、南昌を経由して南城へ向かう
    ルートを進むように言ってあります」

 進行ルート

    金満金満

金 満「……やはり、そういうことでしたか。
    護衛もない兵5千の建設部隊を、そのまま
    送り込むわけはないと思ってはいましたが」
張 苞「あ? よくわかんね。
    なんで、こんな道草を食わせてんだ?
    まっすぐ行かせりゃいいじゃないか」
霍 峻「この建設部隊は、本気で砦を作るつもりで
    派遣したわけではありませんからね」
関 興「なるほど、囮役ですか。
    それも、戦闘で兵を失わせることもなく、
    安全におびき出す……巧妙な手口だ」
霍 峻「そう、囮の鮎(向寵隊)を追い払おうとして
    鮎(山越軍)が釣り上げられてしまう作戦。
    これが、『山越軍鮎釣り作戦』の全貌です」

    馬良馬良

馬 良「ヤれそうな美人(向寵隊)に誘われたので、
    フラーッと彼女の部屋まで着いていってみたら、
    いきなりそこに筋肉質の男(楚軍本隊)が現れ
    『ワレ、誰のスケに手出しとんじゃ、アアン?』
    と、金を脅し取られる美人局のようなもの。
    そこから別名『真夏の美人局大作戦』」
関 興「なるほど、そういう意味でしたか。
    しかしまあ、汚い手というか、なんというか」

    馬謖馬謖

馬 謖「汚い? 策略とはこういうものですよ」
関 興「まあ、確かにそうなんだが」
霍 峻「出撃前に宴を催したのも、山越の密偵に
    建設部隊派遣の情報を知らせるための策です。
    もっとも、それは馬謖の発案なのですが」
馬 謖「フ、やはり私の策は有効だったようで。
    フフフ、あーっはっはっはぶぇほごふげへ」
馬 良「調子に乗って高笑いなどするからむせるんだ」

張 苞「ふんふん、なるほどな……。
    向寵どのが囮になっておびき出した所を、
    俺たちが叩くっていうことなのか」
霍 峻「そういうことです。分かりましたか」
張 苞「うぃーす、わかりました先生!」
霍 峻「結構、それでは各自、出撃準備を……」

 ガタンッ

霍峻が話を終えようとしたその時、それまで黙って
椅子に座っていた鞏恋が、いきなり床に倒れこむ。

   鞏恋鞏恋   魏光魏光

鞏 恋「……うう」
魏 光「ど、どうしたんですか鞏恋さん!?」
鞏 恋「いや、何でもない……」
魏 光「いきなり倒れて、何でもないはないでしょう。
    どこか、体調でも悪いのでは……」
霍 峻「お待ちなさい」

心配する魏光を手で制した霍峻。
鞏恋の近くまで寄って側に立ち、話しかける。

霍 峻「鞏恋さん」
鞏 恋「んー」
霍 峻「寝てましたね?」
鞏 恋「そうとも言う」

その受け答えで、周りの者たちの緊迫感が、
あっという間に消滅した。

霍 峻「全く、貴女という人は。
    バケツを持って廊下に立ってなさい!」
鞏 恋「はーい」
霍 峻「はぁ、頭が痛いですよ、もう……。
    皆さんも真面目に取り組んでください。
    こんなでは社会に出てから困りますよ!」

関 興「こちらも先生気分が抜けてないようで」
張 苞「全く、やれやれだぜ」
関 興「こら、お前が発端だろう」

こうして、迎撃部隊は高昌を出撃した。
同時に、囮の役目を無事果たした向寵隊には、
陣への帰還命令が出された。

    ☆☆☆

回想を終え、場面は再び戦場へ。

   張苞張苞   山越大王山越大王

張 苞「……という訳だ! わかったか!」
山越王「全然、意味ワカリマセーン」
張 苞「ちっ、これだからバカは困る!
    覚悟しやがれこのバカ山越どもーっ!」

   関興関興   金満金満

関 興「……自分よりバカな奴には容赦ないな」
金 満「は、ははは……。とにかく、攻撃開始〜!」

   鞏恋鞏恋   魏光魏光

鞏 恋「こちらも攻撃開始」
魏 光「了解! 全軍、突っ込め!」

 楚軍VS山越軍

2万の山越軍に対し、倍の数で襲い掛かる楚軍。
前回はそれでも苦戦させられたが……。

鞏 恋「雷! 今回は先手必勝!
    出し惜しみせずにやっておしまい!」

    雷圓圓雷圓圓

雷圓圓「はい〜! 了解であります〜!
    ゴールデンハンマー、必殺もぐら叩きの舞い!」
鞏 恋「一気に突破せよ!」

鞏恋・雷圓圓の突破でまず先制。
山越軍は山越大王、山越武将が奮迅で盛り返すも、
今度は張苞・関興が突進で押し返す。

関 興「前回みたいに止められると思うな!
    今回は突進だからな!」
張 苞「おまけに今回はリミッター解除だー!
    ウリィィィィィィ!!
関 興「それ、後で戻すのが面倒なんだけどな」

   山越武将A山越武将A  山越大王山越大王

越将A「大王ー! ウリウリ言ッテル奴ガ
    突ッコンデ来ルデスヨー!」
山越王「ソンナニ慌テルコトハアリマセーン。
    歩兵兵法ナド我ラニ通用シマセーン!」
越将A「今回ハ騎兵兵法デ来タミタイデース」
山越王「ソ、ソレハ一大事デース!
    ドウシヨウ、ドウシヨウ!」
越将A「オゥ、ソンナニ慌テナイデクダサーイ」

関 興「見たか山越野郎ども!
    これが関羽が次子、関興の突進だ!」
張 苞「ウリィィィィィィ!!」
関 興「あ、おい張苞!? どこまで行く気だ!
    もう山越軍は突き抜けてしまったんだから、
    方向を変えないと……」
張 苞「ウリウリウリィィィィ!!」
関 興「言って理解できる状態じゃないか……。
    ええーい、待て! 止まれ、張苞!」

5千近くの山越兵をなぎ倒した金満隊だが、
張苞が暴走したままになってるため、
そのまま方向を変えずに前進し続けていく。

 楚軍VS山越軍 2

   山越大王山越大王  山越武将B山越武将B

山越王「チャンス! 奴ラヲ追ウノデース!
    背後カラ追イ、ガバット押シ倒シテ……
    モトイ、ブチ倒シテヤリナサーイ!」
越将B「ラジャー!」

山越大王は突き抜けていった金満隊を
追うように指示、山越軍は歩みを進める。

しかし、そこには巧妙な罠が待っていた。

山越王「ソレ、追エ追エー」
越兵A「待テ待テー」
越兵B「ソイヤソイヤー」

 ズボッ ズボッ

越兵A「ウワー! 落トシ穴ダー!」
越兵B「ミーモ落チター! ヘルプミー!」
山越王「何ヲ騒イデマスカー!
    片足ガハマッタ程度デスヨー!?」
越兵A「ア、本当、浅イ穴ダッタ……。
    デモ、ナンカ、変ナ感触ガスルデス」
越兵B「シカモ、クサイ臭イガシマース……。
    ゲッ、穴ノ中ニ、ウンコガ!?」
越兵A「小便ノ臭イモシマース!!
    ウワー、バッドスメル、エンガチョー!」
越兵B「汚イデース……。ヤル気ダウンデスヨ」
越兵A「シャワー浴ビタイデスネ……。
    モウ、戦ウノヤメテ、カエリマショ」
越兵B「オーイエス、Let's ゴーホーム。
    マイハニーガ待ッテマース」

落とし穴にハマり、糞尿に足を突っ込んだ山越兵。
その数3千余りは、やる気をなくし部隊を去った。

金 満「やった! 私の穴罠が成功しましたよ!」
関 興「……なんつー罠ですか。
    いくら時間がなくて、あんな小さな穴しか
    開けられなかったとはいえ……」
張 苞「全く、品のない兵法だぜ」
金 満「あ、ちなみにこの罠の発案者は姉上です」
関 興「まさに天才的な罠だ! 全く素晴らしいッ!」
張 苞「おれたちが全く考えも付かないような、
    そんなものすごい策を平然と思いつくッ!
    そこにシビれる! あこがれるゥ!」
金 満「ふふふ、しかし流石は姉上。
    姉上が使われていたこのアイデア帳、
    ためになることがいっぱい書いてあります。
    黙って借りてきた甲斐があるというものです」

    ☆☆☆

   金玉昼金玉昼   金旋金旋

金玉昼「へくちんっ」
金 旋「どうした玉、花粉症か」
金玉昼「んーん、別にそういう訳では……。
    それより、私の落書き帳を知らないかにゃ」
金 旋「落書き帳?」
金玉昼「私がたまに気分転換で落書きする帳面にゃ。
    今年になってから使ってなかったんだけど、
    久しぶりに落書きをしたくなったから
    ずっと探してるんだけどにゃー」
金 旋「あー、あるある、そういうの。
    普段は使ってないで、急に必要に思って
    探すけど、それが見つからないんだよなぁ」
金玉昼「むー。誰か持ってったのかにゃー」
金 旋「ははは、んなわけないって。
    落書き帳なんか持ってってどうするんだ」
金玉昼「それはそうだけど……」
金 旋「探して出てこないなら仕方ないだろ。
    落書きなぞ、別なのに書けばいいじゃないか」
金玉昼「うー。でもにゃー。あの帳面には、
    けっこうアホなこと書いてあるからにゃー。
    あまり人には見られたくないのにゃ」
金 旋「ふうん、アホなことねえ……。
    一体どんなことが書いてあるのやら」
金玉昼「あー! ちちうえ!
    見つけても絶対に中を見ちゃダメにゃよ!」

    ☆☆☆

下肢を汚物で汚した山越の兵たちが、
不満を漏らしながらゾロゾロと帰っていく。
そんな中、呆然とそれを見ている山越大王。

    山越大王山越大王

山越王「オ、オオオ……。
    ウンコニ、ウンコニヤラレルナンテ……。
    ナンテコッター! パンナコッター!

山越大王は混乱した。
だが、たかが兵が数千ほど去った程度では
こんな状態になったりしない。

山越王「ヌオー。ソレニシテモ、鼻ガ曲ガルー」

彼が混乱した理由。それは、『臭い』だ。
糞尿の異様な臭気が辺りに漂い、山越大王の
正常な判断力を奪っていたのである。

馮 習「ムッ、山越大王が混乱している!」
張 南「よし、やるなら今だ!」

金満隊の馮習と張南は、混乱し無陣状態となった
山越軍の側背に左右から回り込み、攻撃をかけた。

 楚軍VS山越軍 馮習&張南のトドメ

馮 習「関興将軍がウンコをしたらー!」
張 南「ウンコー将軍だー! どうりゃあああ!」

二人の将は同時に奮闘を発動させ、
山越軍の全てを落とし穴の地帯へ押し込む。

  山越武将A山越武将A  山越武将B山越武将B

越将A「ウワー! 押スナー!」
越将B「汚イ所ニ押シ込ムナー!」

馮 習「見たか、これぞ我らの兵法、『糞尿』!」
張 南「それを言うなら『奮闘』でしょうが!」

見事なボケとツッコミ。
彼らの合体奮闘クリティカルアタックは、
残る山越軍全てを糞尿地帯に叩きこみ、
全ての将兵のやる気を萎えさせた。

山越王「……帰ル! モウ帰ル!
    コンナ汚イ奴ラト戦ッテラレルカー!」

越将A「待ッテー! 大王、待ッテ!」
越将B「置イテイカナイデー!」

山越大王、山越武将らは逃げ帰った。
楚軍は、山越大王の部隊を壊滅させ、帰ろうと
している山越軍の兵、1万近くを捕虜とした。

霍峻らの戦略、そして現場の将の活躍で
楚軍は大勝利を得たのだった。

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