○ 第六十三章 「高きによりて低きを見れば」 ○ 
220年01月

1月半ば頃。
金旋より山越討伐の命を受けた霍峻は、
自らが指名した将たち(鞏恋、魏光、関興、張苞、
魯圓圓、雷圓圓、馬良、馬謖、金満、向寵)
を引き連れ、柴桑から南に行った所にある
高昌の陣へと入った。

そこで待っていたのは、以前に霍峻らと共に
一緒に山越軍と戦った、馮習と張南だった。

馮 習「お久しぶりです、馮習です。
    最近はここの風習にも慣れてきました」
張 南「同じくお久しぶりです、張南です。
    最近、長男が誕生しました。張南の長男です」

   霍峻霍峻   馬良馬良

霍 峻「また、お二方とご一緒することになりました」
馬 良「お二人ともお元気そうでなによりです」

そう言って二人と握手を交わす霍峻と馬良。
しかし、それ以外にやってきた者の中には、
彼らと全く馴染みのない者も当然いる。

   張苞張苞   関興関興

張 苞「なんなんだ、この駄洒落コンビは?
    つまんねー駄洒落を言いやがって」
関 興「全く、センスのカケラもない。
    こんなのが面白いとでも思っているのか」

初対面の張苞と関興につまらないと言われ、
馮習と張南は色めきたった。

馮 習「な、なにぃ? つまらないだと!?」
張 南「取り消せ! その言葉、取り消せーっ!」

   金満金満   馬謖馬謖

金 満「お、落ち着いてください、二人とも」
馬 謖「本当のことを言われたからと言って
    そう怒らなくてもいいではないですか」
馮 習「ほ、本当のことってなんだーっ!」
張 南「こいつらは俺たちの顔を潰すようなことを
    言ったのだ! 許してはおけん!」
張 苞「は、顔を潰す? 顔出ししていないくせに、
    どうやって顔を潰すというんだ?」
関 興「いや全くだ。顔出ししていない方々は、
    身の程というものを弁えてほしいものだな」
馮 習「お、おのれ、気にしていることを……。
    もう許さんぞ! いくぞ張南!」
張 南「おう、顔出ししている奴らがなんだ!
    俺たちの恐ろしさを知るがいい!」

揃って張苞と関興に殴りかかる二人。
しかし、張苞は馮習、関興は張南の、それぞれ
殴りかかってくるその腕を取ったかと思うと、
ぐるぐると遠心力をつけ振り回す。

馮 習「うわー!? 離せー!」
張 南「目が回るー!!」
関 興「ならば離してやるよ! 行くぞ張苞!」
張 苞「おうよ関興! 地獄のコンビネーション!」

 びったーん!

二人がそれぞれの腕を離すと、その勢いで
馮習・張南は中央で鉢合わせしてしまった。

馮 習「むぎゅう……や、やられたー」
張 南「なんて恐ろしい奴らなんだー」
関 興「フッ、俺たちに勝とうなんて……」
張 苞「100万年早いぜ」

 パチパチパチパチ……

   雷圓圓雷圓圓  魯圓圓魯圓圓

雷圓圓「わー、面白いアトラクションでしたー」
魯圓圓「え!? 今のそうだったの!?」

   鞏恋鞏恋   魏光魏光

鞏 恋「着いたばかりの私たちを和ませようと、
    身体を張った見世物をやるなんて。
    なかなか、侮れない……」
魏 光「い、今のどう見ても本気でしたけど」
鞏 恋「うん、本気の見世物ってすごい」
魏 光「いやその、そういう意味じゃなくて」

金 満「えーと、そろそろ真面目な話しませんか?
    遊びに来たわけじゃないんですから」
霍 峻「そうですね、山越討伐のための基本戦略
    などを話し合うとしましょう」
魏 光「向寵どのがいませんけど、いいんですか。
    いつのまにかいなくなってるんですが」
霍 峻「彼には色々と雑用をやってもらっています。
    今はいなくても特別、問題はありません」
馮 習「向寵も顔出しNG仲間だしな」
張 南「では、我らは周辺の地図を持って参ります」
金 満「二人とも、もう復活してるし……」
馮 習「脇役キャラたるもの、出番は逃しません」
張 南「逞しくなければ生きていけないのです」

持ってきた地図を中心に集まり、皆で相談を始める。
(なお物語の都合上、その人物の知力を
併記しております。アイテム・爵位補正付)

 山越近辺

霍 峻(知力:72)この高昌から山越の本城まで、
    このように、かなりの距離があります。
    単に兵を率いて攻めかかればそれでよい、
    という訳には行きませんね」
馬 良(知力:93)行軍中に士気が低下し、
    辿り着く頃には気力が萎えているでしょう。
    ここは、中継基地が必要になってきます」
馬 謖(知力:92)中継基地が建設できるのは、
    ここ、南城の地になります。
    この地に、陣なり、砦なりを築き、そこから
    山越の本城を叩く、というようになりますな」

 山越の前に砦

魏 光(知力:53)しかし、基地を作ると言っても、
    山越軍がそれを見逃すとも思えませんが」
魯圓圓(知力:66)そうですね……。
    無防備な建設部隊はかっこうの的です。
    建設部隊を守る部隊が必要になるでしょう」
金 満(知力:75)山越軍は6万ほどいます。
    動員してくるのは3万くらいと考えても、
    建設部隊を完全に守りぬくのは、容易では
    ありません。相手の倍は必要でしょう」
関 興(知力:60)となると……。
    ここにいる兵は6万。そのうち2万を建設部隊と
    すると、守備隊のための兵士が足りません。
    兵を増やすか、何か策が必要になるでしょう」
張 苞(知力:46)えっ、何? 関興、お前……!?
    今の一連の話、聞いてて分かったのか!?」
関 興「おいおい。これくらい分からんでどうする」
張 苞「マ、マジ? 雷ちゃんは分かる?」
雷圓圓(知力:53)あ、はぁ、なんとか。一応は」
張 苞「え……もしかして……。
    俺ってバカキャラ?
関 興「ようやく気付いたのか?」
張 苞「魏光さんだって分かってるというのに……」
魏 光「まあ、正直いっぱいいっぱいだけどな。
    それでも、把握してないと色々と支障出るし」
張 苞「こ、これが知力50の壁か……。
    この中で俺だけがバカだっていうのか……」

馮 習(知力:38)我らも50以下なわけだが」
張 南(知力:42)どうやら、彼の中では
    我らはいないことになってるようだ……」

バカが確定し、がっくりとうな垂れる張苞。
その肩に、ぽんと鞏恋の手が乗せられた。

鞏 恋(知力:44)……張苞」
張 苞「そ、そうだ! 鞏恋さんがいたんだ」
鞏 恋ば〜か
張 苞「な、ななななっ!?
    鞏恋さんにバカと言われるなんて……!!
    そういう鞏恋さんは分かってるんですか!?」
鞏 恋「フフ……。半端者な張苞とは違うから」
張 苞「半端者!? どういうことっすか、そりゃ」
鞏 恋「私は……。
    最初から話自体を聞いてない
張 苞「なっ……!? なんてこった!
    確かに、分からんなら話を聞いてても無駄!
    そ、そうか、俺は中途半端だったんだ……!」
鞏 恋「フフフ……悟ったなら、遊ぼう」
張 苞「はい、喜んで!」

 アハハ…… ウフフ……

霍 峻「ふう……。仕方がない。
    彼らは放っておいて、話を進めましょう」
魏 光「(うわぁ、あっちに行きたい……)」
馬 良「はい、話を聞いている人は集中ですよ」
魏 光「は、はい」
霍 峻「関興どのの言う通り、真っ正直な作戦では
    今の兵数で遂行するのは難しいでしょう。
    ですから今回は……」

その時、ドタドタと足音がして、
息せき切って駆け込んできた人物があった。
前年から仕え始めた、南蛮出身の忙牙長である。

忙牙長「ハァー、ハァーッ」
馮 習「忙牙長? どうしたんだ」
張 南「廊下は走るなと言っているだろう」

忙牙長は息を整えると、何やら身振り手振りで
何かを伝えようとし始めた。

忙牙長「ウホッ、ウホッ」
馮 習「なになに……山? その山を越える……。
    何? 越えるではないのか?」
張 南「越えるじゃなくて……ああ、越か。
    それを足す……山と越を足して……。
    おお、山越のことか?」
忙牙長「ウホ」
馮 習「山越が? 走る……走るじゃない。
    こっちにやってくる、か」
張 南「なるほど、山越がこっちにやってくる。
    お前が言いたいのはそういうことか」
忙牙長「ウホウホ、ウホ」

魏 光「こ、こいつ、言葉が喋れないのか?」
忙牙長「イヤ、話セルゾ」
魏 光「だぁっ! それじゃ今のジェスチャーは
    一体なんなんだー!!」
忙牙長「オ約束トイウ奴ダ」
馮 習「うむ、掴みは良かったぞ、忙牙長」
張 南「お前のステージデビューももうすぐだな!」
魏 光「も、もういやだ、この人たち……」

馮 習「魏光どの、泣いている暇はありません。
    山越軍がこちらに向かっているとのこと、
    迎撃の準備をしなくては!」
張 南「霍峻どの、ここは我ら二人に下知を!
    我らの真の恐ろしさを、奴らに存分に
    教えてやりましょう!」
関 興「さっきの今じゃその言葉に説得力ないぞ」
馮 習「ぬうっ、それは一生の不覚!」
張 南「我らはどうあっても引き立て役にしか
    ならぬというのかっ! 無念だっ!!」
魏 光「もういや、このお笑い軍団……」

さて、ここで高昌から目を東に向ける。
山越大王率いる山越軍2万は、本城を出撃した後、
高昌の北にある南昌の砦を目指していた。

 山越軍侵攻

    山越大王山越大王

山越王「HAHAHA!! 久シブリニ楚軍ニ対シ
    喧嘩ヲ高値デ販売シテアゲマース!!」

  山越武将A山越武将A  山越武将B山越武将B

越将A「今回ハアノ虎髭ガイマセンカラネー!!」
越将B「髭ガイナイ楚軍ナド、BABYノARMヲ
    ツイストスルヨウナモノデース!!」

山越武将二人を引き連れ、山越大王は上機嫌で
西へ向かって軍を進めていくのだった。

以前に楚領の桂陽を攻めた山越軍は、楚軍の
虎髭の総大将の指揮する部隊の前に敗れ去った。
その大将、その実は黄祖なのだが、それ以来、
山越軍では彼を虎髭や髭と呼び、その強さ、
その威勢に対して恐れを抱いていた。

だが、その黄祖は、北の廬江へと去っていた。
今、彼らには恐れるものは何もないのだ。

越将A「BUT、ベリーリトル不安デース。
    兵2万ダケデ大丈夫デースカ?」
越将B「HAHAHA! YOUハ心配症ダナ!」
山越王「安心シナサーイ。
    既ニ、ミスターCガ兵1万ヲ率イテ、
    我々ヲ追イ掛ケテ来テイルハズデース」
越将A「OH! ソレハベリーグッドデース!」

山越大王の部隊を追い掛けるように、
山越武将Cの1万の部隊が行軍していた。

 山越二段構え

山越王「フフ、ミー達バカリニ気ヲ取ラレテルト、
    後続ノC隊ニずぶりトヤラレテシマウ、
    2段構エノ作戦ナノデース!!」
越将B「ワンダホゥ!! ジーニアス大王!
    YOUハ、マキシマム策士デスネー!!」
越将A「YEAH! コレデVICTORYモ同然!!」
山越王「サア、山越軍ノ恐ロシサヲ、タップリト
    教エテアゲマスヨー! HAHAHA!」

    ☆☆☆

   霍峻霍峻   金満金満

霍 峻「まあ一応、その動きはこちらも掴んで
    いる訳なんですけどね」
金 満「え? 誰に言ってるんですか?」
霍 峻「いや、気にしなくて結構です。
    さて、山越軍が南昌に向かっていますから、
    当然こちらとしては、迎撃部隊を出します」

   魯圓圓魯圓圓  魏光魏光

魯圓圓「無理に迎撃しなくてもよいのでは?」
魏 光「別に南昌がやられても痛くないですよね」
霍 峻「いえ。今回、迎撃部隊を出すのは、南昌を
    防衛するためではなく、山越討伐のためです」

   馬良馬良   馬謖馬謖

馬 良「なるほど、ここで数を減らしておけば、
    今後の戦略も立てやすくなりますね」
馬 謖「山越軍の兵が減れば、中継基地建設も
    もっと楽にやれるでしょうし」
霍 峻「という訳ですので、皆さんには山越軍と戦い、
    これを殲滅してもらうことになります。
    部隊割りですが、2部隊、2万5千ずつで。
    大将は、一方は金満どの、もう一方は……」

 「鞏恋どので」

    鞏恋鞏恋

鞏 恋「せっせっせーのよいよいよい……。
    ん、どしたの? 皆こっち見て」
馬 謖「(不安だ……)」
魏 光「(鞏恋さんが大将なんて、何時以来だ?)」
馬 良「霍峻どのはどうされるのです?」
霍 峻「私は、今回は出ませんので。
    兵1万と共に、予備戦力として残ります」
馬 謖「戦力を余すのですか?
    ここは、全て投入して一気に叩く方が、
    部隊の損害は小さくて済むと思いますが」
霍 峻「いえ、今回はこれでいいんです。
    ……今回の山越討伐ですが、ただ山越を
    討てばいいとは、私は思っていません」
馬 謖「どういう意味ですか、それは」
霍 峻「今回の山越討伐の任にあたって、
    なぜ私が貴方がた、若い将を選んだのか。
    それが、答えになります……。
    さあ、それより、早く迎撃部隊の編成を。
    山越軍は待ってはくれませんよ」
魏 光「よ、よく分からないが……。
    鞏恋さん! 遊んでないで、行きますよ!」
鞏 恋「はーい、いってらっしゃい」
魏 光「貴女も行くんですよ!」

迎撃部隊として編成された金満、鞏恋の二隊。
金満隊には、関興、張苞、馮習、張南が、
鞏恋隊には、魏光、魯圓圓、雷圓圓、忙牙長が
それぞれ副将として付き従う。

金 満「では、参りましょう」
関 興「あちらの隊にならなくてよかった。
    しかしこっちには、この二人が……」
張 南「ええ、ちょうなん(そうなん)です」
馮 習「ふう、しゅう(しょう)がないですよ」
張 苞「同じような駄洒落を繰り返すな!」

鞏 恋「じゃ、行きますか」
魯圓圓「は、はい、鞏恋お姉さまっ!
    お、お姉さまの指揮のもとで戦えるなんて、
    私、もう最高の気分ですっ!」
雷圓圓「んー。楽しくなりそうですよねぇ。
    ねえ、忙牙長さん♪」
忙牙長「ソウダナ。女ト一緒デ楽シイゾ」
魏 光「わ、私がしっかりせねば……!」

1月下旬。両隊は高昌の地内で山越大王の
部隊と相対し、これと戦端を開いた……。

    ☆☆☆

 楚軍5万VS山越2万

金満隊の関興と張苞が、まず先陣を切った。

   関興関興   張苞張苞

関 興「張苞、ダブル奮闘アタックだ!」
張 苞「俺に命令すんな! オラ、行くぞっ!」

口では言い合っているが、身体は正直……
もとい、なぜか息の合う二人の合体攻撃。
だが、その攻撃は山越大王に防がれてしまった。

    山越大王山越大王

山越王「フッ、効カヌ!」
張 苞「な、なにィ!? 防がれただと!?」
山越王「フフン、VERY SWEETデスネー。
    ソンナ兵法、奮迅ヲ得意トスル我ラニ
    効クト思ッテイルノデスカ、オ馬鹿サン」
関 興「お、おのれぇ! 言わせておけば!」

 「ならばこれはどうかな!?」

馮 習「馮習(Fusyu)の『F』!」
張 南「張南(Tyounan)の『T』!」
二 人「そんな二人のFT(奮闘)アターック!!」

先鋒の関興・張苞の後ろに回されていた
馮習と張南が、合体奮闘攻撃を仕掛けた。

山越王「オオオオッ!? コ、コレハッ!?」
関 興「き、効いているッ!?
    奴らの駄洒落攻撃が、効いているッ!」
張 苞「こ、こいつは、信じられねえ……!」
馮 習「フハハハハハ!! 見たか我らの力を!」
張 南「山越大王! 貴様の命運もここまでだ!」
山越王「チッ……。全ク、ヤッテクレマシタネー。
    今ノハ痛カッタ……痛カッタゾーッ!
張 苞「や、やべえ、怒らせたか!?」
関 興「反撃が来るぞっ!」
馮 習「ひ、ヒイイ! 張南、後は任せた!」
張 南「うわっ!? 馮習どの、ズルい!」
山越王「食ラエッ!! 山越名物、奮ッ迅ッ!!」

馮習・張南のダブル奮闘は兵3千を倒したが、
山越大王の奮迅は、単独でも兵4千を倒された。

馮 習「どわああああ!」
張 南「あばばばばば!」
関 興「ぐわーっ!? なんて奴だー!」
張 苞「流石に大王なだけはあるぜー!」

数では圧倒的有利に立っている楚軍だったが、
屈強な山越軍の前に損害を増やしていく。

   鞏恋鞏恋   魏光魏光

鞏 恋「敵もなかなかやるもんだね」
魏 光「感心してる場合ですかー!」
鞏 恋「それじゃ、現状打破のため。Go、パピィ」
魏 光「だ、誰がパピィですか。
    私は犬じゃありませんよっ!」
鞏 恋「Go、パピィ。帰ってきたら撫でてあげる」
魏 光「パピィ行きまーす!! 突進〜!!」

鞏恋隊は魏光の突進などで山越大王隊を
側面から攻撃し、その兵を減らしていく。

だが、また山越大王が怒った。

山越王「フフフ、初メテデスネ……。
    ココマデ私ヲコケニシタ、オ馬鹿サン達ハ。
    ……絶対ニ許サンゾ、虫ケラ共!!
    ナブリ殺シニシテヤリマース!!」

 ズガーン!

魏 光「のわー!? また奮迅だーっ!!」
鞏 恋「なかなか手強いね」

鞏恋隊も奮迅によって兵を減らされる。
このままではどれくらいやられてしまうのか、
そんな心配までし始めたその時……。

???「はいはい、ちょっと御免なさいよ」
山越王「WHO? オマエ、誰デスカー?」
???「しがない占い師でさぁ。それより大王。
    貴方を占ったらこんな内容が出ましたよ」
山越王「ン、紙? 中ニ書イテアルノハ……」

 『山上布陣 戦運大吉』

山越王「山上布陣……?
    アノ小高イ、マウンテンノ山上ニ陣取レト?」
???「さあ、占いの結果はそうなってるってだけで。
    『高きによりて低きを見れば勢い破竹の如し』
    とは言いますけどね。では、失礼しますよ」
山越王「ムム……勢イ、スプリットバンブーデスカ!
    ナラバ全軍! アノ山ニ登リマスヨー!!」

  山越武将A山越武将A  山越武将B山越武将B

越将A「大王!? 何考エテルデスカ!?」
越将B「アンナ高イ山、ノボレマセーン!」
山越王「口答エスナッ! 山上ニ布陣スレバ大吉、
    ツマリ我ラノ勝利トイウコトデース!」

山越軍は攻撃を止め、近くの山に登り始めた。

    金満金満

金 満「ど、どういうことでしょうか、あれは」
???「それは、こちらの撹乱作戦が上手く行った
    ということですよ、金満どの」
金 満「あ、貴方は……馬謖どの!」

    馬謖馬謖

馬 謖「奴らは私のデタラメ占いを真に受けて、
    山上を目指しています……。
    さあ、今なら奴らを討つのはたやすい」
金 満「なるほど、山登り中ならば完全に無防備。
    今こそ、山越大王を倒す好機ですね!」

金満・鞏恋の両隊は、山越大王の隊が山登りを
しようとして無陣状態になっている好機を逃さず、
これを散々に打ち破った。

山越王「謀リマシタネ! コノ卑怯者ー!」
越将A「デモ策ヲ弄シテタノハ大王モ同ジデース」
越将B「エート、ソノ策ノコトデスガ……。
    後続部隊ハ、マダ来テマセンデスヨー」
山越王「ガッデム! モウ間ニ合ワンデース!
    彼ハ、何処デオイル売ッテルデスカー!?」

山越大王隊は頼みの後続部隊が到着する前に、
集中攻撃を受け、全滅してしまった……。

    ☆☆☆

2月に入り、山越大王隊が完全に掃討された頃、
ようやく山越武将Cの部隊が戦場に到着した。

    山越武将C山越武将C

越将C「白イ眉毛ノ爺サンニ道ヲ聞イタラ、
    ベリーベリー迷ッテシマッタデース!
    アノ爺、今度会ッタラ殴リマース!」

山越武将Cの部隊は、馬良が仕掛けた偽報に
見事ひっかかったため、大幅に到着が遅れた。
そのため、山越大王の部隊を援護する任務を
まっとうできなかった。

その彼らの前方では、すでに金満・鞏恋の隊が
新たな敵が来るのを待ち構えている。

越将C「ゲエッ!? 何テ大軍ナンデショー!?
    シカモ味方ガ何処ニモイマセーン!
    話ガ違イ過ギマスヨー! 大王様ー!」
張 南「へへ、うろたえてやがるぜ、こいつ。
    安心しろ、お前もすぐにブチ倒してやるよ!
    あの山越野郎と同じようにな!」
越将C「山越野郎ダト……? 大王ノコトカ……。
    大王ノコトカーッ!!
馮 習「おい、何を怒らせてんだ、お前は!」
張 南「ええっ、私のせいですか!?」
越将C「山越名物、奮迅爆発〜ッ!!」
二 人「のわーっ!?」

 どこーん

山越武将が奮迅で散々暴れた、その後。
どこからともなく声が聞こえる。

 「待ちなさいッ!」

???「怒りに我を失い、尊い命を奪い尽くす悪め!
    山越武将! 貴様は私が成敗する!」
越将C「ムムッ、何奴!?」

山越武将が声のする岡の上を見上げると、
そこには、雷圓圓(とそれを見守る魯圓圓)
の姿があった。

   雷圓圓雷圓圓  魯圓圓魯圓圓

雷圓圓「私は愛と正義の使者、
    美少女メイド武将ライエンエン!
    貴様のような悪の存在は、この私が
    綺麗さっぱりとお掃除してあげます!」
魯圓圓「自分で美少女言うか、この娘は……」
雷圓圓「フフフ……。
    今宵のモップは血に飢えておるわ……」
魯圓圓「いや、まだ夜じゃないし、それに
    愛と正義の使者っぽくない台詞だし。
    そんなことより、ほら、早く行きなさいっ!」
雷圓圓「はいっ、では参ります!」

雷圓圓は馬を駆けさせ、単騎で突っ込み、
呆然とする山越武将に一騎討ちを挑んだ。

雷圓圓「美少女メイド武将のこのモップ、
    避けられるものなら避けてみなさいっ!」
越将C「コイツハ一体、何ナンデスカー!?」

雷圓圓:武力86 VS 山越武将:武力82

面妖な武器を使ってくる雷圓圓に対し、
山越武将は戸惑いを隠せない。
次々に繰り出される攻撃で序々に押されていく。
そして、顔の先に突き出されたモップの先を
なんとかかわしたその時……。

越将C「ウワッ、目ガ、目ガァァァ!?
    モップノ水シブキガッ!?」
雷圓圓「見たか! 秘技、水飛ばし!」

ちょっと卑怯くさい手だったが、雷圓圓は
モップの先から水を飛ばし、敵将の視界を奪った。

雷圓圓「よっしゃ好機到来! 今こそアレの出番!
    お姉さま、アレを使うわ!」
魯圓圓「……やっぱりやらないと駄目?」
雷圓圓「駄目です! お約束なんですから!」
魯圓圓「そう、それじゃ覚悟決めてやるわ!
    ゴールデンハンマー! 発動、承認ッ!」

魯圓圓は大き目のケースを取り出すと、
その鍵穴に鍵を差込み、中に入れられていた
雷圓圓のゴールデンハンマーを取り出した。

魯圓圓「……で、次なんだっけ」
雷圓圓「セーフティデバイス、リリーブですよ!」
魯圓圓「あーそうそう、背太い出刃椅子!
    りりーっぶ! あらよっと!」

魯圓圓は、ハンマー投げの要領で、手にした
ゴールデンハンマーを雷圓圓の方へ放り投げた。

雷圓圓「よしゃー! ハンマー……コネクトッ!」

雷圓圓は手にしていたモップの先を外し、
柄だけにしてそれを天高く差し出す。
ちょうど落ちてきたゴールデンハンマーが、
その柄の先にがっちりと繋がった。

雷圓圓「どぉりゃぁぁぁぁっ!!
    光を放てぇぇぇ!!
越将C「ウワー!? 何ガ起キテルノカ
    見エナイカラサッパリ分カランーッ!!」

 脳天直撃
  ズダァァァァンッ!

ハンマーが山越武将の脳天を直撃した。
脳漿をぶちまけるような凄惨な状況になると
周りの誰もが思った……。
だが山越武将は一度倒れはしたものの、
その後、ゆっくりと立ち上がった。

越将C「フウ……。ヘルメットガ無ケレバ、
    即死ダッタデスヨー。危ナイ所デシタ」
山越兵「将軍ッ……!? ア、頭ガッ!」
越将C「WHAT? ミーの頭ガドウシタカ……」

そう言って山越武将は自分の頭に手をやる。
兜が割れており、そこから直に自分の頭に触れた。
……その感触は、ツルツルとしていた。

越将C「コッ……コレハ……!?
    モシヤ、ミーハ今、スキンヘッド!?」
雷圓圓「そうっ! お察しの通り、今の貴方は
    強烈な光を放つほどのツルツル坊主よ!」

 光を放つ山越武将
  ピカァァァァァァッ!

越将C「OH、NOOOOOO!!
    カムバック、マイヘアー……オオオオ」

山越武将は坊主頭にさせられたことで精神に
大ダメージを受けてしまい、これ以上、雷圓圓と
一騎討ちを続けることは不可能になった。

つまりこの勝負、雷圓圓が勝ったのだ。

魯圓圓「『光を放て』ってこういうことかぁ……」
雷圓圓「フフ、相手を傷つけることなく勝利する。
    これこそが愛と正義の美少女メイド武将の
    真骨頂ですよ、お姉さま!」
魯圓圓「一体どういう原理になってるんだか。
    ま、とにかくこれでこの戦闘も終わりね。
    大将がああなっちゃえば、もう戦う必要も
    ないだろうし……」

    張苞張苞

張 苞「あまァ〜いッ! 甘いぞ魯圓圓!!」
魯圓圓「張苞どの!?」
張 苞「叩ける時に叩く、これが勝負の鉄則!!
    ここで見逃す手はないのだァーッ!!」

    関興関興

関 興「そういうことだ、ここは俺が決める!」
張 苞「ちょっと待て、言い出したのは俺だぞ。
    よって勝負を決めるのは俺の役目」
関 興「オイオイ、勝手に優先順位を決めるな」
張 苞「……じゃ、しょうがねえな。
    二人同時にってーことでどうだ?」
関 興「フン、仕方がないな……。では!」

 「ダブル奮闘アターック!」

張苞、関興の奮闘により山越武将隊は敗れた。
そう、この戦いは彼らの奮闘に始まり、
彼らの奮闘で終わりを迎えたのである……。

まさに彼らのための戦いだったと言えよう。

魯圓圓「ちょ、ちょっと待って!
    このナレーションおかしいですよ!?」

だが、まだ山越の本拠地は健在である。
彼らの戦いはまだまだ続くことだろう……。
張苞と関興の明日はどっちだ!?

魯圓圓「だ、だから、なんかおかしいですよー!」

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