219年10月
10月、季節は冬に差し掛かった。
寿春太守であった韓当が楚軍の登用を受け寝返った
ことにより、寿春城は楚軍の物となった。
魏延はその様子を見て寿春城へと入り、
2ヶ月近く戦ってきた魏延隊の将兵はようやく
一息つくことができた。
魏延
韓当
魏 延「貴殿が韓当どのか。いや、此度は助かった。
兵の士気も大分萎えてきていたからな。
こうして城に入り、休むことができるのも
貴殿の決断あってのこと。感謝いたす」
韓 当「いや……感謝されるようなことではない。
それより、まだ外には曹操隊がいるが、
これはどうされるおつもりかな?」
曹操
曹真
曹 操「……寿春が楚軍の手に落ちただと!?
そんな馬鹿な! 寿春城へ向かうぞ!」
曹 真「殿、魏延隊が入っていったことから考えても
寿春はすでに楚軍が抑えているはずです!
今城に向かっても返り討ちにあうだけです!」
曹 操「ええい、うるさい!
この目で確かめるまでは信じられるか!」
曹 真「殿! 現実と戦わなくては!」
曹 操「あーうるさいうるさい! 聞く耳もたん!
卞柔だか饅頭だかの部隊は放っておいて、
寿春城へと向かうぞ! 続けーっ!」
曹操隊は卞柔隊には目もくれず、寿春城へ押し寄せた。
部隊の兵は2万ほどいるが、士気は大分低下しており、
状況はあまり芳しくないはずなのだが……。
それでも、曹操は寿春に執着し、退く気配はなかった。
卞柔
卞 柔「魏延将軍ーっ!
我らだけでは追い払えませんーっ!」
背後から攻撃をかける卞柔隊だったが、
守り重視の方円陣では効果的な打撃は与えられない。
韓 当「このままでは奴らはまだしばらく居残るぞ。
早く追い払ってしまわねば」
魏 延「曹操め、まだ取り返せるとでも思ってるのか。
しょうがない、すぐ部隊を出さないとならんな。
じゃ韓当どの、私がその部隊の指揮を執るから、
貴殿はこの城を守って……」
韓 当「いや、部隊を出すならそれに従軍させてほしい。
城の中にずっといては身体もなまってしまう」
魏 延「いや、いくらこちらが有利とはいえ相手は曹操。
ご老体にはキツイのではないか」
韓 当「見くびらないでもらいたいな。
わしの力はまだまだ衰えてはおらん。
手合わせしてもらえば、それも証明できるぞ」
そう言ってばきばきと指を鳴らす韓当。
魏延はそれに苦笑しながらそれを宥める。
魏 延「いや、そこまで言われるのならよかろう。
わざわざここで体力を使う必要もあるまい。
では、私が残り、部隊は金閣寺に任せる。
韓当どのは彼の指揮下で働いてくだされ」
韓 当「心得た。では早速、準備にかかろう」
韓当が離れたのを見て、魏延は金閣寺を呼んだ。
金閣寺
魏延
金閣寺「お呼びですか」
魏 延「ああ、出撃部隊の指揮を頼む。
私は兵の訓練を行った後、城に残るから」
金閣寺「承知しました」
魏 延「あと、あの老人の御守も頼む。
……全く、自分はいつまでも若いとでも思って
いるのか。周りの負担も考えてほしいものだ」
金閣寺「韓当どのが出撃志願を?
あの方には別な意図があるんじゃないですか」
魏 延「ん、別な意図?」
金閣寺「彼を城に残すと、味方に『また寝返るのでは』と
不安を与えてしまいかねません。
彼とてそんな目では見られたくないでしょう。
それなら、外に出た方が双方にとって良いはず」
魏 延「ふむ、そう言われれば確かにそうだな。
……いや、なんだ、そう考えれば、けっこう
気配りの効く老人じゃあないか」
金閣寺「あまり老人老人言ってるとヘソを曲げますよ。
私の祖父もそうですし」
魏 延「ふ、流石に本人の前では言わんよ」
金閣寺「口にしなくても態度で伝ったりしますよ。
……では、出撃準備にかかります」
魏 延「ああ、頼む」
金閣寺は韓当、金胡麻、蛮望、魏劭を伴い、
1万5千の兵を率いて出撃、曹操隊を迎撃する。
☆☆☆
戦いの構図は、曹操隊と金閣寺隊との対決に変わった。
曹操は、敵方に韓当の姿を見つけ、怒声を上げる。
曹操
韓当
曹 操「韓当! 貴様……。
貴様の寝返りのせいで全てがパーではないか!
どのツラ下げてわしの前に出てくるのだ!」
韓 当「はっはっは、どのツラだと?
このツラだ、よーく見ておくがいい!」
曹 操「ムキー! ええい曹真!
あの老いぼれをぶった斬っておしまい!」
曹 真「申し訳ありませんが私では無理です。
夏侯淵将軍も前に受けた傷が癒えておらず
まともに戦うことはできません……。
殿、やはりここは退却するべきかと」
曹 操「ならん! このまま退却などできるか!」
曹 真「殿、どう見ても状況は不利です。
いつもの冷静な貴方はどうしたのですか」
曹 操「うるさい!
このままでは、諸葛亮の策が潰れてしまうのだ!
それだけはできぬ、できぬのだ……!」
曹 真「殿……。そ、そこまで貴方は諸葛軍師を……」
曹 操「このままでは、後で諸葛亮にブチブチと
イヤミを言われ続けるハメになる!
それだけは勘弁なのだー!」
曹 真「……殿、それだけのために退けぬのですか」
曹 操「それだけだと……? 馬鹿者!
お前はあいつのイヤミ地獄を味わったことが
無いからそんなことが言えるのだ!
あれはもう生き地獄と言っていい……!」
曹 真「(殿の冷静さが失われてしまっているのは、
その恐怖心からのことだろうか?
一体、どんなイヤミを言われるのだろう……)」
曹 操「それに、城に閉じこもられては落とせぬが、
野戦でならば一発逆転も可能だ。
魏延隊とも互角に戦っていたではないか。
今少しの運と頑張りがあれば、倒せるはずだ!
兵力でも奴らよりこちらの方が勝っている!」
曹 真「殿……。確かに彼我の兵力差だけ見れば、
一見、逆転もできそうには見えますが……」
曹 操「さあ、全軍進め! 敵を打ち破れ!」
曹 真「今の殿では聞いてくださらぬか。
先ほどの魏延隊とは全く違う部隊だというのに」
嘆息した曹真には、わかっていた。
城攻めを目的に編成されていた魏延隊と違い、
迎撃を目的とした金閣寺隊の野戦の能力は、
間違いなく今の曹操隊を上回るだろうことを。
金閣寺
蛮望
金閣寺「兵数で少ないからといって恐れるな!
あちらの兵はもう疲れてきているはずだ!
それにこちらは寿春からの援護も期待できる!」
蛮 望「そうそう、それに秘密兵器もあるし〜」
金閣寺「……その秘密兵器ですが、大丈夫ですか?
暴れて味方に襲い掛かってきたりは……」
蛮 望「安心なさいな〜。
言うことはちゃんと聞く子たちだからん。
さあ、一気にやっちゃいましょ〜」
ぱおーん
どすどすどすどすどす……
曹 操「な、なんだ、今の音は!?
そして、この地響き……一体何が!?」
曹 真「と、殿! 見たこともない獣がっ!!」
曹 操「な、なんだあれは!?」
曹 真「わかりません!
しかし、なんて凶悪そうな獣なのか……!
楚軍はあんな獣を飼いならしているのか!?」
象兵で曹操隊を蹂躙する金閣寺隊。
最初の金閣寺の奮闘で4千以上の兵を倒し、
一気に戦いの主導権を握る。
夏侯淵
費耀
夏侯淵「ああ……! あれは憧れの象ではないか!
こ、こんな間近で見ることができるなんて」
費 耀「あ、危ないですぞ夏侯淵どのっ!」
どーん
蛮 望「あら? なんか撥ねちゃったわね」
費 耀「か、夏侯淵どのーっ!」
夏侯淵「だ、大丈夫だ……! まだ生きている……!」
費 耀「は、早くお逃げくだされ、先の一騎討ちでの
傷もまだ癒えておらぬでしょうに」
夏侯淵「う、うむ……」
蛮望による突撃。これでさらに兵を減らし、
ここにきてようやく曹操も、勝ち目のないことを
悟らざるを得なかった。
曹 操「……ここまで一方的にやられてしまうとはな。
勝ち目がもうないとなれば、仕方あるまい。
全軍退却! 早急に引き揚げよ!」
曹 真「殿っ! 退却しようにも、後ろには卞柔隊が!」
曹 操「そ、そうだった!」
卞柔
卞 柔「逃げようったってそうはいかねえ!
それ、ディーフェンス! ディーフェンス!」
曹 操「くっ……大した攻撃も出来ないクセに、
我らの邪魔をしようというのか、こいつは!?」
卞 柔「攻撃がイマイチなのは陣形のせいだっ!
この卞柔のマーク、そう簡単には外させねえぞ!
あそーれ、ディーフェンス!」
曹 操「お、おのれ、これまでかーっ!」
卞柔隊に退路を阻まれ、曹操隊は進退窮まった。
もはや隊を維持できる士気の状態ではなく、
金閣寺隊の攻撃に晒され、部隊は壊滅した。
曹 真「殿、早くお逃げくだされ」
曹 操「うむ……。しかしこの敗戦によって、
諸葛亮の策は完全に潰えてしまった……。
もはや廬江を死守してくれることを願うだけだ」
曹 真「そうですな……。
しかし軍師の策、どこで狂ったのやら」
曹 操「直接の原因は寝返る可能性のある韓当を
太守にしてしまったことだろう。
だが、小沛から援軍が続かなかったことも
理由のひとつだ……。
この件、どういうことか究明する必要があるな」
曹 真「究明?」
曹 操「まずは帰還してからだ。
ここで捕まるわけにはいかんからな!」
☆☆☆
曹操ら将はなんとか下[丕β]方面へと逃げ遂せたが、
部隊の兵はほとんどが金閣寺隊に捕らえられ、
寿春へと連れてこられる。
韓当
金胡麻
韓 当「フフフ、あの時の曹操の顔……。
いや、久しぶりに愉快なものを見たなぁ」
金胡麻「それにしても、アンタ、今64歳なんだろ。
そんな歳と思えないような働きぶりだったな。
何食ったらそんなに元気でいられるんだ?」
韓 当「食い物? 普通に皆と同じものを食ってるが。
そうだな、健康の秘訣は……泳ぎかな。
暇なときは大抵、川などで泳いでいるからな」
金胡麻「泳ぎか……。元呉軍だもんな。
あ、ということは水軍も得意なんだろう?
対呉の水軍戦では大活躍できるんじゃないか」
韓 当「……いや、対呉の戦いには、出る気はない。
魏は見限ることができたが、わしにはまだ、
呉を敵だと割り切ることはできん」
金胡麻「あ、ああ、そうか。
それこそ人生の大半すごした所だもんな」
韓 当「お主からも楚王閣下に伝えてもらえんか。
わしは呉との戦いには参加したくないとな」
金胡麻「おう、わかったぜ」
韓 当「呉と戦いたくないのは、あいつも同じだろう。
だが、曹操はそんなことはお構いなしだ……」
金胡麻「あいつ?」
韓 当「いや、独り言だ。気にするな」
この後の韓当は、対魏の戦いのみに起用され、
呉軍との戦いでは姿を見ることはなかった。
☆☆☆
曹操が下[丕β]に戻ってからしばらくして。
場所は陳留。先ごろ、司馬懿の部隊に攻められて
周瑜らが援軍で入ってきた場所である。
兵士が、自室にいた周瑜を呼びに来た。
周瑜
周 瑜「どうした? 何か、あったか」
魏 兵「は、それが、魏公閣下より使者が参りまして、
周瑜さまを広間へお呼びせよと。
なんでも、詰問を行うとかで……」
周 瑜「やはり、来たか」
魏 兵「……やはり?」
周 瑜「いや、なんでもない。これから参る」
魏 兵「はい」
周瑜は身支度を整え、広間へ向かった。
そこには、太守曹叡を始め、諸将が並んでいる。
周 瑜「周瑜、参りました」
曹叡
曹 叡「うむ、ご苦労。
周将軍、今、魏公閣下の使者が来ていてな。
貴殿を詰問すると言っているのだが……」
周 瑜「は、どのような内容ででしょうか」
曹 叡「それについては、直接聞かれよ。
……使者どの、どうぞ」
曹叡に促され、その使者は周瑜の前に立ち、
親書を読み上げた。
使 者「魏公閣下が問うているのは、以下の3つです。
ひとつ! 諸葛亮の策は知らされているのに、
その要となる小沛の兵をなぜ動かしたか!?
ひとつ! 陳留を守った後、なぜ兵を留まらせ、
寿春の窮地を見逃したのか!?
ひとつ! 今日のパンツの色は何色か!?」
周 瑜「パ、パンツの色?」
使 者「全て、お答えいただかねばなりません。
さあ、申し開きをお願いします」
周 瑜「は、はあ……。
まず一つ目……これは明白です。
陳留の窮地を救うには、小沛の兵が必要でした。
それだけのことです。我らが援軍に来なければ、
陳留は落とされていたことでしょう」
曹 叡「うむ、それは太守の私も同意する。
小沛からの援軍が無ければ、今の陳留には
楚軍の旗がひるがえっていたはず」
使 者「なるほど、ごもっとも。では、次は」
周 瑜「ふたつめ、陳留防衛後のことですが……。
時間を置かずにすぐ兵を引き揚げたならば、
また楚軍が攻めてくるのでは、と思ったのです。
ですから、落ち着くまでは兵を残すべきと考え、
小沛へ兵を送るのは見送りました」
使 者「そのせいで小沛が落ちたとしても、
貴殿はその判断は正しかったと言われますか?」
周 瑜「小沛の守備のみならば、魏公の部隊だけで
十分行えると思いました故……。
そして、寿春での戦いの内容を聞いた限り、
その判断は間違っていないと思っております」
使 者「しかし、兵がなければ軍師諸葛亮の策は……」
周 瑜「我らが小沛からここへ援軍に参った時点で、
軍師の策はすでに遂行が難しくなりました。
ですから、その後はもう軍師の策は考えず、
味方をどう守るのかだけに苦心しました。
実現できるかどうか分からない策のために、
味方を危険に晒すわけには参りません」
使 者「ふむう……。では、最後」
周 瑜「や、やはり答えなくてはなりませんか」
使 者「魏公の言葉は絶対です」
周 瑜「きょ、今日のは……。その、赤で……」
使 者「聞こえません、はっきりと言ってください」
周 瑜「あ、赤色ですっ!」
ざわざわ……
「聞きまして? 赤色ですってよ」
「さっすが伊達男周瑜、赤パンツか」
「やはりできる男は違うな、ははは」
くすくす……
周 瑜「(い、嫌がらせだ……くそう、曹操め)」
使 者「そうですか、赤!ですか。
では、詰問は以上で終わらせていただきます。
今言われたことは全て魏公にお伝え致します。
では太守、これにて失礼致します」
曹 叡「使者どのもご苦労でした」
使者はその場を辞して出ていった。
曹 叡「周将軍もお疲れだったな」
周 瑜「いえ……」
曹 叡「しかし、魏公があのような使者を遣すとは。
まるで責任はお前にあるとでも言いたげな……。
寿春の敗戦で鬱憤が溜まっているのだろうか」
周 瑜「結果的に軍師の策が頓挫したのは事実です。
閣下もはっきりさせておきたかったのでしょう」
曹 叡「うむ、私は周将軍を信用しているぞ。
貴殿の判断は全て、味方を思ってのことだと、
閣下も知ることであろう」
周 瑜「ありがたきお言葉……。
(だが、魏公は信用していない。それも当然だ、
確かに私は、こうなると判っていたからな)」
さて、この後すぐに周瑜は、安南将軍の位を贈られた。
釈明が魏公に受け入れられたのだろう、曹叡は
そう言っていたが、周瑜はそうは思わなかった。
周 瑜「(しっかり責務を果たせ、ということか……。
それとも、逃がさんぞ、と言っているのか。
韓当どの、楚に行った貴殿の判断は正しい。
ここは我らにとっては地獄だ……)」
☆☆☆
さて、思いがけなくも寿春を奪った楚軍。
では廬江の戦況はどうなったのか……?
少し時間を戻して、9月中旬。
廬江城、韓遂隊との交戦が続き、燈艾隊は
2万ほどにまでその兵力を減らしていた。
文欽
公孫朱
文 欽「くそーっ、韓遂隊と廬江城、二つを相手にして
だいぶやられちまってるじゃねーか!
なんつージジイだよ、全く!」
公孫朱「しかし、韓遂隊も兵を減らし、今では6千程度。
全くやられっぱなしというわけじゃない」
文 欽「それでも、兵力の割にはやられてるだろうに。
大将! このままじゃ城なんて落とせないぞ!」
燈艾
燈 艾「……一応、手は打ってある。
しかし、韓遂どのがここまで手強く
やり辛い相手になっていたとは思わなかった。
一体、魏軍に渡ってからどのような変化が?」
公孫朱「やはり暗黒パワーを吸収したとしか……」
文 欽「いや、何か妖しい細胞を埋め込んだに違いない。
斬られた腕を機械の腕に再生するようなのを……」
燈 艾「……もう少しマシな話し相手が欲しいものだ」
知力が60にも満たない者たちでは、
燈艾の望むような話にはならなかった。
さて、一方の韓遂隊では。
韓遂
韓 遂「ふう、流石にこちらの兵も減ってきたな。
だが、ここからがこの韓遂の真骨頂よ。
奴らを釘付けにし、諸葛亮の軍が戻るのを待つ。
それがやれるのはこのわしの他にはいない」
魏 兵「流石です御大将。失礼ながら、
ここまでやれるとは思っておりませんでした。
貴方様の見事な統率力、そうですな、
張遼将軍や関羽将軍にも匹敵するでしょう」
韓 遂「張遼や関羽ほどというのは持ち上げすぎだろう」
魏 兵「いえいえ、そうでもないです。
今の将軍に敵うものはそうおりますまい。
そう、今の将軍は馬で例えるならば爪黄飛電!
武器で例えるならば方天画戟!」
韓 遂「どういう例え方だ……。フフフ、しかしまあ、
わしも以前よりもパワーアップしているからな。
そう褒められるのは悪い気はせん」
魏 兵「や、やはり闇のパワーを得たお陰ですか!?」
韓 遂「阿呆め。味方のお前たちまであんな出任せを
信じるでないわ」
魏 兵「で、出任せでしたか」
韓 遂「そう、パワーアップの秘密はこれだ。
テカテカテーン、『尉繚子』〜!!
そして『論語』〜!!」
青色タヌキが秘密道具を出したかのような声で
韓遂はふところからアイテムを取り出した。
魏 兵「そ、それは?」
韓 遂「魏公に頂いたアイテムだよ。
これを持っているお陰で、前以上に統率力も、
知力も上がったのだ……。(※統率+5 知力+8)
楚兵を寝返らせた心攻も、この論語のお陰だ」
魏 兵「論語に美人画勧誘の策が載ってるんですか?」
韓 遂「そこはそれ、応用だよ、応用」
魏 兵「はあ、応用ですか。
でも、結局ドーピングじゃないですか……。
将軍は馬で例えるなら春麗(ハルウララ)、
武器で例えるならひのきのぼうですね……」
韓 遂「ひょ、評価が一気に急降下したな。
まあ待て、アイテムを使うことは反則ではない。
あの関羽や張飛、諸葛亮なども使っているのだ。
アイテムを有効に使いこなすことも良将の条件だ」
魏 兵「そ、そう言われれば……失礼しました」
韓 遂「さぁて、もう少し粘るとしようか。
廬江城と連携し、さらに燈艾隊へ攻撃をかける!」
魏 兵「はっ!」
そこからまたしばらく戦闘が続く。
燈艾隊の兵は2万を切るが、韓遂隊も5千を切り、
いよいよ戦闘の継続も難しくなってきた。
韓 遂「ハァハァ……。まだか?
まだ、諸葛亮の部隊はやってこないのか?」
魏 兵「いえ、まだのようです」
韓 遂「ええい、何をやっているのだ!
膠着させておくのもそろそろ限界だぞ!」
魏 兵「そんなこと言われましても……。
むっ!? 御大将、何やら城の東側に部隊が!」
韓 遂「なにっ、ようやく来たのか!?」
土煙を上げ、廬江城の東から部隊が近付いて来る。
韓遂は、それを味方だと信じて疑わなかった。
だが……。
金目鯛
費偉
金目鯛「金目鯛けんざーん!!
さあ、今のうちに廬江城を攻撃するぞ!
そーれ、投石開始だーっ!」
費 偉「はっ! 投石を開始せよ!」
韓 遂「な、なんだと!? 金目鯛……!?
な、なぜ、なぜ楚軍があちら側にいる!?
一体どうなっているのだ!?」
諸葛亮が戻ってくるはずの東から現れたのは、
楚軍の金目鯛、その投石部隊2万であった。
その信じられない光景に、韓遂はしばし呆然とする。
関興
張苞
張 苞「今だ、関興っ! やるぞっ!」
関 興「おう、きっちり合わせろっ!」
二 人「ツイン斉射ァァァァ!!」
その隙を見てか、張苞・関興の合体攻撃。
韓遂を狙い、弩の斉射を同時に行った。
韓 遂「むっ……しまった、隙を見せたか!」
魏 兵「御大将ーっ!」
幾本もの矢は真っ直ぐ韓遂へと飛んでいく。
だが、韓遂はよけるようとせず、左手をかざし
それを受け止めようとする。
韓 遂「ドリル!! 大・回・転!!!」
ぎゅいーん!
バチバチバチバチ
韓遂の義手の手首からドリルが生え回転し、
飛んでくる矢をその回転力で弾いてみせた。
張 苞「な、なにィィィッ!?
ドリルで弾きやがったァァァ!?」
関 興「お、俺たちの友情パワーの矢が!」
張 苞「……待て、なんだその友情パワーって。
いつから俺らはオトモダチになったんだ」
関 興「いや、なんとなく……。
ノリ的に言いたくなっただけだ」
魏 兵「す、すごい!
あの数の矢を全てドリルで弾くなんて!?」
韓 遂「……ふ、フフフ、どうだ、すごいだろう。
だが、ちと失敗してしまったな……」
魏 兵「え? ど、どうされましたか」
韓 遂「いや、弾いた後、どこにいくかまでは
全然考えてなかったのだ……。ぐふっ!」
魏 兵「御大将っ!?」
見ると、ドリルで弾いたはずの矢の何本かが、
腕や足、胴などに突き刺さっていた。
これによって韓遂は重傷を負ってしまう。
大将がそうなっては部隊も戦い続けることはできず、
廬江城に逃げ込むしかなかった……。
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