219年8月
廬江周辺の魏軍の軍団長となった諸葛亮。
彼は関羽・張飛の豪傑と4万の軍を引き連れ、
揚子江を下って呉軍の阜陵港を占領する。
その後、廬江から張遼隊2万5千も合流した。
己の考え出した『江夏の楚軍を誘い出す計』は、
これでまた一歩完成に近づいたかのように見えた。
実際に、楚軍は廬江に向かって軍を発し、
援軍にと当て込んでいた小沛攻めの味方の軍は
小沛城を落とし、増援として派遣されることに
何の問題もない。
諸葛亮
諸葛亮「フフフ、順調に来ている。
あとは我々がこの阜陵から取って返し、
予想外に苦戦を強いられているはずの楚軍を
完膚なきまでに叩き潰すのみ……」
関羽
関 羽「軍師、少々よろしいか」
諸葛亮「なんですかな、髯殿?」
関 羽「廬江の守り、少し薄すぎぬか。
残る兵は1万のみ、そして張遼までこちらに
寄越してしまうのは、流石にやりすぎでは」
諸葛亮「ああ、そのことですか。
韓遂どのの判断によるものではありますが、
楚軍を確実に誘い出すことができるのならば
これくらいはしょうがないでしょう」
関 羽「誘いだすことには確かに成功したようだが……。
攻められて持ち堪えられるのであろうか?」
諸葛亮「危うさは確かにあります。
しかし、韓遂どのと寿春の兵が援護に回れば、
我々が戻るまでは大丈夫でしょう。
それに小沛からも援軍が出てくるのですし、
そう心配する必要はありません」
関 羽「むう。確かに備えはあるのだろうが……。
しかし、私にはギリギリの戦略のように
思えてならないのだ。何かの拍子で大きく
狂ってしまうのではないかと……」
諸葛亮「少々狂うことはあるかもしれません。
ですが、少々の誤差は織り込み済みです。
ご心配は無用ですよ」
関 羽「そうか、そこまで言うのなら……」
張飛
張 飛「おい、大変だ、大変だぜ!」
諸葛亮「長方形のそれぞれの対辺は同じ長さです。
また、長方形の対辺の先をいくら延ばしても
平行のままであり、交わることはありえません。
これこそが長方形の定理なのです……。
で、その対辺がどうかしましたか」
張 飛「何を訳分からんこと言ってやがる!
俺が言ってるのは『大変』だ!」
諸葛亮「大便? 厠でしたらあちらですよ」
張 飛「『大変』だっつーの! 真面目に聞け!」
関 羽「軍師、何やら変事が起きたようです。
ちゃんと聞いてやってください」
諸葛亮「ふむ……。張飛将軍も余裕がないですな。
慌てていた様子ですから、冗談を言って
落ち着かせようと思ったのですが……」
張 飛「余計カリカリ来るわ! ボケ!」
諸葛亮「分かりました、真面目に聞きましょう。
張飛将軍、何事かありましたか」
張 飛「江に呉軍の艦隊が見えたんだ!
おそらく、先に交戦した魯粛の隊だろう!」
関 羽「……なに?
ここに来る前に遭遇した魯粛の艦隊か?
何故今になって戻ってくるのだ」
諸葛亮「呉軍が向かって来る……?
張飛将軍、それを早く言ってください。
暢気に冗談を言っている場合ではありません」
張 飛「言ってたのはてめえだ!」
関 羽「軍師、このままでは貴方の策、
大幅に狂ってしまうのではないか?」
諸葛亮「いえ、関羽将軍。そこまで深刻ではありません。
しかし、早めに対処しなくてはなりませんね。
……カモン! 四輪車!」
ぎょおおおおおおん
爆音を轟かせ、諸葛亮の四輪車が現れた。
諸葛亮はそれに乗り込む。
関 羽「軍師? どちらに参られる気だ?」
諸葛亮「私は艦隊を率いて魯粛隊を迎撃します。
お二人は張遼どのと協力し、この港の防衛を」
張 飛「ちょっと待てよ、あんたが迎撃すんのか?
迎撃なら俺が……」
諸葛亮「張飛将軍は水軍が苦手でしょう。
ここは迅速に彼らを殲滅する必要があるのです。
他の人には任せられません」
張 飛「ちっ、そうかよ」
関 羽「私なら水軍も上手く扱えるが」
諸葛亮「それは分かっておりますが、今回将軍には、
張飛将軍の目付けとして残ってもらいます。
野放しにしておくと大変不安ですから」
関 羽「むむ、そういうことなら仕方がないか」
張 飛「な、なんだそりゃあ!?
俺はイタズラ盛りの子供か!?」
関 羽「似たようなものだ」
諸葛亮「あまり時間がありません。
すぐに部隊を出撃させます。では」
張 飛「ま、待てや、こら!」
止めようとする張飛のことなど構わず、
諸葛亮は四輪車を発進させた。
諸葛亮「楼船、ゴー!」
諸葛亮のその掛け声によって、
旗艦『大孟子』の船尾部分がパカッと開いた。
その開いた部分へ四輪車は飛び込んでいく。
諸葛亮「邪衆帝淫! 罵倒竜胆!」
大孟子はまるで命を吹き込まれたかのように、
諸葛亮の入った瞬間から別物のように動きだした。
諸葛亮が乗り込んだ大孟子は、すぐに港を出港。
他の艦を引き連れ、迫りつつある魯粛艦隊に向かい
先制攻撃を仕掛けていった。
魯粛
孫尚香
魯 粛「あれは諸葛亮の楼船……。
我らが港に近付く前に叩くつもりか」
孫尚香「兵力はざっと見て4万。
防御の薄い港を巻き込まないようにして
大兵力で先制攻撃を仕掛ける……常道ね」
魯 粛「しかし、相手がその常道を取るからこそ、
我らがつけいることができるのです。
お嬢さま、よろしく頼みます」
孫尚香「……お嬢さまはやめてよ」
諸葛亮隊と魯粛隊は交戦を始める。
艦の質、兵の量、どちらにおいても魏軍の方が
有利であったが、魯粛隊も果敢に挑んでいった。
諸葛亮「魯粛どの!
我々と戦うことを諦めて去った貴方がたが、
何ゆえこうして戻ってくるのですか!」
魯 粛「状況が変わったのだ!
柴桑が落とされ、阜陵も奪われたままでは、
我らが帰るところはない!
それ故に、阜陵は返してもらうぞ!」
諸葛亮「フフ……返してもらう?
その程度の数で、我が艦隊を倒せるとお思いか」
魯 粛「別に倒す気はござらん。
……孫尚香どの! 今だ!」
魯粛のその合図で、孫尚香が率いる別働隊が
阜陵港へ向かって進み出した。
孫尚香「馬鹿ね! 港さえ落としてしまえば、
わざわざお前の艦隊と戦う必要はないのよ!」
諸葛亮「むむ……港を直接叩くというのか。
防御力の薄い港では完全な迎撃は難しい。
奴らを行かせてはなりません!」
徐盛
徐 盛「おっと、そうはさせんぞ、諸葛亮!
これ以上はお前の好きにはさせん!」
諸葛亮「ちっ……絶対的な戦力の差があるというのに。
無駄な抵抗だということがわかりませんか!?」
徐 盛「そんなもの、戦ってみなくてはわからん!」
諸葛亮「そんなめくらな兵法で……!
私の戦略の邪魔はしないでもらいたい!
こんなくだらない戦いによって、せっかくの
作戦が遅れるなど我慢がならないのですよ!」
徐 盛「おっと、そういうことを聞かされると、
余計に邪魔したくなるな! いくぞ!」
諸葛亮「嫌がらせで戦うなど……!」
魯粛隊は阜陵港への攻撃を続けたが、
背後から諸葛亮艦隊の攻撃を受け続けたため、
その兵力をほとんど失い敗れ去った。
だが、これによって負傷兵が増えてしまい、
諸葛亮が廬江へ戻ることができるのは少し先に
延びてしまった。
この少しの猶予は、運命を変えるのか。
☆☆☆
燈艾は、軍を発し廬江へ侵攻を開始した折に、
金旋にもこのことを知らせる使者を派遣していた。
だが、その使者が金旋の元に辿り着いたのは、
柴桑が陥落し、金旋が入城した後のことだった。
燈艾が出発したのは8月上旬。
金旋にそれが知らされた時、月は下旬であった。
金旋
金 旋「……なんだ、柴桑を攻撃していた時期にはもう
燈艾は部隊を出撃させていたのか。
お前、来るのがちょっと遅すぎないか?」
使 者「も、申し訳ありません。
夏口港を出てすぐ船が流されてしまいまして、
陸口へ向かうまでにも時間がかかりました」
金 旋「……そうか、陸口から来たのか。
九江はまだ呉軍が残っているからな。
遡って陸口の方から来るルートじゃないと
危ないのは分かるが」
使 者「は、九江を通れれば、もっと早く来れました」
金 旋「早目に九江を落としておくべきか。
……報告ご苦労。下がってよし」
使 者「ははーっ」
金旋
金玉昼
金 旋「てなわけでだ。
すぐにも九江を攻め落とすべきだと思うが」
金玉昼「それには異存はないけど……。
もう、廬江では戦端が開かれている頃にゃ。
できれば、もう少し早く知りたかったにゃ」
金 旋「それを言っても仕方ない。
それに燈艾なら上手くやってくれるさ」
金玉昼「……今回のこの魏軍の状況、どう見ても
誘いこむための罠にしか見えないにゃ。
我が軍が城攻めにかかりきりになっている内に、
何かしら別な作戦を実行するはずにゃ……。
はっ!? もしかして、諸葛亮は……!?」
金 旋「ど、どうした?」
金玉昼「ちちうえ! 地図持ってきて!
揚州だけの地図じゃなくて、その周辺の州も
入ってる大きい奴!」
金 旋「お、おう」
言われるままに金旋は揚州周辺の白地図を持ってきた。
金玉昼は、その地図上に駒を置いていく。
金玉昼「廬江、寿春は寡兵……。
阜陵に諸葛亮以下、主力の部隊……。
今、燈艾隊は廬江へ攻めかかる……。
そして他の寄せ手がこことここ……」
金 旋「この配置図の状況になっているのなら、
別に心配はいらないと思うが、どうだ?
絶対有利とは言わんが、不利ではあるまい」
金玉昼「確かに、駒がこれだけならそうだにゃ。
しかし……! ここにもいまひる!」
パチン、と一際大きい駒を、寿春のそばに置いた。
その位置は、寿春の北にある小沛城。
金 旋「小沛? そこは呉軍領のはずだが……」
金玉昼「先日、すでに魏軍が小沛を攻めていたという
情報が私の元に届いていまひる!
今はもう、魏軍は小沛を占領し、寿春方面に
援軍を送る手筈を整えつつあるはず!」
金 旋「そんなバカな。
占領してすぐに部隊を出せるとは思えん。
我が軍がこの柴桑を落とした後だって、
すぐに出撃できる状況じゃあなかった。
ここ1ヶ月それなりの準備をしてたんだぞ」
金玉昼「甘い! 甘いにゃ、ちちうえ!
この白玉あんみつ黒蜜がけよりも甘いにゃ!」
金 旋「あ、いつのまに俺のデザート食ってるんだ!?
こら、返さんかっ!」
金玉昼「今はそれどころじゃないにゃ!(もぐもぐ)」
金 旋「……全部食いやがったよ。
確かにそれどころじゃないのはわかるが」
金玉昼「ごっくん、ぷはー。……えーと。
すでに小沛を落とす前からこの部隊は、
増援の部隊になることが決められていたのにゃ。
すでに決められていれば、落とす前から
準備をすることは可能にゃ」
金 旋「確かに決まっていればそうだろうが……。
そんなのどうしてわかるんだよ」
金玉昼「逆算したのにゃ」
金 旋「逆算?」
金玉昼「この廬江・寿春の状態を罠と仮定し、
江夏の楚軍の動きが敵の予測通りと考えると、
小沛のこの戦力がすぐに増援に来ることが
一番魏軍の利益に適うのにゃ」
金 旋「そ、それだけで決まるのかよ」
金玉昼「魏の軍師は諸葛亮。
これまでの彼の戦い方を考えてみれば、
どう考えてもこれ以外に奴の手はないにゃ。
今考えてみると、あの時の予言は……
まさにこのことを指していたんじゃ……?」
金 旋「待て、玉。予言の話はナシだ。
そういうことにしたはずだろう」
金玉昼「でも、ここまで周到に練られた作戦じゃ、
覆すことなんてどうにも……」
金 旋「どうにも崩せないのか?
どこかに穴があったりしないのか」
金玉昼「机上の理論だけなら諸葛亮の頭脳は完璧にゃ。
作戦の穴はほとんどないはずだにゃ」
金 旋「机上の理論だけ……?
それって若干皮肉が入っていないか?」
金玉昼「まあ、置かれる状況が変わってしまうことで
理論が崩れるということもあるから……」
金 旋「臨機応変に欠けるということか」
金玉昼「そういうことだにゃ。
でも今回、理論を崩すだけの状況の変化は
あまり……あれ? この駒って何にゃ?」
金 旋「ん? ああ、呉の魯粛の部隊だな。
柴桑の援軍として秣陵から来たみたいだが、
柴桑が落ちたら戻っていったぞ」
金玉昼「この部隊……そのまま戻ればおそらく、
今頃は阜陵にて戦っているはず……」
金 旋「諸葛亮もこれは予測できなかっただろうな。
まさか一度離れていった奴らが戻ってくるとは、
いくら変態的な智謀を持つ奴でもわかるまい。
まあ、この程度で何か変わるわけでもないがな」
金玉昼「これにゃ! 諸葛亮の策を崩す状況の変化!」
金 旋「おいおい。
奴の策は、こんな少数の部隊がいるだけで
崩れちまうようなヤワな策なのか?」
金玉昼「……確かに、この魯粛隊が攻めかかっても、
諸葛亮の反転策が少し遅れるだけにゃ。
でも、その遅れている少しの間に、
こちらから、くさびを打ち込めれば……!
千丈之堤、以螻蟻之穴潰!」
金 旋「あんだって?
どっかで聞いたような言葉だが……」
金玉昼「意味は辞書でも引いて調べてにゃ。
この魯粛隊という一寸の蟻の穴から、
諸葛亮の周到な策を潰すことになるのにゃ」
金 旋「そうなのか? てことは勝てるんだな?」
金玉昼「少なくとも、攻撃している部隊が逆にやられて
壊滅してしまうという危機は無くなるにゃ。
ちちうえ、すぐに九江を攻める部隊を!」
金 旋「九江を攻める……今からか?
今は柴桑の再開発をやってる関係で、
徐庶や甘寧らは出られないが……」
金玉昼「出られる人だけで編成すればいいにゃ。
今は時間との勝負にゃ」
金 旋「そうか。じゃあ、金満と李厳を大将にして、
4万ずつ率いさせよう。
これなら九江もすぐ落ちるはずだ」
金旋は、金満、李厳にそれぞれ投石隊を率いさせ
九江に向けて出撃させた。
金満隊には雷圓圓、霍峻、呉懿、陳表が付き、
李厳隊には鞏恋、魏光、陳武、下町娘が付いた。
下町娘
鞏恋
下町娘「なんで私が前線にーっ!?」
鞏 恋「暇そうにしてたから」
下町娘「事務の女の子が暇そうにしてても、
仕事がないからだとは限らないのよーっ!」
鞏 恋「……じゃ、サボりがバレたんだ」
下町娘「サボってなーい!」
合計8万の投石部隊は、9月上旬には九江を攻略。
そのまま部隊は港に入り、北の尋陽港、
東の阜陵港を望めるようになる。
だがその間に、廬江での戦いは大きく進んでいた。
☆☆☆
ここで、廬江での戦いがどうなったかを語ろう。
8月中旬、つまり金旋が九江攻略の部隊を
出撃させたのと同じ頃のこと。
燈艾隊5万は、廬江城に近づきつつあった。
燈艾
文欽
燈 艾「……もうすぐ見える頃か」
文 欽「いよいよですな! 楚軍での私の初陣!
廬江の軍などちゃっちゃと倒して、
魏延隊の救援にも参りましょうぞ!」
燈 艾「魏延隊なら心配いらない。
我が軍随一の武を誇るあの方ならば、
そうそう敵に遅れを取ることはない。
金目鯛将軍の二人のお子も付いているし、
我々の助けなどいらないだろう」
安陸城塞に駐屯していた魏延らは、燈艾の命で
寿春に向け部隊を出撃させていた。
魏延を大将、副将は金閣寺、金胡麻、蛮望、魏劭。
兵は4万を率いている。
文 欽「そうかねえ。
寿春の兵は3万ちょい、対する廬江は1万。
どう見たってあっちの方が苦戦しそうだが」
燈 艾「兵が動かぬのなら、そうかもしれぬがな」
文 欽「そういや、金目鯛どのはどうしたんだい。
夏口に呼び寄せたのは知ってはいるが……。
この後、こっちの増援として来るのか?」
燈 艾「あの方の動向は、秘密だ」
文 欽「秘密? なんでまた」
燈 艾「あの方には重要な役割を担ってもらう。
それを敵に知られるわけにはいかない」
文 欽「だから秘密か……。何をやらせる気なんだ。
そんな手の込んだことをするほど、廬江攻めに
手間取るとは思えないがなぁ……」
燈 艾「いや……そう簡単には行かない。
おそらく、奴が来るだろう」
文 欽「奴?」
燈 艾「関羽や張遼らと比べれば、直接的に感じる
恐ろしさでは到底及びはしない。
智謀も曹操や諸葛亮などには及ばない……。
だが奴には、したたかさがある」
文 欽「イササカさん? 誰ですかそりゃ」
燈 艾「……誰?」
文 欽「いや、俺に聞き返されても」
やがて、部隊は廬江城付近までやってくる。
先鋒の公孫朱やその脇を固める張苞・関興は、
廬江の様子が少し違うことに気付いた。
公孫朱
公孫朱「……城の守備兵が多い?」
張苞
関興
張 苞「1万しかいないんじゃなかったか?」
関 興「これはどう見ても、3万はいるな」
出撃前には廬江の兵は1万と言われていたが、
今、どう見ても3万ほどの兵が城内にいる。
???「ふふふ、驚いているようだな!」
張 苞「だ、誰だ!?」
関 興「城壁の上から聞こえるが……!?」
姿は見えないが、声だけは彼らの耳に届いていた。
おそらく陰になっているところに隠れているのだろう。
???「廬江の兵が少ないから攻めてきたのだろうが、
そう簡単にはイカ人参。兵が足りないなら、
あるところから持ってくればよいのだ」
張 苞「何だって!?」
???「兵は臨機応変に使わねばならんのだ。
手薄な所を攻められればそこを厚くするのみ。
猪武者のお前たちでは分からぬだろうがな」
張 苞「ば、馬鹿にするなっ!」
関 興「そうだ! これと一緒くたにするなっ!」
張 苞「お、おい、ちょっと待てや関興。
その俺を指差してる指と今の言葉の意味、
俺に教えてくれないか?」
関 興「お前みたいな馬鹿と同じとされるのは
非常に迷惑だという意味だが、それが何か」
張 苞「て、てめえ、思い切り直球で言いやがって!」
関 興「それじゃあ……。
頭があまりいいとはいえない人と
同じように見られるのはいい気分
ではないので、できればやめてほしい
ということで」
張 苞「言ってることは同じじゃねえか!」
関 興「じゃあ、どう言ってほしいんだ!」
公孫朱「やめなさい。
今はそんなことをしてる時ではないでしょう」
二 人「……は、はい」
公孫朱に睨まれ、二人は言い争うのをやめた。
その様子を見ていたのか、声は公孫朱に話しかけてくる。
???「ほう、血の気の多い男たちを一言で黙らせるか。
若いながら、貫禄がついてきたようだな。
以前はまだまだ小娘だと思っていたが……」
公孫朱「私を知っているような口ぶりだが……?
一体、誰なのだ! 姿を見せろ!」
???「フフフ、よかろう。
再びお前たちに、私の姿を見せてやろう!」
城壁の上に、何者かが現れた。
ばさっと黒い戦袍を翻し、現れたその姿は……。
illustrations by 紫電
ドギャァァァァァン!!
関 興「誰だ!?」
張 苞「誰だろう……?」
公孫朱「……だ、だんじゃ!?(誰だ!?)」
illustrations by 紫電
本当に誰なんだ。
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