219年6月
6月、楚軍が呉軍の有する陸口を攻め落とした頃。
その北、廬江では、楚とは別な脅威が呉に迫っていた。
呉兵A「あっちから来るのは、張遼!?」
呉兵B「あっちから来るのは、関羽!?」
二 人「も、もうだめだぁぁぁ!」
寿春を出撃した魏軍2部隊が廬江城に迫って来ていた。
一方の大将は張遼、4万の兵を率い、
もう一方は関羽が3万の兵を率いている。
対する廬江の守備兵は1万5千程度。
勝敗はほとんど決まっているようなものだった。
劉備
孫尚香
劉 備「あれを率いるのは関さんか……。
こんな形での再会はしたくなかったな」
孫尚香「劉備……。
張遼はともかく、関羽はどうにかならないの?
こちらに寝返るとまではいかなくとも、
この場だけ一旦兵を引かせるとか……」
劉 備「無理だな。あいつはそんなことはしない。
ここで説得されて兵を引くようなタマじゃあない」
孫尚香「く……しかし、このままでは圧倒的な兵力差で
押し潰されてしまう。何か、手はないのか」
孫尚香のその藁にもすがるような言葉に、
他の将たちは誰も答えることはできなかった。
だがただ一人、諸葛恪だけは自信有りげに手を挙げた。
諸葛恪
諸葛恪「御大将、私に会心の策がございます」
孫尚香「ふむ、会心の策? どんな内容なの」
劉 備「あー、そいつは聞くのは止めといた方がいい。
自分から会心の策とか言ってるようでは、
大して期待はできないだろうよ」
諸葛恪「フフフ、なるほど。
いつもいつも会心の策(自称)を連発される
劉備どのらしいご意見で」
劉 備「にゃにおう!?」
孫尚香「やめなさいな……。
とりあえず、内容を聞いてからにするわ」
劉 備「むう……」
孫尚香「で、どんな手を使うの?」
諸葛恪「はっ、ご説明致します。
張遼や関羽など精鋭が揃う魏軍を追い返すには、
それに匹敵する兵力が必要となりましょう。
しかし悲しいかな、我が軍の兵力だけでは
全くと言っていいほど数が足りません。
そこで、他の軍を動かすのです」
孫尚香「他の……軍?」
諸葛瑾
諸葛瑾「(だめだ、恪よ……。
それは、到底受け入れられない策だ)」
劉 備「(こいつぁ、机上の空論だな……。
全く、いいとこの坊ちゃんらしい策だ)」
諸葛恪「はっ、江夏の楚軍は10万近くの兵がいます!
これまで敵対していた関係ではありますが、
ここは一旦、楚軍と和を結ぶのです。
そして彼らの軍で寿春を攻めてもらえば、
魏軍は慌てて退却していくことでしょう。
どうですか、起死回生の策だとは思い……」
孫尚香「バカがッ!
お前には、呉人の矜持はないの!?」
諸葛恪「は……? 矜持、ですか?」
孫尚香「あれだけ辛酸を嘗めさせられた楚に対し、
今は和を結べというのか? 如何に今、
大きな危機にあろうと、それだけは有り得ない!」
諸葛瑾「恪よ、それ以上に問題がある。
その策は楚が承諾せねば成り立たぬ策ぞ」
諸葛恪「なぜです父上。
彼らにしても寿春を攻め取る好機なのですよ。
江夏の燈艾なら、それくらいわかるはずです。
こちらから和親の使者を送れば、必ず……」
劉 備「バーカ。
あちらさんは単独で寿春を攻略できる力を
持っている。我らと結ぶ利はないんだ。
全く、お前は策の有効性しか考えてないのか。
成功するかどうかの見極めもできないんか?」
諸葛恪「む、むむむ。
し、しかしながら、江夏の楚軍の戦力は、
動かすことができれば我々には大きな……」
孫尚香「それ以上は結構。
とにかく……楚軍と結ぶなんてできない。
それがわかったら、さっさと口を閉じなさい」
諸葛恪「は……」
こうして、有効な方策が出ないまま軍議は終わり、
絶望的な防衛戦へと突入していく。
☆☆☆
同じ頃、江夏郡夏口港。
燈艾、費偉、魏延、金目鯛が集まり
今後のことについて議論していた。
魏延
金目鯛
魏 延「魏軍は寿春をがら空きにしている。
今ここを突けば、必ず落とすことができる!
なのになぜ、動こうとしない?」
金目鯛「親父は陸口を落としたって聞いたぜ。
俺らもそろそろ動くべきなんじゃねえのか?」
燈艾
費偉
燈 艾「……まだ、動く時ではござらぬ。
確かに寿春は落とすことができましょう。
しかし寿春を今奪ったとて、北も南も敵の土地。
守るのに四苦八苦しましょう」
費 偉「寿春を取るならば、合わせて廬江も
我らが楚の地にしておきたいところです。
さすれば、防衛も容易になりましょう」
魏 延「そんな悠長な……」
費 偉「では、魏延将軍。ひとつご質問です。
寿春を奪われ舞い戻ってきた関羽と張遼……。
この二人と一騎討ちして絶対に勝てますか?
その自信があるのなら、考えなくもありませんが」
魏 延「い、いや……張遼はともかく、関羽はちょっと。
そうだ、金目鯛どの。私が張遼を倒すんで、
関羽は貴方がやっちゃってくれ」
金目鯛「ダメダメ、算盤装備でパワーアップした俺でも
あの髭のおっさんは無理だって」
魏 延「むむ……やはり関羽は怖いよな。
奴は神のごとき強さを持っている」
燈 艾「魏延将軍。私に良い考えがあります」
魏 延「むっ、何か関羽に対抗する策があるのか!?
流石は燈艾、知恵も並の男ではないな!」
金目鯛「そいつは是非とも聞きたいな! 頼むぜ!」
燈 艾「はい。……関羽は確かに怖い存在です。
その名を聞けば、将も兵も震え上がってしまう」
魏 延「うむ」
燈 艾「関羽の名を呼ぶと皆が怖がる。それならば、
これからは彼のことを『かんぬーたん』と
呼ぶようにしましょう」
魏 延「……は?」
燈 艾「らぶりーな愛称をつけてそれで呼べば、
彼に対する恐怖心もいくらか緩和されて……。
……なぜ頭を抱えているのですか?」
魏 延「呼び方などどうでもいいわ。
全く、期待した俺がバカみたいじゃないか」
金目鯛「呼び方を変えたところで、関羽の実際の強さは
全然変わりはないだろうに」
燈 艾「はあ。良い策だと思ったのですが……」
費 偉「話を進めましょう。
一騎討ちやその後の守りにくさなども鑑みれば、
今寿春を攻め取ることには利はありません。
取った後で取り返されるだけならまだしも、
この江夏まで奪われてしまいかねません」
燈 艾「ええ……まだ、その時ではありません。
今は、ただ待ちましょう」
江夏の楚軍は動かなかった。
長期的な視野で、虎視眈々と隙を窺うのみである。
その『動く時』はそう遠からず来るだろうと
燈艾は確信していた。
☆☆☆
有効な策もなく戦力差も大きい状態では、
廬江城を守る呉軍に勝ち目はなかった。
魏軍は10日足らずでこれを陥落させ、悠々と入城した。
関羽
張遼
関 羽「呆気なかったな」
張 遼「ふ、我らとまともにやりあって持つ城など
そうそうある訳がありませんな」
関 羽「フフ、違いない。
……劉兄(劉備)も、尻尾を巻いて逃げたようだな」
張 遼「関羽どの……心中複雑ですな」
関 羽「ああ、別に心配ない。
今は生きてさえいてくれれば、私は構わないのだ。
フフ、全く、生命力と逃げ足はゴキブリ並だからな。
私の赤兎馬でもあの逃げ足に追い付けるか……」
張 遼「大将だった孫尚香も逃げ遂せたようだ。
今頃は尋陽港へ逃げている最中でしょうな」
劉備
孫尚香
劉 備「やら〜れちゃった悔しいな〜♪
今度こそ勝ちましょう♪ さ〜よう〜な〜ら〜♪」
孫尚香「その歌やめてっ!
めちゃくちゃ惨めな気分になるわっ!」
劉 備「しかしドロンジョさま」
孫尚香「誰がドロンジョかっ!」
劉 備「失敬、しかし孫尚香さま。
こんな時は歌でも唄わないと、それこそ本当に
惨めな気分になりますぞ」
孫尚香「なら、せめてもう少し景気のいい歌にしなさい。
惨めな歌は勘弁して」
劉 備「注文が多いですなあ。景気のいい歌……。
じゃあ空耳ケーキとかで如何ですか」
孫尚香「そのケーキじゃない!」
関 羽「劉兄もめげない人だからな。
歌でも唄いながら馬を歩かせているだろう。
さて、今はそれよりも戦後の処理だ」
張 遼「……ああ、そういえば関羽どの。
実は、捕虜を一人捕らえておるのだが」
関 羽「捕虜?」
張遼は一人の将を引き合わせた。
関平
関 平「父上……」
関 羽「平……! そうか、お前はここにいたのか。
生きて会えるとは思わなんだ」
関 平「そんなことより父上。
ひとつ、お答えをいただきたい」
関 羽「ん? なんだ」
関 平「私は劉備さまと共にこの呉にやってきました。
しかし、父上はそれと別れて魏軍にいらっしゃる。
何故、義兄である劉備さまと敵対なさるのです!」
関 羽「劉兄と敵対? それは違う。
私は今でも劉兄と共に戦いたいと思っている」
関 平「ならば、なぜに我らの敵となっておられるか」
関 羽「新たな勢力を興すだけの土地はもうないのだ。
それはつまり、劉玄徳を主に国を興すという夢も
消え去ったことを意味する」
関 平「消えてはおりませぬ!
劉備どのはまだ生きておられます!
生きてさえいれば、何度でも立ち上がれます!」
関 羽「だが、現実はどうだ?
劉兄は今はただの呉軍の一将だ。
さらにその呉は存亡の危機にまで直面している。
そんな中で何ができるというのか」
関 平「ぐっ……」
関 羽「夢から醒め、現実を見るしかなくなった今、
後の世のため、統一を果たせる勢力で力を振るう。
それが我々の生きる道であろう」
関 平「で、では、なぜ魏なのですか。
我らの敵だった曹操をなぜ選んだのです」
関 羽「魏公には一時の恩があった。
あの方は、統一を果たせるだけの才もある。
縁もゆかりもない他の勢力に仕えるより、
よほど良い選択であると思うが」
関 平「う、うう」
関 羽「もうよい、平。
劉兄に対する義理立ても十分出来たであろう。
これからは私と共に行こうではないか」
関 平「ち、父上……」
この後、関平は魏に登用されることになる。
また、同時に捕虜にされた歩隲、蒋宛も、
同じように魏軍に登用された。
この他、寿春陥落の際に捕らえられた潘璋や、
楚軍からたびたび離間を受け忠誠の低下していた
劉封、陳式、公孫淵といった面々も魏に登用された。
楚が陸口攻略に時間を取られている間に、
魏軍は着々と戦力を充実させつつあったのだった。
☆☆☆
さて、楚軍が占領した陸口港には、
烏林からやってきた船団が入っていた。
金旋
金 旋「あたーらしーいー州に来たー♪
希望のー揚ー州ー♪ OHイエーイ♪」
下町娘
下町娘「何がOHイエーイですか。
いい加減、船から下りてきてくださいよ」
金 旋「お? おお、出迎えご苦労さん」
楚王金旋は烏林を出て、陸口に入った。
船から降り、彼は初めて揚州の地を踏みしめる。
金 旋「この一歩は、見た目は小さな一歩にすぎんが、
人民にとっては大きな一歩だー!」
下町娘「人民にとっても大したことないですよ。
先に私たちが来てるんですから」
金 旋「そりゃそうなんだがな……。
そんな現実に引き戻すようなこと言わんでも。
まあいいや、ところで玉はどうした?」
下町娘「ちょっと前までいたんですけど。
どこに行ったんでしょうね」
金 旋「ふーん、まあそのうち戻るだろ。で、どうだ?
こっち攻め落としてから何かあったか?」
下町娘「各方面から色々と報告が来てますよ。
とりあえず執務室でお話ししますので……」
そう言って、下町娘は港の施設内に用意した
急ごしらえの執務室へ案内した。
金旋が烏林で使っていた部屋よりも少々小さい。
金 旋「なんかこじんまりとしてるな」
下町娘「しょうがないですよ。
占領する際にあらかた焼けちゃってて、
まともに使えるのがここくらいなんです」
金 旋「ふむう。まあいいか。
そう長居するつもりもないしな」
下町娘「え? すぐどこか行くんですか?」
金 旋「そう。常に一歩、前へ進んでいくのさ。
歩みを止めてはならんのだ」
下町娘「なるほど。進むのをやめて止まっちゃうと
酸素が取り込めなくなるからですね」
金 旋「そりゃ回遊魚。
陸口という足掛かりを得たことだし、
一気に柴桑一帯を手に入れるつもりだ」
下町娘「なるほどー。
では、各所からの報告はちゃちゃーっと
終わらせちゃいましょうか」
金 旋「うむ。手短に行こう」
下町娘はここ最近に各地から送られてきた内容を
まとめて報告した。
下町娘「江夏方面からの報告です。
捕虜にしていた太史慈、范彊、張達が脱走。
汝南方面に逃れた様子だということです」
金 旋「後ろの二人はどうでもいいが、太史慈は痛いな。
そのまま汝南で魏軍と戦っててほしいものだ」
下町娘「これまでも苦しめられてますからね。
その後、范彊・張達は魏軍に寝返ったようです。
節操ないですね」
金 旋「そう言うな、ウチで散々離間かましてたから
忠誠下がってたんだろう」
下町娘「そんなものですかねー。
あと、呉の有してた廬江が魏軍に奪われましたが
これに対しては静観ということでいいんですか?」
金 旋「うむ、そこは燈艾に任せる。
あちらは関羽や張遼といった奴らがいるんだ、
そこは慎重にやってもらって結構」
下町娘「わかりました。それから……。
先日、金旋さまの命令で鉄悉蛇矛を奪い取った
程普ですが、孫権の返還要求に応じ返還。
去り際に『恨んでやるー』と泣いていたそうです」
金 旋「ほっとけ。程普もそう長くはないだろう。
武器を奪ったところで問題はない」
下町娘「最近なんだか容赦ないですね。
それから、捕虜にしていた関興ですが……」
金 旋「なんだ、また脱走か?」
下町娘「いえ、こっちは登用です」
金 旋「なんだ登用か……え? 本当?」
下町娘「はい、費偉さんが登用したそうです」
☆☆☆
関興
費偉
関 興「断る。私が生きる道は呉にあり。
楚に降る気など毛頭ない」
費 偉「ふうむ。しかし、貴殿が呉に対してそこまで
執着する理由があるとは思いませんが。
……ああ、なるほど」
関 興「何が、なるほどなんだ」
費 偉「ズバリ、女ですね」
関 興「ななななな何をいいいい言っているんだ!」
費 偉「(おや、適当言ったつもりなのに)
呉で女性というと……孫尚香ですね」
関 興「かかか関係ないだろう」
費 偉「しかし、残念ですね。
女を求めるなら、こちらの方がいいですのに」
関 興「む? どういうことだ」
費 偉「呉には女の将は孫尚香しかいません。
しかしこちらにはそれ以上に何人もいます。
それこそ、よりどりみどりです」
関 興「人数など関係ない。私が求めるは彼女一人」
費 偉「ほう」
関 興「い、いやいやいや、何を言ってる。
女なんて関係ないっ」
費 偉「まあまあ。孫尚香ばかりが女ではありません。
例えば、彼女なんてどうですか……?」
関 興「ん、この写真は……ぬっ!?
にゅ、にゅ、にゅうよくしーん!! ブハッ!」
費 偉「おや、鼻血ですか。若いですな。
さあ、このちり紙をどうぞ」
関 興「も、申し訳ない……。
と、ところでこの方は一体誰です!?」
費 偉「彼女の名は公孫朱と言いまして、
現在赤丸急上昇中のセクシー水着アイドル……
もとい我が軍の女武将です」
関 興「う、美しい……」(ボタボタ)
費 偉「鼻血、鼻血! 垂れてますぞ」
関 興「し、失礼……遠目に見たことはあったが、
こんな綺麗な方だったとは……」
費 偉「普段のクールな感じと慌てた時に出る
方言のギャップが萌えーと一部で大人気です。
どうです、登用を受けませんか?
受けるなら、この写真は差し上げますが……」
関 興「う、受ける」
費 偉「フフフ、それで結構です。
これからよろしく頼みますよ、関興将軍」
関 興「……申し訳ありません、孫尚香さま。
貴女を忘れたわけではありません……。
しかしこれほどまでに期待をされてしまうと
この関興、断るわけには参りません。
義に生きる私を、どうかお許しください……」
費 偉「(……どこが義に生きてるのだろう)」
こうして関興は楚に登用された。
☆☆☆
金 旋「よーし、費偉よくやった! 二階級特進!」
下町娘「二階級って……費偉さんの官位って、
すでに現時点で最高位なんですけど。
同格扱いの上位で玉ちゃんと鞏志さんが
いるだけですよ」
金 旋「知ってる。とりあえず言ってみただけだ。
本気で上げるつもりはない」
下町娘「〜〜〜っ!」(バンバン)
金 旋「机叩くな、壊れるだろ。ほれ、他は?」
下町娘「あと、魏軍から文欽って人を登用したそうです。
江夏からの報告はこれで以上ですね。
次は洛陽方面を……これは定期連絡ですね」
金 旋「特別、報告するものはないってか?」
下町娘「そうですねー。
みんなで離間とか焼討ちとかやってるそうです。
あ、でも、凹んでた司馬懿さんがいつの間にか
復活してますね」
金 旋「そうかそうか、そりゃよかった。
彼女が北の守りの要だからな」
下町娘「なんか計略やってたお陰で知力が100に
なったという話ですよ……。いいなー知力100」
金 旋「計略やってるとたまに上がるからな。
玉もそれのお陰で知力100(補正込)になったしな。
町娘ちゃんもやってみるか? 計略」
下町娘「成功しないからいいです……。
次行きましょう。南昌の霍峻さんから。
南昌に建設してた砦が完成したそうです……。
え? そんなのいつの間に?」
金 旋「ああ、烏林出る前に指示してたんだ。
柴桑攻略のための布石のひとつだな。
しかし霍峻も仕事が早いな、もう出来たのか」
下町娘「……直接攻めてもよかったんじゃ?」
金 旋「玉に以前怒られたからな。
攻める時は一応相談せんと……」
下町娘「なるほど、それで寸前で止めておくんですね」
金 旋「そうそう。
こっちからも武昌に砦を建設するつもりだ」
下町娘「柴桑を取り囲んじゃうんですね」
金 旋「うむ、そうやって囲んで追い詰めたところで
一斉にズガーンと柴桑を攻略するのだ」
下町娘「おー」
金 旋「じゃ、一緒に建設行くか。
あと文官系で残ってる奴いるか?」
下町娘「鞏志さん、厳峻さん、伊籍さんあたりが
今いる人たちですね」
金 旋「じゃ、そいつらも連れていこう。
兵は5万連れてけば大丈夫だろう」
下町娘「はーい。じゃ、準備させておきますね」
金 旋「ああ、よろしく。……しかし何だな。
町娘ちゃんも仕事ぶりが板についたな。
見ていて貫禄が感じられるぞ」
下町娘「歳のことは言うなーーーーーっ!」
ボグウッ・゚・(ノД`)=○()゚o゚)
金 旋「ぐわあっ!? な、何事!?」
下町娘「貫禄!? 何ですそれ!
私が歳取ったって言いたいんでしょう!
酷い! 酷いですっ!!」
金 旋「ちょ、やめ……!
だ、誰も歳のことなんて言ってな……ぐわあっ」
ドカッ! バキッ!
魯圓圓
雷圓圓
魯圓圓「な、何の騒ぎですか!?」
雷圓圓「どうかしましたかー!?」
下町娘「いじめですっ! 職場内いじめですよっ!」
魯圓圓「え、えーと……どっちが?」
雷圓圓「どう見ても下町娘さんがいじめてる側ですねー」
金 旋「い、いいから早く助けろ!」
割って入った二人に制されて、ようやく下町娘は
落ち着きを取り戻した。
下町娘「す、すいません……。
最近ちょっと、その手の話にナーバスで……」
金 旋「あ、ああ……俺も気をつけるよ。
今はとりあえず準備の方をよろしく頼む」
下町娘「はいー」
準備のため下町娘が出て行き、魯圓圓・雷圓圓も
手持ちの仕事のため外に出ていった。
そのすぐ後、部屋に金玉昼が入ってくる。
金玉昼
金玉昼「ただいまー。ちちうえ、来てたのにゃ?
なんかズタボロになってるけど……」
金 旋「お、玉。いや、別に気にしなくていい」
金玉昼「はあ」
金 旋「……おや? お前、少し見ないうちに……。
ちょっと胸が大きくなったんじゃないか」
金玉昼「あ、気付いた〜?
前より1cmほど大きくなったのにゃ♪」
金 旋「そうか! 胸の筋肉が増えたか!」
金玉昼「筋肉じゃなーい!」
金 旋「ははは、わかってるわかってる。
筋肉なんかじゃないよな。うんうん。
胸の脂肪が大・増・量!」
金玉昼「た、確かに脂肪ではあるけど……。
なんかそう言われると、サイズ増えても
素直に喜べないにゃ……」
金 旋「はっはっは、まあ育っているのは良いことだ。
で、どこ行ってたんだ?」
金玉昼「捕虜にしてた唐咨さんを登用してたにゃ」
金 旋「ほう、早速かー。
じゃ、俺はかくかくしかじかというわけで
武昌に砦を築きに行ってくるわ」
金玉昼「別にかまわんにゃ。いってらっしゃい。
ハンカチとちり紙は持った?」
金 旋「俺はガキじゃないぞー」
金玉昼「うん、もういい歳の爺様にゃ」
金 旋「……さて、行くとするか」
金旋は5万の兵を率いて武昌に砦を築き、
霍峻のいる南昌砦と共に柴桑を取り囲む。
着々と柴桑を攻略する準備を整えつつある。
寿春、廬江、柴桑。
戦いの場は揚州が中心となってきていた。
そしてまた、あの男がこの地にやってくる……。
|