○ 第四十六章 「揚州への第一歩」 ○ 
219年6月

6月、楚軍が呉軍の有する陸口を攻め落とした頃。
その北、廬江では、楚とは別な脅威が呉に迫っていた。

呉兵A「あっちから来るのは、張遼!?」
呉兵B「あっちから来るのは、関羽!?」
二 人「も、もうだめだぁぁぁ!」

 魏軍廬江へ

寿春を出撃した魏軍2部隊が廬江城に迫って来ていた。
一方の大将は張遼、4万の兵を率い、
もう一方は関羽が3万の兵を率いている。

対する廬江の守備兵は1万5千程度。
勝敗はほとんど決まっているようなものだった。

   劉備劉備   孫尚香孫尚香

劉 備「あれを率いるのは関さんか……。
    こんな形での再会はしたくなかったな」
孫尚香「劉備……。
    張遼はともかく、関羽はどうにかならないの?
    こちらに寝返るとまではいかなくとも、
    この場だけ一旦兵を引かせるとか……」
劉 備「無理だな。あいつはそんなことはしない。
    ここで説得されて兵を引くようなタマじゃあない」
孫尚香「く……しかし、このままでは圧倒的な兵力差で
    押し潰されてしまう。何か、手はないのか」

孫尚香のその藁にもすがるような言葉に、
他の将たちは誰も答えることはできなかった。
だがただ一人、諸葛恪だけは自信有りげに手を挙げた。

    諸葛恪諸葛恪

諸葛恪「御大将、私に会心の策がございます」
孫尚香「ふむ、会心の策? どんな内容なの」
劉 備「あー、そいつは聞くのは止めといた方がいい。
    自分から会心の策とか言ってるようでは、
    大して期待はできないだろうよ」
諸葛恪「フフフ、なるほど。
    いつもいつも会心の策(自称)を連発される
    劉備どのらしいご意見で」
劉 備「にゃにおう!?」
孫尚香「やめなさいな……。
    とりあえず、内容を聞いてからにするわ」
劉 備「むう……」
孫尚香「で、どんな手を使うの?」
諸葛恪「はっ、ご説明致します。
    張遼や関羽など精鋭が揃う魏軍を追い返すには、
    それに匹敵する兵力が必要となりましょう。
    しかし悲しいかな、我が軍の兵力だけでは
    全くと言っていいほど数が足りません。
    そこで、他の軍を動かすのです」
孫尚香「他の……軍?」

    諸葛瑾諸葛瑾

諸葛瑾「(だめだ、恪よ……。
    それは、到底受け入れられない策だ)」
劉 備「(こいつぁ、机上の空論だな……。
    全く、いいとこの坊ちゃんらしい策だ)」

諸葛恪「はっ、江夏の楚軍は10万近くの兵がいます!
    これまで敵対していた関係ではありますが、
    ここは一旦、楚軍と和を結ぶのです。
    そして彼らの軍で寿春を攻めてもらえば、
    魏軍は慌てて退却していくことでしょう。
    どうですか、起死回生の策だとは思い……」
孫尚香「バカがッ!
    お前には、呉人の矜持はないの!?」
諸葛恪「は……? 矜持、ですか?」
孫尚香「あれだけ辛酸を嘗めさせられた楚に対し、
    今は和を結べというのか? 如何に今、
    大きな危機にあろうと、それだけは有り得ない!」
諸葛瑾「恪よ、それ以上に問題がある。
    その策は楚が承諾せねば成り立たぬ策ぞ」
諸葛恪「なぜです父上。
    彼らにしても寿春を攻め取る好機なのですよ。
    江夏の燈艾なら、それくらいわかるはずです。
    こちらから和親の使者を送れば、必ず……」
劉 備「バーカ。
    あちらさんは単独で寿春を攻略できる力を
    持っている。我らと結ぶ利はないんだ。
    全く、お前は策の有効性しか考えてないのか。
    成功するかどうかの見極めもできないんか?」
諸葛恪「む、むむむ。
    し、しかしながら、江夏の楚軍の戦力は、
    動かすことができれば我々には大きな……」
孫尚香「それ以上は結構。
    とにかく……楚軍と結ぶなんてできない。
    それがわかったら、さっさと口を閉じなさい」
諸葛恪「は……」

こうして、有効な方策が出ないまま軍議は終わり、
絶望的な防衛戦へと突入していく。

    ☆☆☆

同じ頃、江夏郡夏口港。
燈艾、費偉、魏延、金目鯛が集まり
今後のことについて議論していた。

   魏延魏延   金目鯛金目鯛

魏 延「魏軍は寿春をがら空きにしている。
    今ここを突けば、必ず落とすことができる!
    なのになぜ、動こうとしない?」
金目鯛「親父は陸口を落としたって聞いたぜ。
    俺らもそろそろ動くべきなんじゃねえのか?」

   トウ艾燈艾   費偉費偉

燈 艾「……まだ、動く時ではござらぬ。
    確かに寿春は落とすことができましょう。
    しかし寿春を今奪ったとて、北も南も敵の土地。
    守るのに四苦八苦しましょう」
費 偉「寿春を取るならば、合わせて廬江も
    我らが楚の地にしておきたいところです。
    さすれば、防衛も容易になりましょう」
魏 延「そんな悠長な……」
費 偉「では、魏延将軍。ひとつご質問です。
    寿春を奪われ舞い戻ってきた関羽と張遼……。
    この二人と一騎討ちして絶対に勝てますか?
    その自信があるのなら、考えなくもありませんが」
魏 延「い、いや……張遼はともかく、関羽はちょっと。
    そうだ、金目鯛どの。私が張遼を倒すんで、
    関羽は貴方がやっちゃってくれ」
金目鯛「ダメダメ、算盤装備でパワーアップした俺でも
    あの髭のおっさんは無理だって」
魏 延「むむ……やはり関羽は怖いよな。
    奴は神のごとき強さを持っている」
燈 艾「魏延将軍。私に良い考えがあります」
魏 延「むっ、何か関羽に対抗する策があるのか!?
    流石は燈艾、知恵も並の男ではないな!」
金目鯛「そいつは是非とも聞きたいな! 頼むぜ!」
燈 艾「はい。……関羽は確かに怖い存在です。
    その名を聞けば、将も兵も震え上がってしまう」
魏 延「うむ」
燈 艾「関羽の名を呼ぶと皆が怖がる。それならば、
    これからは彼のことを『かんぬーたん』
    呼ぶようにしましょう」
魏 延「……は?」
燈 艾「らぶりーな愛称をつけてそれで呼べば、
    彼に対する恐怖心もいくらか緩和されて……。
    ……なぜ頭を抱えているのですか?」
魏 延「呼び方などどうでもいいわ。
    全く、期待した俺がバカみたいじゃないか」
金目鯛「呼び方を変えたところで、関羽の実際の強さは
    全然変わりはないだろうに」
燈 艾「はあ。良い策だと思ったのですが……」
費 偉「話を進めましょう。
    一騎討ちやその後の守りにくさなども鑑みれば、
    今寿春を攻め取ることには利はありません。
    取った後で取り返されるだけならまだしも、
    この江夏まで奪われてしまいかねません」
燈 艾「ええ……まだ、その時ではありません。
    今は、ただ待ちましょう」

江夏の楚軍は動かなかった。
長期的な視野で、虎視眈々と隙を窺うのみである。

その『動く時』はそう遠からず来るだろうと
燈艾は確信していた。

    ☆☆☆

有効な策もなく戦力差も大きい状態では、
廬江城を守る呉軍に勝ち目はなかった。
魏軍は10日足らずでこれを陥落させ、悠々と入城した。

   関羽関羽   張遼張遼

関 羽「呆気なかったな」
張 遼「ふ、我らとまともにやりあって持つ城など
    そうそうある訳がありませんな」
関 羽「フフ、違いない。
    ……劉兄(劉備)も、尻尾を巻いて逃げたようだな」
張 遼「関羽どの……心中複雑ですな」
関 羽「ああ、別に心配ない。
    今は生きてさえいてくれれば、私は構わないのだ。
    フフ、全く、生命力と逃げ足はゴキブリ並だからな。
    私の赤兎馬でもあの逃げ足に追い付けるか……」
張 遼「大将だった孫尚香も逃げ遂せたようだ。
    今頃は尋陽港へ逃げている最中でしょうな」

 尋陽へ

   劉備劉備   孫尚香孫尚香

劉 備「やら〜れちゃった悔しいな〜♪
    今度こそ勝ちましょう♪ さ〜よう〜な〜ら〜♪」
孫尚香「その歌やめてっ!
    めちゃくちゃ惨めな気分になるわっ!」
劉 備「しかしドロンジョさま」
孫尚香「誰がドロンジョかっ!」
劉 備「失敬、しかし孫尚香さま。
    こんな時は歌でも唄わないと、それこそ本当に
    惨めな気分になりますぞ」
孫尚香「なら、せめてもう少し景気のいい歌にしなさい。
    惨めな歌は勘弁して」
劉 備「注文が多いですなあ。景気のいい歌……。
    じゃあ空耳ケーキとかで如何ですか」
孫尚香「そのケーキじゃない!」

関 羽「劉兄もめげない人だからな。
    歌でも唄いながら馬を歩かせているだろう。
    さて、今はそれよりも戦後の処理だ」
張 遼「……ああ、そういえば関羽どの。
    実は、捕虜を一人捕らえておるのだが」
関 羽「捕虜?」

張遼は一人の将を引き合わせた。

    関平関平

関 平「父上……」
関 羽「平……! そうか、お前はここにいたのか。
    生きて会えるとは思わなんだ」
関 平「そんなことより父上。
    ひとつ、お答えをいただきたい」
関 羽「ん? なんだ」
関 平「私は劉備さまと共にこの呉にやってきました。
    しかし、父上はそれと別れて魏軍にいらっしゃる。
    何故、義兄である劉備さまと敵対なさるのです!」
関 羽「劉兄と敵対? それは違う。
    私は今でも劉兄と共に戦いたいと思っている」
関 平「ならば、なぜに我らの敵となっておられるか」
関 羽「新たな勢力を興すだけの土地はもうないのだ。
    それはつまり、劉玄徳を主に国を興すという夢も
    消え去ったことを意味する」
関 平「消えてはおりませぬ!
    劉備どのはまだ生きておられます!
    生きてさえいれば、何度でも立ち上がれます!」
関 羽「だが、現実はどうだ?
    劉兄は今はただの呉軍の一将だ。
    さらにその呉は存亡の危機にまで直面している。
    そんな中で何ができるというのか」
関 平「ぐっ……」
関 羽「夢から醒め、現実を見るしかなくなった今、
    後の世のため、統一を果たせる勢力で力を振るう。
    それが我々の生きる道であろう」
関 平「で、では、なぜ魏なのですか。
    我らの敵だった曹操をなぜ選んだのです」
関 羽「魏公には一時の恩があった。
    あの方は、統一を果たせるだけの才もある。
    縁もゆかりもない他の勢力に仕えるより、
    よほど良い選択であると思うが」
関 平「う、うう」
関 羽「もうよい、平。
    劉兄に対する義理立ても十分出来たであろう。
    これからは私と共に行こうではないか」
関 平「ち、父上……」

この後、関平は魏に登用されることになる。
また、同時に捕虜にされた歩隲、蒋宛も、
同じように魏軍に登用された。

この他、寿春陥落の際に捕らえられた潘璋や、
楚軍からたびたび離間を受け忠誠の低下していた
劉封、陳式、公孫淵といった面々も魏に登用された。

楚が陸口攻略に時間を取られている間に、
魏軍は着々と戦力を充実させつつあったのだった。

    ☆☆☆

さて、楚軍が占領した陸口港には、
烏林からやってきた船団が入っていた。

 陸口

    金旋金旋

金 旋「あたーらしーいー州に来たー♪
    希望のー揚ー州ー♪ OHイエーイ♪」

    下町娘下町娘

下町娘「何がOHイエーイですか。
    いい加減、船から下りてきてくださいよ」
金 旋「お? おお、出迎えご苦労さん」

楚王金旋は烏林を出て、陸口に入った。
船から降り、彼は初めて揚州の地を踏みしめる。

金 旋「この一歩は、見た目は小さな一歩にすぎんが、
    人民にとっては大きな一歩だー!」
下町娘「人民にとっても大したことないですよ。
    先に私たちが来てるんですから」
金 旋「そりゃそうなんだがな……。
    そんな現実に引き戻すようなこと言わんでも。
    まあいいや、ところで玉はどうした?」
下町娘「ちょっと前までいたんですけど。
    どこに行ったんでしょうね」
金 旋「ふーん、まあそのうち戻るだろ。で、どうだ?
    こっち攻め落としてから何かあったか?」
下町娘「各方面から色々と報告が来てますよ。
    とりあえず執務室でお話ししますので……」

そう言って、下町娘は港の施設内に用意した
急ごしらえの執務室へ案内した。
金旋が烏林で使っていた部屋よりも少々小さい。

金 旋「なんかこじんまりとしてるな」
下町娘「しょうがないですよ。
    占領する際にあらかた焼けちゃってて、
    まともに使えるのがここくらいなんです」
金 旋「ふむう。まあいいか。
    そう長居するつもりもないしな」
下町娘「え? すぐどこか行くんですか?」
金 旋「そう。常に一歩、前へ進んでいくのさ。
    歩みを止めてはならんのだ」
下町娘「なるほど。進むのをやめて止まっちゃうと
    酸素が取り込めなくなるからですね」
金 旋「そりゃ回遊魚。
    陸口という足掛かりを得たことだし、
    一気に柴桑一帯を手に入れるつもりだ」
下町娘「なるほどー。
    では、各所からの報告はちゃちゃーっと
    終わらせちゃいましょうか」
金 旋「うむ。手短に行こう」

下町娘はここ最近に各地から送られてきた内容を
まとめて報告した。

下町娘「江夏方面からの報告です。
    捕虜にしていた太史慈、范彊、張達が脱走。
    汝南方面に逃れた様子だということです」
金 旋「後ろの二人はどうでもいいが、太史慈は痛いな。
    そのまま汝南で魏軍と戦っててほしいものだ」
下町娘「これまでも苦しめられてますからね。
    その後、范彊・張達は魏軍に寝返ったようです。
    節操ないですね」
金 旋「そう言うな、ウチで散々離間かましてたから
    忠誠下がってたんだろう」
下町娘「そんなものですかねー。
    あと、呉の有してた廬江が魏軍に奪われましたが
    これに対しては静観ということでいいんですか?」
金 旋「うむ、そこは燈艾に任せる。
    あちらは関羽や張遼といった奴らがいるんだ、
    そこは慎重にやってもらって結構」
下町娘「わかりました。それから……。
    先日、金旋さまの命令で鉄悉蛇矛を奪い取った
    程普ですが、孫権の返還要求に応じ返還。
    去り際に『恨んでやるー』と泣いていたそうです」
金 旋「ほっとけ。程普もそう長くはないだろう。
    武器を奪ったところで問題はない」
下町娘「最近なんだか容赦ないですね。
    それから、捕虜にしていた関興ですが……」
金 旋「なんだ、また脱走か?」
下町娘「いえ、こっちは登用です」
金 旋「なんだ登用か……え? 本当?」
下町娘「はい、費偉さんが登用したそうです」

    ☆☆☆

   関興関興   費偉費偉

関 興「断る。私が生きる道は呉にあり。
    楚に降る気など毛頭ない」
費 偉「ふうむ。しかし、貴殿が呉に対してそこまで
    執着する理由があるとは思いませんが。
    ……ああ、なるほど」
関 興「何が、なるほどなんだ」
費 偉「ズバリ、女ですね」
関 興「ななななな何をいいいい言っているんだ!」
費 偉「(おや、適当言ったつもりなのに)
    呉で女性というと……孫尚香ですね」
関 興「かかか関係ないだろう」
費 偉「しかし、残念ですね。
    女を求めるなら、こちらの方がいいですのに」
関 興「む? どういうことだ」
費 偉「呉には女の将は孫尚香しかいません。
    しかしこちらにはそれ以上に何人もいます。
    それこそ、よりどりみどりです」
関 興「人数など関係ない。私が求めるは彼女一人」
費 偉「ほう」
関 興「い、いやいやいや、何を言ってる。
    女なんて関係ないっ」
費 偉「まあまあ。孫尚香ばかりが女ではありません。
    例えば、彼女なんてどうですか……?」
関 興「ん、この写真は……ぬっ!?
    にゅ、にゅ、にゅうよくしーん!! ブハッ!
費 偉「おや、鼻血ですか。若いですな。
    さあ、このちり紙をどうぞ」
関 興「も、申し訳ない……。
    と、ところでこの方は一体誰です!?」
費 偉「彼女の名は公孫朱と言いまして、
    現在赤丸急上昇中のセクシー水着アイドル……
    もとい我が軍の女武将です」
関 興「う、美しい……」(ボタボタ)
費 偉「鼻血、鼻血! 垂れてますぞ」
関 興「し、失礼……遠目に見たことはあったが、
    こんな綺麗な方だったとは……」
費 偉「普段のクールな感じと慌てた時に出る
    方言のギャップが萌えーと一部で大人気です。
    どうです、登用を受けませんか?
    受けるなら、この写真は差し上げますが……」
関 興「う、受ける」
費 偉「フフフ、それで結構です。
    これからよろしく頼みますよ、関興将軍」
関 興「……申し訳ありません、孫尚香さま。
    貴女を忘れたわけではありません……。
    しかしこれほどまでに期待をされてしまうと
    この関興、断るわけには参りません。
    義に生きる私を、どうかお許しください……」
費 偉「(……どこが義に生きてるのだろう)」

こうして関興は楚に登用された。

    ☆☆☆

金 旋「よーし、費偉よくやった! 二階級特進!」
下町娘「二階級って……費偉さんの官位って、
    すでに現時点で最高位なんですけど。
    同格扱いの上位で玉ちゃんと鞏志さんが
    いるだけですよ」
金 旋「知ってる。とりあえず言ってみただけだ。
    本気で上げるつもりはない」
下町娘「〜〜〜っ!」(バンバン)
金 旋「机叩くな、壊れるだろ。ほれ、他は?」
下町娘「あと、魏軍から文欽って人を登用したそうです。
    江夏からの報告はこれで以上ですね。
    次は洛陽方面を……これは定期連絡ですね」
金 旋「特別、報告するものはないってか?」
下町娘「そうですねー。
    みんなで離間とか焼討ちとかやってるそうです。
    あ、でも、凹んでた司馬懿さんがいつの間にか
    復活してますね」
金 旋「そうかそうか、そりゃよかった。
    彼女が北の守りの要だからな」
下町娘「なんか計略やってたお陰で知力が100に
    なったという話ですよ……。いいなー知力100」
金 旋「計略やってるとたまに上がるからな。
    玉もそれのお陰で知力100(補正込)になったしな。
    町娘ちゃんもやってみるか? 計略」
下町娘「成功しないからいいです……。
    次行きましょう。南昌の霍峻さんから。
    南昌に建設してた砦が完成したそうです……。
    え? そんなのいつの間に?」
金 旋「ああ、烏林出る前に指示してたんだ。
    柴桑攻略のための布石のひとつだな。
    しかし霍峻も仕事が早いな、もう出来たのか」

 高昌→南昌

下町娘「……直接攻めてもよかったんじゃ?」
金 旋「玉に以前怒られたからな。
    攻める時は一応相談せんと……」
下町娘「なるほど、それで寸前で止めておくんですね」
金 旋「そうそう。
    こっちからも武昌に砦を建設するつもりだ」

 陸口→武昌

下町娘「柴桑を取り囲んじゃうんですね」
金 旋「うむ、そうやって囲んで追い詰めたところで
    一斉にズガーンと柴桑を攻略するのだ」
下町娘「おー」
金 旋「じゃ、一緒に建設行くか。
    あと文官系で残ってる奴いるか?」
下町娘「鞏志さん、厳峻さん、伊籍さんあたりが
    今いる人たちですね」
金 旋「じゃ、そいつらも連れていこう。
    兵は5万連れてけば大丈夫だろう」
下町娘「はーい。じゃ、準備させておきますね」
金 旋「ああ、よろしく。……しかし何だな。
    町娘ちゃんも仕事ぶりが板についたな。
    見ていて貫禄が感じられるぞ」
下町娘歳のことは言うなーーーーーっ!

 ボグウッ・゚・(ノД`)=○()゚o゚)

金 旋「ぐわあっ!? な、何事!?」
下町娘「貫禄!? 何ですそれ!
    私が歳取ったって言いたいんでしょう!
    酷い! 酷いですっ!!」
金 旋「ちょ、やめ……!
    だ、誰も歳のことなんて言ってな……ぐわあっ」

 ドカッ! バキッ!

   魯圓圓魯圓圓  雷圓圓雷圓圓

魯圓圓「な、何の騒ぎですか!?」
雷圓圓「どうかしましたかー!?」
下町娘「いじめですっ! 職場内いじめですよっ!」
魯圓圓「え、えーと……どっちが?」
雷圓圓「どう見ても下町娘さんがいじめてる側ですねー」
金 旋「い、いいから早く助けろ!」

割って入った二人に制されて、ようやく下町娘は
落ち着きを取り戻した。

下町娘「す、すいません……。
    最近ちょっと、その手の話にナーバスで……」
金 旋「あ、ああ……俺も気をつけるよ。
    今はとりあえず準備の方をよろしく頼む」
下町娘「はいー」

準備のため下町娘が出て行き、魯圓圓・雷圓圓も
手持ちの仕事のため外に出ていった。
そのすぐ後、部屋に金玉昼が入ってくる。

    金玉昼金玉昼

金玉昼「ただいまー。ちちうえ、来てたのにゃ?
    なんかズタボロになってるけど……」
金 旋「お、玉。いや、別に気にしなくていい」
金玉昼「はあ」
金 旋「……おや? お前、少し見ないうちに……。
    ちょっと胸が大きくなったんじゃないか」
金玉昼「あ、気付いた〜?
    前より1cmほど大きくなったのにゃ♪」
金 旋「そうか! 胸の筋肉が増えたか!
金玉昼「筋肉じゃなーい!」
金 旋「ははは、わかってるわかってる。
    筋肉なんかじゃないよな。うんうん。
    胸の脂肪が大・増・量!
金玉昼「た、確かに脂肪ではあるけど……。
    なんかそう言われると、サイズ増えても
    素直に喜べないにゃ……」
金 旋「はっはっは、まあ育っているのは良いことだ。
    で、どこ行ってたんだ?」
金玉昼「捕虜にしてた唐咨さんを登用してたにゃ」
金 旋「ほう、早速かー。
    じゃ、俺はかくかくしかじかというわけで
    武昌に砦を築きに行ってくるわ」
金玉昼「別にかまわんにゃ。いってらっしゃい。
    ハンカチとちり紙は持った?」
金 旋「俺はガキじゃないぞー」
金玉昼「うん、もういい歳の爺様にゃ」
金 旋「……さて、行くとするか」

金旋は5万の兵を率いて武昌に砦を築き、
霍峻のいる南昌砦と共に柴桑を取り囲む。
着々と柴桑を攻略する準備を整えつつある。

寿春、廬江、柴桑。
戦いの場は揚州が中心となってきていた。
そしてまた、あの男がこの地にやってくる……。

[第四十五章へ戻る<]  [三国志TOP]  [>第四十七章へ進む]