219年3月
3月末日。
金旋と徐庶の艦隊は、烏林港へと戻ってきた。
金旋
下町娘
金 旋「はぁ……着いたなぁ」
下町娘「ふう……着きましたねえー」
船酔いの金旋と、慣れない戦疲れの出た下町娘は、
ようやく辿り着いた陸地を踏みしめ、嘆息した。
金玉昼
金玉昼「お帰りにゃ」
金 旋「おう……ただいま」
下町娘「ただいまぁ〜」
金玉昼「これで当初の戦略目的は達成されたにゃ。
まずはお疲れ様……と言いたいところだけど、
いろいろと他から報告が来ていまひる」
金 旋「ああ……予測はしていた。
出陣してる間に溜まるだろうとは思ってたからな。
とりあえず、飯を食いながらでも聞こう」
金玉昼「飯?」
金 旋「船上じゃ携帯食しかなかったし、
ゲロゲロ吐き過ぎて胃が空っぽなんだ。
暖かい飯を早く腹に入れたくてな」
金玉昼「ゲロゲロやったのに食べられるのかにゃ。
こういうのもタフって言うのかにゃー」
下町娘「私は食欲ないんで……。今日はこれで……」
金 旋「おう、お疲れさん。ゆっくり休めよ」
下町娘「はいぃぃ……」
金玉昼「……足元ふらついていまひる。
私は町娘ちゃんを部屋まで送ってくるにゃ。
ちちうえはとりあえずご飯食べてて」
金 旋「わかった」
下町娘「ごめんねぇ〜。助かるわ〜」
金玉昼に支えられて引き揚げていく下町娘。
それと入れ替わりに、魏光が挨拶してきた。
魏光
魏 光「あ、お疲れ様です、殿」
金 旋「おう、魏光か。
今日もムダに厚い胸板をしているな」
魏 光「殿、筋肉にムダなんてありません。
極限まで鍛え上げれば、刃さえ撥ね返すことも
できるようになるのですよ?」
金 旋「マジか?」
魏 光「……と孔奉どのが言ってました」
金 旋「受け売りかよ……。
そうだ、魏光。お前に重大な任務を与える」
魏 光「えっ? 重大な、任務!?」
金 旋「おう、お前にしか出来ない任務だ」
魏 光「わ、わかりました! なんなりと言ってください!
殿のためならば、このマッスルボディ魏光、
スクワット万本ノックでも!
8時間耐久ポージングでも!
なんでもやってみせましょう!」
金 旋「ああ、別にそういう変なのじゃない。
まあ、とりあえず俺についてこい。
お前をその任務の場に連れていこう」
魏 光「はっ! 了解です!」
魏光は嬉々として金旋の後ろをついていった。
魏 光「……あの、ここは?」
金 旋「見ての通りの場所だが?」
魏 光「厨房じゃないですか!
なんですか任務っていうのは!?」
金 旋「これは重大な任務なんだぞ。
船酔い後で体調がよろしくない俺のために、
お腹に優しい、それでいて食欲をそそる料理。
それを作るのがお前の役目だ」
魏 光「重大って……楚王の食事を作るとなれば、
それなりに重大かもしれませんけども。
お付きの料理長はどうしたんですか!?」
金 旋「いや、出陣中は暇になると思ってな、
4月になるまで休みを与えたんだよ」
魏 光「はぁ……。だから、代わりに私に作れ、と」
金 旋「そうだ。大丈夫、お前ならできる!
お前、料理が得意だっただろう?」
魏 光「そりゃ確かに得意ですけどね……。
筋肉を生かした任務かと思ったのに……」
金 旋「俺を唸らせるような料理を出したら、
今後の作戦に関しては考慮するぞ」
魏 光「は、ははっ! 私にお任せください!
早速料理にかかるとします!」
☆☆☆
金旋がとりあえず出された粥をすすっていると、
金玉昼が竹簡を抱えてやってきた。
金玉昼「……なんか、ただのお粥なのに美味しそう」
金 旋「おう、実際美味いぞ。
生姜と醤油の風味があいまって、実に美味い」
金玉昼「私もちょっと戴きたいかにゃ……」
金 旋「うむ、一人よりも二人の方が食事は楽しい。
一緒に食べなさい。おーい、粥もう一丁!」
魏 光「今お持ちします〜。はい、どうぞ」
金玉昼「……エプロン姿が妙に似合うにゃ〜」
魏 光「フッフッフ……。そうですかそうですか。
エプロンから覗く筋肉が眩しいですか。
しかし軍師、私に惚れてもダメですよ」
金玉昼「誰もそんなことは言ってないけど。
ずず……あ、美味しい」
魏 光「フフフ、照れ隠しですか。
まあ、今はそういうことにしておきましょう。
それより殿、2品目が出来ました」
金 旋「ほう、今度は何の料理だ!?
実にワクワクさせてくれるじゃないか!」
魏 光「はい、白菜と豚肉の蒸し物です。
どうぞ、お召し上がりください」
金 旋「ふむ、あーん……。もぐもぐ……。
ぬうっ……!? あっさりとしていながら、
それでいて豚肉の旨みがしっかりと!?」
魏 光「白菜のさっぱりした食感とみずみずしさ。
これを殺さないようにして豚の旨みを加え、
味をまとめました」
金 旋「うむっ、かかっているとろりとした餡もまた、
白菜と豚のよさを引き出している……!
これは、うーまーいーぞーっ!!」
ピカーッ
金玉昼「あ、口から光線が」
魏 光「では、3品目の用意をしますので」
金 旋「うむ! 次はどんなのかな、ワクワク」
金玉昼「わくわく……はっ!? いけないいけない。
報告類を忘れるところだったにゃ」
金 旋「おお、そういえばそんなことを言ってたな」
金玉昼「えと、4つほどあるんだけど。
江夏からの戦闘報告、洛陽からの戦後報告、
国内その他の報告、諸外国の情勢の定期報告。
どれから行くかにゃ」
金 旋「とりあえず諸外国から行こうか。
どうせ大した内容でもないんだろうし」
金玉昼「はいにゃ」
☆☆☆
時は1月下旬の頃。
場所は涼軍が占領している剣閣。
馬超
劉璋
馬 超「劉璋」
劉 璋「は、ははあーっ!」
馬 超「以前、貴殿が益州の君主であった頃、
我らに宣戦布告し漢中を侵略してきたが、
それに関して、何か申し開きはあるか?」
劉 璋「あ、あああ、あれは、そそ、その、
家臣にたぶらかされたでおじゃるよ」
馬 超「誑かされた? ほう、誰にだ」
劉 璋「その、当時軍師であった、ほうせい……」
馬 超「法正か、彼なら今は我が軍の軍師だが……。
貴殿を誑かし我らとの戦いを勧めたとあれば、
過去のこととはいえこれは正さねばならん。
早急に、法正を詰問するよう涼公に……」
劉 璋「あ、あいや! 法正じゃなかったでおじゃる!
ちょっと勘違いをしておじゃった!」
馬 超「そうか。では、法正じゃなくて誰が?」
劉 璋「そ、その、黄権……だったかな」
馬 超「黄権も我が軍に……」
劉 璋「こここ、黄権も違うでおじゃる!
そ、そうだ、孟達! 孟達の奴でおじゃる!」
馬 超「孟達か。孟達なら我が軍の所属ではないな。
今は確か、楚軍にいると聞く。
孟達が、貴殿を誑かしたというのか」
劉 璋「(ほっ……。これなら……)
そ、そうでおじゃる。あの腹黒い奴に、
麿はまんまと騙されたでおじゃる!」
馬 超「そうか、孟達か。
では、楚王金旋に質問状を送らねばならんな」
劉 璋「へ?」
馬 超「孟達に真偽を問い質してもらうとしよう。
過去の罪は償ってもらわねばならん。
しかし、これは下手をすると外交問題になる。
もし楚王の機嫌など損ねようものなら、
貴殿にも責を負ってもらわねばならんな」
劉 璋「ひ、ひぃぃぃ!?」
馬 超「なに、そうビビることはあるまい。
本当に孟達が悪いなら、堂々としていろ。
もし楚と戦となろうとも、遠慮することはない」
劉 璋「あ、あの……」
馬 超「偽りであれば間違いなく貴殿の首は飛ぶがな」
劉 璋「ひええええええ! ご、ごめんでおじゃる!
孟達は関係ないでおじゃるよぉぉぉ!
麿が悪かったのでおじゃるよぉぉぉ!」
馬 超「……侵攻は、誰の責任だ?」
劉 璋「麿が言い出したでおじゃるぅぅぅ!
漢中を攻め取って、益州の全てを統一
したかったのでおじゃるよぉぉぉ!」
馬 超「……フン。
ようやく本当のことを言う気になったか。
いいか劉璋? 今言ったことで判る通り、
本来、貴様は我が涼の仇敵なんだ。
命を助けた上、こうして登用してやるなど
それはもう破格の待遇なのだからな!?」
劉 璋「そ、それはもう重々、承知しておじゃる!
感謝の胃に堪えんでおじゃるよぉぉぉ!」
馬 超「それを理解したら、ちょっとは働け!
貴様に無駄飯を食わせる気はないからな!
仕事をサボっているのを見つけたら、
そのムダに肥えたケツを蹴り飛ばしてやる!」
劉 璋「は、ははぁーっ、キモに命じるでおじゃる!」
蜀炎軍所属の劉璋は、剣閣陥落時に涼軍に捕えられ、
この1月に登用を受けて涼に鞍替えした。
その後、妙にスッキリした表情をした馬超に、
馬雲緑が訝しげに話しかけた。
馬雲緑
馬雲緑「兄上、何か表情が明るい感じですが、
何かいいことでもあったのですか」
馬 超「いや、いいことなどはないが。
ただ、劉璋を思いきり罵倒しただけだ。
溜まっていたストレスを発散できた感じだな」
馬雲緑「劉璋……ああ、あのブタですか」
馬 超「率直すぎる言い方だな、それは。
確かに肥えているが」
馬雲緑「あのブタを見ていると、肥溜めに突き落とし
汚物を食わせたい気分になります。(※)
兄上はよく平気で会話などできますね」
(※古来より豚の飼料として人糞が使われていた)
馬 超「俺も平気というわけではないが。
まあ、自軍に所属するようになったのだし、
主従関係をしっかり叩き込んでおかねばな」
馬雲緑「主従関係……。なるほど。
主人と犬のような関係ですわね」
馬 超「そういうことだ。しっかり躾をしてやれ」
その後、涼軍内において『劉璋いじめ』が
半ば公認されたような状態になったという。
☆☆☆
金 旋「……劉璋も可哀想というか、なんというか」
金玉昼「君主時代は好き放題やってたんだから、
因果応報と言うべきにゃ」
金 旋「はからずも劉焉の後継ぎになったのは、
彼にとって幸だったのか、不幸だったのか。
……で、涼と蜀炎の戦況は変わらずか?」
金玉昼「饗援の指揮する軍が剣閣奪還を図るも、
全て馬超に撃退されていまひる。
しばらくは小競り合いは続きそうだにゃ」
金 旋「ふむ。そういえば、馬騰本人はどうした?
まだ渭水を行ったり来たりしてるのか?」
金玉昼「その馬騰、海戦で諸葛亮に負けたらしいにゃ。
その戦闘で軍師の法正は捕らえられ、
最近の噂によると魏に登用されたとか」
金 旋「ほう……軍師の法正が、な。
これは、今後に影響するかもな」
魏 光「はい、3品目をお持ちしました。
肉なし回鍋肉(ホイコーロー)です」
金 旋「……おい、ふざけてんのか。
それ、ただの野菜炒めだろう!」
金玉昼「豚肉があって初めて回鍋肉じゃないかにゃ」
魏 光「まあまあ、そう言わずに食べてください。
ふざけてるかどうかは食べればわかります」
金 旋「なに? どれ……もぐもぐ」
金玉昼「それじゃ、私も……もぐもぐ」
金 旋「……こっ、これは!?
肉なしだが、確かにこれは回鍋肉だ!」
金玉昼「野菜だけ食べてるのに、豚肉の味が……」
魏 光「野菜だけでも豚肉の風味が出るように、
油に豚肉の風味をしっかりつけました。
また、野菜にも十分下味をつけてます」
金玉昼「さっきの一品で豚肉食べてるから、
ここでまた取ることはないってことかにゃ」
魏 光「そういうことです。
お腹にも優しい一品だと思いますが」
金 旋「むう、やるな。
『お腹に優しい、それでいて食欲をそそる料理』
確かに最初の俺の注文通りだ……」
金玉昼「この際、武将やめて料理人になった方が
いいんじゃないかにゃ」
魏 光「はっはっは、ご冗談を〜」
金玉昼「(半分本気なんだけどにゃ)」
☆☆☆
続いて魏軍が下[丕β]を落としたことを話し、
諸外国の情勢報告は終わった。
次に、洛陽、江夏での戦闘報告に移ったが……。
金玉昼「……あんまり芳しくない報告だけど。
洛陽、江夏ともに威力偵察に出した部隊は、
どちらも撃退されたにゃ」
金 旋「うむ。まあ有り得ることだ。
敵軍の備えが万全だったということだろう。
元々、どの程度の反撃があるか見るための
作戦なのだから、しょうがない」
金玉昼「まあ、それは私も構わないんだけど……」
金 旋「なんだ? 妙に歯切れが悪いな。
もしかして、将が戦死したとか……?」
金玉昼「戦死なら、もう少し割り切れるんだけども。
その戦闘で、韓遂さんが捕虜になったにゃ。
そのすぐ後、魏に寝返ったとのこと」
金 旋「韓遂が?」
金玉昼「敵の計略ではないかとという意見もあったけど、
その後の密偵からの報告では多分事実だろうと」
金 旋「そうか。寝返ったか」
金玉昼「……ちちうえ、なんか冷静だにゃ。
ショック受けるかと思って言葉選んでたのに」
金 旋「韓遂という男に忠義は期待できない。
元々、そういう人物だということは承知していた」
金玉昼「まあ、ちちうえに心酔している、
というわけではないのは私も思ってたにゃ」
金 旋「しかしな。俺が勝ち続けている間は、
韓遂もついてきてくれると思っていたんだ。
その点では、ショックなのは確かだな」
金玉昼「ちちうえ……」
金 旋「現場には、『韓遂という将は元からいなかった』
そう考えるよう伝えておいてくれ。
かつての仲間だ、いや裏切り者だ、などという
意識があっては曹操に付け入れられるからな」
金玉昼「一応は伝えはするけど……。
そう簡単に割り切れるものでもないにゃ」
金 旋「それはそうだろうが、何も言わないよりはな。
で、洛陽方面については以上か?」
金玉昼「あ、それとは別にもう1件。
戦後、司馬懿さんが前後不覚になってて、
このままだと軍の統括はできなさそうだって」
金 旋「なに、司馬懿が!? 怪我でもしたのか!?」
金玉昼「いや、怪我じゃないけど。
どうも精神的に参ってるらしくて、
今は引きこもりみたいになってるそうだにゃ」
金 旋「ひきこもりか。
たまにいいとこの坊ちゃんが出仕拒否して
自宅に引きこもるという話は聞いたことがあるが。
しかし、司馬懿ほどの者が、なぜだろう」
金玉昼「良くはわからないけどにゃ。
でも、このままでは洛陽の戦力は低下しまひる。
指揮官交代も考えないといけないにゃ」
金 旋「いや、それは必要ない」
金玉昼「どうしてにゃ。洛陽は重要な拠点にゃ。
ここは絶対に敵に渡すわけにはいかないし、
司馬懿さんの精神治療も必要にゃ」
金 旋「ここは彼女自身に壁を乗り越えてもらう。
それだけの強さを持った人物だよ、彼女は」
金玉昼「壁を乗り越えるまでの守りは?」
金 旋「郭淮に司令官代行を任せればいい。
もともと、都督候補として勉強させているんだ。
于禁もいるし、しばらくは大丈夫だろう」
金玉昼「うーん……」
金 旋「異論がありそうだな」
金玉昼「……具体的な反論がある訳じゃないけど。
私には、ちちうえみたいにそう無条件での信頼は
できないというか……。不安なのにゃ」
金 旋「ま、無理に俺の考えに合わせる必要はないさ。
とりあえず、今はしばらく様子を見るってことで
いいじゃないか」
金玉昼「うーん……。イマイチ納得いかないにゃ」
金玉昼がそこまで言ったところで、
奥から魏光が何かが入った小鉢を持って現れた。
魏 光「そんな軍師にこの一品!」
金玉昼「……なに、これ」
魏 光「納豆イカです!
これを食べれば納得いかないことはない!」
金 旋「ダジャレかよ」
金玉昼「悪いけど、納豆はパスするにゃ」
魏 光「ええーっ!? 自信作なのに!
味だって保障しますよー!?」
金玉昼「ダメ、パス。匂いがダメなのにゃ」
金 旋「それじゃ、俺が貰おう。
……うむ、イカと納豆、そしてわさびと醤油が、
実に絶妙な調和をかもし出している」
魏 光「納豆もわさびも、抵抗力向上にいいそうです。
また、イカは高タンパク,低脂質の健康食品。
肝臓強化や老化防止にもいいんですよ」
金玉昼「ちちうえにとっては実に嬉しい効果だにゃ」
金 旋「……お前、老化防止だけで判断してるだろう」
☆☆☆
金玉昼「納豆イカでちょっと途切れちゃったけど、
江夏の方の報告が途中だったにゃ」
金 旋「ほいほい。撃退されたってのは聞いた」
金玉昼「将が3名ほど捕らえられたんだけど、
これは前の戦いで捕らえた捕虜と交換したので
すぐ帰ってくることが出来たにゃ」
金 旋「燈艾もそこらへんは抜かりないようだな」
金玉昼「ただ……」
金 旋「ただ、なんだ?」
金玉昼「その後、呉軍が廬江から出兵してきて、
現在は夏口近郊で交戦しているらしいにゃ。
敵部隊の構成は、孫尚香と太史慈とか」
金 旋「またか。懲りない奴らだな」
金玉昼「陸口での会戦が始まった後、
廬江から出撃してきたことが確認されてるにゃ。
つまりこれは、夏口から陸口方面への増援阻止、
そういう意図があっての作戦なんじゃないかにゃ。
廬江から夏口を攻めている間は、陸口は安心して
烏林側だけを見ればいいからにゃ」
金 旋「元から俺は、夏口から陸口に参戦させるような
つもりは全然なかったぞ?」
金玉昼「あちらとしては脅威だったんだと思うにゃ。
ま、これは推測でしかないけども」
金 旋「……で、その戦況はどうなんだ?
兵が足りないなら、こちらからも出せるぞ」
金玉昼「交戦は現在も続いているようだけど、
援軍の要求は別に来てないにゃ。
燈艾さんには、現戦力のみで撃退できる自信が
あるんじゃないかと思いまひる」
金 旋「うむ。そう思ってるなら任せておくまでだ。
燈艾だって若いんだし、もっともっと経験を
積んでいってもらわねばな」
金玉昼「顔は全然若くないけどにゃー」
魏 光「そういう顔の若くない人にオススメなのが、
この旨味たっぷりのフカヒレスープです。
コラーゲンもたっぷり含まれてますよ」
金 旋「む、美味そうだが……。
しかし、コラーゲンをいくら摂っても、
もともと老け顔なのは直らんと思うぞ」
魏 光「それはそうですねえ。
でも燈艾将軍は老け顔でも一流の将ですし。
私としては羨ましい限りですよ」
金 旋「ふーん。それじゃ……。
超一流の能力を持つが鞏恋に嫌われる名将と、
能力は大したことがないが鞏恋に好かれる凡将、
お前はどっちになるのを選……」
魏 光「凡将です」
金玉昼「即答……。まあ愚問だったかにゃ。
えー、なお夏口方面での戦闘の模様は、
この後ご覧のチャンネルでお送り致しますにゃー」
金 旋「それ、誰に言ってるんだ?」
☆☆☆
金玉昼「じゃ、後は国内の報告……て言っても、
大したものはないんだけど。
えーと、虎牢関にて、在野となっていた元魏将の
呂翔、これを蒋済さんが登用。
泪羅にて在野の忙牙長っていう人が仕官希望、
霍峻さんがこれを了承して登用」
金 旋「ぼーがちょー?」
金玉昼「なんか南蛮出身の人らしくて、
腕っ節はそこそこ強そうらしいにゃ」
金 旋「……なんで泪羅あたりをうろついてるのか
さっぱりだが、まあ来るものは拒まないさ」
金玉昼「あと、昨年末からちちうえが教育してた、
抜擢武将の管念慈さんが武将に昇格。
烏林に配属になったにゃ。
……ってこんな話全然聞いてないんだけど?」
金 旋「ん? 抜擢武将の教育してたってことか?
別に隠していたわけじゃないぞ。
これまで話す機会がなかっただけだ。
昨年の末に魏延の推薦で抜擢したんだが、
たまに俺も教育してみようかなーと思ってな」
金玉昼「……その気まぐれのおかげで、
武力しか見所のない人になっちゃったにゃ。
しかもまだ20代の女性を、ずっと一緒になって
教育してたなんて……」
金 旋「いや、やましい気持ちは全然なかったぞ。
こういうとかなり失礼かもしれんが……。
彼女の顔は俺の好みじゃないしな」
管念慈 [カンネンジ] |
|
性格:猪突/(抜擢)/(199年生) |
統率:53
武力:80
知力:41
政治:43
|
兵法:奮闘、突破、突進、斉射、連射など
|
金玉昼「実際会った後での教育中はそうだとしても、
その会う前に自分を教育役に決めた時は
どう思っていたんだか……」
金 旋「Fu〜〜♪(←口笛)」
金玉昼「とりあえずセクハラがあったかどうかは、
後で管念慈さんに聞き取り調査するとして。
ところで話変わるけど。今回の戦いで捕らえた将、
彼のことはどうするつもりにゃ?」
金 旋「ん、周泰のことか?」
金玉昼「彼を登用するつもりは?」
金 旋「今のところ、そのつもりはない。
返還を求められれば、返してやるつもりだ」
金玉昼「うーん、多分そういう考えだろうとは
思ってはいたけど……。
せっかく捕らえたのに、勿体無くないかにゃ。
また敵になってしまうと脅威だし、
逆に味方にできればかなり心強いにゃ」
金 旋「確かにそうかもしれないがな……。
彼を捕らえる際、俺に降ることはないと言った。
これは俺と彼との約束のようなものだ。
だから今回は、彼を登用することはしない」
金玉昼「また変にメンツとか気にしてー」
金 旋「ふっ、女子供にはわかるまい。
まあ、どちらにしろだ。彼の孫権への
絶対的な忠誠はまだまだ揺らいではいない。
彼の心を捉えるには、もっと時間が必要だ」
金玉昼「はいはい……了解したにゃ」
金 旋「それにな、この機会に捕虜交換で孫権から
古錠刀でも貰おうかと思ってな。
孫子兵法書は無理でも、剣なら貰えそうだろ?」
金玉昼「……あー、大きな人柄を見せたと思ったら、
またそんなセコイことを言うしー」
金 旋「セコくて結構! これが金旋という男の姿よ!」
金玉昼「偉そうに言うことじゃないにゃ……」
魏 光「はいはい、次の品が出来ましたよー。
殿には野菜ものを、軍師にはデザートです」
金玉昼「わーい。
そろそろシメにしたいところだったにゃ。
絶妙のタイミングだにゃ〜」
金 旋「俺の野菜ものはなんだ? 和え物っぽいが」
魏 光「これはですね、オク……」
金 旋「オク?」
魏 光「オ、オオ、オク、オク……。
オクラ兄さぁぁぁぁん!!」
金 旋「……例の発作か。おい魏光、しっかりしろ」
魏 光「……はっ!? す、すいません。
たまに気を抜くと発作が出ますので……。
あ、それで、この野菜はオクラです。
粘りと表面の毛が苦手という方もいますが、
なかなか味はいいですよ」
金 旋「はぐ……。もぐもぐ。
ふむ、確かに美味い。酒のつまみに良さそうだ」
魏 光「和え物やおひたし以外にも、天ぷらや汁物、
炒め物や煮込み物など、和洋中問わず、
本当に色々使えます。皆様もお試しください」
金 旋「……誰に向かって言ってるんだ。
ところで、玉の食べてるデザートは何なんだ?」
魏 光「ええと、これは団子と果物を蜜で和えた上に、
おぐ……お、おぐ……おお、おぐぐ……
オグラにいさぁぁぁぁん!!」
金 旋「小倉餡をかけた奴な、はいはい了解了解」
魏 光「やっぱり生きていたんだね! オグラ兄さん!
来てくれると信じていたよ!」
金 旋「誰だよ」
魏 光「兄さんがいてくれれば心強いよ!
いくよ! オグラチェェェェン!!」
金 旋「餡を投げるな!」
☆☆☆
魏光の料理を堪能した父娘。
食後は茶を飲んでくつろいでいた。
そこに、新たな人物の影。
鞏恋
鞏 恋「……家族でお食事?」
金玉昼「あら恋ちゃん」
金 旋「鞏恋も腹減ったのか? 運がいいな。
今ならば、ここにあるこのスペシャル美味料理、
……ただし残り物、が食べられるぞ」
鞏 恋「私は別に残り物でも気にしないし。
……じゃ、遠慮なく戴きます」
箸を取ってぱくり、と一口。
鞏 恋「……っ!! こ、この料理は……!!」
金玉昼「ど、どうしたにゃ」
金 旋「な、なんなんだ、急に怖い顔になって?」
鞏 恋「……これを作った奴を呼んで」
金玉昼「え?」
鞏 恋「この料理を作った人間を呼んで! 早く!」
金 旋「な、なんだ、よくわからんが……。
魏光! ちょっとこーい!」
魏 光「はい、どうかしましたかー?
……え? 鞏恋さん?」
鞏 恋「この料理を作ったのはあんたかっ!」
魏 光「は、はいっ!? そ、そうですが」
鞏 恋「……そう。あんたが……」
魏 光「あ、あの、何か問題でもありましたか。
一応、鮮度などにはかなり気を使って
作ったつもりなんですけど……」
金 旋「おい鞏恋、これは俺の注文で作らせたんだ。
つまり俺のための料理なのであって、
別にお前の味覚に合わなくてもそれは……」
鞏 恋「金ちゃんは黙ってて!」
金 旋「は、はいっ!」
金玉昼「こ、こわー」
魏 光「そ、それで、私を呼んだのはどういう……」
鞏 恋「……お」
魏 光「お?」
鞏 恋「……おいしい」
魏 光「へ?」
鞏 恋「お、美味しいって言ったの!
だから、その、もっとお代わりが欲しい」
魏 光「は……は、は、はいいいい!
了解したでありますですっ!
ただいまお代わりを大特急で作ります!
少しだけお待ちをををををを!!」
ずどどどどど
金 旋「……お代わり欲しかっただけか?
別に頬を赤らめて言うほどのことじゃ……」
鞏 恋「いや、その。食べ物のお代わり頼むなんて、
これまでほとんどしたことないし。
物乞いしてるみたいで少し恥ずかしい」
金玉昼「それだけ美味しい料理だってことだにゃー。
別に恥ずかしがることはないにゃ」
その後、美味しそうな匂いに釣られたのか、
他の将たちも次々にやってきた。
甘寧
徐庶
甘 寧「お、今日は魏光が作ってくれるのか?
それじゃ、五目焼きそば頼むわ」
徐 庶「じゃあ俺、ニラレバ炒め定食な」
魯圓圓
雷圓圓
雷圓圓「じゃあ私はエビチリとチャーハンでー」
魯圓圓「え? 私? 私は……。
そうね、中華丼が食べたいかな」
魏 光「ちょ、ちょっと、そんな注文されても……」
鞏 恋「別にいいじゃない。ほら、早く作る」
魏 光「え、ええええ!?」
鞏 恋「料理人の喜びは食べてもらってナンボ」
魏 光「い、いや、それはそうでしょうけども……」
有無を言わさず、皆の注文の品を作らされる魏光。
そして食事時になり。将官が次々にやってきてしまい、
結局、夜遅くまで腕を揮い続けることになった。
魏 光「な、鍋の振りすぎで、手首がもう
腱鞘炎になりそうなんですけどっ!?」
鞏 恋「皆に喜ばれているんだから泣き言言わない。
それとも、その筋肉は飾り物?」
魏 光「い、いえっ! いくらでもやりましょうともっ!
こ、これも鍛錬修行のひとつだと思えば……!
ぬおおお、マッスル鍋振りぃぃぃ!」
期間限定の魏光食堂は大繁盛だった。
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