○ 第二十六章 「聖なる夜に 後編」 ○ 
218年12月

<前回のあらすじ>
クリスマスの日、金旋はサタンクロスへと変化した!
下僕である霍峻とともに、各地を荒らしまわる!
立てバッファローマン! 奴に勝てるのは君だけだ!!
……ということがなかったのは前回を見れば明白。

 洛陽→烏林

桂陽・江夏・洛陽と回りプレゼントを配ってきた二人は、
ようやく烏林へと帰ってきた。

   金旋金旋   霍峻霍峻

金 旋「や、やっと烏林に来たな。ガクガク」
霍 峻「冬道は寒すぎですよ。ブルブル」

金 旋「冬がどうこう以前に、移動速度が速すぎて
    流れる空気に体温を奪われてしまったな」
霍 峻「閣下、髭が凍っておりますよ」
金 旋「白髭が余計に白くなったか。
    さてここからが肝心だぞ、霍峻」
霍 峻「はっ。……でも、これまでのところ、
    私がいる意味が全く感じられないのは……」
金 旋まったくの気のせいだ!
霍 峻「そ、そうですか」

二人はまず、鞏志の宿舎を訪れた。

    鞏志鞏志

鞏 志「閣下? こんな夜半にどうしました」
金 旋「まだ起きていたか、鞏志。
    ちょっとばかり失礼するぞ」

暗がりから照明のある屋内に入り、
奇天烈な二人の格好を見て鞏志は吹いた。

鞏 志「プフーッ、なんですかその服は?
    それに桂陽にいるはずの霍峻どのまで?」
霍 峻「や、やはり可笑しいですか、この格好……」
鞏 志「可笑しいどころの話じゃ……プフーッ」
金 旋「そう笑うな。これは西方に伝わる風習でな。
    トナカイに牽かれたソリで各地を回り、
    良い子にプレゼントを配る聖人の話があるんだ。
    それで、それに倣い、若い連中にプレゼントを
    配り回ってるのだ」
鞏 志「なるほど……。
    ……もしや、うちの恋にもプレゼントを?」
金 旋「うむ、そう思って用意してきた」
鞏 志「いけません。恋は良い子でもありませんし、
    以前に養由基の弓を頂いております。
    ここでまた、閣下から贈り物を頂く訳には……」
金 旋「いや、常に前線で怯むことなく勇戦し、
    楚軍の武の象徴的存在としての功績は大だ。
    ……贈るのは春蘭(※1)という名馬でな、
    官渡の戦いの折、袁紹はこれに乗ってたお陰で
    敗戦時に無事に逃げ切ったとも聞いている」
鞏 志「そのような名馬を……」
金 旋「鞏恋が戦場で捕まっては全軍の士気に関わる。
    彼女は全軍のアイドルだからなぁ。
    だから、貰ってもらわねば困るんだ」
鞏 志「そこまで褒めていただけるとは恐縮です。
    楚軍全ての者が恩恵を受けるというのならば、
    断る理由はございません」

(※1 袁紹が官渡の戦いの折に乗っていたという馬)

金 旋「というわけで、鞏恋には父親であるお前から
    渡しといてくれ。外に繋いであるから」
鞏 志「え、私からですか!?」
金 旋「魏延も自分で魏光に渡すと言っていたぞ。
    厳しい言葉を掛けるばかりが父親じゃない。
    たまには評価してやらないといかんぞ」
鞏 志「……は、はぁ」
霍 峻「鞏志どのは厳格な父親なのですか?」
金 旋「うむ、実はそうなんだ。意外だろう?」
霍 峻「そうですね。
    我々との接し方からは想像がつきませんが」
鞏 志「あの娘は昔からやんちゃだったので……。
    厳しくしていかねば、まともな大人にはならぬと
    そう思いまして」
金 旋「15歳で成人した後、人材不足もあってすぐに
    戦場に出してしまったからなあ。
    今考えると、情操教育という点ではあまりよくは
    なかったかもしれんな。すまん」
鞏 志「いえ、戦場に出るのはあれ自身も望んだこと。
    閣下のお役に立ったのならばそれで結構です」
金 旋「そう言ってくれるとありがたい。
    父も娘も、よく働いてくれているよ。
    というわけで、鞏志、お前にはこれをやる」
鞏 志「えっ?」

金旋は、ずっしりと重く分厚い書籍を手渡した。

金 旋「……最近は戦場にも出てもらってるが、
    弩兵法しか使えなくてイマイチ存在感ないからな。
    だが、これを使えばお前もヒーローだ」
鞏 志「こ、これを使えばヒーロー?
    この書物の角で敵の頭を打てと……!?」
金 旋「確かに痛そうだが、それはやめとけ。
    この書は『家庭の医学』(※2)といって、
    症状から病名を調べたりできるものなのだ」
鞏 志「なるほど。負傷兵の治療に役立ちますな」
金 旋「これまでのお前の働きに対しての礼だ。
    これからも頑張ってくれよ」
鞏 志「こ、こんな大層なものを……。
    ありがとうございます、より一層励みます」

(※2 家庭に一冊必需品。「治療」が使える)

礼を何度も言う鞏志と別れ、金旋たちは
いよいよ本日のメインイベントにかかる。

金 旋「よし、いよいよ玉昼にプレゼントだ。
    気合を入れていくぞ!」
霍 峻「はっ!」
金 旋「……あ、いやちょっと待て。
    その前に他の者たちに渡してこようかな」
霍 峻「おっとっと……」

先に金玉昼以外の者たちにプレゼントを渡す。
金満へ和氏の璧(※3)、魯圓圓へ弓術指南書(※4)、
雷圓圓には黄金槌(※5)を贈った。

(※3 金旋伝48章参照。教唆を使える)
(※4 弓術の指南が書かれた書。統率+2&斉射)
(※5 回答権がなくても回答できる金の槌。
    別名ゴールデンハンマー。武力+4&奮戦)

これで他のプレゼントは全て配り終え、
今度こそ金玉昼へのプレゼント作戦にかかる。

金 旋「よし、今度こそ本番いくぞー」
霍 峻「は、はい」
金 旋「霍峻、お前は『私のいる意味がないような』
   と言っていたが、それは違うぞ。
   はるばるお前を連れてきた意味、それは、
   この時のためだけにあるのだっ!」
霍 峻「……なんと!?」
金 旋「ただ寝ている所にプレゼントを置くだけなら、
   俺もお前もこんな格好をする必要はない」
霍 峻「た、確かにその通りです」
金 旋「『さんたくろうすが来てプレゼントを渡した』
   このことが真に玉を喜ばせるのだ。
   つまり、我らの存在を知られねばならんのだ」
霍 峻「なるほど……。存在を気付かせつつ、
   正体は知られないようにせねばならないと。
   なかなか難しいですね……」
金 旋「さあ、『さんたくろうす大作戦』、発動だ!」
霍 峻「ははっ!」

    ☆☆☆

さて、その頃。魏延は夏口での見回りを終え、
魏光にプレゼントを渡すべく烏林に入っていた。

    魏延魏延

魏 延「ふうっ……今夜は実に冷えるな。
    蓑を着ていても身体の芯が凍るようだ。
    ……それにしても、殿には感謝せねばならん。
    こんないいものを光に贈ってくださるとは」

金旋は、魏光のために武器を用意してくれていた。
その見事な獲物を手に、魏延は魏光の元に向かう。

魏 延「しかし、かなり重量のある武器だな。
    果たしてあいつに使いこなせるのかどうか……。
    お、ここだここだ」

魏光の宿舎についた魏延は、何やらお面を取り出し、
自分の顔につけた。

魏 延「万が一、正体がバレると恥ずかしいからな。
    この面で顔を隠して……と。よし」

そしてソロリソロリと、中へ入っていく。

だが、運悪く魏光は目が覚めていた。
ミシミシと歩いてくる足音を聞きつけて、
剣を取って置き上がり、魏延のいる方向を向いた。

    魏光魏光

魏 光そこにいるのは誰だ!
魏 延……っ!

窓から入る月明かりが、魏延の姿を照らす。

  なまはげ魏延
  ババァァァァァァン!!

魏 光ギャーッ! なまはげーっ!
魏 延「……ちっ!」

魏延は持っていたプレゼント用の肉包丁(※6)を
その場に置き、脱兎の如く逃げ出した。

(※6 大将軍何進が肉屋時代に持っていたとされる、
 装飾の施された巨大な解体包丁。武力+10&奮戦)

    ☆☆☆

さて、その頃の金玉昼。
横にはなっていたが、まだ彼女は寝つけずにいた。

    金玉昼金玉昼

金玉昼「今年こそは来てくれるかにゃ……。
    『良い子』の範囲からそろそろ外れそうだし、
    今年来なければもうダメかにゃ……」

不安と期待の入り混じる中で、ようやく、
まどろみの中に入っていこうとした時のこと。

シャンシャンシャン……と鈴の音が聞こえてくる。
どうやら、窓の外から聞こえてくるようで、
その音色は甘寧の持つ鈴などとは違っていた。

金玉昼「……!?」

やがて鈴の音が近付いてきて、窓の外で止まる。

???「さて、良い子はどこかな?」
金玉昼「(も、もしかしてサンタさんがっ?)」
???「どうやらこの中にいるようだなぁ。
    良い子ならちゃんと寝てるはずだし、
    それじゃ、中に入るとするか……」
金玉昼「(う、うわぁ……ね、寝たふり寝たふり)」

声を聞いて慌てて横になり、目を瞑った。
そのまま、薄目を開けて様子を伺う。

???「よいしょ、よいしょ」
金玉昼「(あ、赤い服着てる〜。しかも白髭にゃ)」
???「さぁて、プレゼントをあげなくちゃなぁ。
    これまで良い子にしていたごほうびだ」
金玉昼「(な、何かにゃ〜?)」

ごそごそと袋の中を漁っていたその時、
それは聞こえてきた。

 『ギャーッ! なまはげーっ!』

金玉昼「(……は?)」
???「な、なにごと?」

 『であえであえーっ! 曲者だーっ!
  なまはげを捕らえるんだーっ!』

???「な、なまはげ? なんだそりゃ」
霍 峻「閣下! 大変です!
    兵たちがワラワラと出てきました!」
???「バカ、閣下じゃないだろ!」
霍 峻「す、すいません!
    と、とにかく今は逃げないと! 早く!」
???「くっ……! わかった!」

ドタドタとサンタ(金旋)は出ていった。
その後すぐ、『怪しい二人がいたぞー!』
『あっちに逃げていったぞ!』
『ところでなまはげってなんだー!?』
といういくつもの声が聞こえてくる。

金玉昼「はぁ……なぁんだ。ちちうえかぁ」

金玉昼の夢はいっぺんに覚めた。
最初は声色を変えていたため気付かなかったが、
霍峻の『閣下』という言葉と、その後の慌てた声で
サンタが金旋であるとすぐにわかってしまった。

金玉昼「……そうだにゃ〜。現実にはそんな、
   夢みたいなことあるわけないにゃ〜」

外では追いかけっこが続き騒がしかったが、
落胆した彼女はそのまま眠りについた。

さて、逃げ出した金旋と霍峻。
逃げる途中で、鬼の面を被った魏延を見つけた。

金 旋「ああっ、なまはげ!?」
霍 峻「え……魏延どのですね、あれは」
魏 延「おおっ殿! 実は大変なことに……」
金 旋貴様が元凶かーっ!
魏 延「おぶっ!?」

近付いてきた魏延に飛び膝蹴り。
さらにコブラツイストで魏延の身体を締め上げる。

金 旋「お前のせいで、お前のせいでぇぇぇぇ!!」
魏 延「ぎ、ギブギブ、殿、ギブアップ!」
金 旋「ギブアップなどあるかぁぁぁ!!」
霍 峻「閣下落ちついて! 追っ手が来てます!」

霍峻がそれを止め、三人は追っ手を巻いて
金旋の自室に転がり込んだ。

    ☆☆☆

騒動は烏林港内に大きく広がってしまったが、
その終結は意外に早かった。

    鞏志鞏志

鞏 志「なまはげは神の化身と伝え聞く。
    それを捕まえてしまっては神罰が下ろう。
    よいか、なまはげのことは放っておけ。
    無闇に騒ぎ立てる者は処断する」

すぐに鞏志からそのような布告が出された。
すでに深夜であるということもあり、兵たちは皆、
持ち場や宿舎へ戻っていくしかなかった。

鞏 志「……というわけですから、大丈夫です。
    魏延どのと霍峻どのは、夜明け後に出て行けば
    大丈夫なように手配しておきますので」

   霍峻霍峻   魏延魏延

霍 峻「ありがとうございます」
魏 延「申し訳ない……」

   金旋金旋   下町娘下町娘

下町娘「騒動が収まって良かったですね。
    で、その大作戦とやらはどうなったんです?」
金 旋「……多分、バレたと思う」
霍 峻「気付かせるためいろいろやってましたからね。
    それが裏目に出てしまいました」
魏 延「も、申し訳ございません!
    わ、私がお面など被っていなければ……!」
金 旋「いや、いいんだ……。
    正体を気付かれる可能性を軽視していた。
    今考えればそう言わざるをえん……」
下町娘「でしょうねぇ。
    私も大丈夫かなーって思ってたんですよ」
金 旋「おまけに、プレゼントとして渡すはずの
    戦国策(※7)をどこかに落してくるし……。
    あ、これは後で探させるからいいんだが……」
下町娘「騒動も鞏志さんの布告で収まりましたし。
    都合が悪いことと言ったら……」
金 旋「玉の夢壊しちゃったよー! ウワァァン
下町娘「……ということだけですね。
    ま、後で適当にフォローしておきますから。
    それじゃ、私はもう寝ますね……ふぁぁ」

(※7 「戦国」の言葉の元となった史書。
 劉向の編。政治+5&造営)

    ☆☆☆

そして、夜は明けた。

後に『なまはげ事件』と呼ばれる昨夜の事件は、
すでにいろいろな噂となって駆け巡っていた。

兵 A「なまはげが出たんだってな」
兵 B「そうそう、二本の角を生やした鬼で……」
兵 C「え? 俺の聞いた話では、赤い服をきた老人と
    二足歩行する馬みたいな生き物だったと……」

   魯圓圓魯圓圓  雷圓圓雷圓圓

魯圓圓「うーん……。
    それにしても、この書物は一体……」
雷圓圓「お姉さま! なまはげですよ!」
魯圓圓「え? いきなり何?」
雷圓圓「なまはげが、これを私にくれたのですっ!」
魯圓圓「金色の槌……? なまはげが?」
雷圓圓「はいっ、そうなのです!
    朝起きたら、枕元に置いてあったのです!
    姿は見てませんが、きっとそうです!」
魯圓圓「姿も見てないのに、どうしてわかるのよ」
雷圓圓「それはもう、女の勘です!」
魯圓圓「ははは……女の勘ねぇ。
    (……もしかして、この書物も?)」
雷圓圓「あっ! お姉さまももらったのですか!?」
魯圓圓「え? あ、うーん。どうなんだろう……」

兵 D「魏光将軍がなまはげに貞操を奪われたらしい」
兵 E「いや、包丁で殺されそうになったと聞いたぞ」
兵 F「ああ、とっさにニンニクを投げつけたら
    逃げていったらしいなぁ」
兵 G「その時になまはげが置いていった包丁だが、
    今は魏光将軍が持ってるらしいぞ」

   鞏恋鞏恋   魏光魏光

鞏 恋「それが、なまはげの包丁?」
魏 光「ええ、声を上げたら落していったんです」

  肉包丁

魏 光「これ、どうしようかと今朝、殿に伺ってみたら、
    『お前にやるから』と言われたので。
    ちょっと試しに使ってみようかと」
鞏 恋「これは、かなりの業物ね……」
魏 光「そうですね……。これを使いこなせれば、
    私もパワーアップできるかな?
    せーの、うりゃ……む……うぐ」
鞏 恋「どうしたの」
魏 光「お、重いんです……。
    片手では、ちょっと持てないです……」
鞏 恋「ぷ、非力……」
魏 光「わ、笑われたーっ!?
    しかも軟弱君みたいなイメージがぁぁぁ!?」
鞏 恋「じゃ、せいぜい頑張って」
魏 光「ど、どちらへ行かれるんですか?」
鞏 恋「ちょっとばかり、遠乗りに」

兵 H「知り合いが見たっていうなまはげだがな。
    軍師どのの部屋から出ていったらしい。
    その服は血で真っ赤だったらしいぞ」
兵 I「ええっ!? 軍師さまは大丈夫か!?」
兵 H「ああ、それは大丈夫だ。
    今朝起きてこられたのが確認されてる」
兵 I「そ、それじゃ安心だな……良かった」
兵 H「しかし、その軍師どのなんだが……。
    なんか夢見心地で、『心ここにあらず』って
    感じだったそうだぞ」
兵 I「ええっ?」
兵 H「血+夢見心地+軍師は年頃の女性、
    そして深夜の訪問……とくれば?」
兵 I「ゆ、許すまじ、なまはげ!」

   金旋金旋     鞏志鞏志

金 旋「すでに噂になっているようだな……」
鞏 志「どうしますか?
    みだりになまはげの話はしてならん、
    という布告でも……」
金 旋「いや、そうおおごとにする必要もあるまい。
    将たちにそれとなく注意を促せばいい」
鞏 志「わかりました。それではそのように」

鞏志が出ていくのと同時に下町娘が入ってくる。
先ほど金玉昼と話をしてきたようだ。

    下町娘下町娘

下町娘「うーん……」
金 旋「ど、どうだった、玉の様子は?」
下町娘「よくわかんないんですよねぇ」
金 旋「は?」
下町娘「『サンタはやっぱりいたんだにゃー』
    ……ですって。よくわからないですよ」
金 旋「え? じゃ、じゃあバレてはいない?」
下町娘「いえ、金旋さまが入ってきたのはバッチリ
    憶えてたようです」
金 旋「……なんだそりゃ?」
下町娘「金旋さまが出ていってすぐ寝ようとしたら、
    白い髭の老人が現れたんですって……」

老 人「そなたは良い父親を持ったものだのう。
    これほど娘のために頑張ってくれる父親、
    そうはいないぞ……」
金玉昼「あ、あなたは……?」
老 人「名乗るまでもないじゃろう。
    ほれ、そなたの父が渡そうとしてたものじゃ。
    この書、ここに置いておくぞい……」
金玉昼「ちょ、ちょっと……! 待……」

下町娘「……その老人、スーッと消えたんですって。
    で、枕元には、金旋さまが落したと言ってた
    戦国策が置いてあったと」
金 旋「ど、どういうことだ……? もしや本物!?」
下町娘「まさかあ。寝惚けてたんじゃないですか。
    願望が夢になって出たってパターンでは?」
金 旋「そんなものだろうか?」
下町娘「とりあえず、金旋さまに気を使って
    そう言ってるわけではなさそうですから。
    それでいいんじゃないですか」
金 旋「むむう、どうもすっきりしないが……。
    それで良しとするしかないか」

こうして謎を残し、この事件は幕を閉じた。

この事件以降の楚国では、年末に「わるいこいねがぁー」
となまはげを出す風習が出たとか出ないとか……。

    ☆☆☆

さて、ここで他国の状況をお伝えしよう。

まず、涼と蜀炎の戦いである。
蜀炎の剣閣を攻めていた涼軍だったが、
12月に馬超の部隊がこれを陥落させる。

 剣閣陥落

守将の張翼を捕虜にされた蜀炎軍であったが、
剣閣の奪回を果たすべく梓潼より反攻を開始。
まだまだ、予断を許さない状況であった。

なお、涼軍が捕虜にしていた張任と馬忠。
10月にこの二人は涼軍へ鞍替えした。

一方、涼軍の馬騰は、10月に官渡港から
魏の河内港を目指し、全兵力2万8千で出撃。
11月には、これを陥落させた。

 河内攻撃

しかし、そこを攻め取ったところで、
涼軍にメリットがあるわけでもなかった。

次に、魏の状況。
東部の軍は、呉軍の下[丕β]を激しく
攻め立ててはいたが、陥落までには至らず。

10月には、諸葛亮に上党・晋陽などを任せ、
第2軍団として軍を分割。
それと同時に軍師を賈駆に変更した。

その他、捕虜にしていた呉将の丁奉を登用、
また、楚軍の離間で忠誠の下がっていた
陸口の全端を登用するなど、抜け目無く
戦力の補強を続けている様子であった。

しかし楚軍の離間で、一部の将の忠誠が低下。
その対策が何かしら必要であった。

一方の呉軍は楚・魏の両面で苦戦を続け、
その兵力はすでに、五勢力中で一番少なく
なってきていた。
さらに楚軍の離間で将たちの忠誠の低下が
馬鹿にならなくなってきており、
何らかの打開策を欲しているところだった。

このような状況の中、年は219年を迎える。

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