218年8月
北では虎牢関にて司馬懿と諸葛亮が戦っていた時。
荊州は江夏方面では、呉軍が廬江より侵攻してきたとの
報が入っていた。
この時の江夏方面の軍は、燈艾に任されている。
以前は13万ほどの兵がいたが、先の陸口会戦の際、
漢津の防衛のためにと5万の兵を送り出していた。
そのため、動かせる兵は夏口に7万弱がいる程度で、
以前よりも守りは薄くなっていた。
(なお少し前に、主力軍の本拠を江夏城から
前線である夏口港に移動させている)
その夏口港の一室では、金目鯛と金閣寺の
親子の会話がなされていた。
金目鯛
金閣寺
金目鯛「守りの薄くなった隙を突かれたということだろう。
だから漢津に増援など送ることはない、
と言っていたのに」
金閣寺「それを今更言ってもしょうがないでしょう。
敵軍の規模が4万とさほどではありません。
それほど兵力を気にする必要はないかと」
金目鯛「確かに単純兵力じゃあ、こちらが倍近いがな。
……ふむ、それほど気にすることでもないか?」
『ふっふっふ、甘いですぞー』
金目鯛「むっ? なにやつ!?」
金閣寺「この声は……」
『この戦、兵数だけでは語れぬのですー。
施設防衛が勝敗の鍵を握るのですー』
金目鯛「そこだっ!
秘技、『跳弾スーパーボール!』」
スコココーン
???「ふぎゃっ」
金閣寺「御見事、父上。頭頂部ど真ん中に命中です。
床と天井に一度ずつ当て、そこからまた
頭に当てるとは……」
金目鯛「ふっ、これでも昔は『スーパーボールの鯛』
と恐れられていたんだ。これくらい朝飯前さ」
金閣寺「その割には、弓の腕はあまり……」
金目鯛「言うな。弓で狙うのとはまた違うんだー」
金閣寺「はあ。……で、何をやってるんだ。魚鉢?」
先ほどの声の主は金目鯛の末子、金魚鉢であった。
当年12歳、金玉昼に勝るとも劣らぬ智謀の持ち主と
国内でも一部評判の秀才少年であった。
現在は、母や兄である金胡麻と共にここ夏口におり、
両親や兄らと水入らずで暮らしていた。
金魚鉢
金魚鉢「うー、とうさんひどいー」
金目鯛「コソコソ隠れてるからだ。俺の子なら、
そして楚王金旋の孫なら、常に堂々とあれ!」
金魚鉢「ううー、ただ湖南の真似してただけなのにー」
金目鯛「……湖南? 未来少年か?
そりゃまたえらく古いネタを……」
金閣寺「いや、名探偵の方だと思いますけど……。
で、さっきの『施設防衛が勝敗の鍵』というのは?」
金魚鉢「それを解説するには、小道具がいるのですー。
というわけで、はいこれー。近辺の地図ー」
金閣寺「丁寧に兵力や主な将の名前まで……」
金魚鉢「江夏にある施設は、このように江夏城、夏口港、
そして少し前に建設された安陸城塞。
この3つですー」
金目鯛「うむ。廬江との最前線がここ、夏口港。
安陸城塞が寿春方面との境を防ぎ、
奥に江夏城がある……という構成だな。
江夏城を守るには理想的な配置だと思うぞ」
金魚鉢「その理想的と思われている配置が、一方では
実は弱点にもなるんですー」
金閣寺「弱点!?」
金魚鉢「施設が近いので施設間の連携もしやすいけど、
複数の施設があることで戦力が分散しやすい。
つまり、手薄な所を狙われると弱いわけですー」
金目鯛「なるほどな。そういえば以前に攻められた時は、
包囲を突破されて江夏を落とされそうになるわ、
夏口が危うく落とされそうになったりしたな」
金魚鉢「江夏のみ守ればよいのなら楽だけど、
実際は夏口や安陸も守らなくてはならないから、
どうしても迎撃部隊の規模は少なくなるのですー」
金閣寺「ふむ……今回は、前回の時のように
全兵力を投入、というわけにはいかないか。
そうなると、全く油断はできませんね」
金目鯛「全くだ。……しかし魚鉢。
賢いじゃないか、とーさん感心しちゃったぞ」
金魚鉢「えっへんー」
金目鯛「この調子で、とーさんよりも賢くなってくれよ」
金魚鉢「あ、それは大丈夫。もう十分越してるからー」
金目鯛「……じーちゃんよりも賢くなれよ」
金魚鉢「それも越してるー。
この国で僕より賢い人はほんの一握りですー」
金目鯛「……(教育間違ったかな……)」
☆☆☆
魏延
金目鯛
金目鯛「……ということがあったわけだが」
魏 延「はっはっは、将来が楽しみですな。
そういえば次子の金胡麻どのも来年成人とか。
楽しみが多くて羨ましい限り」
金目鯛「その分、気苦労も多いわけだが……。
金胡麻も、武は大したものを持ってはいるが、
少し奔放すぎるところがあるし……」
魏 延「奔放な性格の貴殿が言われるのだから、
それは相当なものなのだろうな」
金目鯛「いやあ、最近もどこか遠乗りに行ったきり、
どこにいるかもさっぱり判らないくらいで。
……ところで、うちの大将の姿が見えないが?」
魏 延「ああ、燈艾か。
着ぐるみの耳のところがほつれてたとかで、
今、自室で直してるところだ」
金目鯛「はあ? 今はそれどころじゃ……」
魏 延「あれがないと人前にも出れないそーだ。
極度のあがり症を、被りものをすることで
紛らわしてるらしい」
金目鯛「……ホントうちは一癖ある奴らが揃ってるよな」
蛮望
蛮 望「あら、私の噂? 人気者は辛いわねえ。
キスが欲しいなら、ぶちゅーとしてあげるわよ」
魏 延「黙れオカマ」
金目鯛「お前さんが一癖あるのは確かだがな。
人気はないぞ、全然」
蛮 望「またまたー鯛ちゃんたらぁーん」
金目鯛「鯛ちゃん言うな」
公孫朱
張苞
公孫朱「呉軍がすぐそこまで迫ってるというのに、
こんな雑談をしているようでは……」
張 苞「ま、全くですね! 困ったものです!」
公孫朱「大将も大将で部屋に篭ったままだし。
これで、ちゃんと呉軍と戦えるのか」
張 苞「ごもっともです! その通りです!」
公孫朱「……自分の意見が全然ない人もいるし」
張 苞「いや全くその通り……えええ!?」
金閣寺
金閣寺「張苞さん……爆死してますね」
魏 劭「いやあ、若さ炸裂ですなあ。(※)
実に羨ましい限り」
(※ 公孫朱が26歳、張苞が21歳。
ちなみにその他は、金閣寺18歳、魏劭38歳。
燈艾22歳、費偉26歳とこの地区は若い将が多い)
金閣寺「羨ましいって……。
魏劭さんもまだ30代でしょうに」
魏 劭「いやあ、私はもう枯れかけてますから。
……おや、費偉どのが来られましたね」
費偉
費 偉「ふむ、皆さん大体揃っておりますね。
では、軍議を始めましょうか」
張 苞「燈艾大将はどうされたのです?」
費 偉「所用でもうしばらくかかるようです。
指示は私が受けておりますので、ご安心を」
張 苞「なんと! 軍議の席に大将がいない?
そんな無責任な話がありましょうか!」
費 偉「そんなことを言われても……」
公孫朱「別に、軍議が滞りなく進むのならば、
大将のいるいないは重要じゃないと思うけど」
張 苞「え!? ……そ、そうですよね。
大将がいなくても全然問題なしですよね!」
公孫朱「全然問題ないとは言ってない」
張 苞「えーっ!?」
費 偉「……コホン。では、始めるとしましょうか」
費 偉「これが、現在近付きつつある敵部隊です。
先行している部隊が孫尚香隊、兵1万5千。
次に孫奐隊1万5千。その後ろ、燈芝隊1万」
公孫朱「合計4万か……」
魏 延「おや。孫尚香といえば、先の陸口会戦で
指揮を執っていたのではなかったか?」
費 偉「はい、いつの間にか移動してた様子です。
その他、太史慈・潘璋などもいるとのこと。
かなり、本気で来ているようですね」
金目鯛「ふん、敵がどうこうは関係ない。
こっちもマジでやるだけだ」
費 偉「では、出撃部隊の指示ですが。
部隊の大将は魏延どのにお願いします。
兵は2万を率い、敵部隊を攻撃してください」
魏 延「2万か。その他には出ないのか?」
費 偉「ええ、魏延どのの隊のみになります。
私も少ないのではないかと注進したのですが。
『最初から大兵力を出す必要はない』とのこと。
他の戦力は戦況を見て投入、となりましょう」
金目鯛「(ふむう。これは、魚鉢の言ってたような
ことを考えているからなのかね)」
魏 延「なるほど、そういうことならば結構。
私の隊で全て片付けるつもりで行くとしよう。
で、副将は?」
費 偉「副将には、公孫朱・蛮望・刑道栄・魏劭。
この者たちをお連れになりますよう」
金目鯛「……あれ? 俺は?」
費 偉「特に何も言われてません。
留守を守るようになると思われますが」
金目鯛「ちぇー。ひと暴れしたかったのにー」
魏 延「ははは、悪く思われますな」
魏延の隊は準備を整え、夏口港を出撃した。
陣形は、最大の攻撃力を引き出す鋒矢の陣。
夏口東部にて、孫尚香の隊1万5千と
交戦が始まったのはその数日後だった。
☆☆☆
孫尚香
劉備
孫尚香「やはり迎撃部隊が出てきたか……。
ここを突破し、江夏城に肉薄する!
各員の勇戦を期待する!」
劉 備「おおー!
陸口会戦の折には船酔いしてしまうから
参加できなんだが、陸戦であればこの劉備、
孫尚香どののお力になりましょうぞー!」
孫尚香「……劉備には別に期待してないけど」
劉 備「あんですとー!?」
太史慈
太史慈「はっはっは、相変わらずですな劉備どの。
貴殿はそこでゆっくりと見ていてくだされ。
この太史慈が、敵将の首を挙げて来ましょうぞ」
劉 備「ちい、太史慈め。いい格好しおって」
孫尚香「よし、太史慈将軍。
貴殿の武を、存分に示してきなさい」
太史慈「はっ! せいやあっ!」
太史慈の馬は駆け抜け、一気に部隊の先頭に立った。
太史慈「我が名は太史慈! 一騎討ちを所望いたす!」
当然、それは魏延ら楚軍の将たちの目に止まる。
一騎討ちできる位置にいる将は3人。
その中で真っ先に飛び出していこうとしたのは、
蛮望だった。
蛮望
公孫朱
蛮 望「い、いい男ッ! ウホーッ!」
公孫朱「ちょ、ま、待ちなさい!
あなたの敵うような相手じゃない!(※)」
(※ 各自の武力。太史慈93、蛮望84、公孫朱87)
蛮 望「フフフ、わかってないわね。
私にはね、武力の差をものともしない、
特別な秘技があるのよ!」
公孫朱「秘技? それは一体?」
蛮 望「それは……『寝技』よ!」
公孫朱「……ねわざ?」
(もんもんもん……)←想像中
公孫朱「……そんなん!
絶対ダメにきまってっぺー!」
蛮 望「ああっ待ってぇ!
この秘技はいい男にしか効かないのに!
こんなチャンスはそうはないのにー!」
公孫朱「(こんなとごで我が軍の恥を晒すわげには
いがね……なにしても絶対止めるべ)」
太史慈「どうした、誰も来ないのか?
楚軍には私を斬れる者はいないのかな!?」
『ここにいるぞ!』
蛮 望「あー、先越されたわ」
公孫朱「えっ……!? まさか!?」
楚軍から出た将。
それは部隊の大将、魏延であった。
魏延
魏 延「楚軍に魏文長あり! 太史慈よ!
上には上がいることを教えてやる!」
太史慈「ほう、魏延どの。
大将である貴殿が自ら出てくるとは……。
よほど自信があるのか、ただの考えなしか」
魏 延「ぬかせ、勝てばいい話だ! いくぞ!」
太史慈「相手には不足なし……!」
太史慈:武力93 VS 魏延:武力95
魏 延「(フッ……太史慈よ、残念だったな。
私には負けない絶対的自信がある……。
いくら危なくなったとしても、この反骨で
刃を打ち返せば、大逆転できるのだ!)(※)」
(※金旋伝66章の徐晃戦を参照)
太史慈「さて、では武器を変えるとするか。
この双鞭『虎撲殴狼』で、貴殿の角ごと
頭蓋を砕いてくれよう」
魏 延「げっ……そ、そんな武器が!?
(あ、あんなデカイ打撃武器、跳ね返せぬ!)」
太史慈「いくぞ! でやああ!!」
魏 延「くっ、なんの! ぬりゃあああ!!」
両者の武は拮抗していた。
実質の武力は魏延の方が若干上であったが、
逆転の秘技を封じられた思いで、魏延の戦い方は
幾分引き気味になってしまった。
そこを、太史慈につけ込まれる。
太史慈「やるな、魏延どの。
我が技をことごとく避けるとは」
魏 延「当たれば痛いだろうからな。避けもする」
太史慈「ならば、我が秘技を出すしかあるまい!
いくぞ!『ドロップ』!」
太史慈は、手にしている二本の鉄鞭のうち、
一本を空高く放り投げた。
そしてそのまま、もう一本を手に突撃する。
魏 延「一本を投げ捨て戦うのが秘技か!?
笑わせるなっ!」
魏延はその突撃を受け流す。
太史慈はそのまま、魏延の背後を走っていく。
太史慈「……『ストライク』!」
太史慈はそのまま馬も止めず振り向きもせず、
手にしていた鉄鞭を振り上げた。
その瞬間、放り投げていたもう一本の鉄鞭、
これが落ちてきており、なんとそれを打ち返した。
ガッ!!
魏 延「な……に……!?」
打ち返された鉄鞭は、魏延の後頭部に命中。
脳震とうを起こしたか、魏延は馬に突っ伏し
起き上がれなくなってしまう。
太史慈「ふふふ、曲芸みたいな技ではあるが、
これが意外と効くものだ」
魏 延「くっ……やられた……!」
公孫朱「なんて技……!
突撃をかわして安心しているところへ、
間を置かず落ちてきた鉄鞭を打ち返す!
これはそう避けられるものではないわ」
蛮 望「そう何度も使える技ではないけれどね。
……魏延はもう戦えないわね。
この勝負の勝者は、太史慈か……!」
魏延は馬に突っ伏したまま、自軍に戻っていった。
太史慈が魏延を倒したことがわかると、
呉軍の兵たちが歓声を上げる。
蛮 望「……しょうがないわね、もう。
やはりここは私が出るしか……」
公孫朱「な、なんね! そらなんねー!
恥が! 恥がー! 出てはなんねー!」
蛮 望「流石に太史慈も疲れてるわ!
ここで倒して士気を逆転しておかないと、
この先戦えないわよ!」
公孫朱「そ、そんならおれがいぐ!
武力順なら、おれが先だべ!」
蛮 望「はーん? なに?
私が寝技使うのそんなに気に入らない?
それくらいで嫉妬するなんて……」
公孫朱「うっつぁしーわ!
おれがいぐったらいぐ!」
蛮 望「……しょうがないわね。
じゃああんたが負けたら私が行くわ。
それで文句ないわね」
公孫朱「わ、わがった……じゃ、いっでぐる」
公孫朱は馬を走らせ、引き揚げようとしていた
太史慈に挑戦の声を上げた。
公孫朱「我が名は公孫朱!
太史慈どの、今度は私がお相手する!」
太史慈「ほう……? 公孫朱といえば、
先の戦いで孫尚香さまを倒した、あの?」
公孫朱「左様。この私の挑戦、受けて下さるか」
太史慈「ふむ、孫尚香さまの恥を雪ぐいい機会。
受けて立とうではないか!」
太史慈:武力93 VS 公孫朱:武力87
第2ラウンドが始まった。
太史慈は魏延戦の疲れを見せていたが、
公孫朱にとってはやはり格上の相手。
たちまち攻め込まれ、防戦に必死となる。
太史慈「どうした、威勢がいいのは最初だけか」
公孫朱「……くうっ!」
太史慈「この分では、私の勝ちだな。
それどころか、この後もう一人出てきても、
十分に相手ができるだろうよ」
公孫朱「も、もう一人……?」
(あんたが負けたら私が行くわ)
公孫朱「な、なんね! そんだげはなんねぇ!」
太史慈「む……? さっきよりも気迫が……?
どういうことだ、一体!?」
公孫朱「食らえ、秘技! 『宿り木』!」
公孫朱の渾身の突き。
その槍の切っ先を、太史慈はすんでのところで
鉄鞭で受け、防いだ……。
太史慈「ぐっ……?」
だが、槍の切っ先を防いだはずなのに、
腕に何かが突き刺さった痛みが走った。
太史慈「……矢が!?
突きのすぐ後に弓を放ったというのか!?
なるほど、槍を大木に、矢を宿り木に見立てた、
そういう技か……!」
渾身の突きを出しながら、素早く左腕で弓を握り、
突き終わってすぐに右手で矢を取りそれを放つ。
放つ突きの鋭さと、素早く弓を放つ腕が要求される、
難度の高い技である。
公孫朱「下がりなさい、太史慈どの。
これで貴殿は片腕で戦わなくてはならない。
それで勝てるほど、私は甘くないつもりです」
太史慈「大層な口を聞くものだ……。
だが、これではしょうがあるまいな」
太史慈はすぐに馬を返し、自軍へ戻っていった。
危うくはあったが、一応は公孫朱の勝利である。
魏延の負けを帳消しにするその勝利に、
楚軍の兵たちは歓声を上げた。
公孫朱「な、なんとか……。
楚の恥を晒すのは避けられたかな」
勝利を得たことよりも、そのことがなにより
公孫朱を安堵させていた。
☆☆☆
軽傷を負った魏延ではあったが、
部隊の指揮にはそれほど影響は出なかった。
安陸城塞からの落石の援護も得ながら、
孫尚香隊を圧倒する。
刑道栄「おらおらーっ! 刑道栄さまのお通りだ!」
蛮 望「おーほほほ! おどきなさい!」
さらに、蛮勇を誇る二将の突撃。
孫尚香隊は多くの兵を討ち減らされ、
満足に進むことも出来ぬまま退却を開始する。
孫尚香「くっ……もう少し兵がいれば……。
せめて同数の兵であれば、こう不覚は……」
劉 備「こちらが1万増やせば敵も1万増やしましょう。
今回の負けは、数が問題ではなく、後続部隊との
連携が上手く出来なかったこと。
そして部隊の歩みが遅く、敵部隊に容易に
迎撃させてしまったことでしょうな」
孫尚香「くっ……知ったふうに語るな!
戦下手の劉備のくせに!」
劉 備「ははは、その劉備に言われているようでは
まだまだ青いということ。
ここは他の部隊に任せ、我々は引きましょう」
孫尚香「……わかっている!」
退却を始めた孫尚香隊と入れ替わりに、
今度は孫奐隊が前に出てきた。
孫奐は孫堅の弟であった孫静の四男である。
孫瑜・孫皎らの弟で、孫家の屋台骨を支える
血族の一人である。
孫 奐「孫尚香さまの隊を守れ!
燈芝隊と連携し、魏延隊を討つ!」
孫奐隊の後ろからは燈芝隊も迫り、今度は彼ら、
合計2万5千の軍が魏延隊の相手となる。
魏 延「新手か……。
だが、この魏延を止められると思うな!」
一方の魏延隊は、当初の2万から4千ほど減り、
1万6千の兵数である。
攻撃力はあっても防御はさほど厚くない鋒矢の陣で、
どこまで兵数に勝る相手と戦えるのだろうか?
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