○ 第十七章 「攻める孔明、守る仲達を惑わす」 ○ 
218年8月

218年、季節は秋を迎える……。

と、その前にこの218年の夏の事象を整理し、
おさらいしておくとしよう。

○楚
東部では呉軍の水軍拠点、陸口を水路より攻める。
しかし孫尚香らの反攻により損害大きく、退却。

霍峻・黄祖・孟達らのいる桂陽の部隊、
燈艾・魏延・金目鯛らのいる江夏の部隊は
それぞれ柴桑・廬江の様子を伺うも動きは無し。

なお陸口会戦の折、燈艾は漢津の防衛強化のため
江夏方面の兵を割いて5万の兵を送っている。

 楚呉陸口会戦

北では魏軍侵攻のため虎牢関の防衛と、
于禁の艦隊による魏の港施設弱体化が行われた。

 洛陽周辺

対涼、対蜀炎に対する事項はなし。
両国ともに友好国であるため、静観の構え。

○魏
主力は対呉戦に割かれ、下[丕β]へ攻勢をかける。
張遼らの活躍により徐州での戦線は優勢。

また、濮陽・陳留の余剰兵力で楚の虎牢関へ攻勢。
この戦いでは司馬懿らの防衛により敗れる。

涼の馬騰艦隊、楚の于禁艦隊などにより
上党周辺の港が軒並み荒らされる。
馬騰に攻められた平陽港は陥落。

 魏

○呉
西では陸口会戦で楚艦隊を退却させる戦果。
しかし、兵力は減少しており建て直しが急務である。

北では下[丕β]を魏軍主力に攻められたものの、
孫権自らが入ってこれを防ぎ、陥落には至らず。
しかし戦闘は継続中で予断を許さず。
逆に汝南などから陳留を攻めるが、これは撃退される。

  呉

○涼
南側では、蜀炎の宣戦布告にて戦端が開かれ、
剣閣・葭萌関の間で激しい戦闘が続く。
馬超の指揮にて、葭萌関へ攻め寄せた饗嶺隊を殲滅。
しかし、剣閣を攻めた馬岱隊は破られてしまう。

東側では、涼公馬騰が利益度外視の長征を敢行、
長安より出でて平陽港を落とす。

  涼

○蜀炎
涼との戦端を開くも、予想以上の反攻に遭い
逆に剣閣の防衛が危ぶまれる場面も。
これは主力である黄忠・趙雲などが南方の都市に
いたままであることが要因か。

  炎

その他、異民族は動きはない。

このような状況から、季節は秋を迎える。

  季節・秋

    ☆☆☆

秋も深まった8月。
司馬懿は虎牢関に留まり、先の魏軍の攻撃で傷付いた
城壁の修復を行っていた。
そんな中、孟津からとある知らせが届いた。

   司馬懿司馬懿  郭淮郭淮

司馬懿「馬騰艦隊が川を下っている?」
郭 淮「はあ、于禁将軍からの知らせではそうあります。
    2万の兵を率い、孟津の側を通り過ぎたと……」

  馬騰艦隊川下り

司馬懿「どういう戦略的な意味があるのか……。
    正直、曹操などよりも読みにくい人ですね」
郭 淮「下流には官渡・白馬など魏軍の港があります。
    それを落としにいったのではないでしょうか。
    守備兵力もいないような所ですから」
司馬懿「それを落とした所で、何の意味があるのです?
    曹操がなぜ兵を置いていないかを考えなさい!」
郭 淮「私に言われても困るのですが」
司馬懿「……そうですね。
    とりあえず、馬騰のことは放っておきましょう。
    今の所は、我らに害があるわけではないですし」
郭 淮「そうしましょう。
    ところで、閣下からの通達についてですが」
司馬懿「『離間・焼き討ちなどの計略にて、
    各勢力の弱体化を図れ』という内容でしたね。
    すでに洛陽・孟津に指示は出してあります」
郭 淮「手早いご指示、流石です。
    しかし、少し消極的な策とは思いませんか?
    これまでわが軍は直接の武力で戦ってきたのに、
    今更、計略など用いずとも……」
司馬懿「武断派の方はそう思うかもしれません。
    しかし、時にはこのような工作も必要です。
    戦わずして敵を弱らせられるのならば、
    それに越したことはありませんよ」
郭 淮「そのようなものですか」
司馬懿「郭淮将軍、貴方も武官上位に置かれて
    将来を期待されている身です。
    戦略・政略まで見渡す視野を持たないと」
郭 淮「はあ……精進いたしましょう……。
    ……じゃない、私は郭淮という名ではありません!
    カクワイダーとお呼びを!」
司馬懿「フフ、一流の都督になっていただければ、
    そうお呼びすることもあるかもしれませんね」
郭 淮「むむっ、判りました!
    『都督刑事カクワイダー様カッコイイ』と
    いずれは言わせてみせましょうぞ!」
司馬懿「……かっこいいかどうかはまた別な話ですが。
    では、魏軍に対する計略を実行しましょうか。
    ここは知略に優れる人材が豊富ですから、
    河内港の呂翔などに離間の計を……」

そこへ、息を切らせた韓遂が飛び込んできた。

    韓遂韓遂

韓 遂「た、大変だぞ!」
司馬懿「なんですか、慌てて。
    韓遂将軍が変態なのは既に知ってますよ」
韓 遂「『変態』じゃなくて『大変』だ。
    まあ、私が変態なのは否定はしないが」
郭 淮「否定してください……。
    ところで、一体何が大変なんですか」
韓 遂「おう。物見からの報告だ。
    この虎牢関に、敵の部隊が近付きつつあるぞ。
    兵力は3万、大将は諸葛亮だとのこと」
司馬懿「諸葛亮? 上党を任されていたはずですが、
    その彼が長躯してこの虎牢関へ?」
韓 遂「詳細は知らんがな。
    諸葛亮の乗る四輪車が確認されている」

  諸葛亮南征

司馬懿「先の曹操といい、今回の諸葛亮といい……。
    その意図がよく読めませんね。
    上党から攻めるならば、水路から孟津を……、
    となると思うのですが」
韓 遂「于禁の攻撃で港がやられたからではないか?」
郭 淮「なんにせよ、敵の軍師自らが攻めてきたのです。
    それ相応の出迎えをしてやりましょう」
司馬懿「迎え撃つにしても、まずは関まで引き付けます。
    関の連弩を有効に使わねば」

虎牢関は守りを固め、諸葛亮隊の接近を待った。
一方の諸葛亮は、夏侯淵・張哈の二将を従え
すぐ近くまで進軍してきていた。

    諸葛亮諸葛亮

諸葛亮「さて、いよいよ軍を率いての対決ですね。
    さあ、前進を続けなさい。
    今日中には虎牢関に到着するのです」

   夏侯淵夏侯淵  張哈張哈

夏侯淵「……どうも、好かんな」
張 哈「何がです?」
夏侯淵「我らが軍師どのだよ。
    上党近辺の港が襲われた時には一兵も出さず、
    そうかと思えば、今こうして一見ムダな出兵をし、
    その軍略の説明は全くしてもくれん。
    で、羽扇を片手にあの偉そうな態度だ」
張 哈「軍師なのだから、別に偉そうにしていても
    別によいではありませんか」
夏侯淵「本音で言っているのか?
    お前はあの態度を見て、何も思わんのか?」
張 哈「まあ、正直いい気分ではありませんが……」
夏侯淵「そうだろう。
    まだ賈駆の方が可愛げがあったわ(※)」

(※郭嘉亡き後に一時軍師を務めていた。
 彼は、他の将との交流を深めようとはしなかったという。
 ちなみに老齢だがまだ存命中である)

張 哈「まあまあ。
    不満は目の前の虎牢関にぶつけるべきでしょう。
    何しろ相手は昨年苦杯を舐めされられた司馬懿。
    今こそ逆襲の時です」
夏侯淵「そうだったな……。
    司馬懿め、あの時の屈辱は忘れておらんぞ。
    今度はこちらがコテンコテンにしてやるわ」

諸葛亮隊3万はやがて虎牢関へ到着。
日も暮れかかってきており、この時間帯では
交戦は翌日に延ばされるのが通常であった。

両軍の将兵は皆、戦闘は明日からだと思っていたが、
そんな中、諸葛亮が四輪車の爆音を轟かせ、
虎牢関の楚軍将兵の前へ姿を現した。

 四輪車
 ギュイーン! ドゥルドゥルドゥル

諸葛亮「私は魏国鎮東将軍にして軍師を務める諸葛亮!
    大将司馬懿どのとお話をしたい!
    おられるか!?」

諸葛亮のその登場の仕方に関の兵は度肝を抜かれ、
弩を構えようとする者もいない。
そんな中、司馬懿が最前列に姿を現した。

司馬懿「私ならここにいますよ」
諸葛亮「これはこれは……司馬懿どの。
    お目にかかるのは洛陽陥落の時以来ですな。
    2年ほど前のことですが……」
司馬懿「別にまた会いたいとは思いませんでしたけど」
諸葛亮「そうつれないことを言われますな。
    私の弄する策など全てお見通しだ、とまで
    おっしゃったそうではありませんか(※)」

(※金旋伝八十八章参照)

司馬懿「そのようなこともありましたか……。
    で、貴方が隊を率いてここへ来た目的は何です?
    まさか、私に会うためだけではないでしょう」
諸葛亮「いえ、目的の半分は貴方に会うためですよ」
司馬懿「……なに?」
諸葛亮「洛陽一帯を守っているのは、貴女です。
    楚軍十万の兵でも、勇猛な将でもない。
    貴女がいるからこそ、この洛陽は守られ、
    魏軍は敗れ去ってしまうのですよ」
司馬懿「それはそれは。過大評価ではあるけれど、
    そこまで言われると悪い気はしませんね」
諸葛亮「……私は考えました。
    洛陽を奪還するのは、貴女に勝たねばならない。
    そこで、戦いの中で貴女を丸裸にするために、
    私自らこうして部隊を率いてきたのですよ」
司馬懿「ほう。丸裸にするというのは……」
諸葛亮「おっと、ボケなくても結構ですよ。
    私が興味があるのは、貴女の内面だけですから」

夏侯淵「外見はどうでもいいんだとさ……。
    やっぱホモだな、あいつ」
張 哈「いや、嫁さんがいるじゃないですか。
    小柄で一見子供かと思う感じの……」
夏侯淵「そうだったな。じゃあロリコンか」
張 哈「ああ、それはありそうですな」

司馬懿「……標的は関ではなく、私であると?」
諸葛亮「フフフ、そういうことです。
    というわけで、明日から存分に貴女の戦い方を
    見せてもらうといたしましょうか。
    司馬懿どの……いや、『張夫人』」
司馬懿「……!」
諸葛亮「おっと、そうそう。貴女に贈り物があるのです。
    これを受け取ってください」

ばしゅ、と四輪車に備え付けられていた筒から
何かが関に向けて放たれた。

諸葛亮「男に混じって戦場に立つ、男勝りの貴女に
    よく似合うだろう、とわざわざ用意したのです。
    是非、明日はそれをつけた姿を見せてください。
    では今日は、これにて失礼」

それだけ言うと、諸葛亮の自走式四輪車は走り出し、
スピンターンを決めて自軍の中へ戻っていった。

司馬懿「諸葛孔明……。私が標的だと?
    どこまで本気で言っている……」

郭 淮「諸葛亮が放ったのはこれです。
    なにやら、布に包まれているようですが」
韓 遂「奴の口ぶりからすると、服飾品かのう」
司馬懿「……開けてみてください」
郭 淮「では……。うっ!?」
韓 遂「ほう、これはこれは」

中身は、実に際どい感じの服であった。
武闘服というには、あまりにも薄く肌の露出も大きい。
ただ、戦う女という印象は与えるだろう。

郭 淮「……こんな服を着ては、陣頭には立てませんな。
    流れ矢を受けただけでも大怪我しますぞ」
韓 遂「それ以前に兵たちの目の毒だな、はっはっは」
司馬懿「……このような小道具を使う諸葛亮の意図。
    郭淮将軍、貴方ならどう見ますか」
郭 淮「は、このカクワイダーの意見は……。
    先ほどの口上といい、こんな服を渡すことといい、
    明らかに奴は司馬懿どのを挑発しています。
    冷静さを失わせて外に誘き寄せたいのでしょう」
司馬懿「ふむ……で、どうすべきと考えますか」
郭 淮「ここは打って出るのは控え、しばらく守備に徹し
    敵の疲労を待つことにすべきです。
    こちらが数的に有利なのは明らかなのですから、
    下手に動かない方がよろしいでしょう」
韓 遂「いや、それはどうだろうな」
司馬懿「韓遂将軍は、違う意見ですか?」
韓 遂「そうだな。
    この服を着て挑発し返すというのも一興だろう。
    諸葛亮め、司馬懿が打って出るのは予測しても、
    これを着て出ていくとは思ってもおるまい」
司馬懿「なるほど……。
    確かに韓遂どのがこれを着て挑発をすれば、
    敵は大いに驚くことでしょうね」
韓 遂「だ・れ・が・着るかっ!
    着るのは司馬懿、お主だっ!」
郭 淮「……韓遂どのは、ただこの服を着た
    司馬懿どのの姿を見たいだけでしょう」
韓 遂「む、わかるか?」
郭 淮「わからないほうがどうかしてます」

司馬懿「挑発……。この服……。意図はどこに……」
郭 淮「何も結論を急ぐことはありますまい。
    ここは一旦防衛に回り、その間考えれば良いこと」
司馬懿「……そうですね。
    とりあえずは様子を見ることにします」
郭 淮「はっ」
韓 遂「ちっ、残念」
司馬懿「ですが、一応対策は考えておくとしましょうか。
    少しばかり、試してみたいこともありますから……」

    ☆☆☆

一方、諸葛亮隊は明日からの戦いを前に、
兵たちを早めに休ませる。
その一方、諸葛亮の帷幕には夏侯淵・張哈が
参り明日からの戦い方を協議していた。

夏侯淵「さて、軍師。いよいよ虎牢関を攻める段だな。
    先ほどは司馬懿に向かって口上を垂れていたが
    実際にどのような戦い方をしていくつもりなのか、
    底の所を先に聞いておきたいのだが」
諸葛亮「内緒です」
夏侯淵「はぁ!?」
諸葛亮「機密ですから、いくら将軍がたでも言えません。
    貴方がたには、命令の完全なる遂行のみを
    お願いします」
夏侯淵「貴様!?」
張 哈「まあ将軍、落ち着いてください。
    軍師、貴方は機密だから話せぬとおっしゃるが、
    我々は今まで魏のため懸命に戦ってきたのだ。
    その我らを信用ならんと言われるのか?」
諸葛亮「信用できるできないではありません。
    役割が違うのです。私は作戦を考え、
    貴方がたはそれを実行をする。それだけです」
夏侯淵「意図もわからん命令をただ実行しろというのか」
諸葛亮「そうです。軍とはそうあるべきものです。
    知らせるべきは知らせるが、私の意図などは、
    将軍がたが働くのには全くいらぬものです」
張 哈「軍師の考えはわかったが、我らはそうは思わん。
    だからこうして聞いているのだが」
諸葛亮「……張哈どの、勘違いされますな。
    私は閣下に軍師としての全権を預かっている。
    私と貴方がたは同格ではないのですよ」
張 哈「くっ……」」
夏侯淵「もうよい、寝るぞ張哈。
    これでは寝つきまで悪くなるわ」
張 哈「そうですな……」
諸葛亮「では、明日からよろしく頼みますよ。
    将軍がたの能力自体は高く評価していますから」
夏侯淵「フン……失礼する」
張 哈「では」

夏侯淵・張哈は不満ありありの顔で
形だけの礼をし、帷幕を出ていった。

諸葛亮「全く、困ったものだ。
    彼らのあの様子では、私の意図を言った所で
    また不満を洩らすだろうな。
    まあ、戦略を誤ったといえば、皆そうなるか」

今回のこの出兵は、先にあった夏侯惇隊・曹操隊の
虎牢関への攻撃、それに呼応する形で出されたのだ。
だが、先の部隊が早々と撃退されたために、
彼らが単独で攻めているかのように敵味方には
見えていたのである。

諸葛亮「こうも状況が変わってしまっていては、
    本当なら損害を出ぬように退却すべきなのだが、
    一戦も交えぬうちに退却することはできないし。
    なんとも、やりきれぬな」

彼は、戦って戦果を上げること、被害を抑えること、
この両立の難しい命題を同時に満たさなければならない。

そのために彼が苦心して考えたのが、
司馬懿への心理戦だったのだ。

諸葛亮「人間誰しも、考えを見破られるのは嫌なもの。
    司馬懿とてそれは変わらぬはずだ……。
    ああ言って注目をされている不安を煽れば、
    流石に出陣には二の足を踏むであろう。
    加えて、あの服で私が挑発していると思えば、
    誘き出そうとしていると思って逆に自重する。
    そうやって外に出て来ないように仕向けてやれば、
    適当に戦った後で引き揚げるのも容易だ」

上手く関の兵を抑え込み、その間に
適当な所で戦いを切り上げて退却する。
これは奇しくも、先に曹操がやろうとしていた
戦い方と同じであった。

    ☆☆☆

翌日。虎牢関の前に、諸葛亮隊が揃う。

    諸葛亮諸葛亮

諸葛亮「全軍、攻撃開始!」

諸葛亮の采配で、隊は虎牢関への攻撃を開始。
対する虎牢関は、関の連弩を放ち近づけまいとする。

   夏侯淵夏侯淵  張哈張哈

夏侯淵「怯むな! いくら堅牢な虎牢関とはいえ、
    絶対に落ちぬ関などはありはせんのだ!」
張 哈「夏侯淵将軍!
    ここは我らの攻撃で、切り崩しましょうぞ!」
夏侯淵「うむ……張哈! あれをやるか!」
張 哈「あれですか! いいでしょう!」

夏侯淵・張哈はそれぞれ手勢の騎兵を率い、
蛇行しながら吶喊する。
夏侯淵隊が右に曲がると張哈隊は左へ、
夏侯淵隊が左に曲がると張哈隊は右へと、
上手く交差しながら虎牢関へと向かっていく。

夏侯淵「射撃用意! ひとつ!
張 哈「次、ふたつ!
二 人『みっつ!』

両者の合体飛射攻撃が決まる。
多くの守備兵がその矢に倒れていった。

夏侯淵「見たか! 我らの必殺技!
    これぞ『おしどり夫婦団結アタック』だ!」
張 哈「将軍〜、やはりその技名は止めましょう〜」
夏侯淵「何を言う! 両者の息の合った連携攻撃の凄さ、
    それを実に端的に表している、よい名前だろう!」

これらの攻撃で、諸葛亮隊は順調に戦いを進める。
また、後方都市からの増援が合流し、彼らの隊は
3万5千近くに増えていた。

魏 兵「新たに増援3千が合流しました!」
諸葛亮「全く、こちらの気も知らずに……」
魏 兵「は?」
諸葛亮「いや、なんでもない」

諸葛亮としては、さっさと戦いを切り上げて
引き揚げたいところであったのだが、
この増援はその思いとは裏腹なものであった。

諸葛亮「しかし、増援を送るなと言うわけにもいかん。
    ……攻勢を強めよ、反撃はそれほど強くない!」

6万以上の兵がいるはずの虎牢関であったが、
諸葛亮でさえもこのまま落とせるのではないか、
そう思うほどに反撃は大したことはなかった。

諸葛亮「しかし……どういうことだ?
    ここまで、弱いはずはないが……」

諸葛亮が疑問を持ち始めた時、虎牢関の門が開いた。
魏軍が開けたのではなく、守る楚軍が開けたのである。
その中には3万ほどの軍勢。そしてその陣頭に立つ将。

司馬懿「さあ、諸葛亮!
    お望み通り、私の戦いを見せてあげましょう!」

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諸葛亮「な、なんと!? 司馬懿……!?」
司馬懿「行け! 敵を打ち破るのだ!」

諸葛亮が送った衣装に身を包み、司馬懿が号令を放つ。
司馬懿の部隊は、虎牢関という檻から解き放たれ、
諸葛亮隊へと襲い掛かった……。

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