○ 第七章 「旗は乱れ、影は暗躍す」 ○ 
218年5月

5月中旬。
朱桓隊は朱治隊を撃退したものの、南方での味方が
苦戦しているのではと思い、艦隊を南へ急がせていた。

  朱桓・甘寧進行

    朱桓朱桓

朱 桓「後ろから来る甘寧艦隊……。
    航行速度が少し遅れているな」
朱 異「朱治艦隊が囮であったということに、
    甘寧将軍が気付いていないからでしょうか。
    危機感がない分、遅いのかもしれません」
朱 桓「ううむ、いかんな……。
    朱治どのが囮であった、ということを
    早く伝えておかねばならんな」
朱 異「しかし父上、甘寧艦隊との距離は離れてます。
    大声を張り上げても届かぬ距離ですぞ」
朱 桓「手旗信号があるだろう、あれを使うんだ」
朱 異「手旗を使うにしても少し離れています。
    甘寧どのの旗艦『王虎』(荊弐比巣帝下流)
    からは見えぬと思われますが……?」
朱 桓「ならば、まずこの艦隊の最後尾の艦に送り、
    そこからまた手旗で甘寧隊に送ればよい」
朱 異「はっ、ではそのように致します。
    通信文の内容は如何様にしますか?」
朱 桓「朱治艦隊は、我々が南に行くのを押し留める
    囮の役目を負っていたのだ。
    こう伝えよ。『彼は囮だ、急げ』とな」

こうして通信が手旗信号で行われた。
まず、朱桓の旗艦『赤ひげ』より艦隊最後尾の艦に
手旗信号による通信文が送られる。

通信兵「む、旗艦からの信号だ……なになに。
    次の文章を甘寧艦隊に向けて送れ、か。
    『カレハオドリダイソゲ』……。
    なるほど、ではこれを甘寧艦隊に向けて……」

通信兵が手旗を振ろうとしたが、しかし
この艦の責任者である孔奉がそれを制した。

    孔奉孔奉

孔 奉「…………」
通信兵「えっ? 俺が旗を振る、ですって?」
孔 奉「…………」
通信兵「兵士時代はよくやっていた、って言っても……。
    貴方もう将軍なんですから」
孔 奉「…………」
通信兵「あーはいはい、俺も何かで目立ちたい、ですか。
    わかりましたよ、どうぞやってください」
孔 奉「…………」

孔奉は心なしか嬉しそうな表情で、甘寧艦隊に向け
旗を振り、通信文を送った。

さて、その手旗は甘寧艦隊に向けて振られていたが、
甘寧の旗艦『王虎』からは少しばかり遠くて見えず、
その前方に位置する艦がようやく見つけた。

通信兵「うん……?
    あれは朱桓艦隊からの手旗信号だな。
    『カレハオドリダイゾゲ』か。
    よくわからんが、大将に知らせねば」

通信文を読み取ったその兵は、
甘寧の乗る旗艦『王虎』に向けて手旗を振ろうとする。
しかし、その艦の責任者がそれを制した。

    雷圓圓雷圓圓
 
雷圓圓「それは私に任せてくださいです」
通信兵「わ、雷さま」
雷圓圓「……えーとですね、らいさまっていうと
    カミナリを落としそうな感じがしますんで、
    『らい』でいいですよ」
通信兵「いや、上官を呼び捨てにするのはちょっと……。
    それより、私に任せてくださいというのは?」
雷圓圓「手旗信号なら私も出来ますから。
    この文を旗艦に向けて振ればいいんでしょう?」
通信兵「はあ、そうですけど……。でもそれは私が」
雷圓圓「いいんですよう。
    こういう雑用はメイドの仕事なのですよ〜」
通信兵「(メイドが手旗振るなんて聞いたことないが)
    ……まあ、そこまでおっしゃるならお任せします」
雷圓圓「はいは〜い。では、振りますよ〜」
通信兵「……大丈夫かな」

雷圓圓は嬉しそうに手旗を振った。
さて、その手旗信号を甘寧の旗艦『王虎』は受け取り、
通信文が甘寧のもとへ届けられた。

  手旗通信経路

通信兵「キャプテン! 申し上げます!
    朱桓どのから手旗信号による打電です!」

    甘寧甘寧

甘 寧「む、急用か? 読み上げい」
通信兵「はっ! 読み上げます!
    『俺は踊りたいぞ、毛』だそうです!」
甘 寧「……は? なんだ、それは」
通信兵「……踊りを踊りたくなったのでは?」
甘 寧「アホか。今は戦の真っ最中だぞ?」
通信兵「だからこそ、帰ったら一緒に踊ろう、
    ということなのでは?」
甘 寧「……『毛』はなんだ、『毛』は」
通信兵「さあ……。毛という何かがあるのでは?」
甘 寧「俺は知らんぞ、そんなもの。
    ……ううむ、どういう意味なのだ。
    よし、『毛とは何のことだ』と返事を送れ」
通信兵「はっ!」

そしてまた、中継を挟んで通信文が送られた。
雷圓圓の艦、孔奉の艦を経由し、旗艦『赤ひげ』に
手旗信号が送られる。

朱 異「父上! 甘寧艦隊から返信です!」
朱 桓「うむ、読み上げよ」
朱 異『毛糸は何個の戸だ』だそうです」
朱 桓「……は?」
朱 異「……暗号でしょうか?」
朱 桓「いや、こちらは暗号化などしなかった。
    あちらも通常文で送るのが普通だが……。
    ……上手く伝わらなかったのか?」
朱 異「確かに、有り得んとは言い切れません」
朱 桓「よし、ではもう一度送れ。
    今度はそうだな……こういう文にせよ。
    『南が危険だから速度を上げよ』と」
朱 異「はっ」

通信兵「甘寧キャプテン! また打電です!」
甘 寧「『毛』に関する説明か?」
通信兵「読み上げます!
    『皆、磨き剣玉さ、即胴上げよ』!」
甘 寧「……はい? どういう意味だ」
通信兵「『剣玉を磨いたらみんなですぐ胴上げする』
    ということなのでは?」
甘 寧「だから、意味がわからんというに。
    『毛』の説明はどうした」
通信兵「……はっ!?
    も、もしやこれが毛の説明なのでは?」
甘 寧「どういうことだ」
通信兵「つまり、『毛』とは場所なのです。
    磨いた剣玉で遊ぶと、みなが胴上げしてくれる、
    そういう遊び場なのではないかと……」
甘 寧「ふむ……新しい遊技場か。なるほど。
    そこには踊りを踊る場所もあるのだな」
通信兵「これで、全てが繋がりましたね!」
甘 寧「そうだな。あいつは戦が終わった後、
    俺と『毛』という遊技場で踊ろう、
    と誘ってきているということだ!」
通信兵「いやあ、謎が解けてすっきりしました。
    返信はどうしますか?」
甘 寧『誘いはOKだ』と返しておけ。
    ふっ、俺の崩し踊りを披露してやろう。
    戦が終わった後を楽しみにしているぞ」
通信兵「はっ、了解です」

朱 異「返信です。『サソリは桶だ』
朱 桓「……訳が分からん!」
朱 異「さっぱり意味がわかりませんね」
朱 桓「もう一度送れ! 文は『とにかく急げ!
    真面目にやれ、しまいには怒るぞ!』
    ……だ!」
朱 異「は、はい……」

通信兵「また打電です! 『とにかくいい、毛。
    マジでニヤけ、しまいには奢るぞ!』
    だそうです」
甘 寧「ほう。毛とは思わずニヤけるほどにいい所か。
    しまいには奢るぞ、というのは……」
通信兵「女の子が沢山いて、奢ってあげるといいことが
    あるということでは……羨ましいですなぁ」
甘 寧「ふむ、それは楽しそうだな……。
    しかし、楽しみにするのは結構だが、今はまだ
    戦いが終わっていないのだ。
    その話は終わった後にするとしよう。
    『その話はまたあとでだ』と送っておけ」
通信兵「はっ」

朱 異「甘寧将軍から返し……」
朱 桓「読め!」
朱 異「は、はっ! 『その鼻、死は股と出た』
朱 桓「さっぱりわからん!」
朱 異「私もです!」
朱 桓「偉そうに言うな!」
朱 異「すいません!」
朱 桓「……ここでイラついてても仕方がない。
    もういい、手旗はやめだ。
    誰か伝達のため、小舟に乗ってこの場に待機し、
    甘寧艦隊が来るのを待て」
朱 異「わかりました。そのように致します」

手旗信号による通信での意志疎通を諦め、
朱桓は伝達のために兵の乗った小舟を残し、
艦隊自体は先に南へ向かうことにした。

楚兵A「ふう、こんな小さな舟で一人残されるとは、
    全くついてないなぁ。
    ま、戦いには参加しなくていいから、
    その点では楽といえば楽だけど……」

伝達のためひとり残されたその兵は、甘寧艦隊が
やってくるのを待った。遠目には艦隊の姿は見えるが、
まだやってくるには時間がありそうだ。

楚兵A「しかし、甘寧将軍って普段は気さくだけど、
    戦場だとものすげえおっかねえって話だよなー。
    怖いなあ。誰か、代わってほしかったなぁ」

???「では、私が代わってやるとしよう」
楚兵A「……えっ?」
???「ただし、お前が戻るところはない。
    ……お前には、川底に沈んでもらう」

 シュバッ……どさり

彼は背後からいきなり羽交い締めにされ、
首を短剣で切り裂かれる。
……彼は、あっけなく絶命した。

???「……死んだか。他愛もない」

兵を殺したその男の名は、徐盛。
孫権の代から呉に仕え始め、数々の武勲を上げてきた。
智勇を兼ね備えた名将として評価が高く、
最近赤丸急上昇売り出し中の男である。

    徐盛徐盛

徐 盛「しかし、単独で敵艦隊に潜入しろなどと、
    魯粛どのも酷い難題を言ってくれるよな」

彼は、柴桑方面の軍団都督、魯粛から
単独で甘寧艦隊に潜入し、ある工作を行うようにと
密命を受けていた。

徐 盛「智謀と武勇を兼ね備えた貴殿ならばやれる、
    とおだてられてはいたが、実際、これはかなり
    危険な任務だぞ」

徐盛は自らの濡れた衣服を脱ぎ捨て、
死んだ兵士の鎧を剥ぎ取り、それを付けていく。
そして、どこから見ても楚の兵士の格好となり、
最後に死体を川へ投げ捨てた。

徐 盛「周りに呉兵の死体がいくつか浮いているし、
    この死体がバレることもあるまい……。
    ……来たな。それでは任務開始だ」

甘寧艦隊の船団が徐々に迫り、しばらくして
そのうちの一隻が徐盛の乗る小舟に近付いてくる。

楚 兵「朱桓艦隊の者か?」
徐 盛「そうだ。朱桓将軍からの伝言を預かっている。
    甘寧将軍に目通りさせてくれ」
楚 兵「了解した。おい、誰か連れてってやれ」

徐盛は兵に連れられ、旗艦王虎に乗船した。

    ☆☆☆

甘 寧「朱桓からの伝言とはなんだ?
    終わった後の踊りのことか?」
徐 盛「……踊り?」
甘 寧「ん、違うのか」
徐 盛「は、はあ……。
    踊りのことは別に聞いておりませんが」
甘 寧「じゃ、なんだ? お前を残して先に行くほどだ。
    何か急を要することなのか?」
徐 盛「はっ。朱桓将軍の伝言の内容は、
    『漢津に敵艦隊が向かった様子である。
    そちらで対処をしてほしい』というものです」
甘 寧「敵艦隊が漢津に向かっただと……!?
    くそ、朱治以外に敵が出てこないと思ったら
    そういうことだったのか……」
徐 盛「朱桓将軍は、自分は烏林からの艦隊と合流し、
    敵艦隊への攻撃に加わるので、甘寧将軍に
    漢津を守って欲しいとおっしゃっておりました」
甘 寧「ちっ、朱桓め。面倒を押し付けたな。
    だが、後方の俺が対処するのは理に適っている。
    まあ、やってやろうじゃないか」
徐 盛「はっ」
甘 寧「じゃ、お前は港に戻るまでこの艦に留まれ。
    あ、一応は朱桓の使者を務めたわけだからな、
    戦闘に引っ張り出したりはせんから安心しろ」
徐 盛「はい、ありがとうございます」

甘 寧「よし、それじゃ艦隊全体に通達せよ!
    反転し、漢津に向かうぞ!」

甘寧艦隊は、進行方向を北に変え、漢津へと戻っていく。

  甘寧反転

その様子を見ながら、徐盛はほくそ笑んでいた。

徐 盛「(これでいい。これで甘寧艦隊は戦力外だ。
    さて、後はいつ脱出するか、だが)」
甘 寧「……んじゃ、誰か船室に案内してやれ。
    狭いが一応個室だ、港までゆっくりしていろ」
徐 盛「はっ」
楚兵B「じゃ、こっちだ」

船室を与えられた徐盛は、そこへ案内される途中で
知った顔を見つけてしまった。
その相手も、徐盛の顔を見て近付いてくる。

徐 盛「(……ゲッ、蒋欽!?)」
楚兵B「これは蒋欽将軍、お疲れ様です。
    甘寧将軍に呼ばれたのですか?」

    蒋欽蒋欽

蒋 欽「うむ、会議を行うと言われたのでな。
    ……ああ、姿が見えていなくても、この艦に
    いる時はキャプテンと呼んだ方がいいぞ。
    神出鬼没だからな、あの方は」
楚兵B「は、はい。わかりました」
蒋 欽「……ん? お前は……」
徐 盛「な、なんでしょうか!」
蒋 欽「あ、いや……なんでもない。お前の顔、
    以前にどこか別な所で見たような気がしてな」
徐 盛「そ、そうですか? 私は、将軍と面と向かって
    話をするのは初めてですけども」
楚兵B「朱桓将軍の伝言を伝えに来た者ですよ」
蒋 欽「そうか。では、私の思い違いか……」
徐 盛「は、私は以前より朱桓将軍の麾下です。
    将軍の記憶にある方とは別人でしょう」
蒋 欽「ふむ……ああ、そうか。徐盛に似てるんだな」
徐 盛「……じょ、じょせい?」
蒋 欽「徐盛は私が呉にいた頃の同僚の将でな。
    孫権に見出された、実に有能な将なんだが、
    ちとプライドが高いところが難でなあ」
徐 盛「そ、そうですか」
蒋 欽「周泰なんかも、手を焼いてたみたいだな。
    私もあいつも寒門(貧しい家柄)の出なんだが、
    その点が気に入らないのか、命令を無視されたり
    話掛けても無視されたりしてたんだ」
徐 盛「(んな話長々とせんでいいわ、この寒門出が)
    そ、そうなんですか。いけ好かない奴ですね」
蒋 欽「……まあ、それ以外は素晴らしい将なんだ。
    智も勇も度胸もある。陸戦も水戦も実に上手い。
    味方にできれば、実に頼もしい奴なんだが……」
徐 盛「……でも、馬鹿にされてるんでしょう?
    味方にしても、不快な思いをするのでは?」
蒋 欽「寒門出なのは事実だし、私はあまり気にせんよ。
    それよりも、あれほどの人物が仲間になる、
    その喜びの方が大きいだろう」
徐 盛「蒋欽ど……将軍は、寛大な方ですね」
蒋 欽「そうかな。そうでもないと思うが……。
    優れた人物を評価するのは、当然だと思うがな」
徐 盛「は、はあ……」
蒋 欽「できれば、彼とは戦いたくないものだ」

    甘寧甘寧

甘 寧「蒋欽、何をやってる。
    お前が来ないと会議が始まらんだろうが」
蒋 欽「あ、キャプテン、申し訳ない。
    ……長々とすまなかったな。ではな」
徐 盛「は、はい」

その日の夜、徐盛は甘寧艦隊を脱出。
魯粛の待つ柴桑へと戻っていった。

なお、徐盛はその後も自尊心の強いそぶりを見せたが、
蒋欽については、敵ながらなかなかの人物である、
と評価を改めたという。

さて、偽報により騙された格好の甘寧であったが、
彼がそれに気付いたのはその数日後のことになる。
偵察により先に敵艦隊が全くいないことが分かり、
徐盛が行方をくらませたことを知った時であった。

移動距離等を考えると、この偽報により発生した
甘寧艦隊の遅れは10日前後である。
この遅れが戦いの趨勢にどう影響するのだろうか。

    ☆☆☆

金満艦隊は呉主力艦隊に包囲され、苦戦中である。
だが、彼らも呉軍の包囲網を知りながら
猪突していったわけではない。

ここでは少し時間を遡り、開戦直後からの
彼らを追ってみることにしよう。

  開戦直後

   金満金満   鞏志鞏志

金 満「敵艦隊も次々に現れてきたみたいだな……。
    現在の敵の状況はどうなっていますか?」
鞏 志「正面、孫尚香艦隊、兵2万5千。
    その左より孫韶艦隊、兵2万5千。
    右翼より駱統艦隊、兵1万がいる模様。
    なお、孫尚香隊の後方に潘璋の艦隊がいます。
    規模は、孫尚香艦隊と同程度のようです」
金 満「主力のほとんどをこちらに投入してきたか。
    しかし、こちらは徐庶艦隊と合わせて9万。
    数ではすでに勝っている……」
鞏 志「徐庶艦隊は、孫韶艦隊に攻撃をかける模様。
    こちらはどうしましょうか」
金 満「そうですね……。姉上のご意見は?」

    金玉昼金玉昼

金玉昼「ん〜。端っこから行くべきかにゃ?」
金 満「駱統艦隊から、ですか。そうですね。
    強そうなところは、後から来る甘寧どの、
    朱桓どのたちに任せることにしましょう。
    我々は、一番数の少ない駱統隊を討ちます!」
鞏 志「了解です。……進路は右!
    駱統艦隊を標的とせよ!」

金満艦隊は、兵1万の駱統艦隊を標的に定めた。
味方の4艦隊の中で一番水軍経験の少ない
この艦隊であれば、この選択は当然とも言えた。

   鞏恋鞏恋   魏光魏光

鞏 恋「了解。標的は右の駱駝艦隊!」
魏 光ラクダじゃなくてラクトウですよ」

  金満VS駱統

しかし、比較的御し易いであろうと思われた
駱統艦隊は、実際に戦ってみるとこれが猛犬の
ような強さで、予想以上の激しい抵抗を受ける。

賈 華「さあ、行くぞ!
    楚の兵どもに水軍戦とはいかなるものか、
    しっかりと教えこんでやる!」
呂 拠「その教育指導、私も参加しましょう」
駱 統「では、私も行かせていただきます。
    賈華どのだけでは、偏った教育になって
    しまいそうですからな」
賈 華「う、うるさい! 年長者に向かってなんだ、
    その口の聞き方は!」
駱 統「ははは、その怒りは敵軍に向けなされませ!
    さあ、突っ込みますよ!」

賈華の強攻に、若い(20代)駱統・呂拠勢が呼応し、
逆に金満艦隊に襲いかかった。
これにより、金満艦隊は全体の1割の兵を失う。

全 端「やべー、乗り遅れたやんけ!
    しょうがねー、矢でも撃っとくかー」

さらに、今年成人したばかりの全端(全綜の子)が
矢嵐にて追い討ちをかける。
だがこれは金満が察知し、被害は最小限に抑えた。

金 満「な、なんとか、矢の方は防げましたね……」
金玉昼「安心してる暇ないにゃ!
    今度は駱統勢が強攻してくるにゃー!」
金 満「えっ、まさか!?
    さっき来たばかりじゃないですか!」

駱 統「さっきは賈華どのについてきただけ。
    今回の強攻は私の企画です」
金 満「な、なんか、それってずるい!」
駱 統「ずるいと言われても困りますね……。
    さあ、こうなれば数の差などないに等しい!
    金満艦隊を食い荒らせ!」

駱統の強攻にて、また兵を減らす金満艦隊。
なかなか思うように行かない状況に、
金満は焦れてきていた。

金 満「くっ、一番兵の少ない相手を選んだのに。
    こうもいいようにやられては……。
    やり返すぞ! 舐められたままで終わるな!」

   鞏恋鞏恋   魏光魏光

鞏 恋「ふむむ……舐め返せってこと?」
魏 光「なんでそうなるんです!?
    目には目を、強攻には強攻でしょう!」
鞏 恋「らじゃ」
魏 光「全員、抜刀! 数ではこっちが上だ!
    二人で一人を斬ればいい!」
鞏 恋「つまりは、ふーたーりーでーひーとつー♪」
魏 光「はっ……!?
    ふたりでひとつ、ふたりは一心同体!
    合体ガシャーンブシューン!
鞏 恋「じゃ、合体攻撃でいくよ」
魏 光「りょ、りょりょりょ了解ですっ!」
鞏 恋「それじゃ、ペア組んでいくよ」

   金満金満   金玉昼金玉昼

金玉昼「じゃ、恋ちゃんと私、金満は魏光さんとにゃ」
金 満「わかりましたー」
鞏 恋「息合わせてね、玉ちゃん」
金玉昼「はいにゃー」
金 満「それじゃ魏光さん、よろしくです」

魏 光「え? どういうこと?
    私と鞏恋さんとで合体じゃないの?」
金 満「姉上と私も参加しますんで。
    バランスを考えると、こういうペアになるのかと」
魏 光「……んぐぁああああっ!!
    行くぞ、こんちくしょおお!
金 満「おおっ、すごい! 何だかよく分からないが、
    とにかくすごい気迫だっ!?」

鞏恋・金玉昼・金満・魏光の強攻が炸裂した。
駱統艦隊の半数以上を蹴散らし圧倒。
勢いも盛り返し、奥へと押し込んでいった。

金 満「よし! このまま駱統艦隊を潰すんだっ!」
金玉昼「……やられたにゃ」
金 満「え? 何がです?」
金玉昼「駱統艦隊にばかり気を取られて、
    周りの動きに気付かなかったにゃ」
金 満「周り……こ、これは!?」
金玉昼「そう、半包囲……。
    左方向は、全部呉軍に囲まれたにゃ」

 徐庶、金満、分断

駱統艦隊の予想以上の強さのために、
金満らの意識は正面にのみ集中していた。
そのため、他の敵艦隊が全て自分たちを狙って
動いていることに気付けなかったのだ。

朱桓が朱治艦隊をほぼ壊滅させた頃、
金満艦隊は窮地に陥ったのである。

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