○ 第九十三章 「髭来来!」 ○ 
218年1月

桂陽

桂陽での金旋・孫権の戦いは、
金旋軍が比較的優位に進めていた。
しかしまだ、山越軍というジョーカーがおり、
経過次第ではどう転ぶのか、まだまだ
分からない状況であった。

    ☆☆☆

魯粛隊を迎え撃つべく、桂陽城を出撃する霍峻隊。
対する魯粛は、その様子を見て渋い表情になる。
孫権軍がアテにしていたはずの山越軍が、
どこにも見当たらないからだ。

  魯粛魯粛   朱然朱然

魯 粛「むむ、桂陽城は無傷か?
    山越軍はまだ来ておらぬようだな……」
朱 然「すでに敗れているという可能性は?」
魯 粛「いや、そんなはずはない。
    最初に当たった金旋軍は士気が高く、
    鎧も綺麗であった。
    もし、山越軍と戦っていたのであれば、
    もっとくたびれていたはず」
朱 然「ならば、そのうちに来るのでしょうか」
魯 粛「偽報を仕掛けられたのだろうか?
    しかし、これほどの迎撃部隊が出てくるとは
    予想外であった」
朱 然「近隣の都市からの増援も混じっている様子。
    これでは、城を落とすどころか、
    城を攻撃することすらかなわぬのでは……」
魯 粛「我が隊だけでは無理であろうな。
    となると、我らの役目はおのずと決まる」
朱 然「それは、どんな役目でしょうか」
魯 粛「粘って時間稼ぎ、だ」
朱 然「……地味な役回りですなあ」
魯 粛「じ、地味言うなっ!
    いいか朱然、私はな! 地味と言われるのが
    大、大、大嫌いなんどゎー!
朱 然「あーすいませんすいません。
    魯粛どのは見た目は地味ですけど、
    実はけっこう派手好みですよね」
魯 粛「フォローになっとらんっ!
    とにかく、粘って粘って時間を稼いで、
    その隙に本隊や山越に城を攻撃させるぞっ」
朱 然「アイアイサー」

兵力比は4:1と大きく差があり、
士気も出たばかりの部隊と遠征組では全く違う。
勝敗自体はすでに戦う前から決まっており、
魯粛隊がどれくらい持つのかが戦いの焦点だった。

歩兵中心の霍峻隊は、魯粛隊に切り込み、
有利に戦いを進めていく。
そしてその中、先鋒の真っ先に立ち、
呉兵を次々に切り倒していく将がいた。

   楽淋楽淋

楽 淋「どけいっ! 無駄な血を流すなっ!」

楽進の子、楽淋。今は父とは離れ、
一人の将としてこの桂陽でその武を振るう。
魯粛隊の先陣は孫桓が率いていたが、
彼はその真正面から切り込み、槍を振い、
敵陣を斬り崩していった。

   孫桓孫桓

孫 桓「大分押されているようだが、駄目か?」
呉 兵「はい将軍、どうも持ちそうもありません」
孫 桓「ふむ。あの若い将、なかなかやるな」
呉 兵「貴方も若いでしょうが!」

このとき、孫桓22歳。
楽淋のひとつ下であった。

孫桓は孫の姓ではあるが、
これは父が孫策より孫姓を頂いたためで、
孫権らとの血の繋がりはない。(※)
冷静な性格で、あまりにも動じなさすぎるため、
周りから若年寄り呼ばわりされるほどであった。

(※演義での話。正史では孫家から養子に
 出た父が出戻りで孫姓になった)

楽 淋「むっ、そこの将! 名は何と言う!?」
孫 桓「普通は名を問う前に名乗るものだろう。
    貴殿の名を先に言うがいい」
楽 淋「な、なるほど、もっともだな。
    我は楽進が長子、楽淋なり!」
孫 桓「ほう、楽進の名は聞いたことがある。
    その子が戦場に出ているとはな。
    私は孫桓。孫姓を頂いた孫河の子である」
楽 淋「孫姓の者か、これは討ち取り甲斐があるな。
    よし、孫桓! 剣を取れ、俺と勝負だ!」
孫 桓「ふむ、一騎討ちを挑もうというのか?
    将たる者、兵を率する事こそ大道本分。
    むやみに蛮勇を振るう必要はない」
楽 淋「何を言う! 敵将を討ち、
    武を誇ることもまた将の務めであろう!
    さあ、尋常に勝負せよ!」
孫 桓「ふっ……。我安敵汝之武哉! 笨蛋!」

孫桓はそう叫ぶと、さっと味方の中へと
引っ込んで行ってしまった。

楽 淋「……は? どういう意味だ、今のは」
兵 長「えー、『我安敵汝之武哉』ですが、これは
    『我いずくんぞ汝の武に敵わんや』。
    私がどうして貴方の武に敵うことがあろうか、
    いや敵うまい(反語)……という意味で、
    つまり『お前にゃ勝てねーよ』ということです」
楽 淋「おお、そういうことか。あんた、頭いいなあ」
兵 長「へへ、国語だけは得意だったもんで」
楽 淋「で、『笨蛋』は?」
兵 長「それは『バカ』って意味です」
楽 淋「あ、バカだと……!」
兵 長「まあ捨て台詞ですね……
    って将軍、どうしました?」
楽 淋「ば、ば、ば……。
    バカという奴がバカじゃーっ!

楽淋は大声で叫んだ。
しかし、今さらそう叫んだところで孫桓には届かない。

楽 淋「ぐ、ぐぬぬぬ……許さん、許さん……っ!」
兵 長「しょ、将軍!? 落ちついてください!」
楽 淋「うおおおおっ! 許さぁぁぁんっ!」

 ピカーッ!

怒りで震える楽淋の身体が、突如金色に輝き始めた。

その金色の光は、楽淋の後方で指揮を取る霍峻、
そしてその傍らにいる馬良らも目にしていた。

  霍峻霍峻   馬良馬良

霍 峻「あれは楽淋? あの光は一体……!?」
馬 良「あ、あれは……スーパーモード!
    彼はすでに会得していたのか!?」
霍 峻「すーぱーもーど? なんですか、それは?」
馬 良「楽家に代々伝わる奥義です。
    あの金色の光は彼の気合が具現化したもの。
    スーパーモードを発動させた者は、通常の
    何倍もの強さを発揮できると言われています」
霍 峻「な、なんと奇天烈……いや凄いですね。
    ということは、楽進将軍も使えるのですか?」
馬 良「奥義自体は会得しているらしいですが、
    使わないように封印しているとのこと」
霍 峻「なぜです? 何倍もの強さを得るのならば、
    使ってもいいと思うのですが」
馬 良「理由はわかりません。
    発動後、身体に大きな負担がかかるから、
    ということではないでしょうか?」
霍 峻「なるほど……。しかしそうなると、
    彼は大丈夫なのでしょうか?」
馬 良「どうなのでしょうか……。しかし、
    これが好機であるのは間違いありません。
    彼と共に、魯粛隊の殲滅を!」
霍 峻「わ、わかりました」

霍峻の指示で、後方の兵たちが慌しく動き始める。
一方の楽淋は、まだその場に留まっていた。

楽 淋「ふぅ、ふぅ、はぁ、はぁ……」
兵 長「あ、あのー将軍?
    身体が金色でピカピカですが大丈夫っすか?」
楽 淋「で、でた……出たぞ……。
    お、俺のスーパーモード……!」

  楽淋スーパーモード
      シャキーン!

兵 長「うわあ! 兜が、兜が怒ってるっ!?
    それになんか眉毛が繋がってるし!
    だ、大丈夫なんですか将軍!?」
楽 淋「これこそ我が楽家の奥義、スーパーモード!
    この絶大な力があれば、こんな敵軍などっ!」
兵 長「もしもーし。将軍、ひとの話聞いてますー?」
楽 淋「安心しろ! 俺のスーパーモードなら、
    この程度の敵などひとひねりだっ!」
兵 長「うわ、マジで聞いてないっぽい」
楽 淋「覚悟しろ孫桓っ……!
    出てこないのなら、敵部隊まるごと
    お前を葬ってやる……!」
兵 長「あー! 近隣の味方に告ぐーっ!
    楽淋将軍の前方に出るな!
    たいっへんに危険だぞーっ!」
楽 淋「うおおおおお! いくぞぉぉぉっ!
    楽家奥義ッ! 奮! 戦!
    輝く指の剣ンンンンッ!!
兵 長「ええい、こうなりゃやるしかない!
    皆、将軍に続けっ!」

 ずどどどどどど

楽淋、怒りの奮戦。
彼の手勢もそれに続き、魯粛隊に斬り込んでいく。
また、それに呼応し霍峻勢も奮戦。
魯粛隊を散々に蹴散らした。

この結果、魯粛隊は健闘むなしく壊滅してしまう。

魯 粛「くっ……無念。
    持ち堪えることができなかった……。
    あの、金色の将がいなければ……」
朱 然「魯粛どの、悔しさは分かりますが、
    たらればを言っても詮無きことですぞ」
魯 粛「う、うむ。確かにそうだ。
    後はご主君と周瑜どのの健闘を祈ろう」
朱 然「はっ」
魯 粛「それにしても、あの金色の将……。
    時折、孫桓の名を呼んでいなかったか?
    かなりの怒りがこもった声だったが」

孫 桓「そうでしたか?」
魯 粛「何か心当たりはないのか?」
孫 桓「いえ、全く」
魯 粛「そうか……戻るぞっ! 長居は無用!」

魯粛や朱然、孫桓などは敗残兵と共に
柴桑へ逃げ帰っていくしかなかった。
残っている孫権、周瑜に希望を託して。

    ☆☆☆

霍峻隊が魯粛隊を破った頃、
孫権隊は楊儀の仕掛けた岩罠に嵌まり
おびただしい被害を出していた。

  孫権孫権   程普程普

孫 権「くくっ、なかなかどうして、
    敵にも知恵者がおるではないか……」
程 普「桂陽には半端者しかおらぬ、と
    戦前の調査ではそう言われておりましたが、
    あれは間違っていたのでしょうかな」
孫 権「あるいは、我が軍の侵攻を知って、
    新たに将を加え陣容を強化したか。
    どちらにせよ、油断があったわ……」

  黄蓋黄蓋   韓当韓当

黄 蓋「ご主君、気を落としている暇はありませぬ。
    まだ戦いは途中でござる」
韓 当「髭髯龍隊が攻勢に転じましたぞ!
    早く体勢を!」
孫 権「う、うむ、わかった。
    まだ決着がついたわけではない!
    髭髯龍隊を迎え撃て!」

体勢を立て直そうとする孫権。
しかし、焦りがあったのか思うように軍は動かず、
髭髯龍隊にいいように蹂躙されてしまう。

  髭髯鳳髭髯鳳  髭髯豹髭髯豹

髭髯鳳「孫権、どこにいる!
    この髭髯鳳がお相手いたすぞっ!」
髭髯豹「さあさあ、出てこい孫権!
    この髭髯豹がそのそっ首落としてくれん!」

   髭髯龍髭髯龍

髭髯龍「孫権、覚悟せいっ!
    この髭髯龍が討ち果たしてくれよう!」

髭髯龍・髭髯鳳・髭髯豹、三人のヒゲの
見事なまでの連携突進攻撃。
これにより、また多くの兵が討たれることになる。

   楊儀楊儀

楊 儀「ちっ……目立ちすぎだ、あのヒゲどもめ。
    私の手柄がかすんでしまうではないか」

実際の所、損害の規模では、
楊儀の罠で倒した兵の数の方が多い。
しかし、ヒゲの豪傑が三人揃っての突進である。
これは、強烈な印象を見る者に与えた。

孫 権「ひ、髭来来……!
    髭が、ヒゲが迫って来る……!」
程 普「ご主君! 気をしっかり持たれませ!」
孫 権「……お、おおっ」
程 普「まだ負けたわけではござらんっ!
    呆けている暇などありませんぞ!」
孫 権「お、おお、分かっている」

韓 当「ご主君! 新手じゃっ!」
孫 権「なにっ!?」

彼らの前に現れたのは、魯粛隊を破り
そのまま北上してきた霍峻隊だった。
黄祖・髭髯龍隊だけでも苦戦しているのである、
これはまさに絶体絶命の危機であった。

孫 権「こ、ここまでの数をなぜ出せる!?
    山越軍はどうしたというのだっ!」
呉 兵「申し上げます! 後方より部隊が!」
孫 権「な、なんだと!
    あまつさえ、後ろからも敵だとっ!」

後方より来る3万ほどの軍勢。
孫権はすでに包囲されてしまったのか?

黄 蓋「落ち着きなされ、あれは周瑜の隊じゃ」
孫 権「周瑜……おお、周瑜の隊が来たのか」

    ☆☆☆

桂陽

  周瑜周瑜   徐盛徐盛

周 瑜「……酷いな、これは」
徐 盛「散々にやられてますなあ。
    ご主君はそんなに戦下手であったかな」
周 瑜「いや、そうではない。
    これは戦術のみの問題ではなかろう」
徐 盛「というと?」
周 瑜「戦略を立てた時点で狂いがあったのだ。
    山越をアテにし、城攻めばかりを気にしすぎた」
徐 盛「確かに敵がここまで兵を出すとは予想外。
    この状況では、山越と我々と二方向から
    攻めているようにはまるで見えぬ」
周 瑜「計略で到着を遅らせたか……。
    それとも貢物で攻撃を止めさせたか。
    どちらにしろ、敵軍は全ての戦力を
    我々にぶつけているのだろう……」
徐 盛「では、この戦は負けですかな」
周 瑜「いや、まだ合わせて5万近くの兵がいる。
    どちらかが突破して城へ向かえば、
    また形勢は変わるだろう」
徐 盛「それは……分の悪い賭けですぞ」
周 瑜「確かにそうかもしれん。
    しかし諦めるわけにもいかぬ。……前進せよ!」

周瑜隊は三部隊からの攻撃を受けている
孫権隊の横を通り、桂陽へ向かおうとする。
一見、主君を見捨てるような行為にも見えるが、
この戦いに勝つには、それが最善の策である。

だが、その行く手を阻む部隊があった。

  黄祖黄祖   孟達孟達

黄 祖「行かせないもーん」
孟 達「……他に言いようがないのですか」

それは、黄祖の隊だった。
孫権隊を攻撃していたが、周瑜隊の接近を知り
その行く手を阻んだのである。

桂陽

周 瑜「また黄祖かっ!?
    江夏の時といい、今回といい、
    何度我らの邪魔をすれば気が済むのか!」
黄 祖「おう、周のボンボンか!
    そりゃ、こっちの台詞じゃい!
    何度も何度もワシのいる所に攻め込みおって。
    全く嫌になってくるわい!」
周 瑜「くっ、全く口の減らん老人だ……。
    敵兵はこちらの半分以下だ! 突き抜けよ!」
黄 祖「ふん、士気の差を見せてやるわい!
    孟達、鄒興! やーっておしまい!」

孟 達「……偉そうなことを言ったわりに、
    結局は人任せなのか」
鄒 興「まあまあ、活躍の場をもらったと思えば」
孟 達「ま、目立つ機会があるのは良いこと。
    さあ、奮戦せよ! 敵軍を蹴散らせ!」
鄒 興「こちらも奮戦だ! 行けっ!」

新参の孟達と旧韓玄軍配下の鄒興は、
連携して奮戦、周瑜隊の進行を止める。

周 瑜「桂陽には将なしと思っていたが……。
    なかなかやってくれるものだ!」
黄 祖「さらにオマケじゃいっ!」
周 瑜「おおっ……!?」

さらに黄祖勢が弩を連射し、多くの呉兵が倒れる。
兵力差などものともしない黄祖隊の活躍。
さらに、衝撃の報が周瑜にもたらされる。

伝 令「孫権閣下の隊が壊滅しましたっ!」
周 瑜「なっ、なんと、早すぎる!
    先ほどまで万の兵がいたであろう!?
    一体、どうしたことかっ!?」

    ☆☆☆

孫権隊は、新たに参戦した霍峻隊からも攻撃を受け、
兵の損耗はかなりのものになっていた。
それでもなお、孫権は諦めずに戦っていた。

  霍峻霍峻   馬良馬良

霍 峻「……流石は孫権というべきでしょうか。
    ここに至ってもまだ、兵をまとめ
    前に進もうとしているその意気……見事」
馬 良「ですが、兵は皆疲れ、剣の振りも鈍い。
    ここは私にお任せを」
霍 峻「何か策でも?」
馬 良「敵兵は我が軍に攻め立てられ、
    食事も満足に取れていないことでしょう。
    そこを突きます」
霍 峻「食事……?」
馬 良「ふふ、兵法は心を攻めるを上策とす、です」

馬良は温めていた計を実行に移す。

大きな鍋を用意し、火にかけ、そこに肉や野菜、
干し海老、そして荊南名物のビーフンを入れる。
力自慢の兵が大きな棒でそれをかき回し、
じっくり火を通すと、いい匂いがたち込めてきた。

  桂陽

霍 峻「これは……焼きビーフンですか?」
馬 良「そうです、いい匂いでしょう。
    これが風に運ばれて、敵部隊の方へ……」

南風が吹き、焼きビーフンの匂いは孫権隊を包む。
腹をへらした呉兵はその匂いを嗅いで、
大いに腹を鳴らす。
そしてそれは、兵を率いる将たちも同様であった。

  程普程普   黄蓋黄蓋

黄 蓋「(ぐー)なんと美味そうな匂いじゃろう」
程 普「(ぐー)敵軍の食事の匂いだろうか……」

  韓当韓当   周泰周泰

韓 当「(ぐー)胃がしめつけられるような感じだな」
周 泰「(ぐー)これでは傷に障りますな。
    腹がキューと締めつけられてイテテ」

   孫権孫権

孫 権「(ぐー)お前ら! 戦いに集中せんかっ!」
韓 当「腹を鳴らしながら言われても……」

匂いだけで呉兵の空腹感は増大していく。
さらにそこへ、金旋軍の兵たちの声が……。

ジョン「ヘイ、知ってるかマイク!?
    我ら金旋軍では今、孫権軍兵士の投降を
    大募集してるんだってさ!」
マイク「ええっ、本当かいジョン!?」
ジョン「ああ本当さ!
    しかも命も身分も保証されるってさ!」
マイク「そりゃあいい話だね。負けてからじゃ
    殺されることもあるんだからねえ」
ジョン「しかも! 今回はそれだけじゃないんだぜ!
    ものすごい大サービスが付くんだ!」
マイク「な、何だいその大サービスって!?」
ジョン「実はここだけの話、投降兵には
    『焼きビーフン食べ放題』の権利が
    もれなく付いてくるのさ!」
マイク「ワオ! そりゃすごいや!
    このいい匂いはそれだったんだね!」
ジョン「ああ、おかわり自由、ビールもつくそうだ!
    こりゃあ、全く気前のいい話だよ!
    こんなチャンスは滅多にないぜ!」
マイク「ジョン、僕も投降していいかな?」
ジョン「HAHAHA、何言ってるんだ、マイク?
    君はもう金旋軍の兵だろう?
    これは呉の兵士への話なのさ!」
マイク「オウジーザス! 呉の兵が羨ましいよ!」
ジョン「さあ、投降するなら今しかないぜ!
    受付は南の霍峻隊陣地まで!」
マイク「本当にいい匂いだよ!
    焼きビーフン、僕も食べたいよう!」

出演は元山越軍、現金旋軍兵士のお二人でした。

これを聞き、数千単位の呉兵が霍峻隊に寝返る。
それは孫権隊にとってかなりの打撃であり、
対する霍峻隊は投降兵を加え戦力を増した。

霍 峻「……心を攻めるというより、
    腹を攻めている感じの計ですね」
馬 良「効果はてきめんだったようですね。
    さあ、敵部隊は陣を乱していますよ」
霍 峻「馮習! この機に乗じ、攻撃を!」
馮 習「承知!」

孫権隊の陣の乱れを突き、霍峻隊の馮習が奮戦。
孫権隊は、壊滅的な打撃を受けた。

孫 権「(ぐー)お、おのれ……」
程 普「(ぐー)完全にしてやられましたな。
    もはや、これまでか……」
孫 権「く、悔しい……悔し過ぎるっ!」
程 普「ご主君……。
    今、負けを悔やまれてもしょうが……」
孫 権「わしも降れるものなら降りたいわ!
    わしもビーフン食べたい〜っ!
程 普「そっちですかっ」

主従がそんな漫才をしている間に、
戦いの決着がつこうとしていた。

   髭髯龍髭髯龍

髭髯龍「焼きビーフン、食べられなくて
     残・念・賞ーッ!

とどめは髭髯龍。
突進攻撃で孫権隊を完膚なきまでに叩き、
部隊を殲滅させてしまった。

孫権は焼きビーフンを食べられないことを悔やみ、
程普や周泰らとともに柴桑へ逃げていった。

    ☆☆☆

桂陽

   周瑜周瑜

周 瑜「これまで、か」

孫権隊が敗れ、もはや残るは周瑜隊のみ。
そこへ、黄祖隊、霍峻隊、髭髯龍隊の
一斉攻撃が始まった。
いかに名将周瑜といえど、これを
ひっくり返すことは不可能である。

周 瑜「兵力では確実に我々が優っていた。
    将の格でもこちらが上であった。
    しかし、それでも負けるか」

周瑜隊に襲いかかる金旋軍。
1月の頭には10万もいた孫権の軍団が、
2月になる今、ほぼ壊滅しようとしている。

周 瑜「全ては侮り、か。
    敵を侮り、戦略を誤ったこと。
    それがこの負けであるのか」

  髭髯豹髭髯豹  髭髯鳳髭髯鳳

髭髯豹「オラオラオラーッ!!
    いい加減諦めんかーっ!!」
髭髯鳳「我ら最強ヒゲ軍団に敵うと思うてかっ!」

髭髯龍隊、ヒゲ2名の突進。
これが完全に決着をつけた。

周 瑜「そして、あのヒゲ……。
    彼らの武勇も侮れぬものがある。
    覚えておくぞ、ヒゲ軍団、そして黄祖よ。
    次はこうはいかぬぞっ!」

2月に入り、最後の周瑜隊も壊滅。
桂陽に向かった孫権軍は全て敗れ去った。

桂陽の金旋軍の勝利である。

  黄祖黄祖   孟達孟達

黄 祖「ほれ、見たことか! ワシの勝利じゃ!」
孟 達「あの……この勝利の主な要因は、
    霍峻将軍や髭髯軍団の働きによる所が多く、
    将軍の働きはそれほどでも……」
黄 祖「フワハハハ! バカメ!
孟 達「ば、バカとはなんですか!」
黄 祖「この勝利は髭の神の御加護があればこそ!
    皆が力を発揮したのは確かじゃが、
    それも髭の神の祝福があったからじゃ!」
孟 達「そ、そうなのですか」
黄 祖「そして髭の神のお陰となれば……。
    髭の神の化身であるワシのお陰!
    つまりはワシの勝利!
孟 達「……もういいです。
    そういうことにしといてください」
黄 祖「なんじゃその投げやりな言い方は!」

   霍峻霍峻

霍 峻「黄祖どの!」
黄 祖「おう、霍峻。どーした?」
霍 峻「まだ終わってはいませんよ。
    山越軍がまだ残っています」
黄 祖「おっと、そうじゃったな。
    では、ちゃっちゃと倒すとするか!」
霍 峻「全軍! 南へ転進!
    山越軍を迎え撃つのだ!」

 『オオーッ』

部隊は多少、兵は減らしているものの、
まだまだ士気は高い。
桂陽を守り、完全なる勝利を目指すため、
彼らは山越軍を迎え撃つのだった。

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