○ 第九十二章 「壁になれ!」 ○ 
218年1月
桂陽

  黄祖黄祖   孟達孟達

黄 祖「全軍かかれい!」
孟 達「時間を掛けるな! 一気に叩け!」

黄祖の号令で、隊は魯粛隊に襲いかかった。
また、髭髯龍隊も同時に攻撃を仕掛ける。

  髭髯龍髭髯龍  髭髯豹髭髯豹

髭髯龍「さあ、我らの力を見せる時ぞっ!
   騎馬隊! 押し潰せ!」
髭髯豹「うおおっ! ヒゲパワー全開じゃあっ!」

魯粛隊はその二方向からの攻撃に晒され、
進軍を阻まれてしまった。

  魯粛魯粛   朱然朱然

魯 粛「二部隊を相手にしては、流石に不利か」
朱 然「敵軍の勢い、侮れぬものがあります」
魯 粛「我が隊だけでは敵軍の半分でしかないしな。
    せめて、殿の隊が来るまでは粘ってみせよ!
    殿の隊がくれば、また戦況が変わる!」

しかし魯粛隊も数は減らすものの、
大崩れとまでは行かずに粘りを見せる。
攻城兵器中心の部隊だとはいえ、
陸戦の天才(※)と言われた魯粛である。
このくらいの粘りは見せて当然であろうか。

(※ 魯粛には文官や外交官という印象があるが、
 元々軍事的な才は飛び抜けていたらしい。
 劉備軍と衝突した際には、彼がいると聞いた関羽が
 進軍をやめるほど一目置かれていたようである。
 周瑜の後継として認められたほどの人物なのだから、
 その才も推して知るべし、というところか)

黄 祖「んがああああっ! しぶといのう!
    こちらは野戦陣形、しかも倍の兵力だぞ!
    それでもまだ潰せぬのかっ!」
孟 達「やはり将の差でしょうか……」
黄 祖「じゃかまっしーわ!」

黄祖の腹積もりとしては、
孫権隊がやってくる前に一気に魯粛隊を叩き、
その勢いで孫権隊を迎え撃つつもりだった。

だが、魯粛隊が粘ることで時間が過ぎていき、
倒しきる前に孫権隊が到着してしまう。

   孫権孫権

孫 権「魯粛め、頑張っておるな。
    よし! 全軍、一気に押し進め!
    そのまま奴らごと城まで押して行けい!」

孫権の隊4万5千が一気に軍を押し進める。
その兵の数を前に、黄祖・髭髯龍隊は魯粛隊を
相手にしている余裕はなくなり、矛先を全て
孫権隊に向けざるを得なかった。

孟 達「将軍っ! 魯粛隊を自由にしていけません!」
黄 祖「そうは言うがな、孟達!
    髭髯龍隊のみで孫権隊は抑えきれん!
    あれを止めるには、それなりの兵数が
    必要なんじゃっ!」
孟 達「ですが、このままでは桂陽城が……!」
黄 祖「ええい、信じよ! 信じるのじゃ!」
孟 達「何をです!?」
黄 祖「髭の神をじゃっ!」
孟 達「そ、そんなもの信じられませんっ!」

孟達の危惧通り、攻撃が止み自由を取り戻した
魯粛隊は、部隊の進路を桂陽へ向けた。

魯 粛「今だ! 殿の隊に掛かりきりになった今、
    我らの進撃を止める者はいないっ!
    桂陽城へ進路を取れいっ!」
朱 然「南へ向け、進軍だ!」

数は半数以下にまで減った魯粛隊だが、
それでも攻城戦になればかなりの脅威と
なるのは間違いなかった。

    ☆☆☆

魯粛隊が城へ向かってくることは、
すぐに物見から桂陽城に届けられる。
すでに城には馬良が戻っており、
その報を憂いた顔で聞いていた。

   馬良馬良

馬 良「魯粛隊に取り付かれると厄介……。
    これは外で迎撃すべきだが、しかしながら
    肝心の霍峻将軍が戻られていないとは」

他の馮習・張南らは先に戻っていたが、
一番大将としてアテになる当の霍峻は、
未だ桂陽には戻っていなかった。

馬 良「ううむ……ダメだ、間に合わぬ。
    霍峻将軍抜きで戦わねばならぬか」
馮 習「では、部隊の指揮はこの私、
    風習の違いなど物ともせぬ馮習が!」
張 南「なんの、長男張南にこそお任せを!」
馬 良「……二人ともそこそこの能力はあるものの、
    やはり大将としては頼りないし……」
馮 習「失礼ですな!
    黄祖将軍よりも劣るとおっしゃるか!」
張 南「そうです!
    アレが良くて我らがダメな理由は!?」
馬 良「う、うーむ……。顔でしょうか」
二 人「顔!?」
馬 良「二人とも顔出ししてないあたりが、
    やはりまだまだなのかと……」
馮 習「く、くうっ……痛いところを!」
張 南「確かに顔が出なくては、
    ただのその他大勢と同じということ……。
    辛いところではある」
馮 習「早く我らも顔出しでびゅーしたいものだ」
張 南「しかし、その時は来るのだろうか……」
馬 良「さて、部隊を出さないわけにも行きませんし。
    やはりどちらかを大将とするしかありませんか。
    それでは、出撃部隊の大将にするのは……」
張 南「馬良どのっ!」
馬 良「な、なんですか? いきなり大声で」
張 南「馬騰の息子。馬鉄は三男、馬休は次男。
    では、馬超はっ!?」
馬 良「え……? えーと、長子ですよね」
張 南「なっ、なぜチョウナンと言ってくれぬか!?」
馮 習「ば、馬鹿め、ささ策に溺れおって。
    そのようなことで自分の名を呼ばせようなど、
    かかか片腹痛いわっ!」
張 南「その割には動揺しておられるが?」
馮 習「ぐっ……馬良どの。
    そういえば、この城の庭園は見事ですな」
馬 良「は? 何ですか、今度は」
馮 習「こういった味わいのある庭園……。
    ××に富んだ庭園、と評するものだが、
    さて、この××に入る言葉はっ!?」
馬 良「……えーと、変化?」
馮 習「な、何言っとりますか!
    ここの庭園の評に適すのは『風趣』!
    伸ばしてフウシュウならもっと良!
    白眉のくせにそんなのも知らんのですか!」
馬 良「は、白眉のくせにって……。
    意図した言葉が出て来なかったくらいで
    そういうこと言われても」
張 南「そうだそうだ。見苦しいぞ馮習どの」
馮 習「お前が先にやり始めたのだろう!
    つい先程のことも忘れたか、この鳥頭めっ」
張 南「むっ、鳥頭ですと……?
    喧嘩を売っておられるのですか?」
馮 習「ああん? 逆切れか?」
張 南「そちらこそ」
馮 習「よおし、それじゃこうしよう。
    どちらがより大将に相応しいのか、
    馬良どのの目の前で直に決めればよい」
張 南「ふっ、力ずくで決めるのですか。
    これは面白いっ!」
馮 習「それでは、アッガイファイト……
張 南レディ、ゴー!

ズゴゴゴゴゴゴ……

馮習・張南は、それぞれのアッガイにて
大将を決めるための格闘を始めた。

馬 良「全く、両者とも性格が猪突ですな。
    こんな状態では、どちらも大将にはできぬが」

二人のファイトは甲乙着け難い好勝負だったが、
馬良はそんなダサい戦いには目もくれなかった。

馬 良「ここぞという時に冷静な判断が出来る将。
    今はそういう将が必要なのだが……」
???「それは、私じゃダメですかね」

   霍峻霍峻

馬 良「か、霍峻将軍!」
霍 峻「いやあ、遅れて申し訳ない。
    増援の兵はしっかり連れてきましたが」
馬 良「いえ、間に合って良かった。
    早速ですが、出撃をお願いします」
霍 峻「あ、私でいいのですね」
馬 良「ええ、かまいません。
    むしろ、これは貴方にしか任せられません」
霍 峻「では、すぐ準備を。
    馬良どのも同行お願いします」
馬 良「わかりました」
霍 峻「ほら、馮習と張南も遊んでないで!
    出撃準備を急いでください!」

馮 習「わ、我らのファイトが『遊んでる』ですと?」
張 南「くっ、我らのアッガイさばきも
    まだまだだということかっ!」
馬 良「多分違うと思いますが……」
張 南「こうなれば武で霍峻将軍に認めてもらう!
    出撃部隊の先鋒には是非この私を!」
馮 習「いやいや、この馮習を!」
霍 峻「いえ、二人には両翼を固めてもらいます。
    先鋒には彼を使いましょう」
馬 良「彼?」
霍 峻「我が軍の勇将のご子息ですよ」
馬 良「あ、そういえばいましたね。
    地味で目立ってませんけど」
霍 峻「そろそろ見せ場があってもよいでしょう」

魯粛隊が城に迫る中、
霍峻は3万5千の部隊を編成した。

これで桂陽城には兵は1万も残らず、
孫権軍に突破されれば、あるいは山越軍が
到着すれば、たちまち城は危機に陥るであろう。

馬 良「それでもなお、部隊の兵を最大に?」
霍 峻「ええ、短期で決めるにはこの方がいいです。
    それに、孫権軍は絶対に通しません」
馬 良「自信満々ですね」
霍 峻「ええ、私は攻めるだけの戦いより、
    こういう戦いの方が好みですから……」

準備は終えたが、まだ霍峻隊は出撃しない。
そうこうしているうちに、魯粛隊が姿を見せた。

馮 習「霍峻どの! 魯粛隊を視認しました!」
張 南「早く、出撃命令を!」
霍 峻「まだです。もう少し引き付けます」
馬 良「しかし、敵をあまり近付けると、
    井闌からの攻撃を受けるのでは……」
霍 峻「ギリギリのまで引きつけて迎え撃つのが、
    迎撃戦のコツなのです。
    あまり早くから出ていると、移動している間に
    計略にかかったりしますからね」
張 南「んがー! んなこと言ってる間に、
    敵が射程圏内に入りますよーっ!」
霍 峻「よし……そろそろ行きますか。
    開門! 我が隊はこれより出撃する!」

ぎぎいっと城門が開き、部隊の前の視界が開ける。
すると、向こうのほうから魯粛隊が向かってくるのを
見ることができた。

馬 良「敵部隊、だいぶ近付いてきてます」
霍 峻「心配はいりません。
    彼らは長い行軍で疲れ士気を下げており、
    また黄祖隊との戦闘で兵を減らしています」
馬 良「そうですが……」
霍 峻「各員! これより我々は壁となる!
    敵の誰一人として、城に触らせるなっ!」
一 同「オオッ!」

掛け声を一斉に上げ、霍峻隊は城を出た。
そして目の前の魯粛隊へと向かっていく……。

桂陽

    ☆☆☆

孫権隊を押し留めようとする黄祖・髭髯龍隊。
それをくぐり抜け、桂陽城へ向かいたい孫権隊。

その両軍の気合が、互いの先鋒に立つ将を
ぶつかり合わせた。

  髭髯鳳髭髯鳳  周泰周泰

髭髯鳳「悩み無用、髭はまた生えてくる!
    我は髭軍団の髭髯鳳なり!
    この槍を受けられる者はいるか!」
周 泰「なんの!
    傷だらけのローラ、周泰見参!
    汝、我に傷を刻むことができるか!」

前に進み出てそれぞれ名乗りを上げ、二人は対峙。
そして、槍を交わし合い、戦いは始まる。

両軍の誇る勇将同士の勝負である。
周りの兵たちは、固唾を飲んで見守った。

髭髯鳳:武力96 VS 周泰:武力93

一騎討ち

髭髯鳳「いくぞっ! ぬりゃあああっ!」
周 泰「なんのっ! でやあああっ!」

 ギィンッ!!

周 泰「私は負けられぬ! この傷に賭けて!」
髭髯鳳「ほう、いい傷だ。
    だが、貴殿にはまだ足りないものがある」
周 泰「なにっ、それはなんだ!?」
髭髯鳳「それは……ヒゲだ!
    ヒゲがあってこそ貫禄というものは生まれる!
    しかし、貴殿にはそれがないっ!」
周 泰「ふっ、そんなものいらんわっ!」
髭髯鳳「な、なにっ! いらぬだと!」
周 泰「ヒゲなどただの飾りであるっ!
    それがわからんのかっ!」
髭髯鳳「な、何を言うっ!
    それを言うなら貴殿の傷も一緒であろう!」
周 泰「違うっ! 傷は男の勲章である!」
髭髯鳳「ならばヒゲも勲章である!」
周 泰「その汚いヒゲと一緒にするなっ!」
髭髯鳳「なんだとう!?」

  韓当韓当   程普程普

韓 当「どうも口喧嘩の様相を呈してきたな」
程 普「ヒゲもいいものなのだがのう」

髭髯鳳と周泰。
両者の武は甲乙着けがたく、勝負はほぼ互角。

髭髯鳳「くっ、なかなかやるな。
    こうなれば、奥の手を使うしかないか」
周 泰「奥の手だと?」
髭髯鳳「そうだ! 食らえ、髭針!

髭髯鳳は自分の髭の一部を掴むと、ブチブチと
十数本ほど抜き、それを周泰に投げつけた。

周 泰「うわ、きたなっ」
髭髯鳳汚い言うな!

周泰はそれをかわそうとするが、
数本がサクサクと周泰の身体に突き刺さる。

周 泰「くっ……髭が針となるとは、驚いたぞ。
    だが、この程度の針、痛くも痒くもない!」
髭髯鳳「果たして、そうかな……? フフフ」
周 泰「なにっ!? うっ……こ、これはっ!?」
髭髯鳳「貴殿は今ほど、『痛くも痒くもない』
    そう言ったが……。しかし!
    今、貴殿は猛烈に『痒い』はず!」
周 泰うおおおっ! か、痒いっ!
    掻き毟りたいほどに痒いっ!」
髭髯鳳「そうだ! この髭針が突き刺さった者は、
    極度の痒みに襲われるのだっ!」

  孫権孫権   黄蓋黄蓋

孫 権「な、なんと汚い奴!」
黄 蓋「そうでしょうか……。
    一応、自分の身体の一部を使った攻撃です。
    それほど卑怯とは言えないのでは……」
孫 権「いや、卑怯だと言ったつもりはないが?」
黄 蓋「は? しかし今、『汚い』と……」
孫 権「そうだ!
    清潔にしておれば髭で痒みなど出ぬ!
    つまり奴は汚いということだ!」

周 泰「ぬううう……。
    お主、以前に風呂に入ったのはいつだ?」
髭髯鳳「ふっ……。覚えておらぬ」
周 泰「くっ……ダメだ! 我慢ならん!」

周泰は片手を空け、髭の刺さった所を掻き毟る。
しかし、それを髭髯鳳は見逃さなかった。

髭髯鳳「隙は見逃さぬっ! でえええいっ!」

痒みに気を奪われた周泰はそれをかわせず、
一撃を受け馬上から落ちてしまう。
しかしその攻撃では、傷は負ったものの
命に関わるほどではなかった。

周 泰「くっ……。49個目の傷が……」
髭髯鳳「今回はどうしても負けられぬ戦いであった。
    だから、髭針を使わざるをえなかったのだ。
    いずれ、正々堂々と勝負していただきたい」
周 泰「うぐっ……。その時はどうか、
    風呂は入っておいてくれ……」
髭髯鳳「努力しよう」

一騎討ちは、髭髯鳳が勝利した。
微妙な決着ではあったが、勝ちは勝ち。
そして、負けは負け。
髭髯龍隊の士気は大いに盛り上がり、
また孫権隊の士気は低下した。

孫 権「むむっ……。やられたか。
    しかしまだ兵数は互角である!
    負けるな、押せ! 押すのだ!」

  髭髯龍髭髯龍  髭髯豹髭髯豹

髭髯龍「よし、鳳の勝利で大分有利となったな」
髭髯豹「おし! このまま一気に突っ込もう!」
???「ふ、これだから力馬鹿は……」
髭髯豹「ああーん!?」

   楊儀楊儀

楊 儀「力押しばかりでは勝てぬ。
    ここはもっと効率よく戦うべし」
髭髯龍「楊儀どのか。しかし士気の高い今、
    正面から戦うことが悪いとは思えぬが」
髭髯豹「そうだそうだ!」
楊 儀「ふっ、今は敵もやられまいとして
    必死に抗戦してくるはず。
    結果、味方の被害も増えてしまうであろう。
    ……ここは私に任せてもらえぬかな」
髭髯龍「……任せる?」
楊 儀「左様。なに、貴殿はただ孫権軍に
    押し負けたように後退してくれればよい。
    さすれば、万の敵を倒して御覧にいれよう」
髭髯豹「何言ってんだテメエ!? ここに来て何で
    後退しなくちゃならんのだ!」
楊 儀「貴公には言っていない。
    私は司令官殿に提案しているのだ」
髭髯豹「あ、あんだとコンチクショ〜!?
    ヒゲもないくせに〜っ!」
楊 儀「ふ、またヒゲのことか。
    ヒゲ以外に君の誇れるものはないのか?」
髭髯豹「な、何だとう!?」
髭髯龍「よせ、豹。黄祖将軍も言っていただろう。
    力を合わせねば勝てぬのだ」
髭髯豹「ぐっ……」
髭髯龍「で……後退すればよいのか?」
楊 儀「そうだ、その後は任せていただきたい。
    しかし、やむなく後退していったと
    敵に思わせる必要はある。
    そこは気をつけて欲しいが」
髭髯龍「わかった。貴殿の策に乗ろう」
髭髯豹「龍兄! こんなヒゲのない奴の
    言うことなど……」
髭髯龍「くどいぞ、豹!
    黄祖将軍の言葉を思い出せ!」
髭髯豹「くっ……。確かに地肌は大切だ」
髭髯龍「わかればよい……。
    よし! 各兵長に、交戦しつつゆるやかに
    後退させるように伝えよ!」

髭髯龍隊は、孫権に押される格好で
ずるずると後退していく。

その様子を見て、孫権隊を脇から攻めていた
黄祖は舌打ちした。

  黄祖黄祖   孟達孟達

黄 祖「ちっ! なにやっとんのじゃ、あやつら!?
    押し返すこともできんのかっ!?」
孟 達「いや……あれは楊儀どのの策でしょう」
黄 祖「策?」
孟 達「後ろの地形を利用しようとしている様子。
    決して力負けしているわけではありません」
黄 祖「ふむ……では、
    ワシらはどうすりゃいいんじゃ?」
孟 達「我が隊は攻撃を続けましょう。
    彼らの邪魔にはならないと思います」
黄 祖「よーし! それでは弩を連射じゃっ!」

孫権隊は黄祖隊に押され、その分が髭髯龍隊の方に
押し出される格好で進んでいく。

桂陽

  孫権孫権   程普程普

孫 権「よし、何はともあれ先には進んでいるぞ」
程 普「しかし、何か変ですな。
    一騎討ちで勝ち、士気も高いはずの部隊が
    こうも簡単に押されていくなど……」
孫 権「武はあっても、兵を動かす能力は
    大したことないのであろう!
    さあ、進め進めっ!」

孫権隊は引いていく髭髯龍隊を追い、
やがて山に挟まれた隘路に入っていった。
その上の見渡せる場所にて、楊儀は待っていた。

楊 儀「フフフ……来よる来よる!
    我が名を上げさしめる為に来ている!
    さあ、孫権軍よ……死ねっ!
    我が名の為に死ぬがよいわっ!」
 兵 「準備よし! いつでも!」
楊 儀「うむ! 罠を発動させよ!
    奴らの頭に岩の雨を降らせてやれい!」

楊儀の号令で、集めておいた岩が一斉に落とされた。

孫 権「ぬうっ、岩が!?
    天気予報では岩が降るなど聞いておらぬぞ!」
程 普「罠です! 敵の罠に誘い込まれたようです!」
孫 権「な、なにっ! 罠だと!?
    それは許せんわなーっ!
程 普「非常時に何言っとるんですか!」

孫権隊は、楊儀の岩罠で兵1万を失った。
しかし部隊はまだまだ戦える状態であり、
また、後方には周瑜隊が健在である。

戦いの趨勢は未だ決まってはいないのだ。


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