○ 第七十八章 「時は満ちて子は成りて」 ○ 
217年1月

洛陽

217年1月。
新年を迎えた洛陽は、いつにも増して賑わっていた。

洛陽に金旋軍を迎えてから、初めての正月である。
その上、朝廷は金旋を王に任じたことで、
洛陽の町は御祝いムード一色となった。
皆、酒に酔い、新年を、そして金旋の楚王就任を祝った。

  金旋金旋   司馬懿司馬懿

金 旋「無事に新年を迎え、また王にまで任じられた。
    いや、実にめでたいな」
司馬懿「しかし、同時に曹操が魏公に、
    そして孫権が大司馬に任じられております。
    朝廷のこの与え方は少々不愉快さを覚えます」
金 旋「そう言うな。俺ばかり上に上げては、
    他から不満が出るだろうと配慮したのだろう。
    あまり悪い方ばかりに取るな」
司馬懿「閣下がそれで納得されているなら、
    私は別に構いませんが……」

金旋の王就任のほかに、朝廷は曹操を魏公に、
孫権を大司馬に任じていた。
これは、金旋の言ったように他勢力に配慮したためか。
それとも、司馬懿の考えているように、
金旋が専横を始めた時のことを考えてのことか……。
その真実は、金旋には判らない。
いや、知る必要はなかった。
彼は、今まで通り統一の戦いを進めるだけである。

金 旋「それより、これから忙しくなる。
    司馬懿も、よろしく頼むぞ」
司馬懿「は、閣下の桂陽視察の件ですね。
    留守はお任せくださいますよう」
金 旋「すまんな、難しい役目を押し付けて」
司馬懿「構いません。
    閣下のご信頼の証と受け取っております」
金 旋「表向きは対山越防衛線の視察だが、
    ちょっとやることがあってな……」
司馬懿「秘密は厳守致します。ご心配なく。
    ……頓丘の時も、先にご相談くだされば、
    私ももう少しやりようがあったのですけど」
金 旋「すまん、あの時は時間がなかったんだ……」

金旋は対山越用の防衛線を確認するため、
桂陽に向かい視察を行うことにしていた。
だがそれは表向きのことで、本当は管輅の言っていた
北斗・南斗に会うためであった。
もちろん、それは誰にも口外していない。
金玉昼や司馬懿にも、別な事情があるとは言ったが、
それが何なのかまでは説明はしていなかった。

金 旋「しかし、出来た部下を持って幸せだな、俺は。
    普通こんなに物分りのいい奴はいないぞ」
司馬懿「あら、そうとも限りませんよ」
金 旋「なぬ?」
司馬懿「閣下の弱みを握って、
    後で何かやらかすつもりかもしれませんよ」
金 旋「はっはっは、そうか。
    ならば、何をやらかすのか楽しみにしてるぞ」
司馬懿「はい。いずれお目に掛けましょう……。
    おや、軍師殿がお見えですよ」
金 旋「お、玉か。そろそろ出立の準備を始……」

   金玉昼金玉昼
ズン ズン ズン ズン ズン

金 旋「……玉昼さん?」
金玉昼「ちちうえの、バカーーーー!

パーン!パーン!

司馬懿「あら、見事な往復ビンタ」
金 旋「……い、一体何なんだ!
    いきなり往復ビンタ食らう覚えはないぞ!」
金玉昼「この嘘つき!」
金 旋「な、ななな何だ! なな何が嘘なんだ!?」
司馬懿「おもいきり動揺されてますが?」
金 旋「茶化すな司馬懿!
    親娘関係が危険でピンチなんだ!
    な、何なんだよ一体!?」
金玉昼「広間に行けば全部わかりまひる!
    このウジ虫! ダニ! ゲジゲジ!
    偽善者! 浮気者ーっ!」

ズダ ダダ ダダ ダダ……

金 旋「げ、ゲジゲジって……」
司馬懿「泣きながら去って行ってしまいましたが。
    どうなさいますか?」
金 旋「とことん冷静だなお前は。
    とりあえず『広間に行けばわかる』って
    言ってたし、行ってみるとしよう……」
司馬懿「わかりました……ぷ」
金 旋「……何を笑ってる?」
司馬懿「いえ、何でもありません。
    ただ頬の紅葉模様が気になっただけです」
金 旋「も、紅葉……手形か!?
    それでは恥ずかしくて人前に出れんぞ。
    司馬懿、どうにかこの手形を消せないか!?」
司馬懿「はあ、できないこともありませんが。
    しかし、よろしいのですか?」
金 旋「構わん、早急に頼む」
司馬懿「では、歯を食いしばってください。
    一気にやりますので」
金 旋「へ? 歯を?」
司馬懿「では、行きます!」

スパーン!スパーン!
スパーン!スパーン!


司馬懿の連続ビンタは、手形がなくなり
頬全体が赤く腫れ上がるまで続いた。

    ☆☆☆

   魏延魏延

魏 延「と、殿!? その頬は一体!?」
金 旋「何でもない。気にするな」
魏 延「は、はあ……。
    それよりも、広間にとある方が来てまして」
金 旋「とある方?」
魏 延「なんでも『私は金旋の子である』、
    と言っておりまして」
金 旋「はあ!? 俺の子だぁ!?」
魏 延「広間にて待たせておりますので、
    とりあえず面会をお願い致します」
金 旋「お、おう……」

金旋は、早足で広間に入っていった。
そこには、年の頃は15歳くらいの少年が
ひざまずき、金旋を待っていた。

   

金 旋「俺が金旋だ。俺の子を名乗るのはお前か?」
???「はい、私です」
金 旋「にわかには信じられんな。
    俺には妻は一人だけだったし、
    子もその妻との間に生まれた二人だけだ」
???「母は、身篭ったことを伝えなかった、
    と言っておりました。
    父上が知らずにいても無理はありません」
金 旋「……母の名は? いつ俺と会った?」
???「母の名は花梨と申します。
    建安八年(203年)に父上と出会い、
    一度だけお情けを頂いたと申しておりました」
金 旋「……あー、花梨か。
    思い出した。あの時の娘か……」

金旋は、当時出会った娘の面影を思い出していた。
少しすました雰囲気で、どこか近寄りがたいが、
打ち解けると実に表情がよく変わる娘であった。

金旋はとある事情から彼女を保護していたのだが、
その間に情が移ってしまい、ついお手付きを
してしまったのである。

金 旋「詳しくは外伝2を待つように」
???「がいでん?」
金 旋「あ、いや、こっちの話だ。
    そうか……あの時に身篭ったのか」
???「詳しくは話してくれませんでしたが、
    父上に迷惑が掛かるから黙っていた、と」
金 旋「んな、迷惑など……。
    そんなことは全くなかったのに。
    そうか、花梨の子だったのか。
    そういえば、名を聞いてなかったな。
    お前の名は?」
???「金偉と申します。
    ……勝手に金の姓を名乗っております。
    申し訳ありません」

金偉は深々と頭を下げた。

金 旋「ああ、それは別に構わん。
    その後、花梨はどうしているのだ?
    今も元気でいるのか?」
金 偉「母は、洛陽に移り住み、私を産みましたが、
    建安十六年(211年)に他界しました。
    持病が悪化して、食事も取れなくなり……」
金 旋「そうか、亡くなっていたのか。
    病を持っていたのだったな……。
    残念なことだ」
金 偉「はい。母も、父上の上洛を待っておりました。
    そして父上にもう一度お会いして、
    ぜひ話がしたいと言っておりましたが」
金 旋「そうか……。後で墓参りをさせてもらおう」
金 偉「はい。母も喜ぶことでしょう」
金 旋「その後は、お前はどうしていたんだ?」
金 偉「交友のあった韋晃という人物に、
    しばらく世話になっておりました」
金 旋「……韋晃? 最近、どこかで聞いた名だな。
    なんだったか……えーと」
金 偉「この年末に陳留で反乱を目論見ましたが、
    失敗して殺された人物です」
金 旋「ああ、それそれ。……ん? 
    じゃ、あの反乱に荷担してたのか?」
金 偉「はい。韋晃どのに協力しておりました。
    陳留での蜂起が成った際には、父上に援軍を
    お願いする役を負っていたのですが……」
金 旋「しかし反乱は失敗した、と。
    そうか、だから俺のところに来たんだな」
金 偉「はい。もはや帰るところが無くなりました。
    父上、いえ、楚公に召し抱えていただきたく、
    こうして参った次第です」
金 旋「そう畏まらんでいい。
    『窮鳥懐に入れば猟師これを撃たず』と言う。
    ましてや、自分の血を分けた子を、
    粗末にするわけがないだろう」
金 偉「はいっ、ありがとうございます」
金 旋「お前を将として、取り立てることに……」

司馬懿「それは少々、お待ちください」
金 旋「……司馬懿? どうした」
司馬懿「反乱に加わるような方が閣下の子である、と
    世間に知れますと、閣下の名に傷が付きます。
    金偉どのを召し抱えるのはお辞めください」
金 旋「あのなぁ……お前、自分の子なんだぞ?
    それを保護して何が悪い」
司馬懿「私が反対するのは、謀反人となっている
    金偉どのを召し抱えることです。
    閣下の御子が成人し軍に加わること自体は、
    全く喜ばしいことと存じます」
金 旋「は? そりゃどういう……」
金 偉「わかりました、司馬懿どの。
    貴女は、偉の名を捨てよと言っているのですね」
司馬懿「……ふふふ、賢い方ですね。
    そう、金偉として生きてきた経歴を捨て、
    新しい名を持った『金旋の子』として、
    生まれ変わって欲しいのです」
金 旋「……あれだな。郭淮がカクワイダーって
    言ってるのと同じようなもんか」
司馬懿「まあ、あれは全く以って意味がありませんけれども。
    とにかく、新しい名をつけて戴きたいのです」
金 旋「ふむ。金偉もそれでいいか?」
金 偉「構いません。
    父上に新しき名をつけていただければ、
    母も草葉の蔭で喜んでくれましょう」
金 旋「そうか。では、そうだな……。
    『満』でどうだ?」
司馬懿「それは良い名ですね。
    満つるもの、満たすものという意味。
    英雄金旋の子として、恥ずかしくない名です」
金 偉「金満……良い名です。
    ではこれ以降、私は金満と名乗ることにします」
金 旋「うむ、金満よ。我が子として、将として、
    恥ずかしくない活躍を見せてくれよ」
金 満「ははっ! ありがとうございます、父上!」

金偉改め、金満は、金旋軍の一員となった。
金旋の子として軍に加わった彼は、
今後どのような活躍を見せるのであろうか。

    ☆☆☆

  金旋金旋   金玉昼金玉昼

金玉昼「……で?」
金 旋「で?と返されても……」

ここは、洛陽の金目鯛の邸宅。
金目鯛は、金旋とは別にこの屋敷に居を構えており、
妻や子たちもここに呼びよせて一緒に暮らしていた。

今日はここに、金旋、金玉昼、金満が訪れ、
家族会議が開かれていた。

  金目鯛金目鯛  金閣寺金閣寺

金目鯛「まあ、大体の話は判った。
    他に親父の子がいたって事実には驚くがな」
金閣寺「しかも、私よりも若いんですからね。
    二度びっくりです」
金胡麻「はっはっは、爺ちゃんも若かったんだな!」
金魚鉢「若いですねぇ〜!」

金 旋「お前ら意味判って言ってるのか……?
    まあいい、そういうことなんだ。
    お前たちも、仲良くしてやってくれ」
金 満「よろしくお願いします」
金目鯛「別に俺は構わんけどな。弟と呼ぶには、
    少しばかり歳が離れすぎてるが」
金閣寺「私も、叔父さんと呼ぶのは、
    ちょっと抵抗がありますね」
金 満「別に、呼び捨てで構いませんよ。
    歳相応に扱っていただければ」

金胡麻「よろしくな、満!」
金 満「い、いや、流石に年下の君に呼び捨てに
    されるのはどうかと……」
金魚鉢「満兄さんでいいですかー?」
金胡麻「あ、それいいや。満兄ちゃんで行こう。
    兄ちゃんがもう一人出来た感じだしな」
金 満「じゃ、それでお願いするよ。
    えーと、胡麻に、魚鉢だっけ。
    頼りない兄だけど、よろしく」
金魚鉢「うん! よろしくね、満兄さん!」
金胡麻「よろしな、満兄ちゃん!」
金閣寺「じゃ、私は弟扱いしてもいいのかな……?」
金 満「はい、閣寺兄さん」
金閣寺「ん、よろしく」

金目鯛「子供は素直だな。すんなり打ち解けてら」
金 旋「うんうん、喜ばしいことだ」
金目鯛「で、一番やっかいそうなコレはどうすんだ?」
金玉昼「兄者、コレ扱いは酷いにゃ!」
金 旋「あぁ……玉、お前もよろしくな。
    ほら、小さい頃『弟が欲しい!』って言ってたよな。
    夢が叶っただろ?」
金玉昼がーっ!
    馬鹿にしないでにゃー!」
金 旋「うわっ!?」
金玉昼「あれは母上の産んだ弟が欲しいって意味で!
    母上が死んじゃってからは、
    そんなこと全然思わなかったにゃ!」
金 旋「す、すまん」
金玉昼「大体! ずっと母上一筋だった、
    母上が死んでもそれは変わらなかった、
    ってずっと言ってきたくせに!
    この嘘つき! ダニ! ミジンコ!」
金 旋「う、嘘ついてたわけじゃない!
    ただ、花梨の時は状況が特殊で……」
金玉昼「言い訳なんて聞きたくないにゃーっ!」

金 満「姉上」
金玉昼誰が姉上かーっ!!
金目鯛「お前だろ」
金玉昼ふーっ!!
金目鯛「おわ、怖い怖い」
金 満「姉上、申し訳ありません。
    私がこうして現れなければ、
    こんな不愉快な思いはされなかったでしょうに」
金玉昼「……べ、別にあんたが悪いわけではないにゃ。
    悪いのは全部、このゾウリムシにゃ!」
金 旋「つ、ついに単細胞生物扱い!?」
金 満「私が生まれなければ、父上もこうして
    責められることはなかったでしょう。
    父上が悪いと言われるのでしたら、
    生まれた私も悪いことになります。
    責められるのでしたら、私を責めてください」
金 旋「い、いや、それは違う。悪いのは俺だけだ。
    お前が何か悪さしたわけではない。
    だから、これでいいんだ」
金 満「し、しかし、それでは父上が……」

金玉昼がーーーーーーっ! もういい!
    これじゃ私が悪者みたいにゃ!」
金 旋「お、それじゃ……」
金玉昼「結局、騒いだところで何も変わらないにゃ。
    だから、もう気にしないことにしまひる」
金 満「あ、ありがとうございます、姉上」
金玉昼「……ま、姉上って呼ばれるのは、
    そんなに悪い気はしないしにゃ」
金目鯛「なんだ、やっぱり気に入ってんじゃないか」
金玉昼「ただ、軍の中では弟だからって贔屓はしないにゃ。
    それは肝に銘じておいて欲しいにゃ」
金 満「判りました、姉上。
    この金満、懸命に働きます!」
金玉昼「……で、ちちうえ」
金 旋「は、はい」
金玉昼「ひとつだけ、聞きたいにゃ。
    もし、金満の母君が生きてたら、
    再婚を考えたのかにゃ」
金 旋「……さいこん? えーと……」
金玉昼「サンコンでも大根でもなく、再婚。
    ちゃんと真面目に答えるように」
金 旋「花梨と再婚か……。そうだな。
    わずかな間だったが、本気で愛した女だ。
    お前たちに許してもらえるかは微妙なとこだが、
    再婚する気にはなっただろうな……」
金玉昼「……」
金 旋「あ、いや、だからと言ってだな、
    お前の母と比較してどっちがどうこう、
    とかいうのはないからな!
    どっちも魅力的で俺には勿体無いくらいだった、
    もしあいつが生きてたら浮気は絶対しなかったぞ。
    これは断言していい」
金玉昼「そう焦らなくていいにゃ。
    軽い気持ちじゃなかったってことだけ、
    それだけ判れば結構にゃ」
金 旋「ほっ……」
金玉昼「で、本音を言うとどっちが美人だった?」
金 旋「そうだな、どちらも十分に綺麗だったが、
    若さで花梨の方に軍配が……」

かぷ

金 旋「い、いででで! 噛み付くな!」

こうして、金満は家族として認められた。
特に金胡麻、金魚鉢の年下二人には気に入られ、
この後、よく遊んでやる光景が見られるようになる。

金 旋「……そういや、金満。
    履歴書書いとけって言ったが、できてるか?」
金 満「あ、はい。これでいいんでしょうか」

金満 [キンマン]
金満(主義)
性格:剛胆
信念:大志
(架空)
(203年生)
統率:90
武力: 1
知力:72
政治: 5
兵法:(空白)

金 旋「こりゃまた、極端な能力だな……」
金 満「ははは、お恥ずかしながら」
金目鯛「武力1ってマジかよ」
金 満「ええ、自慢じゃありませんが、
    これまで喧嘩や腕相撲などで勝ったことは
    今まで一度もありません」
金玉昼「ホントに自慢じゃないにゃ。
    でもこの統率力は魅力だにゃー」
金 旋「うむ、部隊の大将としては期待できそうだな……。
    ……む。こら、兵法が書いてないぞ」
金 満「あ、いえ、それは書いてないんじゃなくて」
金目鯛「え?」
金玉昼「ウソ?」
金 満「いえ、ホントです」
金 旋「ん? 話が見えんぞ」
金 満「ですから、書いてないんじゃなくて。
    兵法がないんです。ひとつも」
金 旋あんですとーーーっ!?
金玉昼「ちちうえでさえ、1つは持ってたのに……」
金 旋「さえ、とはなんだ。
    し、しかし……ひとつもないんじゃなあ」
金 満「あ、でも憶えるのは得意ですから。
    今後の成長に期待してください」
金 旋「成長、ねえ……。
    ま、長い目で見ていくしかないな」
金目鯛「そうそう。
    兵法なんて戦ってるうちに覚えるもんだ」
金 旋「お前は奮迅と突撃覚えたからな。
    早く弩系のも覚えてほしいものだが」
金目鯛「そ、それは長い目で見てもらって……」
金 旋「さて、いつになるんだろうな」

この後、家族揃っての食事をして歓談し合った。
ちなみに、この家族のピラミッドの頂点は、
金目鯛の妻であることを補足しておこう。

    ☆☆☆

数日後。
探索から帰ってきた下町娘は、
金旋にこれまでの経緯を話してもらった。

  金旋金旋   下町娘下町娘

下町娘「私のいない間にそんな、
    面白いことが起きてたなんて……」
金 旋「面白いとはなんだ、面白いとは」
下町娘「だってホント面白いじゃないですかー。
    その母親の女性と会ったときの話とかも、
    聞いてみたいものですね」
金 旋「それはまたの機会にな。
    それより、華佗に貰った薬は?」
下町娘「あ、この壺の中身がそうです。
    朝晩、寝る前と起きた後。
    患部に塗るように、だそうです」
金 旋「患部に塗るのか……なんかなー」
下町娘「妖しい快感に目覚めそうですか?」
金 旋「目覚めるかっ!」
下町娘「ちゃんと塗ってくださいよ?
    気休めにはなるらしいですから」
金 旋「ふむう。やはり華佗の薬をもってしても、
    気休め程度にしかならないか……。
    早く桂陽に行って来ないとならんな」
下町娘「桂陽?
    そういえば視察の名目で行くんですよね。
    桂陽に何があるんです?」
金 旋「えーと……そりゃ秘密。
    ただ、上手くいけばこの不治の痔とオサラバできる」
下町娘「そうなんですか?
    上手く行くといいですね……」
金 旋「うむ。上手くいくよう、祈っててくれ」

桂陽への出発準備を進める金旋。
彼は無事に北斗南斗と会い、痔を治し……
もとい寿命を延ばしてもらえるのだろうか。

次回に続く。

[第七十七章へ戻る<]  [三国志TOP]  [>第七十九章へ進む]