○ 第六十一章 「金旋、大将軍となる」 ○ 

215年1月勢力分布図
215年勢力図

建安二十年(西暦215年)。
金旋は前年、許昌での曹操との戦いに勝利。
曹操の築き上げた都、許昌を得た。
いよいよ金旋の掲げる上洛……
「洛陽を曹操の手から解放し、帝を御護り奉る」
という目標に近付いたのである。
兵力も充分整い、もはやその実力は曹操以上とまで
目されるようになっていた。
また、孫権、馬騰、饗援と和を結び、兵力を集中できる
強みも持っていた。

   曹操曹操    諸葛亮諸葛亮

曹 操「金旋……ここまで強くなっていたとはな。
    しかし、今度は許昌のようにはいかんぞ」
諸葛亮「はっ。この洛陽こそは、死守しなければ……」
曹 操「対孫権の戦いは賈駆に任せてある。
    馬騰も劉璋との戦いで、こちらに出張ることもない。
    金旋との戦いに集中するぞ」
諸葛亮「金旋軍も時間を置かずに兵を送ってくるでしょう。
    忙しくなりますな……」
曹 操「頼りにしているぞ、諸葛亮」
諸葛亮「ははーっ」

一方の曹操軍は、金旋には敗北を喫したものの、
孫権に奪われていた下[丕β]を奪い返すなど、
まだまだ衰えたわけではない。
北の烏丸、西の馬騰、南の金旋、孫権……。
周りを敵に囲まれてはいるが、そう簡単には
帝のいる洛陽を明け渡すつもりはなかった。
参謀役を務める諸葛亮も、必勝の策を持って
金旋軍の大軍を撃退するつもりであった。

    ☆☆☆

   孫権孫権    庖統庖統

孫 権「庖統、曹操との戦況はどうなっている」
庖 統「小沛の防衛準備は整いつつあり。
    ただ、小沛はやはり守るには辛い城でござる。
    敵が一気に攻め寄せてくるような状況は、
    なるべく避けたいところですな」
孫 権「これまでにも配下の将を捕らえられているし、
    兵力も武将もこれ以上の損失は避けたい。
    何とかならんのか?」
庖 統「ご安心あれ。曹操も、こちらにばかりは
    兵を割けられぬはずでござる」
孫 権「ふむ……金旋軍か。日の出の勢いだな。
    少し前の我が軍のようだ」
庖 統「しかし、金旋軍もここが正念場でしょうな。
    曹操も洛陽を手放す気はないでござりましょう。
    激しい戦いになるのは必然でござる」
孫 権「その間に、我が軍も体勢を整えておきたいな」
庖 統「はっ……金旋軍もせいぜい、
    曹操を釘付けにしておいてもらいたいですな」

呉の実力者、孫権……。
彼の軍は、曹操を打ち破った一時の勢いは消え失せ、
もはや小沛を守り通せるかという状況になっていた。
しかし、表面上ではそう見えてはいるが、
実際の呉国内にはまだまだ多数の兵がいた。
今はじっと曹操の攻撃を堪えながら、機会をうかがう。
軍師に迎えられた『鳳雛』庖統は、
如何なる戦略を考えているのであろうか……。

    ☆☆☆

   馬騰馬騰    楊阜楊阜

馬 騰「……のう、楊阜。
    漢中での戦況はあまりよくないようだが」
楊 阜「はい、残念ながら……。
    軍内の物資不足・兵士不足がかなり深刻です。
    そのせいで援軍を送ることもままなりません」
馬 騰「対して劉璋軍は増援をどんどん送ってくるな……。
    国力の差か……貧乏はしたくないのう」
楊 阜「おとっつぁん、それは言わない約束ですよ……」

西涼の雄、馬騰。
彼は今、深刻な財政難に直面していた。
もともと収入のあまり多くない涼州の軍である。
いくら長安・漢中を手に入れたとはいえ、
やはり資金、兵力のやりくりには苦労をしていた。
それに加え、劉璋軍の漢中侵攻。
当初は大したことはないと思われていたが、
何度も何度もしつこく攻め続ける劉璋軍に押され、
次第に劣勢に回るようになってきていたのである。
軍師の楊阜としても、頭の痛いところであった。

    ☆☆☆

   劉璋劉璋    法正法正

劉 璋「ほっほっほ!
    漢中での戦況は有利なようじゃの」
法 正「それはまあ、あれだけ戦力を投入すれば……」
劉 璋「この調子で、益州平定じゃな!
    南の饗援軍も、とっとと潰すでおじゃるよ!」
法 正「いえ、それが……。
    饗援との戦いは、あまりいい状況ではありません」
劉 璋「な、何でおじゃるかそれは!?
    饗援軍など、我が軍の半分ほどしか人材がおらぬのに、
    なんで苦戦せねばならんのじゃ!」
法 正「……漢中に兵も人材も投入しすぎです。
    饗援軍を圧倒するためにはもう少し、
    漢中から人材を回す必要があります」
劉 璋「よし、回すでおじゃるよ!」
法 正「そうすると、漢中の戦いが不利になりますが……」
劉 璋「それは駄目じゃ! 漢中の兵は減らすでない!」
法 正「……どうしろと……」

益州の劉璋は、饗援・金旋などと敵対する中、
漢中へ大規模な兵力を投入し侵攻していた。
その軍事行動は以前は他の群雄の失笑を買っていたが、
ここに来てようやく実を結びつつあった。
しかし、饗援軍が成都・江州を脅かしつつあり、
あまりいい状況にあるとは言い難いところである。
軍師の法正は、まず南を固めるべきと思っているのだが、
劉璋は彼の意見をあまり聞こうとはしていなかった。

    ☆☆☆

   饗援饗援    櫂貌櫂貌

饗 援「成都方面での戦いはどうか?」
櫂 貌「我が軍の方が有利です。
    ……しかし、あまり楽観はできません。
    やはり人材の数が足りませんし」
饗 援「泣き言は言うな。
    劉璋軍の人材を吸収するための戦いでもある。
    今が堪え時だぞ」
櫂 貌「はっ……」
饗 援「やはり南の地では人材を揃えるのは難しい。
    劉璋を飲みこみ、その将を我が軍に引き入れるのだ」
櫂 貌「承知しております」
饗 援「有能であれば、男であっても重用せよ。
    そういえば、あの老将の働きぶりはどうだ」
櫂 貌「は、見事の一言に尽きます。武勇、指揮……。
    いずれも若い者に負けぬものがあります」
饗 援「ふむ……。我が眼力に狂いはなかったな」

南蛮の女傑、饗援。
彼女は一貫して益州平定を目指し、
劉璋軍との戦いを繰り広げていた。
人材の数、兵数ともに劣る彼女の軍であったが、
将の質では互角以上であり、敵を圧倒し始めていた。

6つの勢力がしのぎを削り合っているこの年……。
金旋には、如何なる運命が待ち受けているのであろうか。

    ☆☆☆

各勢力比較表
勢力名官 職 軍 師 信望兵力領地武将
曹 操大将軍賈駆 40035万 14 92
金 旋中郎将 金玉昼 50045万 11 84
孫 権中郎将庖統 40035万  7 76
馬 騰州刺史 楊 阜 35020万  6 28
劉 璋州 牧 法 正 15020万  4 35
饗 援州刺史 櫂 貌 25015万  3 20
(※信望・兵力は概算です)

215年1月

年が明け、215年を迎えた許昌。
諸将が集まり新年の宴が行われているところへ、
急な知らせが飛び込んだ。

   金旋金旋    司馬懿司馬懿

金 旋「ん、どうした司馬懿?」
司馬懿「閣下、朝廷からの使者が参りました」
金 旋「朝廷からの使者だと!?」
司馬懿「はい。ただいま劉曄が接待しております。
    今のうちに、用意を」
金 旋「わ、わかった……ってどうすればよい?
    この宴の間で迎えては無礼だろう?」
司馬懿「郭奕が第二広間にて準備をしております。
    そちらに向かわれますよう」
金 旋「うむ……素早い手配、見事だ。
    よし、皆も身だしなみを整え、第二広間へ!」

諸 将「ははーっ」

金 旋「いや、司馬懿がいてくれて助かったな……。
    先に行ってるぞ、玉も早く来いよ」

   金玉昼金玉昼

金玉昼「わ、分かったにゃ……」
司馬懿「……ふ」(ニヤ)
金玉昼「むっ……」

 バチバチバチ……

両者の視線が交錯し、火花が散った。
いや、実際には何も起きてはいないのだが、
少なくとも、金玉昼の隣りにいた費偉には、
そのように見えたのだった。

   費偉費偉

費 偉「……正軍師と切れ者の対決か。
    面倒なことにならなければよいが」

魏延と甘寧の仲が悪いことは周知の事実であるが、
それ以外の人物関係は概ね良好であった。
その金旋軍にあって、新たな火種が生まれたのだろうか。

    ☆☆☆

   魏延魏延

魏 延「大将軍就任、おめでとうございます!」

諸 将おめでとうございます!

金 旋「うむ……重畳の至りだな」

金旋は、朝廷から大将軍に任ずる旨の詔勅を承った。
許昌を陥落させた勢いをみての任官であろうか。

金 旋「大将軍か……。曹操も大将軍だったな。
    これで、名の方でも曹操に並んだわけだ」

   下町娘下町娘

下町娘「でも……大将軍って二人いていいんですか?」
金 旋「……その質問は却下だな。システムの問題だし」
下町娘「はあ」
金 旋「しかし、実にめでたい。
    許昌を奪い、大将軍の位を戴き……。
    実に右肩上がりの人生だな!
    さあ、祝いの宴だ、飲み直すぞ!」

諸 将おおーっ

   金目鯛金目鯛

金目鯛「あ、ちょっと待った」
金 旋「ん、どうした目鯛」
金目鯛「親父……い、いや、大将軍閣下。
    飲み直すその前に、俺……い、いや拙者から、
    言いたい……じゃなくて申したいことが、
    ある……もといございまする」
金 旋「……なんだ、いきなり改まって」
金目鯛「おう……じゃなくて、ははっ。
    俺、じゃなかった、ぜっっ!
金 旋「……舌噛むくらいなら普通に話せ」
金目鯛「ふぁい。俺の息子の金閣寺が十五歳になったんで、
    親父や皆に紹介しようかと」
金 旋「おお、閣寺か……もう十五になったか。
    よし、皆に紹介しよう」
金目鯛「よし、入ってこい!」

   金閣寺金閣寺

金閣寺「金閣寺にございます。
    大将軍閣下には、御機嫌麗しゅう」
金 旋「おう、いい感じの武者姿になったな……。
    皆にも自己紹介せよ」
金閣寺「はっ……。金閣寺にございます。
    父金目鯛に負けぬよう励んで参ります。
    まだまだ若輩ですゆえ、武芸、政務など、
    皆様にもいろいろご指導いただけますよう、
    よろしくお願い致しまする」

   蛮望蛮望

蛮 望「んまっ、礼儀正しいですこと……。
    うふっ、私がそれはもういろいろと、
    手取り足取り教えて、ア・ゲ・ル♪
金 旋「蛮望、お前は閣寺の半径5m以内には近づくな」
蛮 望「な、なんですってー!?」

はっはっは、と諸将の笑いが響いた。
なお、朱桓の子、朱異もこの年に成人。
金旋軍に加わった。

金閣寺 [キンカクジ]
金閣寺(京都)
性格:冷静
信念:大志
(架空)
(201年生)
統率:81
武力:70
知力:77
政治:81
兵法:奮闘・騎射・連射・造営・混乱・鼓舞

    ☆☆☆

さて、金旋の大将軍就任を受け、百官の爵位が改められた。
城の掲示板に金旋直筆の爵位一覧の紙が貼り出され、
将たちはそれを見て一喜一憂するのであった。

   魏光魏光

魏 光「はあ……。やはりないなぁ。
    今回こそは校尉くらいには、と思ってたのに……」

魏光は何度も紙の下の方を見直すものの、
自分の名前はどこにもない。

魏 光「秦綜や謝旋は校尉になってるのに。
    くそ〜、私に何が足りないんだ……」

金旋がいたらはっきり『統率力』と言うのだろうが、
あいにく今はいなかった。

魏 光「さて、とりあえず上の方も確認しとくかな……。
    あ、成人したばかりの金閣寺はいきなり威西将軍かあ。
    やっぱり血族は扱いが違うな。うらやましいなあ」

血族である以上に能力は自分よりも高いのだが、
それは口に出すとむなしくなるのでやめた。
とりあえず血族のせいということで片付けておく。
そして上まで見たが、やはり自分の名前は見つからない。

魏 光「やっぱり自分の名前はないか……もう一番上だ。
    まあ、武官最高位はまた父上だろうけ……ど?
    あれ? 何だろうこれ、書き間違いかな?」

☆ 文 官 爵 位 ☆
秘書令 金玉昼
侍中 鞏志
留府長史費偉
太学博士馬良
謁者僕射潘濬
都尉 劉巴
黄門侍郎韓浩
太史令 魏劭
郎中 劉曄
従事中郎厳峻
長史 萌越
司馬 伊籍
太楽令 王粲
大倉令 秦泌
武庫令 田疇
衛士令 孔翊
主簿 蔡瑁
諌議大夫卞志
侍郎 糜竺
中郎 郭奕
☆ 武 官 爵 位 ☆
左将軍 司馬懿
右将軍 魏延
前将軍 甘寧
後将軍 郭淮
軍師将軍韓遂
安国将軍朱桓
破虜将軍于禁
討逆将軍楽進
威東将軍李厳
威南将軍霍峻
威西将軍金閣寺
威北将軍鞏恋
牙門将軍金目鯛
護軍 文聘
偏将軍 凌統
碑将軍 秦綜
忠義校尉趙囲
昭信校尉卞柔
儒林校尉卞質
建議校尉謝旋
奮威校尉黄祖
宣信校尉髭髯龍
破賊校尉髭髯鳳
武威校尉髭髯豹

    ☆☆☆

   魏延魏延

魏 延「納得できませぬ!
    まだ甘寧ならば話はわからんでもない、
    奴の武勲は素晴らしいものがある……。
    しかし、何ゆえ司馬懿なのです!?」

現在の武官最高位、左将軍の爵位を受けたのは、
魏延でも甘寧でもなく、司馬懿であった。
確かに彼女の能力は卓越したものがあるが、
これまでに軍を率いた実績はない。
登用されたばかりの、新参者の彼女を最高位に任じたことは、
他の将たちも疑問に思ったことは想像に難くない。

金 旋「そうは言うが……。
    甘寧を上にしたら、それはそれで文句を言うだろう?」
魏 延「当たり前です!
    あの男の下になどはなりたくない!」
金 旋「……さよか」
魏 延「しかし、今回はそれ以上に分かりません。
    何ゆえ少し前まで牢にいた敵将が、
    この私に命令を下す立場になるのです!?」
金 旋「まあ、お前の気持ちはわかる。
    だが、これからの戦いを考えれば、これは必要な事なのだ」
魏 延「司馬懿だけではありません! 郭淮もほぼ同格、
    于禁も楽進以上の爵位を与えられた。
    このように登用間もない者を上にされては、
    長らく仕えてきた者がやる気を無くします!」

司馬懿以外にも、郭淮を後将軍、于禁を破虜将軍というように、
許昌陥落時の降将を上位武官に任命していた。
魏延は右将軍、甘寧は前将軍、韓遂は軍師将軍など、
以前からの者の序列は同じなのだが、
新たな者の任官が波紋を呼んでいた。

金 旋「長く仕えている者を冷遇しているつもりはないぞ。
    あくまで、能力ある者を相応しい地位にした、
    それだけのことだ」
魏 延「能力ある者と申しますが、
    曹操軍の宿将であった于禁ならばともかく、
    司馬懿・郭淮にはほとんど実績がありません」
金 旋「実績は戦っているうちについてくる。大事なのは能力だ。
    彼らの能力は、お前達と比べても遜色ない」
魏 延「しかし、司馬懿は文官ではございませんか」
金 旋「……俺は常々思っているんだ。1万2万の兵ならば、
    お主らのような怖い者知らずの勇将が率いればいい。
    しかし、4、5万規模の大部隊ともなれば、
    武勇などよりも、冷静な判断力こそが重要になるとな」
魏 延「私には、それが欠ける……と?」
金 旋「司馬懿や郭淮に比べれば、残念ながら、な。
    その点、司馬懿は冷静であり、
    かつ兵を統率する能力にも長けている。
    かような者こそ、軍の筆頭に置くべきと考えている。
    そう考えれば、文官であったなどということは
    些細なことでしかない」
魏 延「……納得できません。
    私が司馬懿に劣るなど、認めたくは……」
金 旋「まあ、そうだろうな。だがいずれ判る。
    それまでは不満だろうが、堪えてくれ」
魏 延「は……では、今は引き下がっておきます。
    しかし、しばらくしても司馬懿の能力が
    証明されない時は……」
金 旋「そのときは、遠慮なく俺に言え。
    そうなったら、また考えよう」
魏 延「はっ」

筆頭であった魏延がこうして引き下がったことで、
ひとまず家中の不満は表に出ることはなくなった。
だが、個々の疑問は解消されたわけではなく、
時を置けばいずれまた噴き出す可能性があったのである。


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