214年10月
10月末。
季節は冬の真っ只中。
許昌への攻撃を続けてきた金旋軍だったが、
曹操自らが許昌に入ったことで、また新たな局面を迎えた。
曹操が許昌に入った翌朝。
金旋軍が許昌を包囲し攻撃を始める前に、
金旋は城内の曹操に呼び掛ける。
金旋
金 旋「曹操! いるか! 顔を見せろ!」
曹操
曹 操「おお金旋か! だいぶ老けたな!」
金 旋「人のこと言えるか! 同い年だろうが!」
曹 操「はっはっは、御互い様か」
金玉昼
下町娘
金玉昼「……どう見ても顔じゃあっちの方が若いにゃ」
下町娘「あれが曹操……。
初めて見たけど、結構シブカッコイイ……」
金 旋「はいはいはい、そこ静かに!」
金玉昼「はーい」
下町娘「す、すいませーん」
金 旋「そ、それでは、気を取り直して……」
曹 操「お主も大変だな」
金 旋「わ、判ってくれるか?」
曹 操「うむ、俺も夏侯惇が口うるさいし、
息子たちはよく喧嘩するし……」
金 旋「そうか……お前も大変なんだな。
ウチの臣下もかなりのクセモノ揃いでな、
まとめるのにひと苦労で……」
曹 操「こちらもかなりバラバラでなぁ……」
魏延
夏侯淵
魏 延「ゴホンゴホン!」
夏侯淵「ウオッホン!」
金 旋「……真面目に続けるぞ」
曹 操「お、おう」
金 旋「では、コホン。
……お主に武陵太守を命じられてから十年余。
見ろ! 俺はここへ帰ってきたぞ!」
曹 操「ふっ、これは可笑しい。
許昌に来た程度で帰ってきたなど言えるか!
その台詞は洛陽を落としてから言え!」
金 旋「いずれはそのつもりだ!
要はお前にヘコヘコしていた以前の俺ではない、
ということを言いたかったのだ!」
曹 操「そうかそうか!
しかし知力は相変わらず22のようだが!?」
金 旋「ほ、ほっとけ!
人の能力はそう簡単には変わらんわっ」
曹 操「まあよい、ならばお主に問いたい!」
金 旋「何をだ!?」
曹 操「天下の大流……
欲しているのは曹操か金旋か!?」
金 旋「なに……!?
もう少し判りやすい言葉で言え!」
曹 操「……ええい、全く!
天下が望んでいるであろう英雄、それは、
曹操なのか金旋なのかと聞いている!」
金 旋「どちらでもあり、どちらでもない!」
曹 操「ほう、その実は!?」
金 旋「天下の万民は、とにかくこの戦乱を治め、
平和な時代を作る者を欲しているのみだ!
最終的に平和になりさえすれば、
どちらが統一しようが関係ないのだ!」
曹 操「なるほどな、お主の考え方はわかった。
しかし、その甘い考えで統一などは無理!
確固たる意志なくば天は掴めん!」
金 旋「無理なのかどうなのか、その目で確かめろ!
我が軍の勢い、とくと見るがいい!」
曹 操「来い! 俺を失望させるなよ!」
金 旋「全軍、かかれぇ!」
金旋の号令で、全部隊が城へと押し寄せていく。
二人の英雄の直接対決が始まったのである。
だが……。
金 旋「よーし、行け! やれ!」
金玉昼「ちちうえ邪魔!」
どんっ
金 旋「あいでっ……」
むぎゅ
金 旋「いでえ! 誰だ背中踏んづけてるのは!」
費偉
費 偉「ああっ申し訳ありません!
急ぎますので失礼します!」
ずどどどど
金 旋「のわーっ!?」
兵 A「なんか今踏まなかったか?」
兵 B「気のせいだろ、とっとと行くぞ!」
あまり大事にされてない金旋であった。
下町娘「あらあら、ぼく、大丈夫?
一体どうしたのかなあ〜?」
金 旋「うっ、うっ……。みんなが、いぢめる……。
みんなが無視するんだ……」
下町娘「あらあら……。大丈夫、みんな忙しいだけなのよ。
ほら、お姉さんと一緒に後ろで応援しよう?」
金 旋「うん、おねーさんありがと……。
……って何言わせるか!」
下町娘「わ。途中まで乗ってたじゃないですか」
金 旋「ええい、俺は総大将様だぞ!
それを踏みつけにするとは何事だー!」
下町娘「総大将ならこんな前にいないで、
後ろでどかっと腰を下ろしてましょうよー。
その方が威厳がありますよー」
金 旋「む、そんなものか?」
下町娘「そんなもんです。
じゃ、後ろに下がってましょう」
金 旋「ふむ、わかった。
総大将様は後ろで戦況を見つめるとしよう」
下町娘「それがいいです」
金 旋「……なんか、いい様に言いくるめられてる
ような気もするがな……」
下町娘「あははー気のせいですよー」
金 旋「そうか、ならいいが」
下町娘「(……『後ろで大人しくさせとけ』って
玉ちゃんに言われたなんて言えないなあ)」
金 旋「ん? なんか言ったか?」
下町娘「いえっなんにもっ」
数こそ一番多い金旋隊であったが、
この戦いではあまり役には立っていなかった。
実際に攻撃の中心となっているのは、
井闌を使って矢の雨を降らす魏延隊、
そして連弩などを駆使し攻撃する甘寧隊。
(※なお、甘寧隊は朱桓の三千の援軍を受け、
兵力を幾分回復させていた)
……さらに、もう一部隊。
韓遂
楽進
韓 遂「韓遂参上!」
楽 進「楽進参上!」
二 人「二人合わせてカンカンガクガク!」
劉 曄「何かやかましそうなコンビ名ですね……」
韓遂率いる2万5千の井闌隊が参戦。
(韓遂と楽進の他に劉曄・呂曠・田疇が付随)
新たな部隊を加え、金旋軍は容赦ない攻撃を
許昌城に加えていくのであった。
☆☆☆
甘寧
甘 寧「そろそろ頃合だな……。
陳応! あれをやるか!」
陳 応「はっ、承知!」
甘寧、陳応の合体必殺技ドレンシャーEX。
次々に敵兵を討ち倒していく。
荀域
曹洪
荀 域「くっ……なんと激しい攻撃か!」
曹 洪「下がれ荀域どの! 標的にされるぞ!」
甘 寧「遅いわ! てえーい!」
ヒュン…ザクッ
荀 域「ぐっ……」
曹 洪「荀域どの!」
陳 応「それ、今度はこっちだ!」
ヒュッ…ドスッ
曹 洪「ぐあっ……腕がっ!?」
陳 応「敵将、討ち取ったりー!」
曹 洪「討ち取られてないわい!」
甘寧・陳応の狙撃で、荀域・曹洪に怪我を負わせる。
また魏延隊の秦綜も、毛介を狙撃。
曹操軍の将に負傷者が相次いだ。
曹 操「荀域の具合は? 大事ないか?」
夏侯淵「は。少々深い傷ではありますが、命には別状なし」
曹 操「他の二人の傷は軽いと聞いたが」
郭淮
郭 淮「はい、軽傷にて引き続き陣頭に出ております」
曹 操「そうか……。しかし敵もやるな。
特に甘寧と申したか、あ奴はなかなかの猛者だな」
夏侯淵「は、過去にも関羽や李通が痛い目に遭っているようで。
先の戦いでは今一歩のところまで追い詰めましたが、
仕留められませんでした」
曹 操「そうであろうな。勇気、采配、武勇……。
どれを取っても超一流だ。
あれほどの男、そういるものではない」
夏侯淵「(……また始まったか)」
郭 淮「……閣下? どうなされ……」
曹操の顔を窺おうとした郭淮を、夏侯淵が手で止めた。
放っておけ、と目で合図する。
曹 操「欲しい……欲しいぞ。
あれほどの勇者、金旋などには勿体無い。
なんとか我が軍に招き入れる策はないものか」
夏侯淵「……ああなると、他のことは頭に入らなくなるんだ。
しばらく放っておくしかない。
下手に話しかけると『甘寧を捕らえてまいれ』とか
言い出すだろうから、素人にはお奨めしない」
郭 淮「は、はあ。では、この戦はどうなるのですか」
夏侯淵「ま、早く元に戻ってくれるのを待つことだな。
逃げる用意はしておいた方がいいぞ」
郭 淮「左様ですか……」
曹 操「甘寧の好物を落とし穴の上に置き、
嵌まったところを捕らえるというのは……。
いやしかし、あれほどの者だ。
穴から這い上がってくるかもしれん。
となると、穴には油を塗り……いやダメだ、
それでは今度はこちらが捕らえられぬ」
郭 淮「病気か……。困ったものだな……」
☆☆☆
11月に入り、いよいよ許昌城陥落の時は迫ってきていた。
金 旋「……もう少し苦戦するかと思ったがなあ」
金玉昼「曹操は今、病気らしいとの間者からの報告にゃ。
そのせいで精彩を欠いているのではないのかにゃ」
金 旋「病気?」
金玉昼「人材欲しい欲しい病にゃ。
甘寧さんの働きを見て、欲しくなったようにゃ。
お陰で、守備隊の動きも悪いそうだにゃ」
金 旋「ほう……。
曹操の人材収集癖は聞いてきたがそれほどか。
よし、ならば甘寧にセクシーな衣装を着させ、
もっと曹操を悩殺するように指示せよ」
金玉昼「ちちうえ、何か勘違いをしてるような……」
金 旋「いいからやる!」
金玉昼「はーい」
翌日より、甘寧は派手なセクシー衣装を来て陣頭に立った。
甘 寧「全く……なんでこんなものを着て
戦わねばならんのだ」
陳 応「しかし、殿の指示ですし……」
甘 寧「ええいやけくそだ! 全軍進撃!」
曹 操「……お、おお! 甘寧、甘寧がおるぞ!
ううむ、わしを狂わせる魔性の者よ……。
捕らえよ、誰ぞ捕らえてまいれ!」
夏侯淵「お、落ち着きなされ」
郭 淮「……ダメだこりゃ」
兵 A「曹操軍の動き、鈍い模様です」
金 旋「ははは、これが兵法というものよ」
金玉昼「うそにゃ〜。こんなの嘘にゃ〜」
そのとき、後方から現れた一部隊が
許昌城へ向かって攻めかかっていった。
ずどどどど……
金 旋「……おや? あの隊はどこの隊だ?
敵ではないようだが」
金玉昼「えーと、旗は……。『鞏』の旗……。えっ?」
金 旋「……なに、鞏恋が来たのか? 俺は聞いてないぞ」
金玉昼「私も聞いてないにゃ」
潁川城塞より、鞏恋の隊、総勢2万が到着したようである。
金旋・金玉昼に指示を受けたわけではなく、
鞏恋が自ら出撃してきたのだった。
蛮望
凌統
蛮 望「あんたねえ……。
後で金旋様に怒られても知らないからね」
凌 統「この戦いで失態を見せれば、
兵を貸してくれた朱桓どのも罰を受けるかもしれんぞ」
鞏恋
鞏 恋「文句言うなら付いてこないでいいのに……」
蛮 望「無鉄砲な小娘、一人で行かせられるわけないでしょ」
凌 統「……本音は?」
蛮 望「城塞で待機してるのは暇だったから……。
って何言わせんのよ!」
凌 統「はっはっは……。
まあ、無鉄砲なら俺も負けてはいないからな。
このくらいなら付き合ってやる」
鞏 恋「……どうも」
付き従う蛮望、凌統に文句を言われながら、
鞏恋は許昌城へ攻撃をかける。
矢の雨が、守備兵の頭上に降らされた。
李通
髭髯鳳
李通娘「……くっ、無理はするな!
まず身を守り、それから反撃せよ!」
髭髯鳳「李通どの、もう少し下がられい!」
李通娘「ダメです!
兵を何とか守ってやらないと……」
鞏 恋「借りは返す……」
鞏恋は、その瞳に敵将の姿を捕らえた。
養由基の弓に矢をつがえ、ギリギリと弦を引き絞る。
そして狙いを定め……。
鞏 恋「えっ……?」
放つ寸前、その将が食事を与えてくれた恩人の姿とダブった。
慌てて方向をそらし、狙いをはずす。
そしてその矢は……。
髭髯鳳「ぬおっ……! あ、足に矢がっ!」
李通娘「大丈夫ですか!?」
髭髯鳳「だ、大丈夫だ……」
李通は髭髯鳳をかばいながら、城の外を窺う。
そのとき、鞏恋と目が合った。
鞏恋は李通に狙いを定め、矢をつがえている。
そして、矢を放った……。
李通娘「えっ……」
その矢は全くあさっての方向に飛んでいく。
明らかに外したということは李通にもわかった。
鞏 恋「ふん……」
馬を返し、鞏恋はそこから去っていった。
……許昌城が陥落したのは、
それから数日の後のことである。
曹操は逃がしたものの、
夏侯淵、曹洪、于禁、張哈、李通(父)、郭淮、
秦朗、髭髯龍、髭髯鳳、髭髯豹、荀域、司馬懿など、
そうそうたる将を捕らえることに成功した。
許昌を手に入れた金旋は、
いよいよ漢の首都、洛陽を目指す。
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