214年7月
許昌。
ここは曹操軍第三軍団の本拠である。
……というよりも、第三軍団が支配する都市はここしかない。
つまりこの都市が落ちれば、自動的に第三軍団は
なくなることになる。
先の金旋軍との戦いで許昌の兵はかなり減らされたが、
汝南からの救援、そして新たな徴兵などで、
都市の兵数は5万近くにまで戻していた。
軍備が増強されたのは、何も金旋軍だけではないのだ。
その許昌の李通邸にて、李通は酒を呷っていた。
彼は以前まで第三軍団の長であったが、
先の戦いで官位が上である夏侯淵が入城してきたために、
その任を解かれていたのだった。
李通
万億
李 通「てやんでいばーろーめい!
かこーえんどのが来なくたって、
この城は落ちなかったんだよお!」
万 億「父上、少々お酒が過ぎませんか。
そろそろおやめになった方が……」
李 通「ばっかやろう、おめえ、俺の気持ちがわかるか!?
軍団長を下ろされたんだぞ!」
万 億「でも、上官である夏侯淵殿が来たのですから、
交代するのは当たり前ですし……」
李 通「だーかーらー、別に援軍来なくたって、
この城は持ったんだよ!」
万 億「いえ、敵が早めに退却してくれましたが、
あのまま攻め続けられれば危いところでした」
李 通「……あー。守ってたのお前か」
万 億「申し訳ありません。
私以外に誰か有能な方がいれば、
もう少し違ったかもしれませんが……」
李 通「いや、お前で無理なら他の奴でも無理だろう。
お前はもう少し、自分の能力に自信を持て」
万 億「ありがとうございます」
李 通「……くそ、それにしても忌々しきは金旋よ。
湖陽でもそうだ、あの勝ち誇った顔……。
ぐあー! 思い出すだけで腹が立つ!」
万 億「その金旋、最近兵力を増強しているとか。
また仕掛けてくるのでしょうか」
李 通「ふん、今度会った時は絶対に捕まえてやる。
そんでもって、尻にネギを突き刺してグリグリやって、
そこに唐辛子を擦り込んでやるぞ」
万 億「……父上、あまり外ではそういうことを
おっしゃいませんように。品位を疑われます」
李 通「品位? そんなもので戦に勝てるか!」
???「確かに品位だけでは勝てないが、
品位のない軍は山賊と変わりないぞ」
夏侯淵
万 億「あ、夏侯淵将軍」
夏侯淵「うむ、邪魔してるぞ」
李 通「こ、これは夏侯淵どの。
ようこそいらっしゃいました」
夏侯淵「最近、酒ばかり飲んでると聞いたが?」
李 通「は、いえ、このような酒、水のようなものです」
夏侯淵「その割には顔が赤いが」
李 通「こ、これは生まれつきです」
夏侯淵「まあいい、酒もほどほどにしておけよ。
今日来たのは、あることを知らせようと思ってな」
李 通「あること?」
夏侯淵「宛の金旋軍が動いた」
李 通「奴らが……来るのですか」
夏侯淵「うむ。まだ第一報なので詳細はわからんが、
かなりの兵が宛を出たとの報告だ。
潁川方面からこの許昌へ向かってきている」
李 通「……洛陽に向かうわけではないのですか?」
夏侯淵「許昌を攻めるために大規模な軍が出る、
と敵兵が話しているのが少し前から報告されている。
洛陽にも警戒するように呼び掛けるが、
まずこちらに来るとみて間違いないだろう」
李 通「なぜ、わざわざそれを私に知らせるのですか。
軍議で集まった時でも良いはずでは?」
夏侯淵「別にそれでもよかったが、李通将軍は、
二度も金旋に苦杯を舐めさせられているからな。
その復讐心を煽って、防衛戦で活躍させよう、
そういう私の浅はかな考えがあったのだ。
いらん世話だったかな?」
李 通「いえ、ありがとうございます。
奴らが来ても、この李通が蹴散らしてみせましょう」
夏侯淵「詳細な情報は、すぐに入ってこよう。
それは後の軍議の席でな。では、失礼するぞ」
李 通「はっ」
夏侯淵はそのまま戻っていった。
それを見送った李通は、その瞳に復讐の炎を灯らせ、
金旋軍への復讐を心に誓う。
李 通「許昌の防御は堅く、兵も補充されている。
奴らがいくら束になってかかっても、
敵わんことを教えてやるぞ」
万 億「……妙ですね」
李 通「ん? 何がだ」
万 億「いえ、許昌を落とすつもりならば、
博望方面から来るべきです。
なにゆえ、洛陽から挟撃される危険のある、
潁川方面から来るのか……少々引っ掛かります」
李 通「先の戦いでは、甘寧の隊は潁川から来ただろう」
万 億「あれは、主力のいなくなったこの城を
真っ直ぐ急襲するためです。
今回のように兵多く、守りの堅いこの城を落とすには、
あまりよい進撃路とは言えませんが。
何か、別な意図があるのでは……」
李 通「深く考え過ぎではないか?
俺が同じ立場であっても、潁川から来るぞ。
その方が、洛陽と許昌を分断できるからな」
万 億「うーん、何か引っ掛かるのですが……」
李 通「そのようなことを気にしてもしょうがあるまい。
それよりも我が娘よ、ひとつ提案があるのだが」
万 億「なんでしょうか?」
李 通「お前も成人してしばらく経ち、
将としてももはや一人前だ。
……そこで、これよりお前は李通と名乗れ」
万 億「えっ? ……では、父上のお名前は?」
李 通「私も引き続き李通と名乗る。
つまり親娘二代が李通だ」
万 億「よく呑みこめませんが……」
李 通「李通という名は、ここのところの敗戦で地に落ちた。
そこで、汚名挽回のために……」
万 億「名誉挽回」
李 通「……名誉挽回のために、とある策を思いついた」
万 億「その策が、李通を二人にすることなのですか」
李 通「そうだ。李通が二人になれば、その活躍も2倍。
また、敵に神出鬼没の印象を与える。
どうだ、面白いだろう」
万 億「はあ、そういうことですか。
しかし、味方にも紛らわしく思われるのでは?」
李 通「そこはほれ、あれだ。
便宜上、李通父と李通娘に区別すればよい」
万 億「左様ですか……」
李 通「まずは金旋軍との一戦で試してみるとしよう。
ふふふ、神出鬼没の李通……。
なかなかカッコイイ通り名ではないか」
万 億「はあ」
失敗すれば汚名も2倍なのでは、と万億は思ったが、
それは言わないでおくことにした。
しばらくぶりに父が生き生きとした顔をしていたからだ。
この李通の策、どのような結果となるのだろうか。
☆☆☆
7月下旬、宛より金旋軍が出撃。
3部隊、総勢8万5千という数である。
魏延、甘寧、朱桓がそれぞれの隊の大将を務める。
魏延隊には蛮望・楽進・牛金・卞質、
甘寧隊には鞏恋・凌統・魏光・金玉昼、
朱桓隊には金目鯛・刑道栄・陳応・劉曄が付いた。
軍は、潁川の地を経由し、許昌を目指す。
すでに出撃前から、この動きは許昌には伝わっていた。
だが、これは金旋軍がわざと情報をリークしたものである。
計を上手に隠すには、嘘で塗り固めるのではなく、
真実の中にひとつだけ嘘を混ぜること……。
この作戦の主目的は許昌城にはなく、
まず、潁川に城塞を築くことである。
これは敵にそれを気取られないための策であった。
甘寧
金玉昼
魏光
甘 寧「で、敵は出て来ないと見てよいのか?」
金玉昼「んー。わからんにゃ」
魏 光「わからない? 敵に気付かれる可能性があると?」
金玉昼「その可能性もないわけではないけど、
それよりも、野戦で迎撃しようと
気張って出てくる可能性があるにゃ」
甘 寧「ふむ。敵将夏侯淵は勇猛果敢と聞く。
ありえない話ではないな」
魏 光「……しかし、それでは作戦に支障が出ませんか?」
金玉昼「要は、城塞の建設が始まっても、
敵が攻撃できない状況にあればいいことにゃ。
敵が出てきた時は頑張って抑えこみまひる」
甘 寧「うーむ、軍師も結構、大雑把な考え方をするな。
やはり親娘か……似るものだな」
金玉昼「あー、甘寧さん。
失礼なこと言ってるとその髭切り落とすにゃ」
甘 寧「い、いや、それは勘弁してくれい。
これが無くなると平衡感覚が狂ってしまう」
魏 光「(平衡感覚が狂うって……猫?)
まあまあ、失礼なことって言っても、
別に甘寧将軍も悪口のつもりじゃないでしょうし」
金玉昼「ちちうえに似てるって言われるのは、
私にとって最大級の侮蔑の言葉にゃ」
魏 光「……(そこまで言うのか……)」
さて、対する許昌の夏侯淵軍団。
潁川への拠点建設の可能性を言い出す者はいなかったが、
しかし金玉昼の言ったように、迎撃部隊を出撃させてきた。
夏侯淵の隊2万5千、そして郭淮の隊1万5千、計4万。
夏侯淵の隊には李通・于禁・秦朗・郭奕が付き、
郭淮隊には梁興・荀域・傅巽が付いた。
夏侯淵
李通
于禁
夏侯淵「我が軍と比べ敵兵は2倍。しかし案ずるな!
敵は長い道のりを行軍してきて疲れている!
また城攻め前提の軍である、何の脅威があろうか!
ここで奴らを蹴散らし、許昌を守るのだ!」
李 通「やるぞ……やってやる。一番槍を取ってやるぞ。
ここで活躍し、名誉返上してやる!」
于 禁「それを言うなら汚名返上だろう。
ま、頑張るのだな」
夏侯淵隊の先鋒は李通。
これまでの屈辱を晴らすべく、気合を入れて進軍する。
しかし実際には先に郭淮隊が先行し、
李通の一番槍はなくなってしまった。
近くに迫る郭淮隊に、金旋軍は目標を変えようとする。
すでに李厳が建設のための部隊を率いて宛城を発っており、
ここで敵軍を食い止めれば、潁川城塞の建設は可能になる。
だがここで、洛陽方面から知らせが入った。
洛陽より、曹仁・李典の2つの部隊が、
潁川を通って許昌に向かっているとのことである。
その数、合わせて1万5千。
しかし、攻撃部隊ならば金旋軍にとって脅威であったが、
両隊ともに許昌への移動を目的とする輸送隊であった。
いわゆる、『カモ』である。
金玉昼
魏延
甘寧
金玉昼「まさか堂々と直通輸送するとは思わなかったにゃー」
甘 寧「陳留経由でぐるっと遠回りに送るというのが、
まあ通常取る方法だろうからな。
敵も焦っているのだろうか」
魏 延「で、どうするのだ、軍師」
金玉昼「このままだと、李厳さんの建設隊とぶつかるにゃ。
いくら輸送隊とはいえ、多少の被害は出るにゃ。
殲滅の必要性が有りまひる」
魏 延「ならば、私が蹴散らしてこよう」
金玉昼「いや、ここは2部隊でとっとと殲滅するべきにゃ。
甘寧さんの隊も一緒に行くことにしまひる」
甘 寧「しかし、夏侯淵の総勢4万の軍も目前に迫っている。
朱桓隊の2万5千だけで大丈夫なのか?」
金玉昼「……どうですかにゃ、朱桓さん」
朱桓
朱 桓「10日程度なら持たせることはできるでしょう。
しかし、それ以上長くなると難しいですな」
金玉昼「と、朱桓さんも言ってるので、
すぐに敵を殲滅して戻ってくればOKにゃ」
魏 延「ふむ、まあ私に任せておけい。
この軍師将軍魏延文長、
伊達に金旋軍の筆頭武官を務めてはいない。
甘寧隊の倍の早さで敵部隊を殲滅してみせよう」
甘 寧「はっ、何を言っているか。
この安国将軍甘寧興覇、
金旋軍随一の勇将と自負している。
魏延隊の分の敵も倒し、後顧の憂いを絶ってみせる」
魏 延「むむむ」
甘 寧「うぬぬ」
睨み合う両者。
その間に、金玉昼が割って入った。
金玉昼「はいはい、張り合ってないで、とっとと行く!」
魏 延「うむー」
甘 寧「おうー」
朱 桓「……大変ですな、軍師」
金玉昼「毎回毎回、嫌になるにゃ……。
やっぱり、あの二人の上に誰か欲しいにゃ〜」
魏延・甘寧を御すことのできる将帥。
そんな人物がいればどれほど楽かと、
最近の金玉昼は考えるようになっていた。
さて、金旋軍は3部隊のうち、
魏延隊・甘寧隊の合計6万の兵が方向転換。
曹仁隊、李典隊を殲滅すべく北上する。
残る朱桓隊2万5千は、迫る夏侯淵軍を待ち受け、
迎え撃つのだった。
洛陽からの部隊は、戦闘部隊ではないということもあり、
簡単に蹴散らすことができた。
魏延隊の蛮望・楽進らの突進の前に、
李典隊は為す術もなく全滅してしまった。
対する曹仁隊の方には甘寧隊が当たった。
金玉昼「えー、金旋軍では一般兵を若干名募集してます。
年齢性別不問、新兵からベテランまで、
幅広い方を好条件で優遇します!
今なら、3食&おやつ付き!
プラス、な、ななななーんと我が軍の
武将アイドルの水着生写真もプレゼント!
さあ、今すぐ金旋軍へ!」
敵 兵「な、なんだってー!?(AA略)」
甘 寧「おおっ、結構な数の敵兵が寝返ってるぞ。
それに指揮系統も混乱している」
金玉昼「今にゃ! 恋ちゃん! 魏光さん!」
鞏恋
魏光
鞏 恋「らじゃー」
魏 光「行きます!」
金玉昼の仕掛けた心攻による混乱に乗じ、
鞏恋・魏光が突破をかける。
これによって曹仁隊も大幅に兵を減らし、
最後は凌統の突進により全滅した。
なおこの戦いの後、寝返った兵たちに、
約束通りにアイドル武将の水着生写真が配られた。
だが兵たちは皆、口々に『騙されたー!』と呟いたという。
しかしそれ以外の待遇は言っていた通りであったため、
兵たちの不満もすぐに消えた。
なお、配られたその写真に映っていたのは、奴だった。
蛮望
蛮 望「ウッフーン」
一方、朱桓隊は郭淮隊・夏侯淵隊と交戦を始め、
魏延・甘寧両隊の戻るまでの間、踏ん張ってみせた。
そんな中、潁川城塞の建設は開始される。
建設部隊の指揮を執る李厳も、
気合を入れて指示を飛ばしていた。
李厳
李 厳「いいかー! とにかく急げ!
味方が踏ん張ってるうちだぞ!」
伊 籍「合点です李厳どの!
ほーれまずは地ならしだ!」
李 厳「……伊籍どの、それはなんですか?」
伊 籍「なにって、トラクターですが何か?
燃える男のォ〜♪ 赤いトラクタァ〜♪」
李 厳「赤いトラクターはヤンマーでは……?」
隊に配置された伊籍トラクターの縦横無尽の活躍もあり、
急ピッチで城塞の建設は進められた。
その間、前線では激しい戦いが繰り広げられる。
郭淮
郭 淮「甘寧隊なにするものぞ! 突進!」
秦 朗「郭淮隊に負けるな! 突破せよ!」
郭淮隊の郭淮による突進、
夏侯淵隊の秦朗による突破を食らう甘寧隊。
魏光が夏侯淵隊を突破せんと図るが、
これは于禁に防がれてしまう。
甘寧
凌統
甘 寧「くっ、流石は曹操軍の名将たちだ。
夏侯淵、于禁、まさかこれほどまでの強さとは……」
凌 統「感心してる場合かっ! 押されてるぞ!」
甘 寧「ええい、そう騒ぐな!
なんとしても城塞へは行かせるな!」
流石の彼らの隊も、集中的に攻撃を受け、
ジリジリと後退を余儀なくされる。
続いて何者かの計略により撹乱させられ、
さらには荀域の仕掛けた穴罠に嵌まり、隊は窮地に陥った。
ズガンボーン
魏 光「た、助けてー!」
凌 統「魏光が落とし穴に嵌まったぞ!」
鞏 恋「そんなのほっといて!」
魏 光「ひ、酷いです鞏恋さぁーん! へるーぷ!」
鞏 恋「今はそれどころじゃない! 応戦が先!」
凌 統「しかし、応戦といっても大将がこれでは……」
甘 寧「ああ、大きな光がついたり消えたりしてる。
あはは、大きい、花火かな。
いや、違うな。花火はもっとこう、
バチバチバチーって燃えるもんな」
金玉昼「あがー!? 甘寧さんが錯乱してるにゃー!?」
凌 統「水をぶっ掛ければ治るか?」
金玉昼「一時的な錯乱なら、それもいいかも……。
って凌統さん!? それ油、油!
んなの浴びせたら、甘寧さんが燃やされちゃうにゃ!」
凌 統「……チッ」
金玉昼「チッ?」
凌 統「いや、なんでもない(※)」
(※ 凌統は昔、甘寧に父を殺されたため、
彼にいつか復讐をしようと思っているのである)
……このバタバタとしている隊の様子を、
高台より眺める一人の人物がいた。
???「ふうん、なかなか上手く決まったようね。
この光を使った催眠、それなりに有効なようだわ……。
さて夏侯淵どの……後は貴方次第ですよ」
にやぁ、と不気味に口元を歪めて、
その人物は馬を返し去っていった。
大混乱の上に集中攻撃を浴びる甘寧隊。
その危機を救ったのは、朱桓隊の刑道栄であった。
刑道栄「突撃! 突撃! 突撃ィィィィ!
郭淮隊を蹴散らせぇぇぇ!!」
活躍の場を与えられた猪武者は、
郭淮隊に韓遂ばりの突撃で突っ込んでいく。
魏延隊にも攻撃を受けて数の減っていた郭淮隊は、
これにより全滅した。
その間に、甘寧隊はようやく混乱を収めることができた。
だが、夏侯淵軍の猛攻は予測以上のものであり、
抑えるどころか、逆に押されているくらいであった。
気付けば前線は、城塞の建設地のすぐ側にまで
下がってきていたのである。
夏侯淵「郭淮隊は全滅したか」
于 禁「そのようですな。さて、ここから如何しますか」
夏侯淵「敵はあの地に城塞を築き始めている。
これをどうにかして妨害したい」
于 禁「とはいえ、兵力の差は歴然ですぞ?
張哈が汝南から援軍を率いて来てるそうですが、
これを足しても微妙なところです」
夏侯淵「気合で負けていては兵力の差も跳ね返せぬ。
李通! 押して押して押しまくれ!
そして敵の建設部隊を攻撃せよ!」
李 通「はっ! 承知!」
兵力では金旋軍が優位に立ってはいたが、
夏侯淵軍の捨て身とも言える攻勢に押され、
城塞建設地との距離がほとんど無くなっていく。
伊 籍「風に逆らうゥ〜♪ 俺の気持ちをォ〜♪
知っているのかァ〜♪ 赤いトラクタァ〜♪
……おや、あの土煙はいったい……」
李 通「よっしゃー! 一番乗りぃー!」
伊 籍「ヒィーーーーー! 曹操軍!?」
李 通「神出鬼没の特攻野郎、李通様参上!
この地に城塞を作るなんてな、お天道様が許しても、
この俺が許しはしねえぜぇー!
(フッ、決まった。俺様カッコイイ!)」
伊 籍「ひ、ヒィィィ、おた、おた、おたすけー」
李 通「そうは行くかぁ! 覚悟!」
だがその時、不敵な笑いがこだました。
『はっはっはっはっはっは』
李 通「だ、誰だ!」
???「無抵抗の相手を蹂躙しようとする不逞の輩!
この私が相手になってやろう!」
李 通「な、何ィ!? カッコイイこと言いやがって!
てめえ、名を名乗れ!」
韓遂
韓 遂「ならば教えてやろう、我が名は韓遂!
そして率いるは、金旋軍の精鋭騎馬軍団よ!
かかれえ!」
韓遂の号令で、宛から新たに来た3万の騎馬隊が
夏侯淵隊に一斉に襲いかかる。
城塞の建設地にまで迫った夏侯淵隊であったが、
韓遂の突撃、秦綜の飛射などにより、
後退せざるをえなくなってしまった。
李 通「……くそっ、韓遂め!
もう少しで奴らを潰すことができたのに」
汚名を返上する機会を逸して悔しがる李通。
両軍の戦いはまだ続くが、以後の夏侯淵軍は、
城塞へ迫る機会を得ることはできなかったのだった。
次回へ続く。
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