○ 第五十四章 「潁川の攻防〜復讐鬼李通〜」 ○ 
214年7月

許昌周辺1

許昌。
ここは曹操軍第三軍団の本拠である。
……というよりも、第三軍団が支配する都市はここしかない。
つまりこの都市が落ちれば、自動的に第三軍団は
なくなることになる。

先の金旋軍との戦いで許昌の兵はかなり減らされたが、
汝南からの救援、そして新たな徴兵などで、
都市の兵数は5万近くにまで戻していた。
軍備が増強されたのは、何も金旋軍だけではないのだ。

その許昌の李通邸にて、李通は酒を呷っていた。
彼は以前まで第三軍団の長であったが、
先の戦いで官位が上である夏侯淵が入城してきたために、
その任を解かれていたのだった。

   李通李通    李通万億

李 通てやんでいばーろーめい!
    かこーえんどのが来なくたって、
    この城は落ちなかったんだよお!」
万 億「父上、少々お酒が過ぎませんか。
    そろそろおやめになった方が……」
李 通「ばっかやろう、おめえ、俺の気持ちがわかるか!?
    軍団長を下ろされたんだぞ!」
万 億「でも、上官である夏侯淵殿が来たのですから、
    交代するのは当たり前ですし……」
李 通「だーかーらー、別に援軍来なくたって、
    この城は持ったんだよ!」
万 億「いえ、敵が早めに退却してくれましたが、
    あのまま攻め続けられれば危いところでした」
李 通「……あー。守ってたのお前か」
万 億「申し訳ありません。
    私以外に誰か有能な方がいれば、
    もう少し違ったかもしれませんが……」
李 通「いや、お前で無理なら他の奴でも無理だろう。
    お前はもう少し、自分の能力に自信を持て」
万 億「ありがとうございます」
李 通「……くそ、それにしても忌々しきは金旋よ。
    湖陽でもそうだ、あの勝ち誇った顔……。
    ぐあー! 思い出すだけで腹が立つ!」
万 億「その金旋、最近兵力を増強しているとか。
    また仕掛けてくるのでしょうか」
李 通「ふん、今度会った時は絶対に捕まえてやる。
    そんでもって、尻にネギを突き刺してグリグリやって、
    そこに唐辛子を擦り込んでやるぞ」
万 億「……父上、あまり外ではそういうことを
    おっしゃいませんように。品位を疑われます」
李 通「品位? そんなもので戦に勝てるか!」
???「確かに品位だけでは勝てないが、
    品位のない軍は山賊と変わりないぞ」

   夏侯淵夏侯淵

万 億「あ、夏侯淵将軍」
夏侯淵「うむ、邪魔してるぞ」
李 通「こ、これは夏侯淵どの。
    ようこそいらっしゃいました」
夏侯淵「最近、酒ばかり飲んでると聞いたが?」
李 通「は、いえ、このような酒、水のようなものです」
夏侯淵「その割には顔が赤いが」
李 通「こ、これは生まれつきです」
夏侯淵「まあいい、酒もほどほどにしておけよ。
    今日来たのは、あることを知らせようと思ってな」
李 通「あること?」
夏侯淵「宛の金旋軍が動いた」
李 通「奴らが……来るのですか」
夏侯淵「うむ。まだ第一報なので詳細はわからんが、
    かなりの兵が宛を出たとの報告だ。
    潁川方面からこの許昌へ向かってきている」
李 通「……洛陽に向かうわけではないのですか?」
夏侯淵「許昌を攻めるために大規模な軍が出る、
    と敵兵が話しているのが少し前から報告されている。
    洛陽にも警戒するように呼び掛けるが、
    まずこちらに来るとみて間違いないだろう」
李 通「なぜ、わざわざそれを私に知らせるのですか。
    軍議で集まった時でも良いはずでは?」
夏侯淵「別にそれでもよかったが、李通将軍は、
    二度も金旋に苦杯を舐めさせられているからな。
    その復讐心を煽って、防衛戦で活躍させよう、
    そういう私の浅はかな考えがあったのだ。
    いらん世話だったかな?」
李 通「いえ、ありがとうございます。
    奴らが来ても、この李通が蹴散らしてみせましょう」
夏侯淵「詳細な情報は、すぐに入ってこよう。
    それは後の軍議の席でな。では、失礼するぞ」
李 通「はっ」

夏侯淵はそのまま戻っていった。
それを見送った李通は、その瞳に復讐の炎を灯らせ、
金旋軍への復讐を心に誓う。

李 通「許昌の防御は堅く、兵も補充されている。
    奴らがいくら束になってかかっても、
    敵わんことを教えてやるぞ」
万 億「……妙ですね」
李 通「ん? 何がだ」
万 億「いえ、許昌を落とすつもりならば、
    博望方面から来るべきです。
    なにゆえ、洛陽から挟撃される危険のある、
    潁川方面から来るのか……少々引っ掛かります」
李 通「先の戦いでは、甘寧の隊は潁川から来ただろう」
万 億「あれは、主力のいなくなったこの城を
    真っ直ぐ急襲するためです。
    今回のように兵多く、守りの堅いこの城を落とすには、
    あまりよい進撃路とは言えませんが。
    何か、別な意図があるのでは……」
李 通「深く考え過ぎではないか?
    俺が同じ立場であっても、潁川から来るぞ。
    その方が、洛陽と許昌を分断できるからな」
万 億「うーん、何か引っ掛かるのですが……」
李 通「そのようなことを気にしてもしょうがあるまい。
    それよりも我が娘よ、ひとつ提案があるのだが」
万 億「なんでしょうか?」
李 通「お前も成人してしばらく経ち、
    将としてももはや一人前だ。
    ……そこで、これよりお前は李通と名乗れ」
万 億「えっ? ……では、父上のお名前は?」
李 通「私も引き続き李通と名乗る。
    つまり親娘二代が李通だ」
万 億「よく呑みこめませんが……」
李 通「李通という名は、ここのところの敗戦で地に落ちた。
    そこで、汚名挽回のために……」
万 億名誉挽回
李 通「……名誉挽回のために、とある策を思いついた」
万 億「その策が、李通を二人にすることなのですか」
李 通「そうだ。李通が二人になれば、その活躍も2倍。
    また、敵に神出鬼没の印象を与える。
    どうだ、面白いだろう」
万 億「はあ、そういうことですか。
    しかし、味方にも紛らわしく思われるのでは?」
李 通「そこはほれ、あれだ。
    便宜上、李通父と李通娘に区別すればよい」
万 億「左様ですか……」
李 通「まずは金旋軍との一戦で試してみるとしよう。
    ふふふ、神出鬼没の李通……。
    なかなかカッコイイ通り名ではないか」
万 億「はあ」

失敗すれば汚名も2倍なのでは、と万億は思ったが、
それは言わないでおくことにした。
しばらくぶりに父が生き生きとした顔をしていたからだ。

この李通の策、どのような結果となるのだろうか。

    ☆☆☆

7月下旬、宛より金旋軍が出撃。
3部隊、総勢8万5千という数である。
魏延、甘寧、朱桓がそれぞれの隊の大将を務める。
魏延隊には蛮望・楽進・牛金・卞質、
甘寧隊には鞏恋・凌統・魏光・金玉昼、
朱桓隊には金目鯛・刑道栄・陳応・劉曄が付いた。
軍は、潁川の地を経由し、許昌を目指す。

許昌周辺2

すでに出撃前から、この動きは許昌には伝わっていた。
だが、これは金旋軍がわざと情報をリークしたものである。

計を上手に隠すには、嘘で塗り固めるのではなく、
真実の中にひとつだけ嘘を混ぜること……。

この作戦の主目的は許昌城にはなく、
まず、潁川に城塞を築くことである。
これは敵にそれを気取られないための策であった。

   甘寧甘寧   金玉昼金玉昼  魏光魏光

甘 寧「で、敵は出て来ないと見てよいのか?」
金玉昼「んー。わからんにゃ」
魏 光「わからない? 敵に気付かれる可能性があると?」
金玉昼「その可能性もないわけではないけど、
    それよりも、野戦で迎撃しようと
    気張って出てくる可能性があるにゃ」
甘 寧「ふむ。敵将夏侯淵は勇猛果敢と聞く。
    ありえない話ではないな」
魏 光「……しかし、それでは作戦に支障が出ませんか?」
金玉昼「要は、城塞の建設が始まっても、
    敵が攻撃できない状況にあればいいことにゃ。
    敵が出てきた時は頑張って抑えこみまひる」
甘 寧「うーむ、軍師も結構、大雑把な考え方をするな。
    やはり親娘か……似るものだな」
金玉昼「あー、甘寧さん。
    失礼なこと言ってるとその髭切り落とすにゃ
甘 寧「い、いや、それは勘弁してくれい。
    これが無くなると平衡感覚が狂ってしまう」
魏 光「(平衡感覚が狂うって……猫?)
    まあまあ、失礼なことって言っても、
    別に甘寧将軍も悪口のつもりじゃないでしょうし」
金玉昼「ちちうえに似てるって言われるのは、
    私にとって最大級の侮蔑の言葉にゃ」
魏 光「……(そこまで言うのか……)」

さて、対する許昌の夏侯淵軍団。
潁川への拠点建設の可能性を言い出す者はいなかったが、
しかし金玉昼の言ったように、迎撃部隊を出撃させてきた。

夏侯淵の隊2万5千、そして郭淮の隊1万5千、計4万。
夏侯淵の隊には李通・于禁・秦朗・郭奕が付き、
郭淮隊には梁興・荀域・傅巽が付いた。

   夏侯淵夏侯淵  李通李通   于禁于禁

夏侯淵「我が軍と比べ敵兵は2倍。しかし案ずるな!
    敵は長い道のりを行軍してきて疲れている!
    また城攻め前提の軍である、何の脅威があろうか!
    ここで奴らを蹴散らし、許昌を守るのだ!」
李 通「やるぞ……やってやる。一番槍を取ってやるぞ。
    ここで活躍し、名誉返上してやる!」
于 禁「それを言うなら汚名返上だろう。
    ま、頑張るのだな」

夏侯淵隊の先鋒は李通。
これまでの屈辱を晴らすべく、気合を入れて進軍する。
しかし実際には先に郭淮隊が先行し、
李通の一番槍はなくなってしまった。

近くに迫る郭淮隊に、金旋軍は目標を変えようとする。
すでに李厳が建設のための部隊を率いて宛城を発っており、
ここで敵軍を食い止めれば、潁川城塞の建設は可能になる。

だがここで、洛陽方面から知らせが入った。
洛陽より、曹仁・李典の2つの部隊が、
潁川を通って許昌に向かっているとのことである。
その数、合わせて1万5千。

許昌周辺3

しかし、攻撃部隊ならば金旋軍にとって脅威であったが、
両隊ともに許昌への移動を目的とする輸送隊であった。

いわゆる、『カモ』である。

   金玉昼金玉昼  魏延魏延   甘寧甘寧

金玉昼「まさか堂々と直通輸送するとは思わなかったにゃー」
甘 寧「陳留経由でぐるっと遠回りに送るというのが、
    まあ通常取る方法だろうからな。
    敵も焦っているのだろうか」
魏 延「で、どうするのだ、軍師」
金玉昼「このままだと、李厳さんの建設隊とぶつかるにゃ。
    いくら輸送隊とはいえ、多少の被害は出るにゃ。
    殲滅の必要性が有りまひる」
魏 延「ならば、私が蹴散らしてこよう」
金玉昼「いや、ここは2部隊でとっとと殲滅するべきにゃ。
    甘寧さんの隊も一緒に行くことにしまひる」
甘 寧「しかし、夏侯淵の総勢4万の軍も目前に迫っている。
   朱桓隊の2万5千だけで大丈夫なのか?」
金玉昼「……どうですかにゃ、朱桓さん」

   朱桓朱桓

朱 桓「10日程度なら持たせることはできるでしょう。
    しかし、それ以上長くなると難しいですな」
金玉昼「と、朱桓さんも言ってるので、
    すぐに敵を殲滅して戻ってくればOKにゃ」
魏 延「ふむ、まあ私に任せておけい。
    この軍師将軍魏延文長、
    伊達に金旋軍の筆頭武官を務めてはいない。
    甘寧隊の倍の早さで敵部隊を殲滅してみせよう」
甘 寧「はっ、何を言っているか。
    この安国将軍甘寧興覇、
    金旋軍随一の勇将と自負している。
    魏延隊の分の敵も倒し、後顧の憂いを絶ってみせる」
魏 延むむむ
甘 寧うぬぬ

睨み合う両者。
その間に、金玉昼が割って入った。

金玉昼「はいはい、張り合ってないで、とっとと行く!」
魏 延「うむー」
甘 寧「おうー」

朱 桓「……大変ですな、軍師」
金玉昼「毎回毎回、嫌になるにゃ……。
    やっぱり、あの二人の上に誰か欲しいにゃ〜」

魏延・甘寧を御すことのできる将帥。
そんな人物がいればどれほど楽かと、
最近の金玉昼は考えるようになっていた。

さて、金旋軍は3部隊のうち、
魏延隊・甘寧隊の合計6万の兵が方向転換。
曹仁隊、李典隊を殲滅すべく北上する。
残る朱桓隊2万5千は、迫る夏侯淵軍を待ち受け、
迎え撃つのだった。

洛陽からの部隊は、戦闘部隊ではないということもあり、
簡単に蹴散らすことができた。
魏延隊の蛮望・楽進らの突進の前に、
李典隊は為す術もなく全滅してしまった。

対する曹仁隊の方には甘寧隊が当たった。

金玉昼「えー、金旋軍では一般兵を若干名募集してます。
    年齢性別不問、新兵からベテランまで、
    幅広い方を好条件で優遇します!
    今なら、3食&おやつ付き!
    プラス、な、ななななーんと我が軍の
    武将アイドルの水着生写真もプレゼント!
    さあ、今すぐ金旋軍へ!」
敵 兵な、なんだってー!?(AA略)
甘 寧「おおっ、結構な数の敵兵が寝返ってるぞ。
    それに指揮系統も混乱している」
金玉昼「今にゃ! 恋ちゃん! 魏光さん!」

   鞏恋鞏恋   魏光魏光

鞏 恋「らじゃー」
魏 光「行きます!」

金玉昼の仕掛けた心攻による混乱に乗じ、
鞏恋・魏光が突破をかける。
これによって曹仁隊も大幅に兵を減らし、
最後は凌統の突進により全滅した。

なおこの戦いの後、寝返った兵たちに、
約束通りにアイドル武将の水着生写真が配られた。
だが兵たちは皆、口々に『騙されたー!』と呟いたという。

しかしそれ以外の待遇は言っていた通りであったため、
兵たちの不満もすぐに消えた。

なお、配られたその写真に映っていたのは、奴だった。

   蛮望蛮望

蛮 望ウッフーン

一方、朱桓隊は郭淮隊・夏侯淵隊と交戦を始め、
魏延・甘寧両隊の戻るまでの間、踏ん張ってみせた。

そんな中、潁川城塞の建設は開始される。
建設部隊の指揮を執る李厳も、
気合を入れて指示を飛ばしていた。

   李厳李厳

李 厳「いいかー! とにかく急げ!
    味方が踏ん張ってるうちだぞ!」
伊 籍「合点です李厳どの!
    ほーれまずは地ならしだ!」
李 厳「……伊籍どの、それはなんですか?」
伊 籍「なにって、トラクターですが何か?
    燃える男のォ〜♪ 赤いトラクタァ〜♪
李 厳「赤いトラクターはヤンマーでは……?」

隊に配置された伊籍トラクターの縦横無尽の活躍もあり、
急ピッチで城塞の建設は進められた。
その間、前線では激しい戦いが繰り広げられる。

潁川1

   郭淮郭淮

郭 淮「甘寧隊なにするものぞ! 突進!」
秦 朗「郭淮隊に負けるな! 突破せよ!」

郭淮隊の郭淮による突進、
夏侯淵隊の秦朗による突破を食らう甘寧隊。
魏光が夏侯淵隊を突破せんと図るが、
これは于禁に防がれてしまう。

  甘寧甘寧   凌統凌統

甘 寧「くっ、流石は曹操軍の名将たちだ。
    夏侯淵、于禁、まさかこれほどまでの強さとは……」
凌 統「感心してる場合かっ! 押されてるぞ!」
甘 寧「ええい、そう騒ぐな!
    なんとしても城塞へは行かせるな!」

流石の彼らの隊も、集中的に攻撃を受け、
ジリジリと後退を余儀なくされる。

続いて何者かの計略により撹乱させられ、
さらには荀域の仕掛けた穴罠に嵌まり、隊は窮地に陥った。

ズガンボーン

魏 光「た、助けてー!」
凌 統「魏光が落とし穴に嵌まったぞ!」
鞏 恋「そんなのほっといて!」
魏 光「ひ、酷いです鞏恋さぁーん! へるーぷ!」
鞏 恋「今はそれどころじゃない! 応戦が先!」
凌 統「しかし、応戦といっても大将がこれでは……」
甘 寧ああ、大きな光がついたり消えたりしてる。
    あはは、大きい、花火かな。
    いや、違うな。花火はもっとこう、
    バチバチバチーって燃えるもんな
金玉昼「あがー!? 甘寧さんが錯乱してるにゃー!?」
凌 統「水をぶっ掛ければ治るか?」
金玉昼「一時的な錯乱なら、それもいいかも……。
    って凌統さん!? それ油、油!
    んなの浴びせたら、甘寧さんが燃やされちゃうにゃ!」
凌 統「……チッ」
金玉昼「チッ?」
凌 統「いや、なんでもない(※)

(※ 凌統は昔、甘寧に父を殺されたため、
 彼にいつか復讐をしようと思っているのである)

……このバタバタとしている隊の様子を、
高台より眺める一人の人物がいた。

???「ふうん、なかなか上手く決まったようね。
    この光を使った催眠、それなりに有効なようだわ……。
    さて夏侯淵どの……後は貴方次第ですよ」

にやぁ、と不気味に口元を歪めて、
その人物は馬を返し去っていった。

大混乱の上に集中攻撃を浴びる甘寧隊。
その危機を救ったのは、朱桓隊の刑道栄であった。

刑道栄「突撃! 突撃! 突撃ィィィィ!
    郭淮隊を蹴散らせぇぇぇ!!」

活躍の場を与えられた猪武者は、
郭淮隊に韓遂ばりの突撃で突っ込んでいく。
魏延隊にも攻撃を受けて数の減っていた郭淮隊は、
これにより全滅した。
その間に、甘寧隊はようやく混乱を収めることができた。

だが、夏侯淵軍の猛攻は予測以上のものであり、
抑えるどころか、逆に押されているくらいであった。
気付けば前線は、城塞の建設地のすぐ側にまで
下がってきていたのである。

夏侯淵「郭淮隊は全滅したか」
于 禁「そのようですな。さて、ここから如何しますか」
夏侯淵「敵はあの地に城塞を築き始めている。
    これをどうにかして妨害したい」
于 禁「とはいえ、兵力の差は歴然ですぞ?
    張哈が汝南から援軍を率いて来てるそうですが、
    これを足しても微妙なところです」
夏侯淵「気合で負けていては兵力の差も跳ね返せぬ。
    李通! 押して押して押しまくれ!
    そして敵の建設部隊を攻撃せよ!」

李 通「はっ! 承知!」

兵力では金旋軍が優位に立ってはいたが、
夏侯淵軍の捨て身とも言える攻勢に押され、
城塞建設地との距離がほとんど無くなっていく。

伊 籍風に逆らうゥ〜♪ 俺の気持ちをォ〜♪
    知っているのかァ〜♪ 赤いトラクタァ〜♪
    ……おや、あの土煙はいったい……」
李 通よっしゃー! 一番乗りぃー!
伊 籍「ヒィーーーーー! 曹操軍!?」
李 通神出鬼没の特攻野郎、李通様参上!
    この地に城塞を作るなんてな、お天道様が許しても、
    この俺が許しはしねえぜぇー!
    (フッ、決まった。俺様カッコイイ!)」
伊 籍「ひ、ヒィィィ、おた、おた、おたすけー」
李 通「そうは行くかぁ! 覚悟!」

だがその時、不敵な笑いがこだました。

『はっはっはっはっはっは』

李 通「だ、誰だ!」
???「無抵抗の相手を蹂躙しようとする不逞の輩!
    この私が相手になってやろう!」
李 通「な、何ィ!? カッコイイこと言いやがって!
    てめえ、名を名乗れ!」

   韓遂韓遂

韓 遂「ならば教えてやろう、我が名は韓遂!
    そして率いるは、金旋軍の精鋭騎馬軍団よ!
    かかれえ!」

韓遂の号令で、宛から新たに来た3万の騎馬隊が
夏侯淵隊に一斉に襲いかかる。
城塞の建設地にまで迫った夏侯淵隊であったが、
韓遂の突撃、秦綜の飛射などにより、
後退せざるをえなくなってしまった。

潁川2

李 通「……くそっ、韓遂め!
    もう少しで奴らを潰すことができたのに」

汚名を返上する機会を逸して悔しがる李通。

両軍の戦いはまだ続くが、以後の夏侯淵軍は、
城塞へ迫る機会を得ることはできなかったのだった。

次回へ続く。

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