○ 第五十三章 「炎の女王」 ○ 
214年6月

軍師金玉昼は劉璋との戦いの後、
霍峻・黄祖を襄陽に残し守備に当たらせ、
自身は宛へと戻った。

   金玉昼金玉昼    下町娘下町娘

金玉昼「たーだーいーまーにゃー」
下町娘「おーかーえーりーなさーい」

疲労でヘロヘロになった金玉昼を、
これまたヘロヘロの下町娘が出迎える。

金玉昼「お疲れモード?」
下町娘「んー。ちょっと事務処理が多くてねー。
    玉ちゃんもお疲れ?」
金玉昼「私は旅疲れにゃ。馬なんて乗り慣れてないから」
下町娘「最近の四輪車はなかなか進んでるらしいよ。
    そっちに換えたら?」
金玉昼「どうも最近の四輪車は嫌いにゃ。
    なんか居住性、運搬性ばっかり追及されて、
    カッコ悪かったり走りがイマイチだったりしてるにゃー。
    どうせならこう、走りの楽しめる、
    それでいてカッコイイ四輪車を出して欲しいにゃ」
下町娘「けっこう詳しいね……」
金玉昼「ま、それほどでも。
    それにしても、なんかこの城の中、
    以前よりものものしくなった感じにゃ」
下町娘「そうだねぇ、かなり兵も増えたし、
    それを連日訓練してるからね」

宛城では馬騰との戦いの後、兵力増強のため、
徴兵・訓練が何度も行われていた。
それは宛だけではなく、他の都市でも同様だった。

 『兵を増強せよ』

その金旋の指示で、勢力内の全都市で徴兵が行われた。
ともすれば性急とも思われるほどの早さで、
金旋軍の総兵力は増えていく。
『お助け探索』も一次的に休止となり、
全ての都市で軍備増強が図られた。

金玉昼「ふーん、そういうこと。
    先の戦いで、ちちうえも兵力不足を実感したのかにゃ。
    前は、攻めるにはちと足りなかったからにゃー」
下町娘「うん、金旋さまもそんなこと言ってたよ。
    他の勢力を睨みながら曹操と戦うには、
    やはり曹操と同じくらいの兵力がないとダメだな、って」
金玉昼「あまり増やさないように来てたからにゃ。
    ここらでパワーアップしとくのもいいにゃ」
下町娘「私としては、資金や兵糧が足りるか心配だけど……」
金玉昼「お金は別に問題ないにゃ。
    税も十分だし、たまに商業投資で儲けてるみたいにゃ」
下町娘「兵糧は?」
金玉昼「ちょっと微妙なとこだけど、秋には年貢もはいるし、
    米相場も安いだろうから大量に買いこめばいいにゃ」

この徴兵に掛かる費用には、
今まで蓄えられた金銀が充てられた。
これまで内政に励み、貯めてきた蓄えである。

また、宛城では、探索中にたびたび商業投資の誘いがあり、
その投資の成功によって、かなりの財が蓄えられていた。

兵糧は、6月の時点ではギリギリといったところだったが、
秋には年貢米も入り、また商人から買いこむことで、
当面の兵糧を確保するのだった。

金玉昼「あー、そういえば。
    手紙で出しといた城塞の件はどうなったのかにゃ」
下町娘「あ、新城の城塞ね。
    金旋さまから、建設の命令が出たみたい」
金玉昼「ん、それなら安心にゃ。新城に城塞があれば、
    襄陽へ真っ直ぐ攻められることも無くなりまひる」

襄陽と永安を結ぶ地、新城。
金玉昼はここに、城塞を作ることを先に提案していた。
この城塞が完成しさえすれば、
先の戦いのように襄陽が直接標的になることは避けられる。
金旋の命により、霍峻が指揮し城塞建設が進められた。

新城城塞建設地
新城城塞建設地

下町娘「あ、また南から兵士団が来た……。
    これでまた仕事増えるぅー」
金玉昼「他の都市で増えた兵が送られてきてるのかにゃ」
下町娘「そーなの、それの登録作業が大変なんだってば。
    もう各地から送ってくるんだもん」
金玉昼「ま、今後の戦いのためだからにゃ」
下町娘「そりゃね、勝つために必要なんだろうけど……」
金玉昼「私も手伝うから、頑張りまひる」
下町娘「おー、がんばるよー。超がんばるー」

荊南四郡の余剰兵力は江陵へ送られ、
江陵は夷陵城塞の兵力を増強しつつ襄陽へ送る。
そしてそれらの都市や西城、江夏などから、
新野、そして宛へと送られる。

迎撃体制
兵力派遣経路

季節が秋を迎える頃には、
金旋軍は曹操軍をも超える強大な兵力を有するようになった。
宛城の兵は、13万近くにまで膨れ上がったのである。


214年7月

7月、季節は秋。宛城。
金旋は城内の庭で何やら食べながら、まったりとしていた。

   金旋金旋

金 旋あーきのゆーうーひーにー♪
    てーるーやーまーもーみーじー♪

   下町娘下町娘

下町娘「何の歌ですか、それ」
金 旋「詳しくは知らんが、年頃の二人の女の子を唄った歌だ」
下町娘「……は?」
金 旋『秋野ゆうひに、照山紅葉。
    恋申す芋、数ある中に』
という歌詞だ」
下町娘「……恋申す芋ってなんですか?」
金 旋「焼き芋のことだろうな」
下町娘「はあ……。だから、
    焼き芋食べながらその歌を歌ってるんですか?」
金 旋「そういうことだ。あ、一本食う?」
下町娘「いりません」
金 旋「美味いのに……」
下町娘「軍議やるからって招集かけた本人が、
    のほほんと焼き芋食べてないでください!」
金 旋「お、集まったのか」
下町娘「だから呼びに来たんですよ。ほら、早くしてください」
金 旋「うし、じゃ行くぞ」

金旋は下町娘に連れられ、
ズラリと将たちの並んだ会議室へと入っていった。
霍峻・黄祖・馬良が襄陽、
費偉が新野、文聘が武関に派遣されてる他は、
軍主力のほとんどの顔ぶれが揃っていた。

金旋はその顔ぶれを見て頷くと、一言、言葉を発した。

金 旋上洛を果たすぞ

   魏延魏延    甘寧甘寧

魏 延「上洛……!」
甘 寧「洛陽に我が軍の旗を立てるということですな!」
金 旋「うむ。だが、真っ直ぐ洛陽に向かうわけではない。
    その途中にある許昌などを固めながら攻め上がる。
    先の戦いは奇襲戦法を取ったが、今回は正面から行く。
    そして洛陽を落とし、皇帝陛下をお救い申し上げる」

侵攻計画
上洛作戦

金旋の口から大きな目標を聞き、諸将の顔が引き締まった。

荊州統一後に金旋が明確な目標を口にするのは、
これが初めてである。
曹操軍との対決という点では一貫していたが、
洛陽を落とし皇帝を救うという具体的な方針を出したことで、
将たちにもさらにやる気がみなぎるようであった。

金 旋「では、玉。戦略を」
金玉昼「はいにゃ。
   まず最初は、許昌を落とすことが目標になるにゃ。
   この地を落としさえすれば、
   我が軍の喉元である新野も安全になり、
   また陳留や汝南を窺うこともでき、
   曹操軍に多大な脅威を与えることになりまひる」

   楽進楽進

楽 進「質問よろしいかな」
金玉昼「どぞ」
楽 進「許昌は先の戦いで兵を幾分減らしはしたが、
    新たに数万の増援が送られてきている。
    また許昌太守も夏侯淵という格上の将に代わった。
    これを攻めるのは、それなりに骨が折れるが」
金玉昼「確かに、許昌は宛からの距離も少しあり、
    普通に戦ってはこちらも痛手を受けまひる。
    そこで……」

玉は、広げた地図のあるところを指差した。
宛と許昌を結ぶ街道の真ん中。

潁川
潁川

金玉昼「この潁川の地に城塞を築くのにゃ」
楽 進「城塞を……!?」
金玉昼「この地に城塞を築けば、許昌、及び洛陽を
    攻めるための前線基地として利用できまひる。
    また、敵部隊が出てきても落石などで
    迎え討つことが可能にゃ」

   韓遂韓遂

韓 遂「なるほど、城塞があれば攻めるにも守るにも、
    かなり優位に戦えよう。
    ……だが、奴らも城塞の建設を指を咥えて
    見ているほど甘くはない。必ず軍を出してくる」
金玉昼「そう。だから城塞建設するためには、
    敵が出て来ないようにさせるのにゃ」
韓 遂「どうやって?」
金玉昼「そのための10万を超える大兵力にゃ」
韓 遂「ははあ……そういうことか」
楽 進「どういうことだ?」
韓 遂「要するに、『雄鶏が戦い、雌鶏が巣を作る』
    と、そういうことだな」
楽 進「なるほど。軍を出し許昌の兵を抑えこみ、
    その間に城塞を作るのか」
金玉昼「気取られないために、大々的に許昌を攻める、
    という風に見せておくのにゃ。
    実際のその部隊の役目は、
    城塞の建設部隊を守ることになるけどにゃ」
楽 進「ふうむ。巧い手を考えられたな」
金玉昼「そういうことで、まず許昌を大部隊で攻撃し、
    それから城塞の建設に入ることになるにゃ」
楽 進「うむ、承知した。これならば、
    いかに夏侯淵といえど太刀打ちできまい」
金玉昼「今ので大体、作戦の説明はしちゃったけど、
    他に何かあるかにゃ?」
鞏 恋「はい」

珍しい人物の手が上がった。
軍議での彼女は、寝ているか話を聞いてないか、
いつもこのどちらかである。

   鞏恋鞏恋

金 旋「おう、鞏恋。なんだ?
    トイレ行きたいとかそういうネタはダメだぞ」
鞏 恋「んなこと言わないよ。
    ……曹操軍はそれでいいけど、
    他の勢力に対して何かやっとかなくていいの?」
金 旋「……ふむ、珍しく至極まともな意見だな。
    魏光、ちょっと熱ないか測ってくれ

   魏光魏光
魏 光「はい、わかりました。
    ……うーん、けっこう冷たいですね。
    平熱みたいです……あいだだだだ!
    つ、つねらないでください!」

額に当てられた魏光の手を、思いきりつねり上げる鞏恋。
それを見て、諸将が笑い声を上げた。

金 旋「……さて、場が和んだところで答えるかな。
    そうだな、諸勢力に対して手は打つべきだろう。
    孫権、馬騰、饗援に金を贈ろうと思うが」
金玉昼「わかったにゃ。使者を選んでおきまひる」
下町娘「劉璋はいいんですか?」
金 旋「馬鹿にやる金はないよ。こっちの守りは万全だ、
    せいぜい三方から睨まれて竦み上がってればいい」
下町娘「はあ……手厳しいですね。
    自分の知力は棚上げですかー」
金 旋「誰が馬鹿じゃコラ。
    ……じゃ、外交交渉が終了した後に出陣とする。
    各自、準備をしておけ」
諸 将「ははーっ」

こうして、孫権・馬騰・饗援に対し金を贈ることになった。
馬騰への使者は費偉が、
孫権への使者は馬良が担当することになった。
そして、饗援への使者には……。

使者に選ばれたのは、鞏志であった。
金旋は夷陵城塞にいる鞏志へ手紙を送る。

『饗援と和し、ついでに政情を見てきてくれ』

それを受け取った鞏志は、饗援のいる雲南へと向かう。

 ☆☆☆

季節は秋になったというのに、気温は真夏なみ。
雲南に入った鞏志は、手ぬぐいで首すじの汗を拭った。

   鞏志鞏志 

鞏 志「やれやれ、同じ中華でここまで違うか。
    さすが南国、トロピカルドムだな(※)

(※ 実際の雲南地方は、高地にあり、
 暖かく過ごしやすい気候と言われている。
 しかしながらこのリプレイでは南国の暑苦しい気候とする。
 ムードの問題なのでこの件へのツッコミは不可である)

護衛兵「鞏志さま、休憩いたしませんか。
    この暑さでは、馬まで参ってしまいます」

饗援に贈るための金を護衛する兵が、へばった声を出した。
ジャングルと言って差し支えないほどのところだ。
高い気温と湿気は、この街道を通る者の体力を激しく奪う。

鞏 志「しかし、この役目はなるべく急がねばならん。
    今日中には、雲南の城まで辿り着きたい……ん?」

ガサガサ、と周りの草が揺れる。
そこから、水着のような鎧を着た数十人の女たちが現れた。
あっという間に鞏志たちを取り囲み、槍を構える。
それでも鞏志は平静を装い、声を掛けた。

鞏 志「饗援軍の者か? 私は金旋軍の使者、鞏志だ。
    饗援どのにお目に掛かりたい」

それを聞いたからか、女兵士たちの中から、
一人の長身の女が前に進み出る。
筋骨隆々というわけではないが、
これまで鞏志が見てきたどの荊州の女性たちよりも
立派な体躯をしており、
一目で彼女が饗援軍の武将であることが伺えた。

   慧雲慧雲
慧 雲「私は饗援軍の慧雲である。
    貴公が金旋軍の使者という証はあるのか?」
鞏 志「君主金旋の書状を持っている」
慧 雲「そうか。それを出してもらおう」
鞏 志「ひとつお聞きしたいが……。
    貴方が私と同じ立場に立たされた時、
    はいどうぞと渡しますかな?」
慧 雲「ふむ……そうだな、ではついて来い」

慧雲は鞏志らを先導し、街道を進んでいった。
やがて視界が開け、雲南の城が見えてくる。

鞏 志「……なんと」
護衛兵「ほげー」

鞏志らは声を失った。
益州南部の片田舎であるはずのこの城は、
規模こそ多少小さめではあるものの、城壁も立派で、
その往来も賑やかで活気に満ち溢れていた。
彼らのいた武陵や江陵と比べても遜色ないほどである。

そして特筆すべきはそこにいる民たち。
女性ばかりが往来を歩き、商売をし、
物を作り、酒を酌み交わす。
男は数えるほどしかおらず、いたとしても
ボロを着た奴隷のような者たちばかりであった。

慧雲に連れられ歩いていく鞏志たちを、
町の女たちは物珍しそうに見ている。

鞏 志「饗援は、たった十数年でこれだけの都市を、
    そして女の支配する社会を作り上げたのか……」

鞏志はまさにカルチャーショックを受けていた。
他の都市はまだ支配して間もないであろうが、
いずれこのような都市になっていくのであろう。
それを考えると、彼は恐ろしくなってきた。

だが、その脇から嬉しそうな声が。

護衛兵「いやいや、女の楽園って聞いてましたけど、
    実に華やかですな〜♪」
鞏 志「……お前、そのために志願してきたのか」
護衛兵「いやあ、自分も健全な男っスから」
鞏 志「やれやれ」

鞏志は謁見の間に通され、饗援が現れるのを待つ。
ここにいる兵も女たちばかりで、男の姿はない。
やがて、供を2人連れた女性が、鞏志の前に現れた。
供のうち、1人は先ほどの慧雲。
もう1人は軍師らしき佇まいであった。

やがて女性は鞏志と向き合い、一礼する。

   饗援饗援

饗 援「遠路はるばる、よく来られた。
    私が炎(エン)の長、饗援である」
鞏 志「金旋軍使者、鞏志です……。
    失礼ですが、炎とは?」
饗 援「炎とは元は我々の部族の名。
    今はこの勢力の名だと思っていただきたい」
鞏 志「左様でございますか」
饗 援「して、使者と申したが? 金旋どのが何用か」
鞏 志「はい。金旋さまは、貴方の勢力……。
    炎と友好を深めたいと望んでおります。
    そのための土産として、金1万を持って参りました」
饗 援「そうか。劉璋との戦いに集中するため、
    我らとしても願ってもない話だ」
鞏 志「ありがたきお言葉」

鞏志は金旋からの書状を渡した後、
護衛兵に指示し、金を運ばせる。
兵は軍師らしき人物に連れられ、奥へ入っていった。
饗援はそれを目で見送った後、なぜか溜息をついたが、
その後すぐに気を取り直し、鞏志に向き直った。

饗 援「金旋どのは近々、大きな戦いを始めるのか」
鞏 志「……なにゆえ、そう思われますか」
饗 援「貴公がここにいるからだ。
    後ろを気にしなくてはならないほどの行動を、
    これから起こすのであろう?」
鞏 志「……」
饗 援「ふ、まあ答えずともよい。
    そうだな、南と西はご心配なさらずともよい、
    と金旋どのにお伝えなされ。
    炎は金旋軍の盟友として、劉璋を抑えてやろうとな」
鞏 志「はっ、伝えまする」
饗 援「できれば、末永く仲良くしていただきたいものだ」

口調は非常に友好的であり、返事もよいものであった。
だが彼は、彼女の醸し出す雰囲気に冷や汗を禁じえない。

鞏 志「(まさに英雄だ。これほどの人物はそうはいない)」

主君である金旋を信奉している鞏志ではあったが、
金旋はこれほどまでに英雄然とはしていない。
むしろ彼は凡人であるが故、努めて英雄たろうとしている。

だが、目の前の饗援はどうだろうか。
ただそこにいるだけで呑み込まれてしまうような、
ただならぬ威圧感。

鞏 志「(この雰囲気、例えるなら虎だ。
    虎は支配されるのを嫌い、孤高を好む生きものだ。
    いずれは、相争う相手になるのだろうか……)」

押し寄せる不安を押し殺し、鞏志はその場を辞した。

そしてすぐに夷陵へと戻り、金旋への手紙を書く。
交渉の経過などをしたためた後、最後に次の一文を入れた。

『饗援は天下の英傑也。ゆめゆめ油断なされぬよう』

しかし、先の未来がどうなるかはともかく、
現在の饗援との友好関係を作れたのは事実である。
孫権・馬騰とも信頼関係を築くまでになり、
金旋軍は曹操との対決姿勢を強めるのであった。

外交
外交関係

鞏 志「……おや?
    そういえば、何か忘れているような……」

    ☆☆☆

雲南城、その地下。
そこに甲高い笑い声と、悲鳴が響いていた。

   櫂貌櫂貌

櫂 貌おーっほっほ! 軍師様とお呼び!

ピシャーン!

護衛兵「アギャー! か、勘弁してくださいぃぃぃ」
櫂 貌「うふふ、だーめーよ♪
    久しぶりの若い男なんだから、楽しませてくれないと!
    えいえい! ほら、軍師様って呼びなさい!」

ピシャーン! ピシャーン!

護衛兵「ウヒャー! ぐ、軍師様ァァァ!」
櫂 貌「よくできたわね、ご褒美のムチよ!」

ピシャーン!

護衛兵「ギャー! どっちにしても叩くんですかーっ!」
櫂 貌「当たり前でしょ? 貴方はもう、私の、モ・ノ♪」
護衛兵「助けて、助けて鞏志さまーーーっ!」
櫂 貌「おーっほっほっほっほっほっ……」

ピシャーン!

 『ギャヒーーーーッ!!』

   饗援饗援    慧雲慧雲

慧 雲「……また、地下で軍師がやってる模様です」
饗 援「放っておけ……。
    あれの男好きは、死んでも治らん」
慧 雲「よろしいのですか? 仮にも金旋軍の兵ですが」
饗 援「返せと言われない限りはよかろう。
    別に殺すわけではないのだからな」
慧 雲「わかりました。
    しかし、金旋軍の方から金を贈ってくるとは……。
    しかもそれをお受けになるとは思いませんでした」
饗 援「奴らも我らも同じよ。
    勝つためにはあらゆる手を尽くす。
    まず劉璋を叩かねば、先は見えてこない」
慧 雲「そのために、男を手を結ぶのも厭わないと?」
饗 援「そういうことだ。
    だが、それによって私の志が変わることはない。
    愚かな男共を排除し、女の支配する天下を作る!

饗援はそう言って、握り拳を突き出した。
慧雲は頷き、その拳に自分の拳をぶつける。

雲南に燃え上がった炎は、益州を北上していく。
この炎は、どこまで燃え広がるのだろうか?

そして、金旋軍の上洛作戦。
果たして上手くいくのであろうか?

次回に続く。

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