○ 第三十章 「ぞうさん ぞうさん しんやをせめるのね」 ○ 
211年10月

襄陽。
主力部隊が湖陽へと出払い、城内に残っている将は金旋以下数名。
内政の書類をようやく片付けた金旋は、少しの休憩を取っていた。
そこへ下町娘がやってくる。

   金旋金旋    下町娘下町娘

下町娘「金旋さまー」
金 旋「ん、何かね」
下町娘「ちょっと質問あるんですけど、いいですか?」
金 旋「ふむ、いいだろう。何でも聞きたまへ。
    しかしスリーサイズは教えないぞ?」
下町娘「そんなもの聞きませんってば。
    でも男の人もスリーサイズってあるんですか?」
金 旋「ん? 男の場合は、
    腹周り・アレの大きさ・座高
    スリーサイズと言うんだぞ」
下町娘「ほ、ほんとですか!?」
金 旋「うそ」
下町娘「……殴っていいですか? グーで」
金 旋「いや、勘弁」
下町娘「あー、でもそのスリーサイズだと、金旋さまは
    ボンッキュッボーン、ですね」
金 旋「失礼な。これでも若い頃は
    スマートダンディ金ちゃんと呼ばれてだな……。
    待て、何でキュッを知っている?」
下町娘「あ、そうなんですか? 当てずっぽうだったんですけど」
金 旋「……あー。いや、でもね、これでも膨張率は凄いのよ奥様」
下町娘「私は未婚です。それより話脱線しまくりなんですけど」

下町娘が真面目な顔をしたので、金旋も姿勢を正した。

金 旋「あーはいはい、質問ね。何を聞きたいのかね」
下町娘「少し前に湖陽で許猪隊に攻撃しましたよね(※前章参照)。
    あれって玉ちゃんが判断して仕掛けたらしいですけど、
    それがちょっと腑に落ちないんです」
金 旋「腑に落ちない? なんで?」
下町娘「攻撃しないでそのまま許猪隊に江夏を攻撃させた方が、
    曹・劉、両方の戦力を削れて一石二鳥だったのでは?」
金 旋「ふむ。そういう選択肢もあるな。しかし……」
下町娘「何も考えない金旋さまならともかく、
    計算高い玉ちゃんが何でそうしなかったのかなーって」
金 旋「君は質問したいのか、俺をけなしたいのかどっちなのかね。
    ……まあ、玉とは常々話をしてるからな。
    町娘君、我が軍に足りないものは何だと思う?」
下町娘「えーっと、君主の知力……?
金 旋うがー!
下町娘「いえその、パッと思いつかないんで……」
金 旋「ふむ。いいかね?
    襄陽・江陵・荊南と富んだ都市を領して、
    曹操に及ばないにしろ兵力・財力もついてきた。
    優秀な軍師・将軍もいる。ついでに美人の秘書もな」
下町娘「えへへー」
金 旋「しかし、足りないものもある。
    まあ俺の知力も足りないっちゃ足りないが、
    それはどうにもならんので除外」
下町娘「そうなんですか?」
金 旋「そうなんですよ悲しいことに。
    で、足りないものとは何か。
    それは『頭数』『経験』だ」
下町娘「あたまかず……って人材の数ですか?
    確かに他と比べると少ないですよね(※)

(※この時点で曹操軍が100人を超える将を抱え、
 孫権軍も80人ほどいるのに対し、金旋軍は30人程度。
 劉璋軍にも負けている)

金 旋「それはいずれ劉埼軍の将を吸収して増やす腹積もりだが。
    今回の攻撃は、もうひとつの『経験』のためかな」
下町娘「経験……というと?」
金 旋「ま、言い代えるとだな。
    『頭数』が『人材の量』だとすると、
    『経験』は『人材の質』だな」
下町娘「人材の質ですか? でも玉ちゃんとか恋ちゃんとか、
    他の軍の将と比べても能力は引けを取りませんよ」
金 旋「確かに、能力はな。
    しかし、実際に兵を動かすのは、能力高いだけではダメなのだ。
    熟練度が高くないと、兵法を見透かされて防御されたり、
    計略も見え見えの策になったりする。
    つまり、何事も経験が大事なのだ」
下町娘「要は将たちに経験を積ませてより強くするため、
    ということなんでしょうか?」
金 旋「そういうこと。実戦の中でこそ得るものも多い。
    こうやって百戦錬磨の将を作り上げていこうというわけだ。
下町娘「はあ〜」
金 旋「ま、中華統一という遠大な目標のために、
    中長期的な視野で考えているわけだな」
下町娘「なるほど……。そこまで考えてるなんて。すごいですね」
金 旋「ふふん、すごいだろう」
下町娘「え? 今のって玉ちゃんがそう考えてるってことですよね?」
金 旋「いやいや、基本は俺。
    玉はそれを聞いて実践してるに過ぎん」
下町娘「えー。ちょっと信じられませんねー」
金 旋「信用ないなあ……で、用事はその質問だけか?」
下町娘「え、あー。そういえばお知らせがあったんでした」
金 旋「お知らせ?」

下町娘は小脇に抱えていた資料を取り出し、読み上げる。

下町娘「先月末のことなんですが、孫権軍の攻撃により、
    曹操領の汝南が陥落したらしいです」
金 旋「ほお。汝南といえば、名将夏侯淵が守ってたと思ったが。
    それでも落ちたか」
下町娘「孫権軍も大兵力を投入してるみたいです。
    それに、攻撃中の小沛城も陥落間近のようですね。
    かなり本気になってるんじゃないですか?
    これが届いた資料です」
金 旋「ふむふむ……。これによれば孫権は、
    10万規模の兵力を新たに寿春以北へ送っているな。
    反曹操連合が生きてるうちに、ガンガン行こうってか」

寿春周辺マップ

下町娘「で、こっちはガンガン行かないんですかー?」
金 旋「前にも言ったろ。
    新野を取らないと、どこにも行けないんだって。
    でも今の新野は連合組んでる劉埼の領だし……」
下町娘「そうですかー。
    そういえば、その新野は曹操軍の攻撃を受けてるそうですね」
金 旋「なにっ!? まことかっ!?」
下町娘「ええ、まことちゃんですよー。
    宛からの曹彰隊1万5千の攻撃を受けて、
    旗色が悪いらしいです」

新野周辺

金 旋「そーかそーか! 曹操軍が来てたのか!
    よーし、湖陽港の玉たちに出撃準備を急がせてくれ!
    ちょい前に蛮望と兵1万を派遣してるし、充分足りるだろ」
下町娘「はい、劉埼軍の救援に行かせるんですね」
金 旋「は? 何を言っとるのかね。んなことはせんよ」
下町娘「え? だってさっきは経験積むのがどうこうって」
金 旋「いや。劉埼軍のために曹彰隊を迎撃させる気は全くない」
下町娘「じゃあ、どういう……」
金 旋「新野が落ちたら、すぐに奪うためだよ」
下町娘「と、いうことは劉埼軍は見殺し……」
金 旋「まあそういうことになるわな」
下町娘「うわー。極悪非道ですー」
金 旋「そこはそれ、中華統一のための尊い犠牲ということで……」
下町娘「なんか綺麗な言葉で誤魔化そうとしてますね」
金 旋「うっさいな。劉埼軍に借りがあるわけでもないし、
    別にいいだろ」
下町娘「あ、開き直った」
金 旋「恨むのなら、新野を取ってしまった身の不幸を恨むのだな。
    つーことで、玉たちへの伝達よろしく」
下町娘「は、はあ。伝達の内容は?」
金 旋『新野への攻撃用意。陥落後出撃』
    これでいいだろ。
    この内容なら玉ならすぐに理解するはずだ」
下町娘「はーい。すぐに出しますー」

襄陽からの伝達は、すぐに手旗信号で湖陽港へと送られた。
さて、それを受けた湖陽港では……。

   魏延魏延    金玉昼金玉昼

魏 延「軍師。襄陽より手旗信号で伝達が参ったのだが……。
     って何をしておられる? 鞏恋どのや魏光まで……」
金玉昼ジェンガにゃ。はい、次は恋ちゃんの番」

   鞏恋鞏恋    魏光魏光

鞏 恋「ん。……はっ。……はい、次」
魏 光「私の番ですか……。ちょっと危ない感じですね」
魏 延「ふむ……下から木を抜き取り、積み上げていく遊びか。
    どれ光、私にやらせろ」
魏 光「あ、父上、そこを抜いては……」

ガラガラガラ

鞏 恋「あー」
金玉昼「支えになってるのを抜いちゃダメにゃー」
魏 光「父上はもう少し細かいところに気を使わないとダメですよ」
魏 延「う、うるさい!
    い、今のはわざとだ! ついうっかりだ!
魏 光「どっちなんですか」
魏 延「それより、襄陽からの伝達だ。軍師、これを見てくれ」
金玉昼「えー、なになに……。
    『深夜屁の攻撃容易。甘落語出撃』
    ……意味わからんにゃー」
鞏 恋「何かの暗号かな」
魏 光「深夜は屁で攻撃するのは簡単だ……。
    つまりこれは、夜襲の準備をせよということでは?」
魏 延「ふむ、屁で攻撃するというのは、寝てる相手にしかできぬな。
    ということは城の中にいる者……つまり目標は新野城か」
鞏 恋「でも、『甘落語』の意味が不明……」
魏 光「甘……というのは、甘寧どののことではないでしょうか」
魏 延「ほほう、なるほど。
    つまり『甘寧に落語をさせてから』という意味か」
金玉昼「新野城は今、曹操軍に攻撃を受けていまひる。
    つまり、今の状態では新野城は取れないから、
    陥落するまで甘寧さんの落語で待ってろということかにゃ」
鞏 恋「さすが玉ちゃん。頭いい」
魏 光「ということは、全てを総合すると……。
    『新野への攻撃用意をして、陥落後に出撃せよ』
    ということですね」
魏 延「ふむ。そういうことなら、すぐに準備せねばな」
金玉昼「早速用意しまひる」

   
       ぞろぞろぞろ……
   

魏 延「というわけで、貴殿の落語を聞きに参った。
    殿のご命令だ、宜しく頼むぞ」

   甘寧甘寧

甘 寧「な、なんと!?」
金玉昼「落語ってよく知らないから楽しみにゃー」
鞏 恋「落語で有名な噺は『まんじゅうこわい』『寿限無』とかかな」
魏 光「へー。詳しいですね」
鞏 恋「結構好きだから」
金目鯛「しかし意外だな。落語なんてそう出来るものじゃないだろ」
霍 峻「いや、私も甘寧どのがこんな特技を持ってるとは、
    全く知りませんでした」
卞 柔「私も初めて聞きました。楽しみですねえ」
蛮 望「ああん甘寧さま、じらさないでぇん。は・や・く♪」
甘 寧「(ま、まずい……まずいぞ……。
    何か皆、期待しているではないか……。
    しかし、落語をやれと言われてもなにをすれば……)」
魏 延「どうした。皆待っているぞ」
甘 寧「う、うむ、わかった。
    (こうなったら、今までの人生話でもするか……)」

甘寧は今までの自分の人生話を話して聞かせた。
益州の巴郡に生まれ、江賊を経て劉表に仕え、
金旋の将となるまでの話だ。

甘 寧「……と、黄祖の兵が蹴散らされていく。
    これでは持たない……皆がそう思ったかもしれない。
    しかしその時、私は颯爽と現れた。
    『そうはいかんねい!』と!」

やんややんや

甘 寧「……獄中で殿の人柄を知り、登用に応じた。
    そして後はご存知の通り。
    殿に働き場を貰い、こうしてここにいる。
    俺は命尽きるまで、この髭を大事にするだろう。
    以上、終わり」

ぱちぱちぱち(拍手)

金玉昼「ぱちぱちぱち」
鞏 恋「オチは弱いけど人情噺としては良かった」
金目鯛「落語って言うよりは講演みたいな感じだったが。
    しかし面白かったな」
魏 光「波乱万丈な人生を歩んできたんですねえ」
蛮 望「さすがはダンディな甘寧さま♪」
甘 寧「そ、そうか。楽しんでもらえて何よりだ」
魏 延「(むう、甘寧め。
    苦労話をして人生経験豊富だとアピールする作戦か?
    お前がそうくるなら、私も……)」

魏 延「よーし、次は私が皆に話をして……」

魏延がそう言いかけた時、外から兵士が早足で入ってきた。

兵 士「申し上げます! 新野、曹彰隊の攻撃により陥落!
    劉埼は江夏へ逃げていった模様!」
金目鯛「おう、落ちたか! では、すぐにも出撃だな!」
霍 峻「準備は万端ですよ!」
金玉昼「それじゃ編成のために軍議を開きまひる!」
鞏 恋「うん。行こう」

ばたばたばた

魏 延「あー。えーと……」
魏 光「父上! そんなとこでボーっとしてないで!
    軍議が始まりますよ!」
魏 延「ぼ、ボーっとなどしてはおらん!
    ……くそ、この怒りは曹操軍にぶつけてやろうぞ!」

新野陥落を受けて、出撃前の編成が行われる。

甘 寧「さて、出撃部隊の編成を」
金玉昼「2部隊3万ってとこかにゃ。
    多分、襄陽から補充兵が送られるだろうから、
    守りは気にしなくていいはずにゃ」
魏 延「うむ……それで、出撃部隊に関してなんだが。
    殿から一件、要望が来ている」
霍 峻「要望?」
魏 延「『象兵部隊を編成し、どれくらいの強さか見ておいてくれ』
    と書かれている」
魏 光「ぞう……へい? なんですかそれは?」
蛮 望「うふふ、私が教えてあげるわよん♪」
魏 光おわあ! いきなり顔を近づけないでくださいっ!」
蛮 望「あン、照・れ・屋・さん♪」ふー
魏 光「ひぃぃぃ! 耳に息がぁぁぁ!」
鞏 恋「お熱い2人だねぇー」
魏 光「鞏恋さんもやめてください!」
蛮 望「象兵っていうのはねえ、象に乗ってる兵のことよ」
甘 寧「そのまんまだな」
蛮 望「でも象を扱うのってとっても難しいの。
    この軍の中で象兵を扱えるのは私しかいないわ」
金目鯛「補充で蛮望が来たのはそのためか」
魏 延「というわけで、蛮望を片方の部隊に加えることにする。
    その部隊の大将は、甘寧……」
甘 寧断る
魏 延「……甘寧将軍は象が怖いらしいので、
    象兵部隊は私が率いることにしよう」
甘 寧「むっ……ぐぐぐ。
    (あのオカマと一緒にやりたくないだけなのに!)」
魏 延「その部隊には、他に……」
金玉昼「はーい、象に乗ってみたいにゃー」
鞏 恋「私も」
霍 峻「ははは、私も恥ずかしながら興味ありますな」
魏 延「では、以上の者および蛮望で1部隊。
    もう1部隊の大将は、甘寧どの」
甘 寧「そちらは引き受けよう」
魏 延「その隊には金目鯛・魏光・陳応・卞柔が従軍」
金目鯛「心得た」
魏 延「蔡瑁どのはここに残り、守備を固めてくれ。
    状況次第では出撃も有り得る。心しておいてくれ」
蔡 瑁「承知」

蛮 望「アアン、なんでダーリンは別部隊なのぉ〜?」
魏 光「い、いや、やはり希望者が優先ということで」
蛮 望「残念ねぇ、私が象の扱いを手取り足取り腰取り、
    ちゃーんと教えてあげるのに」
魏 光「いや、それは遠慮しときます……」

湖陽港より、魏延率いる象兵部隊1万5千が出撃した。
まずは象兵部隊の実力を見るため、甘寧隊より先行している。
その中に、戦闘のことなど忘れたかのように楽しんでる者が数名。

金玉昼「ぞっおさん、ぞっおさん♪ ぱおーんぱおーん」
鞏 恋「結構楽しい……」
霍 峻「馬とはまた違う乗り心地ですねえ」
魏 延「なかなか、思ったように操るのは難しいな」
蛮 望「ほほほ、みんな上手上手」

……将が皆楽しんでるのは如何なものだろうか。

新野周辺

さて、魏延隊は新野へと到達。
そのまま城への攻撃が開始される。
この時初めて象を目にした曹操軍将兵の驚きは、
かなりのものであったという。

敵兵A「おわああああ! なんだこの化け物はっ!?」
曹 彰「ひ、怯むな! ただの生き物だ!と思う!
    食われはせん!と思うぞ!」
敵兵A「そんな無責任なっ!」
金玉昼「ぞーうさん ぞーうさん♪」
鞏 恋「新野を攻めるのねー♪」
蛮 望「そーよ いい男も ゲーットなのよー♪」
魏 延「……なんじゃそりゃ」

新野を取るために劉埼軍との戦闘で疲弊し、
その後でのいきなり現れた不可思議な象兵部隊。
そんな見たこともない巨大な生き物が現れれば、
兵たちの士気が下がるのも当然か。
新野城の指揮系統は乱れ、矢を浴びて兵が倒されていく。
しかしそんな中、城の中より楽進の部隊が出撃する。

   楽進楽進

楽 進「案ずるな!
    動きは鈍重、回り込んで乗っている兵を槍で突け!」
敵兵B「はっ!」

楽進隊の反撃を食らい、魏延隊も少なからず兵が減っていく。
これに憤慨したのが蛮望である。

蛮 望「ちょっとそこのアンタ!
    私の象たちになんてことしてくれんのよ!
    動物愛護団体に訴えてやるわよ!」
楽 進「はっはっは、良く吼えるオカマだな!
    愛護団体でもグリーンピースにでも、
    好きなだけ訴えるがいいわ!」
蛮 望「くっ……くやしぃぃぃ」

全体では象兵隊の強さもあって、魏延隊が押し気味ではある。
だが、楽進率いる遊撃隊の踏ん張りもあり、
また冷静さを取り戻した曹彰の指揮で守りは堅く、
城へはなかなか被害が与えられない状態であった。
そんな中、後続の甘寧隊が到着する。

甘 寧「ふむ。出番がなくなってるかと心配したが、
    そうでもないようだな」
蛮 望「アアン甘寧様、皆の仇を取ってぇーん」
甘 寧「お主の頼みはご免こうむるが、敵は打ち破ってみせる!
     いくぞ!」

甘寧隊の参戦で形勢は金旋軍に傾く。
数に劣る楽進隊を殲滅し、そのまま新野城へと襲いかかる。
だが、さすがに曹彰も曹操の息子だけのことはある。
なかなか簡単には新野城を明け渡してはくれなかった。

曹 彰「なめるな! こちらとて曹家百戦錬磨の軍であるぞ!
    矢を射れ! 金旋軍を近付かせるな!」

寡兵の新野城を相手に、金旋軍は次第に疲労の色を増していく。
それでも攻撃の手を緩めず、どうにか陥落間近まで漕ぎつけた。
だがそこへ、宛方面の物見からの急報が入る。

魏 延「宛より于禁隊1万が出撃しただと?」
金玉昼「新野ももうすぐ落とせるんだけどにゃー。
    このまま于禁隊に城に入られると、かなり厳しくなりまひる」
魏 延「なんとか于禁隊の入城を阻止せねば……。
    ここは湖陽に残っている蔡瑁に出撃してもらおう」

急使が湖陽へと送られる。
それを受けていつでも出られるように用意していた蔡瑁隊1万が、
于禁隊を目標に定め出撃した。

蔡 瑁「関係ないが、私は曹操や金旋様と同じ歳なのだぞ」

本当に関係なかったが、そのまま蔡瑁隊は出撃。
移動速度最優先の長蛇陣形を取り、于禁隊へ向かって行く。
同じように長蛇陣形で新野へ急行しようとする于禁隊を押し留め、
なんとか入城を遅らせるべく踏ん張るのだった。

金目鯛「よーし今のうちだ! 皆頑張れ!
    城へ一番乗りした者には、一見凄い物をくれてやるぞ!」
兵 A「なにっ、凄い物!?」
兵 B「よーし俺が貰った!」
兵 C「なにおう! 俺が戴く!」

甘寧隊は金目鯛の鼓舞で奮い立ち、新野城への攻撃を強める。
魏延隊も負けじと象兵を駆り攻撃をかけた。

甘 寧「よーし、甘寧一番乗りぃー!」

ようやく、新野城は陥落した。
逃げ遅れた曹彰・楽進・孔休(孔融の子)といった将を捕らえた。
なお、于禁隊は新野城が落ちたことで退却を始めたのだが、
その後背より魏延隊が襲い掛かり殲滅される。
于禁は僅かな手勢と共に逃げ帰ったのであった。

金玉昼「はー。疲れたにゃー」
魏 光「そーですねぇ」
鞏 恋「風呂入って寝よう」

ぞろぞろ、と宿舎に入っていく諸将。

金目鯛「激しい戦闘だったから、皆クタクタになってるな」
甘 寧「ところで一番乗りは俺だったわけだが、
    何を戴けるのかな?」
金目鯛「あー。そんなこと言ったっけな。じゃあ、はいこれ」
甘 寧「こっ、これは?」
金目鯛タコ焼きプレート金メッキ仕様
甘 寧「た、確かに凄い! 輝いておる!」
金目鯛「でも火に掛けるとメッキが溶けるんで、
    全然使えないけどな」
甘 寧「……いらぬわい、そんな物」
金目鯛「だから『一見凄い物』なわけ」
甘 寧「むう。納得」

新野を得たことで、
金旋軍は西城・宛・許昌といった都市を望む地の利を得た。
この先、どのような戦いが待っているのであろうか。

つづく。


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