○ 第二十八章 「恋と最強の弓」 ○ 
211年5月

『金旋軍探索お助け強化月間』と銘打たれたこの月は、
領内の各地で探索任務が行われていた。

中には、人材やイベントのほかにも、珍しい物が見つかることがある。
そのうちのひとつが、金旋の元に届けられた。

   金旋金旋

金 旋「玉ー。ちょっとこっち来ーい」
金玉昼「なんにゃー。今忙しいにゃー」
金 旋「まーそう言わんとー。おいでやすぅー」

   金玉昼金玉昼

金玉昼「どこの言葉にゃ……んで、何の用にゃー」
金 旋「おう。蔡瑁が探索でアイテム見つけてきたんでな」
金玉昼「あいてむ?」
金 旋「これだ」

   

金玉昼「書物?」
金 旋「おう。俺が見てもチンプンカンプンなんで、玉にあげよう。
    どうやら持ってると知力が増える(※知力+5)らしいぞ」
金玉昼「それならなおさら、ちちうえが持ってた方が……」
金 旋はいはい、どうせバカですよ!
    いいから持ってけい!」
金玉昼「まあ、そこまで言うなら貰うけどにゃ。
    ふんふん……これは易経だにゃー」
金 旋「易経……?」
金玉昼「え、もしかして……知らない? 有名なのににゃ〜」
金 旋「ば、バカ言うな! 知ってるぞ!
    ほ、ほらあれだ、易経ってのはな、易だから、えーと……。
    ありとあらゆる占いを集めたっていう書物だろ!」
金玉昼「へぇー」( ・∀・)つ〃∩ヘェーヘェーヘェー
金 旋「な、なんか含みのある返事だな」
金玉昼「んーん、気のせいだにゃー。
    それじゃ、その易経の占いでちちうえを占ってあげまひる」
金 旋「おー、そりゃいいな。なんの占いをするんだ?」

パラパラ、と玉はページをめくる。

金玉昼「これなんかよさそーにゃ。『お灸占い』
金 旋「……お灸?」
金玉昼「占う人にお灸をいっぱい据えて、
    耐えられなくなるまでの時間とお灸の数で吉凶を占うものにゃ」
金 旋「い、いや、お灸はやめてくれないか」
金玉昼「えー、健康にもよさそうなのに。じゃ、『鍼灸占い』
金 旋「鍼灸……って針治療?」
金玉昼「そう、占う人に針を入れて、その針の入り方で吉凶を……」
金 旋「やめやめ、針は怖い。
    失敗して下半身不随になった人もいるらしいじゃないか」
金玉昼「そんなに怖がらなくてもー。じゃ、『青汁占い』
金 旋「あおじる……。もしかして、
    青汁飲んだ後のリアクションで吉凶を占うとかじゃ……」
金玉昼「察しがいいにゃりね。その通りにゃ」
金 旋「パスパス。青汁なんて人間の飲むものじゃない
金玉昼青汁愛好家に刺されそうな言い分だにゃ。
    それじゃ『コーヒースカッシュ占い』
金 旋「コーヒースカッシュ?」
金玉昼「コーヒーに炭酸を入れた飲み物にゃ。(※実在)
    それを一気飲みして何秒で飲めるかで吉凶を……」
金 旋「勘弁してくれ。ただの炭酸飲料でも涙目になるのに。
    そんなアヤシイ飲み物はパスだ」
金玉昼「それなら、『青汁スカッシュ占い』を……」
金 旋「なあ、ちょっと疑問に思ったんだが」
金玉昼「何にゃ?」
金 旋ホントに載ってるのか、その占い?
金玉昼ギク。……の、載ってまひる」
金 旋「今の『ギク』はなんだ」
金玉昼「な、なんでもないにゃー」
金 旋「実はただマズイもん飲ませようとしてるだけじゃないだろな?」
金玉昼ギクギク
金 旋「ただからかってるだけだったりしないよな?」
金玉昼ギクギクギク
金 旋「あ。今思い出したんだが……。
    たしか易経って儒教の経典じゃなかったか?
    そんなのに青汁やコーヒースカッシュが載ってるのか?」
金玉昼「あ、なんだ。知ってたんだ」
金 旋「……た〜ま〜?
金玉昼「にゃ、にゃははははははは! 失礼しまひる〜」
金 旋「あ、こら、玉!」

ぴゅー

金 旋「ふー。あぶないあぶない。
    ありもしない占いを試されるところだった」

   劉髭劉髭    杏

劉 髭ジャンジャガジャーン!!
    劉髭先生の、ウンチクゥー! コーナー!
 杏 「その伸ばし方はどうかと思いますよ」
劉 髭「ん? 何がじゃな?」
 杏 「その……うん○を食べるかのように聞こえます」
劉 髭「左様か。では……。
    『劉髭先生の、ウンチック! コーナー!』
    ……のほうがええかの?」
 杏 「それもちょっと……普通にお願いします」
劉 髭「ふむ。では、次回より気を付けよう」
 杏 「では、先に進みましょう」
劉 髭「うむ。では、今回の薀蓄じゃ。
    今回出てきた『易経』。これについて語ってみようぞ」

易経……紀元前700年頃、周時代に成立の書。
儒教の聖典『四書五経』の、五経のひとつ。
当時の占いを集めた書であるが、それだけに留まらず、
自然哲学と実践倫理との根源を為す書であり、
64卦を説明する「経」とその解釈学である「十翼」からなる。
その中でも易の哲理を説いている「繋辞伝」が最も重要である。


劉 髭「……というわけで、金旋どのが言った『占いを集めた書』
    というのは、あながち間違いでもないのじゃ。
    まあ、ただの占い指南書みたいに思われると困るがの」
 杏 「占いを元にした哲学書、というのが正しいところでしょうか」
劉 髭「うむ、ひとことで言うならそんなところじゃな」
 杏 「今回、玉昼に与えたようですが……これは有効ですよね」
劉 髭「うむ。知力が増えることにより、助言に確実性が増すからのう。
    これで彼女の軍略も今まで以上に冴え渡るというわけじゃ」
 杏 「というわけで、劉髭先生のうん○喰うコーナーでした」
劉 髭「……うん○は食ってないぞ」

さてさて。またしばらくした後のこと。
襄陽の金旋宅に、宅急便が届く。

黒猫倭「ちわーっす、黒猫倭の宅急便でーす」
金玉昼「はいにゃ。サインでいいのかにゃ?」
黒猫倭「はい、ここにお願いします」
金玉昼「きゅきゅ……きん……たま……ひる……と」
黒猫倭「ありがとうございます、それでは失礼しまーす」

   金旋金旋    金玉昼金玉昼

金玉昼「ちちうえー、宅急便にゃー。
    江陵の劉鏡さんからだにゃー」
金 旋「なぜこの時代に宅急便が、などとツッコまないでいただきたい。
    あるがままを受け入れ、あるがままを読んでいって欲しい……」
金玉昼「何ブツブツ言ってまひる?」
金 旋「いや、御批判が送られて来たのでな〜。
    この話はたまに出てくるアンバランスな世界観が
    売りのひとつなのだ。
    それを否定されては、イヤーン金旋困っちゃう♪
金玉昼「ちちうえ、その言い方キモい
金 旋「玉! なんてことを言うのだ!」
金玉昼「ご、ごめんなさいにゃ」
金 旋『キモい』なんて言葉使っちゃいかんぞ。
    ちゃんと『気持ち悪い』と正しく言いなさい。
    さん、はい!
金玉昼「き、気持ち悪い」
金 旋「うむ。よろしい。で、何の話だったかな」
金玉昼「そうそう、宅急便にゃ。中身は何かにゃー?」
金 旋「ふむ、けっこう大きい箱だな。
    その割に玉でも持てる位だから、あまり重くはなさそうだが」
金玉昼「開けてみるにゃー♪」

ガサガサと包みを開けてみる。
……中から出てきたのは、一張りの弓。

   

金 旋「ほう、これは……いい弓だ」
金玉昼「中に劉鏡さんの手紙が入っていまひる。えーと、
    『任務中に養由基の弓を見つけたのでお送りします』だって」
金 旋「ほほー、養由基ねえ。そりゃスゴイ」
金玉昼「さすが勇名を馳せた養由基の弓にゃりね。
    威厳のようなものも感じまひる」
金 旋「うむ、そうだな……ところで玉」
金玉昼「ん?」
金 旋養由基ってなに?
金玉昼「……あー、知力22だから
金 旋「数字は言うな!」
金玉昼「えーと、養由基っていうのは……」

養由基。
春秋時代、楚の荘王に仕えた弓の名手。
百歩離れて柳の葉を射たのだが、
放った百本の矢全てが葉を射抜いたらしい。
なお、「百発百中」という言葉はこれが元になっている。


金 旋「ほほー。そんなスゴイ人の弓か」
金玉昼「わかんないまま頷かないで欲しいにゃー」
金 旋「これほどの弓、俺が持ってるのは勿体ないな。
    玉、鞏恋を呼んできてくれ」
金玉昼「らじゃったー」

   鞏恋鞏恋

鞏 恋「金ちゃん、呼んだ?」
金 旋「まあ最初にいいって言ったのは俺だが……。
    たまには敬語でも使ってみよう、とは思わないか?」
鞏 恋「全然」
金 旋「そうか……まあ構わんがな。
    お前を呼んだのは、これのためだ」
金玉昼「じゃーん。正真正銘の養由基の弓にゃー」
鞏 恋「へぇ……すごい」
金 旋「ふふん、そうだろう、スゴイだろう!」
金玉昼「別にちちうえがスゴイ訳じゃないのに……」
鞏 恋「でも、ホントすごい……ところで」
金 旋「うん?」
鞏 恋養由基って誰?
金 旋「あー、俺と同じだ。仲間仲間」
金玉昼「いんにゃ。人だとわかってる時点でちちうえよりちょっと上にゃ」
金 旋がーーーーーーーん!
金玉昼「えーと恋ちゃん、養由基というのはかくかくしかじか」
鞏 恋「へえ……そんなスゴイ人がいたんだ」
金 旋「うん、まあそういうことで、これをあげよう」
鞏 恋……え?
金玉昼「あ、恋ちゃんが驚いてまひる。珍しいにゃ」
鞏 恋「……そう言って、持ち上げてから
    『はーい上にあげたー』とか言うオチじゃ……」
金 旋「俺はガキか!?
    この弓を、鞏恋に与えるって言ってんの!」
鞏 恋「マジ?」
金 旋「マジもマジ、大マジよ」
鞏 恋「後で返せって言っても返さないからね?」
金 旋「うむ、まあ強権発動すれば没収もできるが(※)、
    それはやらないと誓おう」

(※ 没収コマンドを使用すると部下のアイテムを没収できる。
 ただし没収された将の忠誠は激減する諸刃の剣。
 素人にはお奨めできない)

鞏 恋……ありがとう!
金 旋「お」
金玉昼「はー」
鞏 恋「ちょっと、試し撃ちしてくる」

金 旋「『ありがとう』って、鞏恋の口から出たの、初めて聞いた」
金玉昼「おまけにすんごい笑顔だったにゃ。
    よっぽど嬉しかったらしいにゃ」
金 旋「はー。あの子、笑うと可愛いんだな〜」
金玉昼「ち・ち・う・え! 何か変な気起こさないでにゃ!」
金 旋「ち、違う、今のはこう、なんつーか、娘を思うような気持ちだ!
    やましい気持ちでは全然ない!」
金玉昼「むむー、ならいいけどにゃ。
    正直、恋ちゃんをお母さんと呼びたくはないにゃ。
    1歳しか違わないのにゃよ」
金 旋「俺だって鞏志を父上と呼びたくはないぞ。
    20歳以上も年下なんだぞ」
金玉昼「じゃ、変な気は起こさないようによろしくにゃ」
金 旋「はいはい、大丈夫だって」

さて一方、城の外では。
魏光が見学する中、鞏恋が弓の試し撃ちを始めた。

   鞏恋鞏恋    魏光魏光

鞏 恋「はっ……」
すこんっ。
魏 光「おおーっ! 見事に的の真中を射抜いてますよ!」
鞏 恋「でも……」
魏 光「でも?」
鞏 恋「何か足りない……」
魏 光「足りない……? 何がです?」
鞏 恋「上手く言えないけど、何か……魂みたいなものが」
魏 光「た、魂ですか?」
鞏 恋「ん……?」
魏 光「こ、今度は何です?」
鞏 恋「呼んでる……?」ばっ(←馬に乗る)
魏 光「呼んでるって何が……ってどこ行くんですか!?
    鞏恋さーん!」

鞏 恋「南の方から……誰かが私を呼んでる」

鞏恋は馬を走らせた。襄陽を出て、ずっとずっと南へと。
もうすぐ江陵城、というところまで走ってきて、ようやく馬を止める。

ミニマップ

鞏 恋「……廟?」

鞏恋は、小さな山の麓に、これまた小さな廟を見つけた。
その廟はまるで隠されるように木々に囲まれており、
普通の人間であればまず気付かなかっただろう。
鞏恋は廟に近付くと、弓を廟の前に置き、手を合わせ拝んだ。

鞏 恋「エコエコアザラク……エクエコザメラク……」
養由基「待たんかぁ! 何唱えとんのやおのれは!?」

どこからともなく養由基(の霊)が現れた。

鞏 恋「なにって……お経……」
養由基それお経違うやん!

(※エコエコアザラク
 黒ミサで使われる呪文らしい。詳細不明だがお経でないのは確か)


養由基「……で、自分、名前は?」
鞏 恋「鞏恋だけど」
養由基「恋ちゃんか。いやーよう来てくれたな。茶でも出そう」
鞏 恋「ど、どうも……」
養由基「……おわ! ワシ急須掴めへんやん! なんでや!?」
鞏 恋「さあ……?」
養由基「……アカン。君アカンわ。ここは
    『幽霊なんやから掴めへんの当たり前やん!』
    ってつっこまな!」
鞏 恋「はぁ」
養由基「最近の若手芸人はこれやから……。
    そんなんやから『キャラに頼りすぎ』とか言われるんやで?」
鞏 恋「いや、私は芸人じゃないし……」
養由基「まあ、ええわ。
    最初のお経のネタがおもろかったから許したる」
鞏 恋「はあ……それで、私を呼んだのはなぜ?」
養由基「うむ。ワシは養由基や。
    つまりこの弓の元持ち主やな」
鞏 恋「でも、今は私の」
養由基「はっはっは、返せたぁ言わん。ワシ掴めへんしな。
    しかし、この弓使ってみてどやった?」
鞏 恋「何かが、足りないような」
養由基「そやろー。その弓のホンマの力を引き出すには、
    ある物が必要なんや」
鞏 恋「あるものって?」
養由基「ふっふっふ、それはな……。
    処女の純潔や!

鞏 恋「帰る」
養由基あーうそうそ! うそやて!
    品の無いこと言うてごめんやー!」
鞏 恋「で、本当は?」
養由基「ま、その前にや。その弓、ちょう高く掲げてみ?」
鞏 恋「こう……?」
養由基「そうそう。で、ちょう目つぶってしばらく待ちや……」
鞏 恋「はい」

鞏恋は言われた通りにしばらく待つ。
しかしいつまで経っても養由基からの返事はない。

鞏 恋「もう目開けるよ……?」

目を開けた時、目の前には誰もいなかった。

鞏 恋「あれ。いない……。もしかして……夢だったとか?」

そう呟き、掲げていた養由基の弓を胸元まで戻す。
……弓は、先ほどまでとは全く印象が違っていた。
新品のような輝きを放っている。それはまるで、生きてるかのように。

鞏 恋「夢じゃ……ない?」

(養由基の魂の篭ったこの弓、大事に使うてや……)
恋の耳に、そんな声が聞こえた気がした。

後日。
襄陽に戻ってきた鞏恋を、魏光が出迎えた。

   鞏恋鞏恋    魏光魏光

魏 光「鞏恋さん! 心配しましたよー!」
鞏 恋「ごめん」
魏 光「南の方に行ってたみたいですけど……。
    一体何をしてきたんですか?」
鞏 恋魂貰ってきた
魏 光「え゛?」

鞏恋は最強の弓騎兵法『飛射』を会得した。
これ以降、鞏恋の弓は『神の弓』と恐れられるようになる。

次回へ続く。

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