○ 第二十二章 「色物戦隊ヘンタイジャー結成!?」 ○ 
210年11月上旬

ミニマップ
荊州マップ

江陵。
襄陽陥落の報は金旋にも届いた。
その報を聞いて喜んだ金旋は、思わず近くにいた下町娘の手を取り
そのまま踊ってしまうほどだった。
なお、その踊りはなぜかランバダであった。

   金旋金旋    下町娘下町娘

下町娘「な、なに恥ずかしい踊りさせるんですかっ!」
金 旋「いやすまん、嬉しくてつい、な」
下町娘「嬉しい踊りなら一人で阿波踊りでも踊ってくださいよ」
金 旋「それじゃ俺一人がバカみたいじゃないか」
下町娘私を巻き込まないでくださいっ!
金 旋「うむ。次回より一応は気をつけよう」
下町娘「一応って……」
金 旋「しかし、1年で江陵だけでなく、襄陽まで手に入れてしまうとはなあ。
    以前には予想もつかなかったな」
下町娘「状況が味方しただけですよ。過信は禁物です」
金 旋「……玉みたいなこと言うなぁ。
    そうは言うが、人材も劉表……今は劉埼か。
    その降将を登用して結構充実してきただろ」
下町娘「その点はそうですね。最初なんてお寒い限りでしたから」
金 旋「……自分で言うかね」
下町娘「そういえば、最近登用した何人かが挨拶に来るって聞いてますけど。
    先ごろ登用した蛮望(※)も到着したらしいですし」

(※先頃まで君主であったが、建寧を董蘭に攻め取られ勢力を失っていた。
 董蘭の配下となったところを引き抜いている)

金 旋「おう、蛮望の顔は知ってるぞ。かなり濃ゆい顔をしてたな」
下町娘「直視できない顔ですよね……」
???ちょっとー。
    このびゅーちほーな顔のどこが直視できないって?


   蛮望蛮望(化粧入り)
    ズドーーーーーン

金 旋のわぁぁぁぁ! 出たぁぁぁぁ!
下町娘助けて偉い人ーーーーーー!
蛮 望「まったく失礼しちゃうわね! 登用しておいてそれはないでしょ!」
金 旋「あ……ああ、ば、蛮望か。
    よ、よく来てくれたな」
蛮 望「はい、金旋さま。うふふ、思ってたより渋くていい男ね♪」
金 旋「あ、あー、えーと、確か君の性別は男だったよな?
    女はヒゲなんて生えないしな?」
蛮 望「ええ、身体はれっきとした男よ?
    でも、精神はオ・ン・ナ♪
下町娘「そ、それはオカマというのでは……」
蛮 望キッ! 何よ小娘!
    身体が女だからっていい気にならないで欲しいわね!」
下町娘「た、ただ指摘しただけなのにー。怖いよー」
金 旋「え、えー、以前の君はオカマではなく普通の男だったと聞いているが……」
蛮 望「そう……私、董蘭に建寧を落とされるまでは、精神も男だったわ。
    でも捕虜にされた時、(ピーー)を強打して使い物にならなくなっちゃったの。
    そこで私は悟ったのよ!
    それが『これからはオカマとして生きていけ』
    という天の啓示だということをね!」
金 旋「やな啓示だな」
下町娘「そ、そんな辛い過去があったなんて……」
金 旋「過去っつっても2ヶ月前のことだろうに。
    まあ、辛いのは確かだが」
蛮 望「うふふ、金旋さま……。
    過去には配下を引き抜かれたりして、憎く思ったりもしましたけれど。
    今後は忠勤に励み、金旋さまの忠実な下僕として頑張りますわ」
金 旋「う、うむ……よろしく頼むぞ」
蛮 望「というわけで、金旋さま……」
金 旋「ん?」
蛮 望今夜は可愛がってね♪
金 旋な・に・が・だ

名残り惜しそうにする蛮望を、金旋はなんとか退室させた。
そうすることで彼は自らの精神の安定を図ったのである。

金 旋「……ものすごい者を登用してしまったかもしれんなー」
下町娘「でも、不幸中の幸いでしたねー」
金 旋「なにが?」
下町娘「(ピーーー)が使い物にならないってことは、
    金旋さまのお尻は無事ってことですよ」
金 旋「まあ、以前はホモだったって噂だからな……。
    しかし尻じゃないところが無事では済まなそうだ」


またしばらくして。

伝 令「申し上げます。襄陽より霍峻様が参りましてございます」
金 旋「おう、着いたか。早速会おう」
伝 令「はっ、お連れ致します」
下町娘「また登用した方の挨拶ですか?」
金 旋「ああ。……今度はまともな奴だぞ、劉埼配下だった霍峻だ」
下町娘「霍峻さん……。確か劉表亡き後、襄陽を守ってよく戦ったとか」
金 旋「ああ、地味だが兵をまとめるのが巧いと評判の武将だ。
    城を守らせたらなかなか落ちんぞ」
下町娘「いい武将を登用しましたねー」
金 旋「そうだろう、そうだろう」

やがて、部屋の外より声が掛けられた。

霍 峻「霍峻にございます」
金 旋「うむ、入ってくれ」
霍 峻「失礼いたします」

   霍峻霍峻
   ドッギャーーーン

金 旋「……」
下町娘「……」
霍 峻「お初にお目にかかります、霍峻にございます。
    こたびは敗軍の将たる私めに、格別な扱い痛みいります。
    今後は金旋さまのため、この霍峻、懸命に働く所存にございまする」
金 旋「霍峻……それは……ギャグか? (ぷっ)」
霍 峻「は?」
下町娘ぷーーーーっ! だめ、我慢できないーーー!
    あはははははは! だ、ダメダメ、お、お腹痛いーーーー!
霍 峻「な、何故笑われますか?」
金 旋ぎゃはははは!
    な、なにゆえって、くひーくひー、
    その眼鏡は、くっくっくっ、笑わせるために、ぶふーっ!
    着けてるんじゃ、ぶわっはっは、ないのか!?」
下町娘「い、痛い、お腹痛すぎ! も、もう死んじゃうーーー!」
霍 峻「こ、これは……ぐすっ
金 旋「……う? な、何で泣く?」
霍 峻「こ、この眼鏡は……今は亡き劉表さまに頂いた、大切な品なのです」
下町娘「……あー、金旋さま、泣かせたー
金 旋俺のせいかよ!?……す、すまん。
    悪かった、身体を張ったギャグかと思ったのでな。
    つい笑ってしまった」
下町娘「ごめんなさい」
霍 峻「いえ、構いません。
    旧主の形見などを未練がましくつけていた私が悪いのです」
金 旋「劉表に貰ったと言ったな……その時の話、聞かせてくれぬか」
霍 峻「はい……」

何年前かは忘れましたが……正月の年賀の宴の席のことでしょうか。
劉表さまは私を呼び、こうおっしゃられました。
『お主は有能であるのに実に地味だのう。
もう少し目立てぬのか?』
と。
私は『性格は変えられませぬ故、どうしようもありませぬ』
返しました。
すると劉表さまは笑い、『ならば、外見で目立てばよいのだ』と申され、
この眼鏡を私に下さったのです。
『これをかけていれば、何よりも強烈な印象を与えるだろう』と。
……劉表さまの温かなお言葉、今でも忘れられません。
以来、私はこれを常に着用しております。

霍 峻「これを着けていると、劉表さまの声が聞こえてくるようで……。
    あの、優しいお声が……」
金 旋「あ〜、霍峻? ちょっといいか?
    お前がそれを着けた時、劉表は大笑いしなかったか?」
霍 峻「はい。大いに喜ばれ、声を挙げてお笑いになられました」
金 旋「その後も顔を合わせるたびに笑ってたんじゃないか?」
霍 峻「はい、そうですが……?
    なぜそのことを知っておられるのですか?」
金 旋「(小声)やはりなぁ……」
下町娘「(小声)遊ばれてたんですね……」
金 旋「(小声)地味で真面目な奴はおもちゃにしたくなるものだからなぁ」
下町娘「(小声)どうします? 真実を教えますか?」
金 旋「(小声)いや、可哀想だからやめとこう。それに……」
下町娘「(小声)それに?」
金 旋「(小声)十分面白いからいいじゃないか」
下町娘「(小声)はあ……金旋さまも劉表と大差ないですね」

霍 峻「どうかなさいましたか?」
金 旋「いや何でもない、気にするな。
    それより、その眼鏡だが」
霍 峻「はっ……申し訳ありませぬ。気分を害しますなら、以後外しますゆえ。
    ですから没収だけはご勘弁くださいますよう」
金 旋「いや、構わん。今後も着けていろ。
    その眼鏡は、言わばお前が義に厚い将であることの証だ」
霍 峻「は、はい! ありがたきお言葉!」
金 旋「そうだな、今後は爵位とは別に『鼻眼鏡将軍』の異名を与えよう。
    名乗りを挙げる時などはこう名乗るがいい」
霍 峻「はっ、光栄にございます……!」

霍峻は深く礼をし、そのまま襄陽へ戻っていった。

金 旋「ぶわはははは!
    いやー笑いをこらえるのに苦労したぞ!」
下町娘「酷いですねえ。ただでさえ笑える眼鏡なのに。
    あんな異名、名乗った途端に敵味方問わず大爆笑ですよ?」
金 旋「いいじゃないか。
    殺伐とした戦場に笑いを誘い、
    皆の心を和ませる存在となって欲しい

下町娘「無茶言いますね。でもこれで、戦隊ができますね〜」
金 旋「戦隊?」
下町娘「そーですね、名づけて色物戦隊ヘンタイジャー!
金 旋「はっはっは、そりゃ面白い。
    メンバーは蛮望や霍峻、甘寧、魏延ってところで……。
    あれ、4人しかいないぞ」
下町娘「なーに言ってるんですか、しっかり5人いますよ、ほら」

ピンク ブルー レッド イエロー ブラック
   ズッキューーーーーン

金 旋俺もかよ!?
下町娘「だって似合いすぎですよ、この5人」
金 旋「やめれ〜。俺はダンディナイスガイなんだ〜。
    こいつらと一緒にするな〜」
下町娘「……多分他の人も同じようなこと言いますね」

蛮望、霍峻と、またも個性溢れる人材を得た金旋軍だった。
このままイロモノ軍団へと変貌していってしまうのだろうか……。


210年11月中旬

ミニマップ
襄陽-新野周辺マップ

一方、襄陽。
金目鯛を太守とした金旋軍は、長い篭城でボロボロになった城内の復興に
追われていた。
そんな中、急報が入る。

   金目鯛金目鯛  魏延魏延  鞏恋鞏恋
       魏光魏光  卞柔卞柔

魏 延「曹操領の西城より、呂曠軍1万がこちらに向かってきておるらしいですな」
金目鯛「あー、守備を固められる前に奪おうってんでしょ。
    実際、城壁はボロボロだしなあ。篭城なんかできねえ」
魏 延「となると、野戦で迎撃しかありませんな」
金目鯛「魏延どの、鞏恋、魏光、卞柔。城を出て迎え撃つぞ」
魏 延「その者たちが出撃ということは……この城の守備は?」
金目鯛「ああ、霍峻どのに任せようと思う。霍峻どの、頼むぞ(ぷ)」

   霍峻霍峻

江陵から戻ったばかりの霍峻に、一同の視線が集まる。
……だが、皆すぐに視線を逸らした。

霍 峻「はい、任せてください」
魏 延「(ぷ)しかし、霍峻はまだ降って間もない。
    後を任せるのは、少し不安が……。
    いや、裏切るなどと思っているわけではないが(ぷぷ)」
魏 光「父上、あまりそういうことは言われぬほうが(ぷっ)」
霍 峻「いえ、皆様の心配もごもっとも。
    ですが、野戦に優れる方は外に、守備に優れる者は城にというのが上策。
    ならば、やはり皆様が外で迎撃し、私が残るのが最良です」
卞 柔「霍峻どのの言うとおりですな(ぷぷぷ)」
魏 延「失礼したな、霍峻。(うぷ)
    お主の今の言葉は真心より出たと信じ、出撃することとしよう(ククク)」
鞏 恋「……なんで笑い堪えて話してるの?」
魏 光「い、いや、鞏恋さん、はっきり言わないでください、ぶふーーーーっ
金目鯛「と、とにかく出撃するぞ! あーっはっはっはっは!
魏 延「承知しましたぞ! ぶわっはっはっは!
鞏 恋「……集団笑い上戸?」

笑いに包まれながら迎撃隊1万5千が出撃する。
呂曠軍1万を襄陽近郊で迎え撃つ。

金目鯛「はーっはっは! ダメだ腹いてぇーー!
魏 延「そう笑うものではないですぞーぶわっはっは!
魏 光「父上こそ笑ってますぞーあーっはっは!
鞏 恋「……大笑い金旋軍、参上」

呂曠軍と交戦が始まる。
遠路、西城より行軍してきて士気の低い呂曠軍1万と、
襄陽近くで迎え撃つ地の利と、笑いに包まれ士気の高い(?)金目鯛軍1万5千。
もはや戦う前から勝敗は決していたと言えよう。

魏延・魏光が笑いながら奮闘し、呂曠軍は大幅に兵力を削られる。
妖しさ爆発の金目鯛軍の勢いに気圧され、呂曠軍は退却し始めるが時すでに遅し。
散々に蹴散らされ呂曠軍は殲滅された。

呂曠、樊郭(以前は董蘭配下。樊稠の子)を捕虜とした金目鯛軍は、
その余勢を駆りそのまま近くの隆中港(曹操領)へ侵攻。
12月に入り、隆中を陥落させることに成功した。

まさに、『笑いは無限のパワー』である。


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