○ 第十九章 「江陵攻防戦」 ○ 
210年4月

ミニマップ江陵近辺

江陵より出兵してきた劉表軍を破り、勝利を収めた江津港の金旋軍。
その後の彼らは、江陵への出兵の準備を進めていた。

   金旋金旋    金玉昼金玉昼

金 旋「先の戦闘で兵が減ったんじゃないかと心配したが、
    負傷兵が回復すれば以前より多いくらいだな」
金玉昼「劉表軍を殲滅して負傷兵を吸収したからにゃー。
    流石に3万の兵を打ち破れば、その負傷兵も大した数になりまひる」
金 旋「ふむ……しかし、そういう兵は裏切ったりしないのか?」
金玉昼「兵たちには君主に対しての忠誠とかは関係ないからにゃー。
    士気とかは低いけど、他の兵と変わりはないにゃり」
金 旋「なるほど。ということは、追撃して敵を殲滅、
    その負傷兵を獲得する、というのが野戦のセオリーになるか」
金玉昼『逃ぐる敵を追い兵を囲え』にゃ。
    基本はそうなるけど、あんまり深追いすると新手が来たりするから気を付けまひる」
金 旋「しかし、敵だった兵をすぐに自軍に吸収できるようになるとはな。
    時代は変わるものだなあ。さすが乱世」
金玉昼「ご先祖様もびっくりしてるかもにゃー」

ご先祖の話が(強引に)出されたので、
ここでひとつ正史における金旋とその祖先の話をしよう。

彼の一族、金家は代々漢臣の家柄であった。
前漢の武帝に使えた名臣、金日[石單](キンジツテイ)がその祖である。

金日[石單]は北方の異民族である匈奴の、休屠王の子であった。
後に、武帝に仕えていた名将、霍去病の遠征により捕らえられる。
最初は奴隷として宮中で馬の世話をさせられたが、
武帝の目に止まり重く用いられるようになる。
忠義にして勢勤、過失もなく順調に出世した。
しかし自分があくまでも匈奴出身の者であることを気にかけ、
そのことで『漢に人材なし』と言われぬように常に自重していたという。

それ以降、金一族は何代にも渡り漢に仕える名門の家柄となった。
金旋もまた、そのような家に生まれ漢に仕えたのである。

後漢末に著された『三輔決録注』という書には金旋の記述があり、
その要約は以下のようなものとなる。

金旋は京兆(長安近郊)で生まれ、彼もまた漢の臣として忠勤に励んだ。
黄門郎、漢陽太守を歴任し、その後は中央に召されて議郎に任命される。
その後、中郎将に昇進して武陵太守を兼ねた。

『三輔決録』は雍州(長安近辺)の著名な人物を評価した本であり、
これに記載された金旋の名声・実績も推して知るべしである。

金 旋「その割には演義での俺の扱いは悪いんだよな……。
    劉備に負けたあげく部下に殺されるなんてなあ」
金玉昼「正史で劉備に攻められて敗死したからだにゃー。
    演義では劉備の敵だった者はみんな悪になっちゃうのにゃ」
金 旋くそう! 劉備ヌッコロス!
金玉昼「異世界の怨みをここに持ち込んじゃいけないにゃー」
金 旋「そうだな……演義で俺を殺す奴も、今は忠実な臣だからな。
    よし、頭をすっきり切り替えよう」

読者も、正史は正史、演義は演義、リプレイはリプレイと割り切って読んでいただきたい。

金 旋「……で、これから何するんだっけ」
金玉昼頭すっきりさせすぎにゃ……。
    これから兵が減った江陵を攻めまひる」
金 旋「おー、そうだったな。
    しかし、東の烏林港に兵が残ってるがどうする?」
金玉昼「まずは江陵が先にゃ。ぐずぐずして江陵の兵が回復しては困りまひる。
    どうせ烏林に将はいないし、放っておいて構わないにゃ」
金 旋「そうか。よし、それじゃー出陣準備だ!」
金玉昼「はいにゃ。あ、ちちうえは留守番にゃ
金 旋「やっぱりダメですか。しくしくしく」

後に残る予定の金旋、下町娘、刑道栄は訓練を行い、
戦後で低下した兵の士気を高めることにした。
短い時間でなんとか訓練を行う金旋たち。

金 旋「しかし刑道栄、お前先の戦いじゃけっこう活躍しただろ。
    なんで留守番なんだ?」
刑道栄「いやあ、俺は騎兵での突破しか能がないんで。
    城攻めでは全く活躍の場がないんですよ」
金 旋「そうか、俺と同じか……。
    でも俺、得意兵法がゼロだからなぁ……(※1)

(※1 得意兵法は熟練が上がりやすい。
  金旋は得意兵法なし。刑道栄は騎兵兵法だけは得意)


世の中ツブシのきく技能を持ってる者が有利だ、と痛感する金旋であった。

士気を回復した金旋軍は、鞏恋隊1万5千(副将:陳応、金玉昼)、
金目鯛隊1万5千(副将:胡渉)、魏延隊1万5千(副将:魏光)の3部隊が江津港から出撃。
総兵力4万5千の軍は、一路、江陵へと向かった。

対する江陵の守備兵は1万5千。
江津から江陵までは近く、軍の移動には10日もかからない。
他の都市からの援軍も期待できない状況の中、金旋軍が到着した。

その様子を城の上より眺める劉表とその息子の劉埼。

劉 表「おのれ、金旋め……」
劉 埼「父上……父上は一旦江夏へお逃げくださいませ。
    残る我らで金旋軍を迎え撃ちます」
劉 表「いや。大将たるもの、敵を目の前にして逃げることなどできん!」
劉 埼「はあ(父上がいない方が守りやすいのに……(※2))」

(※2 君主が都市にいると無条件で総大将になるため。
  統率力が低い君主は戦闘に参加しない方が良い)


かくして、江陵攻防戦は幕を開けた。

陳 応「先陣を切るのはワシだ!
    弩隊、矢を連射して江陵の兵に挨拶してやれい!」

鞏恋隊の先陣、元趙範配下の陳応。
地味ながら弩兵の扱いに優れる将である。
彼の弩隊の連射より、金旋軍の激しい攻撃は始まった。

劉 表「ええい反撃だ! 反撃せぬかぁ!
    うぬぬ、なにゆえこうもあっさり兵が減っていくのだ!」
劉 埼「……(アンタの統率力のせいだっつーの)」

江陵の兵は数に劣る上、さらに大将は金旋以上の戦下手の劉表である。
城内に猛将甘寧を要してはいたが、大将が弱くてはあまり意味がない。
金旋軍は被害らしい被害もさほどなく、江陵の兵を倒していく。

金旋軍の中で活躍が著しかったのが鞏恋隊であった。
開戦時の陳応の連射に始まり、戦闘中も常に攻撃の手を緩めず、
たまに舞い込む敵の偽報も金玉昼が見抜いた。
そして、鞏恋である。

   鞏恋鞏恋

鞏 恋「……弩隊、連射!」
鞏恋は隙を見つけると、すかさず下知を下す。
その命に弩兵たちはすかさず整列し、矢を繰り返し発射。
大量の矢を江陵の兵に浴びせる。
この攻撃によりかなりの損害を与え、守る劉表も彼女の活躍に舌を巻いた。
鞏恋大活躍

……ところで、彼女の活躍に注意を引かれたのは、江陵の兵ばかりではない。
魏延隊の将、魏光もそうであった。

   魏光魏光    魏延魏延

魏 光ああ、鞏恋さん素敵だ!
    なんて凛々しいのだろう!」
魏 延「魏光! 攻撃中によそ見をするな!」
魏 光「は、はい父上! よ、よーし自分もやったるぞー。
    弩隊! 斉射よぉーい! しっかり当ててくれよー。……放て!」
魏光は鞏恋にいいところを見せようと張り切り、努兵に斉射を命じる。
だが、魏光の弩兵が矢を放った時、すでに江陵の兵は矢の当たらないところに身を隠していた。
守将の甘寧が魏光部隊の動きを見て、すかさず対策を取っていたのだった。(※3)

(※3 兵法発動者より熟練値の高い将が相手にいると、このように防御されることがある)

魏 光な、なんだってーっ!?
甘 寧「はっはっは、そのような見え見えの攻撃、食らうバカがいるか!」
魏 延「なるほどな……。
    斉射の際には、このようにモタモタやっていてはいかんということか」

魏延はこの息子の失敗を見て、斉射攻撃を覚えることに成功。(※4)

(※4 熟練度が上がると、持っていない兵法を見たりした時に覚えることがある。
  ちなみに斉射は弩系が200以上で覚えられる。けっこう簡単)


魏 光「くそぉ……鞏恋さんにカッコイイところを見せたかったのに……」

   鞏恋鞏恋

鞏 恋「……」
魏 光「あ、鞏恋さん!?」
鞏 恋「…………ぷ」
魏 光ガビーーーーーーーン!?
    笑われた!?Σ(TロT;)

さて、一部思い通りに行ってない者はいたが、全体的に金旋軍の優位は動かない。
激しい攻撃にさらされ、劉表軍はもはや持ちこたえられそうにもなかった。

劉 表「ぐぬぬぬ……。ここまで一方的にやられるとは……。
    一体、誰のせいなのだ……。誰の責を問えばよいというのだ?」
劉 埼「……(アンタだ、アンタ! アンタが弱いから!)」
守備兵「鞏恋の隊より多数の矢飛来! やられますぅぅぅぅ!」

とどめに鞏恋隊の陳応が、弩連射を食らわせる。
これにより江陵城は戦える兵を全て失い、陥落した。

城内の陥落時の混乱から、君主である劉表は逃げ遅れた。
入城してきた金旋軍に見つかり、捕らえられる。
そのまま、魏延ら諸将の揃った前に引き出された。

   金玉昼  金目鯛  魏延  鞏恋  魏光

劉 表「……お、おぬしら、なんの怨みがあってこのようなことをする!」
魏 延「怨み? そんなものはないぞ」
劉 表「な、ならばなぜ、金旋は戦を仕掛けてきた!」
鞏 恋「……なぜ?」
魏 光「いや、私に振らないでくださいよ」
金目鯛「……なぜ?」
魏 延「私に振られても困りますな」
金玉昼「……コホン、天下統一のためにゃ。
    そのためには荊州の地はどうしても必要。
    ただそれだけのことにゃ」
劉 表「統一だと……? 金旋はバカか!?
    曹操に本気で挑むつもりか!?」
金目鯛バカなのは否定しないがな
魏 延「金目鯛どの、シーッ」
金玉昼「本気も本気、本気と書いてマジと読みまひる
劉 表「そうだったのか……」
鞏 恋「そうだったのね……」
魏 延「こらこら、知らなかったのか」
鞏 恋「うん」
金玉昼「さて、劉表さんの処遇、どうしまひる?」
劉 表「しょ、処遇?」
鞏 恋「……首ちょんぱ
金目鯛「いやいや、紐で首くくって城門につるすってのも捨てがたい」
魏 延「うーむ、私としては尻から槍を突き刺してそのまま口まで……」
魏 光コンクリ詰めで長江に沈めましょう
劉 表ひ、ひいいいいい
金玉昼「……てのは冗談にゃ。とっとと出てくがいいにゃり」
劉 表「は?」
金玉昼「金旋の言葉はこうにゃ。
    『劉表は戦が弱いから生きていてくれた方がむしろ助かる。
    捕まえても解放しろ』
……とのことにゃ」
劉 表「う、ううっ! な、なんという屈辱……。
    あの戦下手の金旋にそこまで言われるとは!
    うわぁぁぁん!
魏 延「……さすがにかわいそうですなあ」
金目鯛「そうだなあ。俺が同じ立場でも泣くな」
鞏 恋「……でも、泣いてるオヤジはウザイ」
魏 光「そ、そうですか? やい劉表、とっとと出てけ。
     恋さんをウザがらせるなっ」

げしっ(魏光の蹴り)

劉表「うっうっ、覚えておれよ〜」

劉表は解放された。
彼は泣きながら、近くの烏林港まで逃げていったという。

一方、劉表同様逃げ遅れて捕らえられた彼の配下の将たち。
劉埼、秦泌、蔡瑁、韓嵩、彼らは解放されず獄に繋がれた。
劉表個人はどうでも良かった金旋だったが、彼の抱える人材にはかなり興味があったからである。

金玉昼「とりあえず城内の旗を『金』の旗に取り替えてにゃー」
鞏 恋「らじゃ。今まであった『劉』の旗は?」
魏 光染め直して劉璋に売り付けましょう
金玉昼「あ、それいいにゃ」
金目鯛「あとは親父を迎える準備だな。あれでけっこううるさいからな」
魏 光「掲げる横断幕は『おいでませ金旋御一行様』でよいですか?」
魏 延「……魏光、お前も金旋軍カラーに染まってきたな」

今までのぴりぴりした緊張感はどこへやら。
江陵の城の中は、すぐに金旋軍の雰囲気で染められていくのだった。

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