○ 第六章 「お正月だよ!金旋さん」 ○ 
〜207年12月末

   金旋金旋     劉髭劉髭

金 旋「……ひどいもんだなあ」
劉 髭「確かにのぅ。武陵とは雲泥の差じゃ」

12月下旬のとある夜。
金旋と劉髭は、珍しく真面目な話をしていた。
彼らの前には間者から送られてきた、長沙・零陵・桂陽などの都市の情報を
記した書面があった。

金 旋「戦争がなくても、民の平穏は無し、か」
劉 髭「荊南ばかりでもない。
    安定しとる曹操の領内でも、治安の悪いところは多いのじゃ」

武陵なみに治安の良い都市は、他に2、3数えるほどだった。
武陵の治安の良さは、もはや中華全土に誇れるものになっていたのだ。
これは、金旋が財政を富ませるべく内政に励んだ結果の副産物である。

金 旋「以前の俺なら、民がどうのなんて気にしなかったろうがなあ」
劉 髭「最近、『民のことを常に案じる仁君である』とか言われてきてるからのぅ。
    己自身もそのようにあろうと、無意識のうちに思い始めておるのかもな」
金 旋「はっはっは、よせやい。ガラでもない」
劉 髭「かっかっか、確かに顔には似合わんのう」
金 旋おい
劉 髭「ま、それはおいといてじゃ。
    おぬし、このまま終わる気ではあるまい?」
金 旋「ん? このままってのは?」
劉 髭「一郡の太守で終わる気はないのであろう、と言ってるのじゃ」
金 旋「……いや、別にこのまま平和に暮らすのも悪かねーかな、と……」
劉 髭「このままで、武陵がずっと平和だと思うのか?」
金 旋「……」
劉 髭「このままならいずれ、曹操かそれに代わる大勢力が攻め寄せて来よう」
金 旋「しかし、曹軍とは友好関係にある」
劉 髭「曹操が、中華全土の統一を前にそのようなことを気にすると思うてか?」
金 旋「むむ……」
劉 髭「その時、そのような大勢力に対抗するには、一郡の力では無理じゃ。
    最低でも荊南四郡の総力は必要となるであろうな」
金 旋「その時は、四郡が協力して……」
劉 髭「韓玄、劉度、趙範に、期待ができるのかの?
    一都市の治安もロクに安んじられん者たちじゃぞ?」
金 旋「ぐ……なら、どうしろってんだ」
劉 髭「四郡を制圧せよ。いや、できれば荊州全土じゃな。
    そして、堅牢な城、強靭な兵、豊かな国を作り上げよ。
    さすれば、倍する敵軍がやってきても、そう易々とは負けはせんだろう」
金 旋「……俺にそれができるというのか?」
劉 髭「今のおぬしなら、出来よう。仁君たる金旋どのなら、な」
金 旋「よせって、俺はそんな大した人間じゃねーぞ」
劉 髭「かっかっか、中身はどうでも良いんじゃよ。
    人はその者の表のみしか評さないんじゃ」
金 旋「おもて?」
劉 髭「うむ。つまりは、おぬしの心掛け次第でいくらでも仁君にも英雄にもなれるのじゃ。
    ま、実際は運も必要になるがの」
金 旋「……」

金旋はその後は黙して語らなかった。
劉髭は考え込む金旋の姿を見て、満足そうに頷き、部屋を後にした。


〜207年大晦日


   金旋金旋     金玉昼金玉昼 

207年の大晦日の夜。 金旋はその年の仕事を終え、自宅で愛娘と共にくつろいでいた。

金 旋「はぁ、今年も終わりだな」
金玉昼「そうだにゃー。今年もいろいろあったまひる」
金 旋「そうだな……。いろいろあったな」
下町娘「私が就職したのも今年ですねー。この一年、あっという間でした」
劉 髭「うむうむ。ワシがここに来たのも今年じゃ。まさに、光陰矢の如し、じゃな」
金 旋「……ちょっと待て……」
金玉昼「お爺様は以前からいたかのように最初から馴染んでたにゃ」
下町娘「私はどうだった?」
金玉昼「お仕事の時の町娘ちゃんは頑張っていたまひる」
劉 髭「うむ、下町娘ちゃんは若いのによくやってるのぅ」
下町娘「そ、そうですか? 嬉しいですねー」

金 旋ちょっと待てっつーの!
金玉昼「ど、どうしたかちちうえ? 大きい声出して?」
金 旋「なんで爺様と下町娘ちゃんがここにいる!?

   劉髭劉髭     下町娘下町娘 

金玉昼「町娘ちゃんは私が呼んだまひる」
金 旋「……なぜ?」
金玉昼「町娘ちゃんは一人暮らしにゃり。
    一人の年越しはさびしいと思って、呼んだまひる」
下町娘「えへへ、そういうことなんです」
金 旋「ほう、そうなのか。うむ、玉は優しいな」
金玉昼「……まあ、本当は最新のや●い本を見せてもらうためなのにゃ……」
下町娘「しーっ! しーっ!」
金 旋「ん? 良く聞こえんかったが……。
    まあ、それはいいとして。それで、爺様は?」
劉 髭「ワシも一人暮らしなんじゃが……。一人の年越しは寂しうて……」
金 旋「しかし誰も呼んでないぞ?」
劉 髭「な、なんと! このような老い先短い老人に、なんという仕打ちか!?」
金 旋「ああ、はいはい、わかった。居ていいぞ。
    ただし、慎ましくしてろよ?」
劉 髭「そ、そんな、無理難題を……」
金 旋今すぐ出てくか?
劉 髭「……承知したぞい」
金玉昼「それじゃー、皆で年越しそばでも食べまひるー」
劉 髭「どーれ紅白でも見るかの」
下町娘「あ、私も見まーす。堀内孝雄さんの出番はまだかなー?」
金玉昼「し、渋い趣味していまひる」
下町娘「えへへー。よく言われるー」
劉 髭「あ、玉昼ちゃんや、ワシのそばは温かいのでよろしくの」
金玉昼「はーい、ガッテンしたにゃり」
金 旋「……ま、こんな賑やかな年末も悪くはない……かな。
    玉よ、俺も手伝おう」
金玉昼「はいにゃ。じゃ、そこのそばとタレ持ってってほしいまひる」
劉 髭「おーい金旋どの。酒はまだかいのー」
金 旋じじいに飲ませる酒はなーい!

こうして、207年最後の夜は更けていった……。



〜208年元旦

ぴっ ぴっ ぴっ ぴーーーーーん

金玉昼「あけましておめでとーございまひる」
下町娘「おめでとうございますー」
劉 髭「うむうむ、おめでとう」
金 旋「しかし毎年思うんだが、新年のこの瞬間ってなんかマヌケだよな」
金玉昼「でもちちうえ、挨拶は大事にゃりよ?」
金 旋「はいはい。あけおめ〜、っと」
下町娘「それは行儀の悪い挨拶ですよー」
金 旋「そんなの、どうでもいいだろ……」

劉 髭「さてさて、これでまたひとつ歳を取ったわけじゃが」
金 旋「この時代の年齢は数え年だからな。皆一斉に歳を取るのだ」
金玉昼「……誰に言ってるのにゃ?」
金 旋「気にするな。しかし、俺ももう54歳か……先も短くなってきたな」
劉 髭「ワシが74じゃ。おぬしも精進すればまだまだ長生きできるぞい」
金 旋「こんなジジイにはなりたくはないがな。
    で、玉が14歳。成人まであと1年だな」
金玉昼「えっへっへー」
金 旋「で、下町娘ちゃんはたしか……」
下町娘わ! わー! わーーーーー!
金 旋「うお、どうしたどうした」
下町娘女の子は歳取らないんですーーー!
劉 髭「ホエホエ、でも町娘ちゃん、確かまだ10代……」
下町娘わーーーーーー!
    今は良くても、来年以降辛くなりますからー!
    だから今のうちに不詳にしとくんですーーーーー!」
金 旋「判ったような判らんような。
    まあとにかく、下町娘ちゃんは永遠の18歳と……」
下町娘「そういうことでお願いしますー」
金玉昼「はー、乙女は大変なのだにゃ〜」
金 旋「玉も乙女では……?」

ピンポーン

金玉昼「おやや、誰か来たにゃり」

ぱたぱたぱた

金 旋「こんな遅くに誰だ?」
金目鯛俺だー

   金目鯛金目鯛 

金玉昼「あにじゃと、その作品たちにゃ」
金目鯛作品言うな。
    ほれ、お前ら。お爺ちゃんにご挨拶だ」
閣 寺「お爺様、あけましておめでとうございます」
胡 麻「じいちゃ、おめとー」
魚 鉢「ばぶー」
金 旋「おうおう、親子揃ってご挨拶か。じいちゃんは嬉しいぞー。
    たしか閣寺は今年で8歳、胡麻は4歳になったのかな?」
閣 寺「そうです」
胡 麻「よんさいなんだお」
金 旋「で、魚鉢は2歳、と。初めての正月だな」
金玉昼「うむむ、魚鉢ちゃん、けっこう重いにゃ」
下町娘「か、可愛い〜。つ、次は私に抱かせて〜」
金目鯛「落とすなよー」
閣 寺「叔母様、手付きが危ないです」
金玉昼がー!
    閣寺ちゃん、おばさまって言わないでほしいまひる!
    お・ね・え・さ・ん、にゃ!」
閣 寺「しかし、叔母様は父上の妹君ですので、私の姉ではありません。
    やはり叔母様と呼ぶのが正しいかと……」
胡 麻「おばしゃん、おかしちょうだい」
金玉昼あがーーーーーーー!
金 旋「はっはっは、玉もオバサンか。しかし閣寺は礼儀正しいな」
金目鯛「嫁さんのしつけもあるからなー」
金 旋「だが、この歳でここまで立派なのはすごいぞ。
    まさに瓢箪から駒、だな。はっはっは」
金目鯛「ははは、そりゃひでーよ、親父」
劉 髭「いや全く。金目鯛どのこそ瓢箪から駒じゃ、父に似ず立派な将であるぞ」
金 旋「へーへー、どうせ俺は凡人ですよ」

ピンポーン

金玉昼「あや、また誰か来たにゃり」

ぱたぱたぱた

金 旋「目鯛の嫁さんか?」
金目鯛「いや、あいつは挨拶は朝にするって言ってたから、
    そりゃないと思うが……」
鞏 志「あけましておめでとうございます」

   鞏志鞏志 

金 旋「おう、鞏志か。どうした、新年の祝賀宴で顔を合わせるだろう」
鞏 志「いえ、一言ご挨拶を、と思いまして。ほら、恋」
金 旋「ん? 他に誰かいるのか?」

   鞏恋鞏恋 

鞏 恋「……新年おめでとうございます」
金 旋「え? あー、うん、おめでとう……。
    って君は誰?
鞏 恋「鞏志の娘……。恋です」
金 旋「ほほう、君が。鞏志に娘がいるのは話に聞いてたが……。
    いやいや、父に似ず可愛いな! はっはっは!」
鞏 恋「……ぽっ
鞏 志「今年で成人になりました故、挨拶に参りました。
    勉強嫌いで武芸ばかりやっておった娘でして、
    頭は弱いですが、武芸はなかなかのものです。
    武官として、幕下に加えてくださいませ」
金 旋「俺の配下にか。どーれどれ、ちょっとオバカさんとな……」

鞏恋 [キョウレン]
鞏恋
武官
15歳(208年現在)
統率73
武力78
知力44
政治34
(架空)
兵法:奮戦・奮闘・突破・騎射・斉射・連射・造営

金 旋「……俺より頭いーーーーー!?」Σ( ̄□ ̄;)ガーン
劉 髭「そりゃおぬしよりバカな者など、そうそうおらん」
金 旋よし、採用!
金玉昼「はやっ! ちちうえ、あんまり早いのは嫌われまひる!」
金 旋「玉……。そんなことどこで覚えてくるのだ……。
    いや、それはおいといて、だ。
    あれだ、武官が少なくて戦になったら困るなー、と常々思っておったのだ」
劉 髭「金目鯛どのの次の武官が金旋どのじゃったからな。
    確かに、層は薄かったのう」
鞏 志「はっ。今後は親娘ともども働きますゆえ」
鞏 恋「……ふつつかものですが、よろしくお願いします」
下町娘「恋ちゃん、それは嫁ぐ際の口上……」
鞏 恋「……知ってる。わざと」
金目鯛「はっはっは、冗談が好きだな! よろしく頼むぜ!」
鞏 恋「……弓の扱いなら、任せて」
金 旋「うむ。新たな人材を迎え、際先の良いスタートだな!
    皆の活躍を期待しているぞ! はっはっは!」

金玉昼「その前にちちうえ」
金 旋「ん? どうした」
金玉昼おとしだまちょーだいにゃ」
金 旋「……」
金玉昼「ちょーだいにゃー」
金 旋「全く、いい感じでまとめたと思ったのに……。
    はいはい、後でやるから待ってなさい」
金玉昼「はーい」
胡 麻「おじーちゃん、ぼくもおとしだまー」
閣 寺「こら、胡麻」
金 旋「ははは、かまわん、閣寺。
    3人の分も用意しておくからな、待ってなさい」
胡 麻「わーい」
閣 寺「ありがとうございます」
鞏 恋私のは無いの……?
鞏 志「こ、こら恋! す、すいません太守!」
金 旋「鞏恋も欲しいのか。まあ、成人祝いということで特別にやろう」
鞏 志「きょ、恐縮です、太守……。こら恋、お礼を言わんか」
鞏 恋「……さんきゅー」
鞏 志「な、なんという無礼な言い方を……!」
金 旋「ははは、気にするな鞏志。面白い娘じゃないか」
劉 髭ワシのは〜?
金目鯛俺のは〜?
金 旋「俺より年上にくれる気はサラサラないな」
劉 髭「ちっ」
金 旋「目鯛も……いい年した大人がなんだ」
金目鯛「いや、なんか俺も言った方がオチ的にいいような気がして」
金 旋そんなもん気にすんな!


かくして無事に208年を迎えた金旋ファミリー。
新たな戦力、鞏恋を加え、陣容もパワーアップ!
国力の上がった武陵を背景に、今後はどういった戦略を打ち出すのか……。
次回より外に目を向け、いよいよ版図拡大に乗り出します! 待て、次回!



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