痕〜らせん〜 前編
*「らせん」を見ていない人、読んでいない人にはネタが解らないかも知れません。
結構シリアスかも。
書いた人、秀
「ち、千鶴さん!?」
夜中にドアを軽くノックする音が聞こえ、俺は瞼を擦りながらも玄関に立ちドアを開けたのだが、そこにいるはずのない彼女に抱きしめられた。
柏木千鶴。俺の三歳上の従姉のお姉さん。昨年・・・彼女はお姉さんでなくなり、そして永遠の世界へ・・・・もとい鬼の手に掛かり亡くなった・・・俺の腕の中で。
それなのにその彼女が、今ここで俺を抱きしめている。
「耕一さん・・・・・・会いたかったです」
その姿は紛うことなく千鶴さん本人だった。
でも、どうしてだ?
千鶴さんはあの時俺の腕の中で息絶えて・・・。翌日、泣き叫ぶ梓たちとごく一部の知人だけでお葬式を上げ、火葬して山に埋めたはず。
「ど・・・・どうして千鶴さん」
子供のように俺の胸に顔を埋めすがりついている千鶴さんの綺麗な黒髪を梳く。
「・・・・・・」
「千鶴さん?」
千鶴さんは顔を上げる、その目は真剣に俺を見つめた。
彼女の目に見つめられて、俺の視界が、世界が赤く染まっていく・・・・・じゃなくて。
聞かないで下さいと言っているようだ。
「ええと・・・・じゃあ、今日はもう遅いから明日に・・・・」
と言って千鶴さんを部屋に招き入れる。
明日、それとなく聞けば良いか・・・。
トントントントン・・・
小気味よい野菜を切る音で俺は目を覚ました。
台所からいい匂いが漂ってきている。
・・・。千鶴さんが作っているのか?
にしては、まともな(失礼)匂いに野菜を切るのも何か手際が良さそうだ。
「お、おはよう。千鶴さん」
とはいえ恐る恐る台所に顔を出してみる。
そこには信じられない光景が広がっていた。
まともに(超失礼)千鶴さんが料理を作っていた。
「おはようございます、耕一さん。もう少し待っていて下さいね、すぐ出来ますから♪」
「は・・・はい」
本当に手際よく料理を仕上げていく千鶴さん。しかし、朝から何だこのメニューは・・・・。それよりも家にこんなに材料あったっけ?テーブルには、肉じゃが、焼き鮭、キュウリと蛸の酢の物が並んでおり、今千鶴さんは味噌をみそ汁に溶かしている。
「どうぞ(はーと)」
席に着くと、ご飯がつがれ千鶴さんが俺の前に座る。
見た目は凄く美味しそうだ。作り方もしっかりしていた・・・と思う。
だが、いつもこれで騙されていた・・・・千鶴さんの料理は味が根本的に・・・・。
「・・・・」
覚悟を決めよう。
千鶴さんが「どうしたんですか?」と言った風に俺を見つめている。
まず・・・・・みそ汁を飲もう。
器を持ち、箸で軽く混ぜる。
赤味噌に、ナメ茸、若芽、豆腐の入った普通のみそ汁。
そして・・・啜る。
「・・・・・・」
美味しかった。
普通のみそ汁なのに、インスタントタイプのみそ汁とは格段に味の差があった。
次に肉じゃがを。箸でじゃがいもを取る。
堅すぎず、柔らかすぎず、それでいてしっかりと味の染み込んだ物が最も美味しい。
口に入れる。
「・・・・・・・・・」
これも、本当に美味しかった。
「どうですか?」
「美味しいよ、千鶴さん」
最初は訝しんでいた俺も、予想以上にしっかりと味が作られており箸が進んだ。
「ごちそうさま」
「お粗末でした」
千鶴さんは嬉しそうに食器を片づけていく。
「ああ、俺がやるよ」
「耕一さん、大学の方は大丈夫なんですか?」
「あ・・・・・・」
今日は必修の講義で落とすと単位が無い・・・しかも厳しい教授だ。
折角千鶴さんが居るって言うのに。
講義と千鶴さんを天秤に掛けようとするが、必然的に千鶴さんに傾く。
「いや良い。千鶴さんが来てるのに大学なんて行けないよ」
「今日、落とすとヤバいんじゃないんですか?」
「あう・・・」
作るときと同じように手際よく食器を片づける千鶴さん。
「良いですよ、大学が終わるまで待ってますから」
「ごめん・・・千鶴さん」
俺は千鶴さんに謝ると大学へと向かっていった。
「おう、柏木。速いな」
「よう」
ゼミの連中とペチャクチャ喋っていると教授がやって来、講義が始まる。
ふと、回りを見てみるといつも居るはずの彼女が居なかった。
珍しいな。
由美子さんもこの講義を落とすと単位厳しいはずなのにな。
んんー、さっさと終わんないかなぁ、大学。
あとがき
ども〜、突発的にまたまたパロディを書いてしまいました。とはいえ、この喋り方耕一じゃねぇ〜〜。駄目だなぁ、どうも。ところで、もう大体次にどうなるか解りますよね♪そう、多分あなたの思った通りになる、かも知れません。
余談:「らせん」と「リング」比べると「らせん」はある意味失敗作だな(ぉ
余談2:千鶴さんはやっぱり貞子に似ているな(ぉぉ。