○ 第八章 「韓浩 愛ヲ得テ決意ヲ新タニス〜そして三国時代へ」 ○ 

■204年1月

賈駆「年が変わり、他勢力にいくつか動きが出ております。
  曹操が魏王を、劉表が楚王を名乗ったそうにございます」
韓浩「曹操……どのが王に、か」
賈駆「両陣営に対して、他の勢力が非難しているようですな」
韓浩「帝に与えられたのではなく、自分で名乗ってるわけですからね」
賈駆「しかし、王を名乗ることにより、その名声は良くも悪くも天下に轟きます。
  その利点も見逃せません。……韓浩様も、お考えあれ」
韓浩「……王か(だが、私は……)」

周りの襄陽・江夏・永安などの都市を諜報。
江夏・柴桑にて連弩を生産。
朝廷工作、右中郎将に任じられる。



■204年1月 <韓浩の決意>

李通の屋敷。
韓浩「ゴホン、李通、ちょっと話があるのだが……」
李通「は、はい。どうぞこちらへ」
韓浩「う、うむ……えーと……きょ、今日は天気がいいな」
李通「……雨が降っておりますが」
韓浩「あ、ああ、そうだね、やっぱりこういう日は辛子味噌ラーメンとか食べたいね!」
李通「あ、私はあまり辛い物は食べませんので」
韓浩「あ、あら、そうなんだ……え、ええと……その……なんだ」
李通「……くすくす」
韓浩「……な、何で笑ってるんです?」
李通「いえ、今の韓浩様を見ていたら、初めて会った時を思い出しまして」
韓浩「ああ……。あの時は女性に免疫がなかったから。
  李通どのが女だとは知らなかったし……」
李通「あの頃と今、あまり変わりがありませんよ?」
韓浩「ハハハ。確かにそうかもしれない」

韓玄「よーし、いい雰囲気になってきおった」
孫策「韓玄どの……このような出刃亀行為をしててよろしいのですか」
韓玄「何言っとるか、ちょっと話したら面白そうだと言ってホイホイついてきたくせに」
孫策「いや、さすがにこんな屋敷の中まで入るとは思わなかったので」
韓玄「アホタレ、屋敷に入らず話が聞こえるか」
孫策「むぐ……(アホにアホ呼ばわりされるとは……)」
韓玄「ほれ、いよいよじゃぞ?」

韓浩「り、李通どの……その、私は、あ、あなたが、す、す、す」
李通「はい……」
韓浩「すすす素晴らしい将だと思ってます!」
(ドタッ!)
李通「……今、物音がしませんでした?」
韓浩「え? そうですか? 私には聞こえませんでしたが……」

孫策「(小声)なにやってるんですっ」
韓玄「(小声)す、すまぬ、ついコケてしもた」
孫策「(小声)ホラ、韓浩様が改めて言い直すようですぞ!」



■<韓浩の決意2>

韓浩「素晴らしい将という他にも、その、あ、あなたが、す、す、す」
李通「……」
韓浩「す、好きなんだぴょーん!」
(ドタドタッ!)
李通「また、音がしたような……」
韓浩「え? 何がです?」

韓玄「(小声)なんでお主までコケるかっ」
孫策「(小声)す、すいませぬ、つい」
韓玄「(小声)しかし、愛の告白で『ぴょーん』は無かろう、『ぴょーん』は」

李通「くすくすくす」
韓浩「え、えーと……その、今のは冗談では無……」
李通「ええ、冗談ではないことはわかります。
  韓浩様の性格では、こんな言い方じゃないと言えませんよね」
韓浩「そ、それじゃその、お返事は……」
李通「はい、私も、韓浩様をお慕いしております」
韓浩「えっ、ええっ、や、やったぁ!」
李通「あ、その、でも……」
韓浩「でも?」
李通「その前に私は将として、韓浩様のお傍にいたいのです。
  ですから、その……男女のお付き合いは、暫く待って下さいませ」
韓浩「ま、待つって? どれくらい?」
李通「韓浩様が、この中華を統一するまで……」
韓浩「ええ〜」(;´д`)
李通「申し訳ありません。でも、私も武人としてケジメをつけたいのです」

孫策「……あれは、体よく断っているのではありませぬか?
  統一するまで付き合いを待てなんて……」
韓玄「フフン、まだ若いな。李通は本気じゃ、目が違う」
孫策「目?」
韓玄「うむ。何度もワシの告白を体よく断ってまいった、
  調子のいいおなご共の目とは全く違う。本気の目じゃ」
孫策「はあ……」

韓浩「……わかりました。あなたと私は君と臣。それでいいですね」
李通「聞き届けてくださいまして、ありがとうございます」
韓浩「いえ、私の思いが通じたというだけで嬉しいですよ」
李通「ふふふ。では、私の誓いを……」CHU♪

韓玄・孫策「おおっ」

韓浩「ほえほえ〜」〜〜(* ̄Д ̄)フラフラ……バターン!
李通「か、韓浩様!」



■204年2月

孫策「おめでとうございます」
韓浩「え、え? 何が?」
孫策「あぁ〜いえいえ、先月、元旦の挨拶をしなかったような気がしたもので」ニヤニヤ
韓浩「あ、そうだったか? おめでとう」
賈駆「……孫将軍、何を笑ってるのです?」
孫策「いえ、別に何も?」
賈駆「……まぁ、よろしいでしょう。
  しかし、江夏を攻める準備もありますれば、気を緩めぬようお願いしますぞ」
孫策「は、それは重々承知」
賈駆「今月も、連弩生産、訓練を行います」
韓浩「うん、私も連弩造りをしましょう」

江陵・柴桑にて連弩生産・訓練。


■204年3月

韓浩の屋敷。
韓玄「のう浩、あの後どこまで行ったんじゃ?」
韓浩「は? あの後とは?」
韓玄「ホレ、告白の後じゃよ」
韓浩「あ、知ってたんですか……別にどこにも行ってませんよ。
  食事をご馳走になって帰ってきました」
韓玄「いや、そーいうことじゃなくてだなぁ……」
賈駆「失礼致します。お話があって参りました」
韓浩「軍師? どうされました」
賈駆「いえ、少しばかり申し上げたきことがございまして……」チラ
韓玄「……ああ、ちょっと厠へ行って参る」バタバタ
賈駆「……韓浩様、あまり色恋沙汰にうつつを抜かさぬようにお願いします」
韓浩「……言われずとも判ってます」
賈駆「そうですか、しかしあまり韓玄どのに影響されないようにお願い致します。
  ……今日参ったのは、零陵での部将捜索を許可して頂きたい、と思いまして」
韓浩「なんだ、そのようなことでしたら、すぐにでもやってください」
賈駆「は、吉報をお待ちください」
韓浩「軍師」
賈駆「……は」
韓浩「兄上はいずれはあなたの主となる者。
  あまり疎略には扱わない方がよろしいですよ」
賈駆「……ははっ」

賈駆「はてさて、あのお考えは何とか翻意させねばならないが……。
  どうしたものかな」

零陵にて、刑道栄を捜索、登用。

武陵の孫権・黄蓋・蒋欽を柴桑へ移動させる。
また、柴桑の陳登・於夫羅・呼廚泉を武陵へ移動。
陳登を武陵太守にする。



■204年4月

賈駆の進言により、零陵で劉巴を登用する。
そして……。

韓浩「ではこれより、江夏を攻める! 皆の者、宜しく頼むぞ!」
諸将「ははーっ!」
江陵より江夏を攻める軍が編成され、総大将を韓浩、参軍を賈駆とし、
江陵の兵士13万7千、孫策・太史慈・程普・満寵・陸遜・李通・韓玄という将たちが揃っていた。
また、周瑜が治める柴桑からも、6万8千の増援を送り出していた。

対する江夏守備軍の関羽は、参軍の諸葛亮と謀議を謀っていた。
関羽「軍師……我が軍は7万6千。対する敵軍は2倍、援軍を加えれば3倍にもなる。
兄上には援軍要請をしたし、我が方が精鋭とはいえ……これは苦しい状況であろう」
諸葛亮「左様。しかしてこの逆境を乗り越えるには、少々博打を打たねばならぬかと」
関羽「やはり、そうなるか」

韓浩軍は江夏の城への道を行軍していた。
韓浩「軍師……」
賈駆「はっ……お気付きにございますか」
韓浩「辺りが不自然なくらいに静かすぎる。これは……」
賈駆「ほぼ間違いないでしょう。迎撃準備を整えておきます」
韓浩「うむ。備えさえあればどうということはない」

諸葛亮「よし、今です。全軍に攻撃命令を」
関羽「うむ、全軍攻撃開始だ!」
ズドドドドド……
江夏軍は行軍中の韓浩軍に向かって進撃を開始する。だが……
賈駆「諸葛亮! さすがのお前もぬかったな!」
諸葛亮「……見抜かれたのか!? 奇襲は失敗だ!」
賈駆「敵は混乱している! 各隊、連弩を浴びせよ!」

全て連弩兵で構成された韓浩軍は、矢の雨を降らせ江夏の兵をみるみるうちに減らしていく。

王威「くそっ、兵が混乱しているところにこの矢の雨では、全くどうにもならん」
李通「そこの敵将! 我が名は李通、一騎討ちで勝負だ!」
王威「女!? いい度胸だ、返り討ちにしてくれん!」
ガキーン
李通「……お主は2つ間違った」キィン
王威「なんだと?」カァン
李通「1つは仕える君を誤ったこと……そしてもう1つは私を女と侮ったこと!」
ずっしゃーーーー
王威「ひ、ひでぶっ」

李通、王威に重症を負わせ捕らえる。

関羽「……我が兵は、我が兵はどこにいる!」
満寵「諦めなされ、関羽どの。あなたの兵はもはやいない。大人しく捕虜となられよ。
  それとも、この向けられた連弩を全てかいくぐる自信があるのですかな?」
関羽「フン。勝手にせい……」(青龍エン月刀を足元に投げる)
満寵「……嫌に素直ですな」
関羽「死ぬときは兄上と共に死す……そう約束したのでな。ここで死ぬわけにはいかん」

関羽、連弩にて兵を失い、満寵に捕らえられる。

孫策「ハハハ! 何が天才軍師か、あっけないものだな」
諸葛亮「……無念」
太史慈「こちらは関平を捕らえた。これで残る部隊は司馬徽のみ!」
賈駆「よし……では各隊、司馬徽を包囲し連弩を……うん?」
そのとき、廬江より劉備軍の援軍6万が到着した。
韓浩「どうしようか、軍師。
  もはや司馬徽の部隊さえ倒せばあの援軍は退却するしかないが」
賈駆「いえ、ここはまず敵援軍の部隊構成を調べましょう。
  組し易い相手ならば、潰してしまった方が後のためにもなります」
韓浩「わかった。……孫策、太史慈。まず部隊の様子を調べ状況を見るのだ!」
孫策「承知!」

孫策「……あれに見えるは『趙』の旗。そうか、趙雲か……。
  敵将趙雲! この孫策、お主との一騎討ちを所望する!」
太史慈「孫策どの!? 我々はあくまで強行偵察が任務ですぞ!」
孫策「なァに、手柄さえ立てちまえばこっちのものさ……さあ趙雲、臆したか!」
趙雲「……致しかたないな。お相手いたそう」
孫策「よし……食らえ!」カキーン
趙雲「なんのっ」キィーン
……勝負は互角であったが、僅かな差で趙雲が勝利する。
孫策「くそっ……この私としたことが……」
趙雲「ふう、さすがは世に聞こえし孫策。……む? また誰かが……」
太史慈「よくも孫策どのを! この太史慈が勝負だ!」
趙雲「……すまんな。さすがに2連戦をする気はない」
太史慈「なにっ?」
太史慈、2度一騎討ちを申込むが断られた。

賈駆「……どうも、状況はよくないようですな。
  司馬徽隊を殲滅させ、奴らを退却に追い込みましょう」
韓浩「わかった。全軍、司馬徽隊を殲滅よ!」
李通「はっ! 連弩隊、ありったけの矢を打ち込んでやれ!」
残っていた司馬徽の部隊はあっけなく全滅し、司馬徽は李通に捕らえられた。
司馬徽「このような女将軍に捕らえられるとは……よきかなよきかな」
李通「……変なお方ですこと」

趙雲「む……我が軍は全滅か。退却せねばなるまい……。
  孫策どの、そういうわけですので貴公を解放いたす」
孫策「趙雲……この屈辱、忘れんぞ。いつかお主を倒す」
趙雲「いつでもお相手致しましょう。では、また戦場で」

江夏の部隊は全滅、廬江よりの援軍は総退却した。
こうして江夏の戦いは幕を閉じた。

韓浩「戦功第一は李通。2将を捕らえるなど、よくやってくれた」
李通「はい。これも韓浩様の御為にございます」(ニコリ)
韓浩「う、うむ。……また、満寵もめざましい働き、流石である」
満寵「ははっ、勿体無きお言葉」
賈駆「では、捕虜の処遇ですが……司馬徽以外は、登用を拒んでおります」
韓浩「関羽と諸葛亮もか」
賈駆「はっ。この2人は共に劉備への絶対の忠誠を誓っておりますれば……」
韓浩「しかたあるまい、彼らは解放してやってくれ」
賈駆「承知いたしました」

捕虜のうち、司馬徽を登用。王威、関羽、関平、諸葛亮を解放した。

賈駆「韓浩様。江陵の兵の増強をせねばなりませぬが」
韓浩「うん。柴桑の周瑜を江陵の太守にしようと思ってる。
  孫策が一度捕らえられたので江陵に戻ってるし、
  この2人がいれば倍する敵がきても安心だと思うが」
賈駆「左様ですか。確かに江陵では水軍が物をいいますし、よいかと存じます」
韓浩「柴桑の太守は、諸葛瑾に任せよう。
  目立った強さはないが、彼ならば柴桑を守りきれる」
賈駆「はっ」

周瑜が1万7千の兵を引き連れ、江陵に移動。
後任の柴桑太守には諸葛瑾に任された。

そのすぐ後のこと。永安の劉璋が、江陵に兵を差し向けてきた。
対する劉璋軍は8万7千、対する江陵の兵は4万4千。
数の上では不利な江陵軍であったが、太守の周瑜は野戦にて決着をつけるべく、
夷陵へ出陣したのであった。
かくして、夷陵の戦いが幕を開けた。

周瑜「我が軍は寡兵とはいえ、地形の有効利用と連弩の活用、
  この2点でいくらでも挽回可能だ」
孫策「劉璋軍は水軍を扱える将はそうはいない。
  川を巧く利用し、私と周瑜で敵兵を減らす」
周瑜「うむ……他の将は、川を渡る船を連弩にて攻撃するように。
  陸にいる部隊を相手にするよりやりやすいはずだ。
  また、江夏より援軍も参る。後半は彼らに任せてもいい」
孫瑜・公孫度「はっ、承知しました」
虞翻「参軍は私なんですけど……(泣)」
周瑜「あ、虞翻どのは本陣に陣取っててください。兵少ないですからね」
虞翻「……承知しました……」

虞翻「えぇい、急報で援軍が早く来るようにしてみせる!
  こうでもしないと私が参軍だというのがアピールできない!」

虞翻の意地が通じたのか、援軍が次の日には到着することになった。

さて、前線の川の中洲に築かれた砦には、周瑜が陣取っていた。
周瑜「敵の部隊が現れたな。孫策、頼むぞ」
孫策「おう。我らを水上で相手するとどうなるか、きっちり教え込んでやるさ」
孟達「なに……敵太守の周瑜がこんなところに陣取っているのか?
  ええい、敵兵は少ない! 捕らえるぞ!」
孫策「……やれるものなら、やってみるがいい!」

孫策・周瑜の部隊は、鬼神のような強さを見せる。
敵参軍の孟達を始め、雷銅、楊阜、于麋を捕らえ、厳顔を退却に追い込んだ。
援軍で来た李通たちが前線に着く頃には、あらかた勝負はついてしまっていた。
李通「さすが、孫策どの、周瑜どの。しかし私も手ぶらで帰るつもりはない……。
  目の前の姜叙の部隊に突撃を敢行する!」
李通、川べりにいた姜叙の船に突撃し、姜叙を捕らえた。
孫策「さすがですな。韓浩様もよき妻を持たれたものだ」
李通「なっ……ななな、何を申されますか!? ふ、夫婦の契りはまだです!」
孫策「ふむふむ、まだということは近い将来はそういう予定と……」φ(..)メモメモ
李通「そ、孫将軍〜!」

夷陵の戦いは、韓浩軍の大勝利に終わった。
敵の部隊のほとんどを殲滅、味方部隊の損害は軽微であった。
また、捕らえた雷銅・楊阜・姜叙が登用に応じたのであった。



■204年5月

賈駆が韓浩の元を訪ねてきた。

賈駆「いやいや、街が賑わっておりますな。やはり治安のよい街は人が集まりまする」
韓浩「うむ、これも皆の働きのおかげ……軍師、感謝するぞ」
賈駆「いえいえ、我が君の徳の賜物でございます。
  それに先月は、江夏を奪い江陵を守り、版図拡大、まことめでたく存じます」
韓浩「はは、世辞はよい。
  しかし……友好的だと思っていた劉璋が攻めてくるとは思わなかった。
  劉表が攻めてくるものだと思っていたが……」
賈駆「所詮、乱世とはそういうものです。
  さて、永安の兵が4万程度のようです。この際、攻め取ってしまいましょう。
  江陵を攻められた報復という形になりますれば、大義名分も申し分ありません」
韓浩「永安を? 確かに、チャンスではあるが……攻めるとなると、武陵からになってしまう」
賈駆「武陵の将たちでは不安ですか? ならば1月待って、将を派遣致しましょうか」
韓浩「……いや。ここで江夏や江陵の将は動かしたくない。
  それに彼らも私に従って戦っている者たちだ、多少不安でも使ってやらないと」
賈駆「はっ、では武陵太守の陳登どのに永安遠征の命令を送ります」
韓浩「うん、頼む」


■武陵

ここには超一級品の武将たちが揃って……いなかった。

陳登「……韓浩様より指令が参った。永安を攻め取れ、とのことだ」
孫翊「おおっ太守、それは本当か!?
  それがしたちの力を示すいい機会ですな!」
於夫羅「それでは早速、準備シナーイとイケマセンネー」
呼廚泉「マイブラザー、今度は虚報で退却しないようにシテクダサーイ」
潘濬「……頭痛い」
楊任「潘濬どの、頭痛か」
陳登「武陵には、鞏志どのを残す。他の将は皆、戦に参加してもらうのだが……」
侯成「何にございますか?」
陳登「参軍を誰にするか、それが問題だ」

全員、互いの顔を見る。……参軍向き(知力高)の者は誰もいない。

於夫羅「ハイッ! ミーに任せるネ! これでも結構クレバーよ!」
呼廚泉「マイブラザー! 敵の計略に簡単に引っかかる人が参軍なんて、
  ベリーベリー可笑しいデース! HAHAHA!」
孫翊「いやここは優秀な兄を2人持つこのそれがしが」
潘濬「お主自体はパープリンだろう」
楊任「やはり、スパイの実績のある私が……」
侯成「私は辞退しときます。全く不器用なんで」

陳登「……潘濬どの、お主に頼む。一番マシなのはお主のようだ」
潘濬「はっ」
陳登「……本当なら、私自身が参軍になりたいところだがな……」

かくして、陳登率いる遠征軍9万5千は武陵を発し、永安へと迫る。
対する永安の兵は4万。
陳登は、正面突破作戦を選択し、各部隊に進撃を命じた。

陳登「劉璋軍の援軍が到着して、敵兵は6万8千ほどになったようだ。油断するな」
楊任「フフフ、なーに、この楊任様の手にかかればその程度は!」
孫翊「お、敵増援部隊発見」
潘濬「よし、では包囲して殲滅するぞ」
楊任・孫翊「(ケッ、知力50にも満たない参軍のくせに偉そうに)」

楊任「よし、ここはひとつ名乗りでもするか……。
  やあやあ! 俺こそは韓浩軍生え抜きの楊任だ!」
荀爽「ああーん? 韓浩軍生え抜き?
  孫権や黄蓋なら知ってるが、楊任なんて聞いたことないぞ」
楊任「な、なにぃぃぃ。ムカついたぞコンチクショー!」
潘濬「挑発に乗るな楊任どの! 例えそれが本当のことであっても!」
楊任「あーお前もムカツクわー!」
董和「孫策の弟、孫翊だと? 聞いたことないな、孫権なら知ってるが」
孫翊「なんだとぉぉぉ!?」
楊任「ああ、それは納得」
孫翊「納得するな!」

兵力差で有利に立つす潘濬・孫翊・楊任であったが、
バカなので挑発・混乱・火計をやられまくる。
それでも、荀爽、董和などを殲滅、捕らえることに成功するのだった。

一方、先へ進んだ陳登らは孟達の部隊と交戦。
於夫羅「オー! 陳登どの、助けに行くデース」
んぼっ
於夫羅「オオウ! 火罠デース! 警戒してたのにホワーイ!?」

於夫羅はどこまで行ってもバカだった。
しかし陳登、あせらず孟達を撃破。

侯成・呼廚泉が胡軫と交戦。これを破る。
また、兵少なく混乱した董和に対し、楊任が一騎討ちをしかけ、勝利する。
一番手強いと見られていた厳顔も、陳登が捕らえることに成功。

順調に行っていると思われた矢先、物見から各隊に急報が入った。
于麋の隊がいつのまにか空の本陣に迫っていたのである。

呼廚泉「ミナサーン、バックバック! 本陣ピーンチ!」
於夫羅「オーウ! 本陣を狙うとはやってくれるデース!」
陳登「い、いかん、皆で守るのだ!」

慌てて本陣へ戻る各隊。
なんとか孫翊・潘濬が間に合い、于麋を殲滅、これにて戦闘は終了した。

戦功1位は楊任、ついで陳登、侯成の順であった。

楊任「韓浩軍に楊任有りだ! 覚えとけテメェら!」

捕らえた将は胡軫以外は登用を拒否、解放される。

かくして、蜀への玄関口である永安を手に入れた韓浩であった。


■204年6月

■永安

於夫羅「うーん、思った以上に兵士が減っちまったなー」
孫翊「そりゃおめーがポンポン火罠に引っかかるからだこのヴォケ」
於夫羅「んだとゴルァ!混乱させられて火掛けられてた奴が言うか!」
楊任「やだね〜。バカがバカさ加減を張り合ってるぜ」
孫翊「てめー! 勲功1番だったからって調子こいてんじゃねー!」
陳登「君たちやめなさい! 徴兵しといたから、訓練してください」
於夫羅・楊任・孫翊「ほーい」


■桂陽

張バク(桂陽太守)「江夏に続いて永安か。殿の威勢は留まることを知らんな」
曹性「全くですな。しかし、わしらは全くお呼びがかからんですのぅ」
紀霊「俺は長沙太守も勤めたことがあるんだがな……
  なんでお主らとこんなところで茶など飲んでなければならんのだ」
向朗「まあ、平和でよろしいではないですか」
刑道栄「こんにちわー」
張バク「おや、あなたは……」
刑道栄「零陵から来ました刑道栄です。兵1万も連れてきました」
張バク「あなたのような武官が配置されるとは、もしや……」
紀霊「近々、士燮のいる交州を攻めるということか! そうかそうか、やっと戦ができるぞ!」
刑道栄「戦のときは、参軍は私に任せてください!」
紀霊「ハァ?(゚д゚)」

■江陵

賈駆「刑道栄を派遣したことで、交州攻めをするのではないか、との噂が流れておりますが」
韓浩「いいんじゃないですかね、士気が高まるのはいいことです」
賈駆「しかし、零陵に残した兵がただ勿体無いからとりあえず移動させた、
  なんてことが知れたら……」
韓浩「まあ、その時は本当に交州を攻めるとしましょう」

城の外へ目を向ける二人。
そこでは、荊北の景観を望むことができた。

賈駆「ま、その前に襄陽攻略が先ですが」
韓浩「うむ、それが最優先事項ですな。
  襄陽さえ落とせば荊州を完全に掌握することになる……」
賈駆「はっ」
韓浩「さすれば中華の統一も夢ではなくなる。そして、兄上が統治する国を……」
賈駆「……」
韓浩「ははは、兄上の話をすると軍師の顔は渋くなるな」
賈駆「そう納得できる話ではないことは、御自身も御承知でございましょう」
韓浩「だが、これは私の夢だ。これがあるからこそ私はこの地にいる」
賈駆「……私の夢は」
韓浩「ん?」
賈駆「私の夢は、仁君たる韓浩様を帝王にし、その補佐をする……。
  壮大ではありますが、夢のままでは終わらない、実現できる夢です。
  韓浩様がこの世にある限りは、韓玄様が兄であられようと、その代わりにはなりえないのです。
  ……そして、この想いは諸将の胸にもあるでしょう」
韓浩「……軍師」
賈駆「わが軍の将兵、治める民、皆の気持ちをお量りください」
韓浩「……わかった。その言葉、胸に留めおく」


……韓浩の伝で残っているのはここまでである。
彼のこの後の足跡を詳しく記す書物は、残ってはいない。
口伝で残っている話を紹介して終わりにしよう。


韓浩とその軍は揚州、益州と軍を進め、中華南部を支配する。
そして曹操の建国した「魏」、雍州・涼州・漢中を支配した馬騰の「秦」と覇を競い、
「楚」を建国。いわゆる「三国時代」を作り上げた。
楚は三国中、一番規模の大きいものであったが、建国後すぐ皇帝となった他の二人とは違い、
韓浩は死ぬまで皇帝にはならず「楚王」のまま通したという。
彼の死後は、彼の兄、韓玄の子「韓武」が楚王を継いだ。
しばらくして楚初代皇帝の座に着く。(以後「元帝」)
その際に元帝は、韓浩に仁帝と贈名している。

韓浩の兄、韓玄は将軍として激戦を戦い抜き、楚建国後は後を韓武に任せ交州に隠匿している。
南海の島に街を作り、そこ移住したと伝えられる。この街が後の香港の元となった、とも。
楚建国直後、韓浩に帝位に着くように奨められたが、彼は笑って断った。
その際には「『仁君の兄』と言われるだけでワシは十分じゃよ」と話したという。

賈駆は建国後、丞相となり法整備や内政に追われることとなる。
彼は建国時すでに高齢であったが、死ぬまで丞相の職にあり続け、楚の政治に目を光らせた。
彼の政治は多少法に頼るきらいはあったものの、その成果は官吏の腐敗を未然に防ぎ、
その甲斐あって、元帝時代は後世「賈法の治政」と讃えられた。

李通の名は建国後から全く現れなくなった。
そのため「架空の人物だ」と、長年に渡り歴史家にその存在を疑われることとなる。
しかし近年、建国直後に韓浩が妻を娶った際にその妻が詠ったとされる詩が発見され、
そこからその妻が李通であることが判明。学会に波紋を拡げている。



以後、「楚」「魏」「秦」の三国時代は、新興国家「晋」が統一するまでの半世紀しか続かなかった。
楚も元帝、続帝、末帝の治世が続いたが、末帝の時代に滅亡している。
しかし、楚は建国から滅亡の直前まで戦乱はほとんどなく、その民は平和を謳歌したという。
これは建国の祖、韓浩の徳によるものだろうか。
しかし後世の史書のほとんどで、彼の名は「韓浩楚ヲ建国」としか記されておらず、
今では先に挙げた「前韓浩伝」でしか彼の人生を窺い知ることはできない。
しかしこの伝も後世の歴史家は「信憑性が疑わしい」として歴史書としては扱われてはいない。

全ては彼の時代の者のみが知るのである……。


〜終〜

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