俺は悩んだ。
そこにあるのは一軒の家。
赤い屋根の、見た目にも暖かそうな家だ。
俺はこんな家を探していた。それは、事実だ。
しかし…あまりにも不自然すぎる。
なぜこのようなところに、家があるのだ?
まるで、さあ入ってくれと言わんばかりだ。
どうにもうさんくさい。
俺は、その家を無視し、その場を立ち去ろうとした。
しかし、その時。
俺の鼻腔をくすぐる匂いが、漂ってきたのだ。その家の中から…。
恥ずかしい話だが、俺は匂いに弱い。
ついフラフラと、俺は家の中に入ってしまった。
…いい家だ。
外から見た通り、中も居心地が良い空間で、俺にとって最高の家だ。
だが、やはり気になる。
誰が、何のためにこの家を造ったのだ?
まるで俺のために造ったように、この家は心地よい。
しかし、自慢じゃないが俺は嫌われ者だ。
人に好かれるような憶えは全くないのだが…。
…まあいい。
誰もいないようだし、家主が帰ってくるまで、しばらく居させてもらうとするか。
誰かが帰ってくれば、出ていけばいいだけのことだ。
しかし、この家はなんとすばらしいのだ…。
<そして、時間は過ぎていく…>
…さて。
しばらくここに居させてもらったが、俺は旅をしている身だ。
また違う場所に行くとしよう。
…まだここに居たい気持ちもあるがな。
しかし…しばらく居たが誰も来なかったな。空家だったのだろうか?
よし、それでは準備もできたことだし、この家ともお別れだ…。
ん…?
…なんだ?
出ていくことが…できない!?
…その時、俺はこの家が俺を誘い込むために造られたのだ、ということを本能的に察した。
俺は…ハメられたんだ!
やはり俺は、嫌われ者なのか…。
ここまでしてまで、奴らは俺を殺したいのか!?
…しかし、俺がこの罠を見抜けなかったのが悪かったんだろう。
よかろう、どうにでもするがいいさ。
だが、俺を殺したところでどうにかなるものではない。
必ずや第2、第3の俺が現れ、お前たちを混沌の渦に巻き込むであろう!
それを肝に銘じておくのだな…。
☆☆☆
「あ、ゴキブリホイホイに一匹入ってるよ。見てみる?」
「…嫌です」