白い羽根、黒い心

written by 李俊


「いい子だね」

そう槙原さんは言ってくれた。
でも、本当は違う。
本当の私は……。

とてもわがままで。
とても嫉妬深くて。
とても劣等感が強くて。
とても独占欲が強くて。

いつも、それを表に出さないようにして、ずっと我慢してる。
いつも、いい子の仮面をつけている。
そうしていないと、私の居場所がなくなるから。
私を認めてくれる人がいなくなるから。

友達と話してて、彼女たちの言葉に少し頭に来た時……私は、笑う。
他には何も言わない。
だって、何か言えば、私は彼女たちを傷付ける言葉を吐いてしまう。
そうすれば、友達はみんな私を嫌うだろう。
だから、何も言わずに、ただ笑う。
嫌われたくないから。

先生に何か注意された時……私は、ただ謝る。
私が悪くなくても、ひたすら謝り続ける。
だって、口答えしたら、先生はますます気分を悪くする。
そうすれば、先生は私を嫌うだろう。
だから、悪くなくても、ただ謝る。
反抗的な子だと思われたくないから。

美緒ちゃんがお腹を空かせている時……私は、おやつを作ってあげる。
晩ご飯が近くても、せがまれれば作る。
だって、そうすれば美緒ちゃんは私に懐いてくれるから。
そうしている限り、ずっと彼女に慕われる。
だから、私はとびきりのおやつを作る。
妹のような存在が欲しいから。

愛お姉ちゃんが何か困っている時……私は、彼女を手伝う。
それが些細なことでも、手伝う。
だって、そうすれば愛お姉ちゃんは私を認めてくれる。
そうすれば、私がさざなみ寮に住み続けることを許してくれる。
だから、大したことじゃなくても、手伝う。
私の居場所を無くしたくないから。

まゆお姉ちゃんが怒っている時……私は、静かにしている。
それがどんなに、理不尽な怒りでも。
だって、私が言葉を返せば、絶対ケンカになる。
そうなれば、お姉ちゃんは私を嫌うだろう。
だから、お姉ちゃんの怒りが冷めるのを静かに待つ。
私を本当に認めてくれている人を失いたくないから。

私の居場所。私を認めてくれる人。
無くしたくない。
人に疎まれるのは、もう嫌。
「ちから」なんていらない。
ようやく、普通の人になれた。
それ以上、何もいらない。
もう何も失いたくない。

ずっと泣いていた子供の頃。
ふと外に出かけた先で、私と同じくらいの歳の子に話しかけられた。
私は、初めての体験に、嬉しくなった。
こんな私でも、友達になってくれる人がいると。
だから、その子に「ちから」を見せて、と言われた時に、私は喜んで頷いた。
私も子供で、それがどういう結果になるのか……判っていなかった。
その子が泣き出し、走って逃げていった時。
私は、自分の「ちから」を、呪わしく思った。
「ちから」を使い切れば、普通になれる。そう思って、動けなくなるまで暴れたこともあった。
けれど、「ちから」は無くならなかった。

私の中にあるけれど、私とは認めたくないもの。
私の内なる心。私の「ちから」。
私の持っている羽根は白いけれど、私の心は真っ黒。

私がいい子でいるのは、自分が嫌いだから。
だから「いい子だね」と言われると、私は喜ばしいのか悲しいのか、複雑な気分になる。
普通なら、喜ぶだろう。
でも。
本当の私じゃない、うわべだけの私。ただそれだけが褒められている。
それで、喜んでいいのだろうか。

私は。
本当は。
本当の自分を。

認めて欲しい。
愛して欲しい。
抱きしめて欲しい。

「ここにいていい」って、言って欲しい。

私。
槙原さんの優しさに触れて……決めた。
本当の自分を。本当の私の姿を見せよう。
ありのままの私を、愛して欲しいから。
そして私が、私自身を好きになれるきっかけが欲しいから。

お兄さんのような存在。
まゆお姉ちゃんや愛お姉ちゃんたちとは違う、私を包み込んでくれる存在。
そうなって欲しいって思うのは、やっぱり私のわがままなのだろうか。
……そうかもしれない。
もうすぐ帰ってしまう人に、そんなことを求めてはいけないのかもしれない。
でも。
このままじゃ、嫌だ。
ただの「いい子」として、思い出に仕舞われてしまうだけじゃ嫌。

だから。
だから……。

「槙原さん、ちょっと……付き合っていただけませんか?」


END


あとがき

……こんなの知佳じゃない〜とか言われそうですねぇ。
でも、これくらい内に秘めた物を持ってた方が、人間としての深み・味わいがある……と思うのは自分だけ?

知佳は、元々いい子だったわけじゃないんですよね。
さざなみ寮に来てから、序々にいい子になっていった。
でも、本当に心からそうなったのでしょうか?
真雪や愛たちの優しさを失いたくなくて、自らいい子を演じるようになった……。
そう考えた方が、しっくり来ます。

……「ゲームのキャラだから」という理由付けはNGですよ〜。
理由のないところに理由をつける、それが二次創作の醍醐味です。
(「いろいろこじつける」とも言いますが(汗)

今回はかなり「自分の色」ではない色になっちゃったと思います。
……わかってますよ〜。あたしゃギャグやってナンボですよ〜。(笑)

ではではこの辺で。
次は、とらハ3で1本書きたいねェ。

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