ある日のこと。
美由希の耳にその声が聞こえてきたのは、恭也の部屋の近くを通ろうとした時。
「し、師匠……苦しいよぅ……」
晶の声だった。どうやら、恭也の部屋に遊びに来ているようだ。
それは、別段珍しいことではない。
しかし、美由希は晶のセリフが気になった。
(……苦しい?)
美由希も、毎日恭也の苦しい鍛錬を受けてはいる。
しかしさすがに、恭也と晶が狭い部屋の中で鍛錬しているとは思えない。
美由希は足音を忍ばせて戸に近付き、耳をそばだてて、部屋の中の音を探った。
「……まだ始まったばかりだぞ?」
今度は恭也の声。
先ほどの晶の言葉を突き放すかのような言い方だ。
美由希はその声から、恭也が心なしか嬉しがっている印象を受けた。
「でもぅ……これじゃすぐ……」
晶が、困ったような声を上げるが、すぐに恭也が突き放す。
「手加減は要らないって言ったのは晶だろう?」
それを聞いて、美由希は、今度ははっきりと理解した。
恭也は喜んでいる……晶が困っているのを見て。
美由希の頭は混乱してきた。
今、中では何が行われているのか。
美由希が話を聞いていた限りでは、その答えは1つしか出て来なかった。
しかしそんなはずはない、何かの間違いだ、と顔を赤くしながら必死で否定する。
……まさか2人が、(大人の男と女がすること)をしているなんて。
そんなはずはない、どうせ、何かの遊びなんだろう……と思い直す。
信頼していた兄と、一緒に暮らしてきた妹のような存在が、そんなことをするはずがない。
何とか、自分にそう言い聞かせた。
だが、そんな美由希の希望を打ち砕く声が、また中から聞こえてきた。
「じゃ、そろそろこいつを使わせてもらうとしよう」
「あっ、そんなの入れられたら、死んじゃいますよ〜」
「……観念しろ」
それを聞いて、美由希の中の何かがプチッと切れた。
バンッ!
美由希は顔を真っ赤にしながら、思い切り戸を開いた。
「恭ちゃん止めてっ!」
少し涙目になりながら、美由希は叫んだ。
……その涙がどういう感情から出たのかは、美由希本人にしか分からない。
だが、部屋の様子を見て、美由希は目を丸くした。
部屋の中には、ちゃんと服を着込んだ、恭也と晶が向かい合っていた。
その間にあるのは、将棋盤。
「……どうした美由希、晶が負けるのがそんなに嫌か」
手にした駒をパチン、と盤上に置きつつ、恭也は真顔で美由希に聞く。
「……王手」
恭也の言葉に、晶はがっかりした顔をした。
「あらら……また負けですか」
「決め手が甘いんだ。剣や空手と同様、決められる時に決める……これが鉄則だ」
恭也がそう説明している間に、美由希は部屋の外へ出てゆっくりと戸を閉める。
「失礼しました……」
消え入るような声でそう言い残し、美由希は自分の部屋へ走り去った。
「……あいつは何しに来たんだ?」
「さあ……」
恭也の言葉に、晶も首を傾げるばかりであった。
美由希は自分の部屋に入ると、そのままベッドの布団に潜り込み、枕に顔を埋めた。
エッチな勘違いをしてしまった自分が、何とも恥ずかしかったのだ。
美由希、一生の不覚。
……ただし美由希の一生は約1ヶ月に1度のペースで更新される。
つまりは『よくあること』である。
☆☆☆
高町家では今、ある物が流行っている。
それは『将棋』だ。
発端はレンと晶の勝負に起因する。
掃除していた恭也が、昔使っていた将棋盤と駒を発掘してきたところ、晶が面白がってレンに将棋勝負を挑んだ。
案の定というか当然の結果というか、レンが圧勝した。
その結果、晶は『将棋であいつに勝ってやる!』と息を撒き。
レンは『あんたが相手じゃ、何やっても勝つわ』といつも通りに挑発。
その様子を見て『将棋って面白いの?』とフィアッセが本を片手にやり始め、なのはも横で見ているうちに興味を持ったらしく、レンに教わり始めた。
母親たる桃子も、触発されて仕事の合間に詰め将棋の本を読む始末。
ただ、ゲームの苦手な美由希だけはその流行に乗り遅れていたのだった。
「俺に勝てんようでは、レンにも勝てないぞ?」
盤を片付けながら、恭也は寝転がっている晶にそう告げた。
ちなみに、高町家の将棋ランキングは……。
1位 レン
2位 恭也
3位 なのは
4位 晶
5位 フィアッセ
(桃子は対戦してないので不明。美由希はルール知らず)
……という順になっている。
レンが最強であるのは言わずもがな。
恭也は幼い頃より父親と勝負を重ねており、場数を踏んでいる分、他の者より強い。
晶は後発のなのはにも負けるくらい、弱かった。
「うー。だって、守るの苦手なんですよー」
晶の将棋は常に攻めのみで、守りはほとんど無視。
そのため、序盤の猛攻を耐えられてしまうと、後はもうボロボロで相手にされるがままになってしまう。
「……なのはだってちゃんと考えて打ってるぞ?」
恭也が少し呆れた口調でそういうと、晶は駄々っ子のように寝転がったまま足をバタバタさせた。
「うう〜! どうせ俺はバカですよぉ〜!」
「そこまでは言ってないだろう……。攻め一本じゃなく、もう少し状況に即した戦い方をしなきゃダメだってことだ」
恭也の言葉に、ピタと晶は足の動きを止め、仰向けのまま天井を見て考え込む。
「状況に即した戦い方……」
「まあ、レンの場合は2、3手先を見て打ってるからな。それ以上に先を見ながら戦わないと勝てないだろうな。攻め込まれているからと焦らず、冷静にやることだ」
「それ以上に先を……冷静に……」
ブツブツと何か呟いていた晶だったが、何かを閃いたらしく、表情が一変して明るくなった。
「よし! この戦法なら!」
ぐっと拳を握り、立ち上がる晶。
恭也は、その様子を見て苦笑を浮かべながらも、ほほえましく思っていた。
☆☆☆
「ええか、なのちゃん。この陣形は『穴熊』言うて、王様を一番端っこに置き、その回りを頑丈な砦にしてしまうもんなんや」
「ふんふん……」
「守りは堅いんやけど、逃げ場は残ってへんから、陣形を崩されるともろいんや。だから、崩されないようにしないといけへん」
「なるほどー」
居間では、最近買ってきたマグネット将棋を使い、レンがなのはに解説していた。
なのははおろしたてのスポンジのように吸収が早く、レンにしても教え甲斐があった。
「ほなら、今度は……」
別な戦法を教えようとレンが駒を戻そうとした時。
「レン! 勝負だ!」
そこに盤と駒を抱えた晶が現れた。
「なんや〜、またやられに来たんかいな」
嘲るような口調で晶に答えるレン。
晶はそれに不敵な笑みを浮かべた。
「今度こそ、お前のその高慢ちきな鼻をヘシ折ってやる」
晶の置いた盤を間に、2人は向かい合った。
「……どうせ勝てへんのやし、角落ちあたりでやってやろか?」
レンの言葉に、晶が首を振った。
「ハンデある状態で勝っても面白くないじゃんかよ」
……ちなみに、『角落ち』というのは大駒である角を使わずに始めること、つまり晶の言うようにハンデを付けることである。
(他に、飛車無しの「飛車落ち」、飛車角共に無しの「二枚落ち」、香車無しの「香落ち」等がある)
晶の態度を見て、ぴくっと眉を動かすレン。
どうも晶の言葉が癪に触ったらしい。
「ほほー、なら本気で潰したるわ。後で泣くんやないでぇ」
「ぬかせ」
かくして、2人の対局は始まった。
(※対局:将棋における対戦のこと)
☆☆☆
「……やってるな」
「あ、お兄ちゃん」
2人の対局を横で見ていたなのはが、居間に現れた恭也に向かっておいでおいでをする。
恭也はそれに頷き、なのはを抱っこして座り、どういう戦いになっているのか盤を見た。
恭也が見るに、2人とも守りを固め終わり、これからどう攻めるか、といった状況であった。
レンはもとよりそうだが、晶もいつもと打って変わって、守り重視の陣形。
2人とも、攻めるのに苦労しそうな形だった。
「なかなか、考えてるじゃないか」
恭也は、晶に向かってそう言葉をかけた。
「ええ、まぁ……」
しかし晶は、その恭也の褒め言葉にも軽く返事をしただけだった。
いつもなら、『えへへ〜そうですか?』などと浮かれるところであるが。
「お師匠、あきません。このおさるがちぃとばかり戦い方変えた言うたかて、この鳳家代々伝わる指し手にはかないませんて」
レンの方はといえば、いつも通りの余裕シャクシャクといった感じである。
「鳳家代々……ということは、レンは祖父さんあたりに教えてもらったのか?」
恭也がそう尋ねると、レンは首を振った。
「いえ? 独学で本読んだだけですけど?」
「……それで何で鳳家代々なんだ」
「ええですやん、そう言った方がかっこええですし」
ヘラヘラと笑うレン。しかし、対している晶は、全く表情を変えない。
パチン。
「うーん……」
……パチン。
「ん」
パチン。
しばらく居間に響くのは、駒を指す音と、時折洩れる2人の声だけとなった。
そして手は進み、小競り合いはあるがまだどちらが有利とも言えない状況。
「……よう粘るな、このおさる……」
以前の対戦までは常に優位に立って戦っていたレンだったが、今回の晶の善戦に、少なからず驚きを憶えていた。
以前までの晶の指しであれば、どこかしらにスキがあり、常にそこを突いて形勢を有利にしていたのだが。
今回の晶の指しには、前回までのようなスキは見られなかった。
「ミドリガメにそうそう負けてられないっての」
対する晶は、険しい表情のまま、感情を見せずにそう言い放った。
「……むかちゅうな〜。いつもよりちょう守れてるから言うて、調子乗るんやないで」
レンは焦りもあるのか、普段より冷静さを欠いている様子。
(それでも、指し手は間違わずに押している……さすがだな)
恭也は黙ったまま、勝負の行方を見守っていた。
晶は良く守っていたが、じわじわと押し上げているレンの攻めに、どこまで耐え切れるのか。
このまま持久戦が続くようならばレンの方が有利だろうと、恭也は見ていた。
「あ」
その時、打った晶の一手に、思わず声をあげる恭也。
晶は、今まで自陣で守っていた飛車を、レンの陣中の玉の近くに突っ込ませていたのだ。
(※玉:王将のこと)
「あははっ! ようやっと攻めて来おったなっ」
パンッと手を叩き、レンは声を上げた。
「けど、この飛車はあかんなぁ……。これを、こうしてしまえば……」
パチ、と打った歩が、飛車の退路を断った。
「……」
晶は無言のまま、その飛車を見つめる。
飛車を動かさなければ、レンは飛車取りに来るだろう。
(冷静にしてると見てたが……やっぱり焦ったのか)
この晶の飛車が死んだことで、勝負は決まった……と恭也は思った。
押され気味で飛車まで殺され、もはや形勢逆転は無理。
もはや、晶の飛車は、回りにある駒のどれかを取って討ち死にする程度の道しかなかった。
レンもそう思っているのか、ニヤニヤと笑って晶を急かす。
「ほれほれ、早よせんか〜」
晶は表情を変えず、目だけをレンに向けた。
「うるさい。黙れカメ」
「な……なんや! 自分がミスった怒りを人にぶつけんなや」
「別に怒っちゃいねえよ……。ぎゃーぎゃー騒がれると気が散るって言ってるんだ」
「む……」
晶のいつになく真剣な目に、レンもそれ以上何も言えず黙りこんだ。
しばし考え込んだのち、晶の手は飛車ではなく、自陣の駒を動かした。
「おっ!?」
びっくりした顔をするレン。
恭也も、全く予想してなかった手だった。
飛車とレンの陣の駒(金なり銀なり)とを交換して、ミスった被害を最小限に押さえようとするのが普通だからだ。
「……どうした? お前の番だぞ」
全く顔色を変えることなく、晶はレンに促す。
その表情を見る以上は、勝負を投げた様子はない。
「……うーん」
今度はレンが考え込む。……今の晶の手の意図を考えているのか。
そして、うん、とひとつ頷き、攻め手に回っている駒を動かした。
すでに飛車の動く道はないし、しばらくは様子を見よう。
多分、飛車を取っている間のスキを見て何かやろうとしたに違いない。
……そういう結論に達したのだろう、と恭也は見ていた。
そこから、ガラリと晶の打つ手が変わった。
晶本来の攻め重視の打ち方。動けない飛車の代わりに、守っていた駒を総動員してどんどん攻めにつぎ込んでいく。
守りは全く省みていない。手を出し尽くしてしまえば、もう終わりだ。
『背水の陣』という言葉がぴったり来る、晶の攻め。
レンもそれに対応するのが手一杯で、攻めに転ずる余裕が無くなった。
そして。
「あかん……負けや」
レンが、手に持っていた駒を、諦めたように盤上に投げた。投了だ。
(※投了:将棋における試合放棄。負けを認めたことになる)
「……え?」
晶が、意外そうにレンの顔を見る。
「うちの負けやって言うとんの」
レンは多少不機嫌そうに、再度告げる。
そしてレンは、囲っていた晶の飛車を指差した。
「……この飛車。どう考えても、こいつが邪魔なんや。さっさと取っておくんやったわ」
……今見てみれば、その飛車は確かに囲まれてはいたが、王手を掛ける絶好の位置にいた。
言わば、玉の首に突きつけられた『懐刀』である。
回りにいる駒を少しでも動かしてしまえば、玉は死ぬ。その飛車はそういう位置にいたのだった。
「……やったじゃないか、晶!」
「晶ちゃんすごい!」
恭也となのはも、滅多に見られない出来事を目の当たりにして、興奮気味に話しかけた。
しかし、晶は俯いたまま、黙っている。
「どうした、晶」
心配げに、恭也が問い掛けた。
「……う」
やっと出された、うめくようなその声。
「う?」
思わず、レンもなのはも恭也も、聞き返した。
……次の瞬間。
「嬉しい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
がばっと顔をあげた晶が、顔を紅潮させて、叫びを上げた。
「やかましいわ〜〜〜〜!」
レンが耳を押さえて抗議するが、晶は喜色満面で言い返していた。
「うるっせぇ! 滅多にないことなんだからこういう時ぐらい喜ばせろ!」
「だからって限度無しのバカ声でうちの鼓膜破る気かっ!」
「そんなタマじゃねーだろっ!」
晶のレンの言い合いが続く中、恭也となのはは小声でやりとりしていた。
「……晶ちゃん、自分で『滅多にない』って言っちゃってるよ……」
「まぁ……いいじゃないか。事実そうなんだし」
……喧騒はしばらく続いた。
☆☆☆
「えへへ〜。アレはですねぇ、あいつの性格を考えての罠だったんですよ」
レンとの勝負を終えた晶は、再び恭也の部屋にて、恭也と一勝負していた。
「罠?」
盤の駒を動かしながら、恭也は尋ねる。
その手を見て自分の駒を動かしながら、晶は答えた。
「ええ、あいつは相手の手を見て考えながら打ってますから。臨機応変に対応できますけど、相手の意図が見えない時にいろいろ考え過ぎるんですよね」
先ほどの厳しい表情とは違い、晶はリラックスして打っていた。
「だからわざと、飛車を突っ込ませた……と」
「ええ、その下準備として、ずっと守って、普段と違うことをアピールしてたわけです」
盤を見ながら、恭也は考えこんだ。
「……普段と違う戦法、そしてわざとスキを見せて相手を疑心暗鬼にさせる……か。上手くいったから良かったが、すぐに飛車を取られたらどうするつもりだったんだ?」
その恭也の言葉に、晶は爽やかな笑みを見せた。
「そん時は、また黒星が1つ増えるだけですよ。元々、実力差がありすぎるし」
その笑顔を見て、恭也もつられて口元が緩んだ。
「失うものがない強み、か」
「えへへ」
照れ笑いを浮かべる晶。
……晶の言う通り、負けて当たり前だった。だからこそ晶は、思い切った手を使えたのだ。
実力差が五分五分、あるいはそれ以上だったならば、負けないよう、自然と安全な手になっていただろう。
それは、将棋だけでなく、剣でも空手でも……全てのことに言えることかも知れなかった。
「まあ俺は、あいつに『負けた』って言わせることが出来れば満足なんで」
晶がそう言って、笑う。
この少年のような屈託のない笑顔を見て、恭也も微笑んだ。
そして、盤上の駒を、動かす。
「……王手」
「あうっ」
☆☆☆
あくる日のこと。
恭也の部屋の近くを通ろうとした美由希の耳に、話し声が聞こえてきた。
「師匠〜。勘弁して〜」
晶の声だ。哀願するようなその声に、ぴくっと美由希は反応した。
美由希は、ドキドキと高鳴る胸を抑えながら、戸に耳をそばだて、中の様子を探ろうとする。
「ダメだな。……ほら、ここも」
今度は恭也の声。
「ううっ……。そんなとこまで……」
そして晶の声。前回と同じようなセリフだ。
それを聞いて、美由希はドキドキしながらも、また将棋をしているのだろう、と判断した。
だが。
「あはは、もうすぐやな。ほんなら、うちはここを……」
楽しそうなレンの声が、また中から聞こえてきた。
「いや〜! やめてぇ〜」
そして、晶の切羽詰った声。
……恭也とレンが一緒になって、晶に何かしてる。
そしてそれは確実に将棋ではない。
いろいろな事が美由希の頭を駆け巡った。
こ、これって3●というものでわっ!
……美由希は、とうとうそういう結論に辿り着いてしまった。
しかしまだ、一部冷静な自分が、今にも暴走しそうな美由希を押し留めていた。
だが、次に聞こえてきた声で、残っていた冷静な自分が吹き飛んでしまう。
「そんな、晶ちゃんばっかり苛めちゃダメだよ〜」
それは、なのはの声だった。
……なのはまで一緒になって!? もしや4●!
最大級の衝撃が美由希を襲う。
もはや美由希は正気を保っているのがやっとの状態であった。
貧血になった時のように、クラクラする。
「なんや、なのちゃんも苛めて欲しいんか?」
「い、いや、そうじゃなくてぇ〜」
……これはすでに見逃せる状況ではない。
晶やレンが仮にいいとしても、なのははいけない。……恭也となのはは、血の繋がった兄妹なのだから。
ガツーンと言ってやらねばならない、そう決意した。
ガンッ!
美由希は戸に手を掛け、一気に開いた。
「そこまでぇぇぇぇ!」
顔を真っ赤にしながら、美由希は叫んだ。
だが部屋の中は、美由希が想像していた様子とは違っていた。
「あー、また破産だー」
晶の諦めたような声。
部屋の中には、恭也・晶・レン・なのはが、ちゃんと服を着て向かい合っていた。
その中心にあるのは……。
「も……ものぽりぃ?」
物件などを購入・運営し、相手を破産に追い込んでいくあの友情破壊ボードゲーム、モノポリー。
その盤が、真ん中に置いてあった。
……どうやらまた、豪快に勘違いしたらしい。
美由希がその事に気付くのに、そう時間は掛からなかった。
「あ、美由希ちゃんもやりたかった? じゃ、もう1回最初からやります?」
「俺は別に構わんが」
少し呆けていた美由希だったが、晶と恭也が話しているのが耳に入り、急いで首を横に振る。
「ああっ別に、私は……」
とりあえず、恥ずかしいままこの部屋に留まるのは勘弁して欲しい、そういう気持ちがあった。
そのまま部屋の外に出て行こうと思っていた美由希であった……が。
なのはがすがり、せがんだ。
「おねーちゃん、やろうよ〜」
……妹に弱い美由希が、そのお願いを断れるはずはない。
美由希は恥ずかしさを噛み殺しながら、なのはの隣りに座った。
「今度こそ、このカメに勝つ!」
「ほっほっほー。返り討ちにしたる」
晶とレンの掛け合いをよそに、美由希は眉を「ハの字」にしてうつむいていた。
「うう、ウチの兄はヒドイんです……妹に恥ずかしい思いさせるんですぅ」
自分のそそっかしさは棚に上げ、怨みごとを小声で呟く美由希であった。
……今日も高町家は、(概ね)平和である。
あとがき
ども。李俊でやんす。
なんで将棋の話なんか書いてんでしょう。自分でもよーわかりません。
ただ単に自分がやりたかっただけなのかも。
最初と終わりで美由希が暴走しまくってますが、こりゃ趣味です。
エロ勘違いの話は以前に痕でも書きましたが、こーいうノリが一番自分らしいな〜と再確認。
美由希いいですね〜。ボケキャラとしての資質、これ以上はないよ。(笑)
今後もボケ役として活躍していただきましょう。
んで、本編。
将棋をあまり知らない人のために、なるべく抽象的に書いたつもりだったんですが、どうでしたでしょう。
返って判りづらくなったかも……。
また、レンが多少情緒不安定になってますが。
あんまり気にせんといてください。(←レン口調で読むべし)
んで、将棋の話ですが。
自分は小学校の頃に将棋始めまして、中学校の将棋クラブでは勝率1割とヨワヨワでしたが、2X歳でバイトやってた頃、休憩時間にやってた時は全く負け知らずでした。
これは強くなったのか相手が弱かったのか……。よくわかりませんねー。
今度、誰か暇な人、対戦してください。
李俊は皆様のご感想を切に!お待ち申しております。
メールや、アンケートフォーム(トップページから行ける「MAIL」のコーナー)にて感想お聞かせください。
んでは、また。