雨の日
written by 疾風丸
サー・・・・・
音が聞こえる
サー・・・・サー・・・・
私は、この音を知っている
ゆっくりと目を開けると、ベッドから降りる
シャッ
カーテンを開ける
雨
雨が降っている
何も変わらない一日
雨が降っているだけの、変わらない一日
でも
私にとって
雨の日は特別
傘を持って家を出る
雨の日は嫌い
あの人が消えてしまったのも
帰ってこないあの人を、待ち続けたのも
雨の日だから
いつもの場所に着く
あの人が消えた場所
あの人を待ち続けた場所
そして、彼と出会った場所
雨の日は特別
彼が私に声をかけたのも
あの人を待ち続ける私を、この場所から救ってくれたのも
雨の日だから
雨の日は嫌い
彼がたたずんでいたのも
あの人と同じように消えてしまったのも
雨の日だから
雨
雨が降り募る
周りの景色が、雨で霞む
私を外界から切り離す
また、この場所へ来てしまった
彼が救い出してくれたこの場所へ
彼を待つ事しかできないこの場所へ
本当は解っている
あの人と同じように彼は帰ってこないことを
待っていても何も変わらないことを
私は馬鹿だ
帰ってこない彼を今日も待っている
無駄だと解っているのに待つ事しかできない
そしてこの場所に囚われ続けている
でも
それでも私は信じて待ち続ける
私にできる事はそれだけだから
誰も彼の事を覚えていない世界で
私だけが、彼を帰りを待つ事ができる
私は鞄から時計を取り出す
時を刻んでいない時計
彼が残していったもの
彼がこの世界に存在していた証
この時計を見るたび信じる事ができる
彼と私の時間は止っているだけ
今はただ止っているだけ
この時計のように
再び動き出すために
私は時計をしまいこの場所を離れる
時間の止ってしまった日常へ戻るために
雨
雨の日は嫌い
彼がいない事を思い知らされるから
でもやっぱり
雨の日は特別
彼が帰ってくると信じる事ができるから
止ってしまった二人の時間を進めるために
必ず帰ってきてくれる
そう信じる事ができるから
私は振り返り
もう一度あの場所をみる
彼が消えてしまった場所
そして彼が戻ってくる場所
私はささやく
雨に溶け込むように
雨と共に私の思いが彼に届きますように
「信じています・・・浩平」
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