隆山の千鶴さんたちの家。
新婚旅行から帰ってきた俺と由美子は、挨拶も兼ねてここに遊びに来ていた。
「いろいろといたらない所もあるかもしれませんけど、よろしくお願いします…」
由美子が頭を下げる。
「いえいえ、いいですよ。…でもこうしてると、私って姑(しゅうとめ)みたいですね…」
千鶴さんの言葉に、梓がチャチャを入れる。
「なーに言ってんの千鶴姉。『みたい』じゃなくて、もうすでに姑…ヒッ!」
…千鶴さんがにっこり笑って梓を見ている。
「あ・ず・さ・ちゃ・ん…?い・ま・な・ん・て・い・お・う・と・し・た・の・か・な?」
部屋の温度が5度ほど下がったような気がした。
「ひいぃぃぃぃ!な、何でもないですうぅぅぅぅ!」
「そ。ならいいの」
…千鶴さんも相変わらずだなぁ。…いや、パワーアップか。前は3度だったし。
「あ、あの、耕一兄ちゃんのお嫁さんだから、お姉ちゃんって呼んでもいいですか…?」
初音ちゃんが遠慮がちに由美子を見る。
由美子はにっこりと笑うと、うなずいた。
「…ええ。いいわよ」
「うふふ。お姉ちゃんが増えちゃったね、楓お姉ちゃん」
「…うん」
そこに梓が、初音ちゃんと楓ちゃんの会話に割って入る。
「いやいや初音。もう耕一お兄ちゃんとは呼べないよぉ」
ニヤニヤとイヤな笑いを浮かべる梓。
…こいつ、なんか考えてんな。
「え?じゃあ、なんて呼べばいいの?」
素直に聞き返す初音ちゃん。
楓ちゃんも聞きたそうな顔をしている。
…梓が口を開いた。
「それはねえ…もう1児の父親なんだしぃ…『耕一パパ』!…だね」
ぐわあああああああん!
ぱ…ぱぱ…ぱぱぱぱぱ…。
この俺が…ぱぱ!?
「あ、梓…パパはやめてくれ…まだ心の準備ができてな…」
「あら、そう?じゃ、『おやぢ』」
ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!
お、俺が…おやぢ…。
お、お、おやおやおやおや…。(←かなり壊れてる)
「えー、私はパパでいいと思うけど。ね、パパさん」
うおうおうおっ!
初音ちゃんは悪気がない分、こたえるぅ…。(←耕一、重傷)
「か、楓ちゃん…」
「…どうかしました?耕一パパさん」
あうあうあうあう!
か、楓ちゃんまで…。(←耕一、意識もうろう)
「ち、千鶴さんは、そんなことは言わないよね…」
「え?おやぢさん、どうかしました?」
ぐさぐさぐさぐさぐさっ!
くりてぃかるひっと!
うう…裏切ったな…千鶴さん…。(←すでに瀕死の耕一)
…俺はちらと由美子の方を見る。
「ゆみこぉ…」
訴えるような目で見つめる俺。
由美子は、にっこりと笑う…。
「うふふっ、これからがんばろうね、ぱぱ!」
…がくっ。(←耕一、死亡)
ちゃんちゃん♪