彼女の苦手

written by 李俊

昼休み。
沙織は最近、この時間はいつも、祐介のところへ行くようになっていた。
(えへへ、今日も祐くんとお弁当食べながらお話するんだ〜♪)

『沙織ちゃんの髪ってキレイだよね』
不意にそんなことを言われて、沙織は顔を赤くした。
『えっ…。て、照れちゃうなぁ…』
通常こんなセリフを吐くのは女の子を口説こうとする軟派の男であるが、祐介としては別に下心があるわけじゃなく、純粋にそう思ったことを言っただけである。
『ホントキレイだよ〜。羨ましいくらい』
ニコリと微笑む祐介。
その笑顔には、いやらしさはカケラもない。
『ありがとう♪ でも、祐くんの髪もキレイだよ』
『そ、そう? 僕はあまり自分の髪は好きじゃないから…』
沙織の褒め返しに、今度は祐介が照れる。
『でもホラ、こんなにサラサラしてるし…』
そう言って沙織は、祐介の前髪に触れてみる。
サラサラ…と、沙織の手を離れた髪は、祐介の額にこぼれた。
祐介は沙織の行動にドギマギする。
『き、急に触られると…ドキドキするよ』
『あ、ごめーん』
謝る沙織…しかし、あまり申し訳なさそうに聞こえない。
『髪型がね、あんまり好きじゃないんだ』
祐介は、自分の前髪をクルクルと巻いて見せる。
『そうなんだ…可愛いのに』
『男に可愛いはないでしょ』
沙織の言葉に、スネてみせる祐介…。
しかし、その後すぐに見せた微笑みで、祐介が本気で怒ってないとわかる。
『あはは、ごめんね』
沙織が謝ると、祐介もあははと笑った。

…つい昨日もこんな、ハタから聞いたらぶん殴ってやりたくなるくらいラブラブな会話をしたばかりだ。
つい、沙織の表情は緩んでしまう。
(にへら〜)
沙織はお弁当を小脇に抱え、スキップしながら祐介のいる教室へ向かった。
すれ違う生徒たちの好奇の視線にも全く気付かずに…。

「祐く〜ん」
沙織は教室に入ると、祐介のいる席に向かって手を振る。
…しかし、そこで彼女の動きが止まった。
「あ、沙織ちゃん」
祐介は返事をして、廊下まで出てくる。
…沙織の動きは止まったままだ。
「…沙織ちゃん?」
祐介の言葉で気を取り戻したようだが、祐介の姿を見るとすぐ、怯えた表情に戻った。
「…どうしたの沙織ちゃん、変だよ」
「いやぁ…」
「え?」
沙織の口から、拒絶の言葉が吐かれる。
「いや…それはいやぁぁぁ!」
沙織は、持っていた弁当を落とし、頭を抱えた。
「…ど、どうしたの、沙織ちゃん?」
様子がおかしい沙織に、祐介はオロオロとするばかりだ。
「いや! いやなの! 『てんぱ』は嫌なのぉぉぉっ! 『てんぱ』はやめてぇぇぇ!」
ついに泣き出してしまう沙織。
…祐介はやっと、沙織が何を言いたいのか悟った。
「ち、違うよ沙織ちゃん、これは『てんぱ』じゃないよっ!」
弁解をしようとする祐介。
しかし、沙織は聞こうとしない。ただ、恐怖に震えるばかりだ。
「もう…いやぁぁぁぁっ!」
ついに沙織は、逃げるように走り去っていった。

落とされた弁当を拾いながら、祐介は呟いた…。
「違うんだよ沙織ちゃん…これは天然パーマと言うんじゃないんだよ…」
そこには、髪型をアフロヘアーに変えた祐介がいたのだった…。
「カッコイイと思って変えた髪型が、こんな結果を招くとは…」
祐介はがっくりと肩を落とした…。



ちゃんちゃん♪

あとがき

どもども〜。李俊であります。
このSSはちょっと思い付いたネタ2行

沙織「いやっ…テンパはいやぁぁぁ!」
祐介「天然パーマがどうした沙織ちゃん!」

から発展させました。(^^;
いやぁ自分でも何書いてんだろうと思いますね。(笑)

感想などありましたらください♪
ではでは〜。

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