パロディー BOX

written by RIN

CONTENTS

 第1話 「昼下がりの危険な調べ」
 第2話 「来襲?押し売りマルチ」
 第3話 「マルチ危機一髪!ドール○○○の奇跡(劇場版)」



WARNING

 この3つのお話は東鳩、主にマルチをメインとしたパロディSSです。
 なにぶんギャグである上、パロディの名の下にめっちゃひとりよがりな
 部分も多々存在します。
「笑えねー」「元ネタわかんねー」などのご不満もあるでしょうが、
 その辺は「ふっ、これだからおバカはよぉ・・・・」とゆう
 憐憫の眼差しで、見て見ぬ振りをしていただければ幸いです。
 ちなみに、各作品は関連性も連続性もありません。
 それぞれ少しずつ時間軸の異なる、いわばパラレルワールドだと思って下さい。
 それでは・・・・一応読んでみっか!
 とおっしゃる奇特な方は、先をお読み下さい。
 ひぃいーや、うぃ、ごぅ!(どないやねん)






しょの1

     毒電波勇者系替え歌SS「昼下がりの危険な調べ」



 その日、お気楽大学生であるオレは、昼下がりをのんびりマルチと過ごしていた。
 ぽかぽか暖かい春の日差しにくつろぐオレたちを訪ねてきたのは、セリオだった。
諸般の事情により、オレの家で暮らすことになったマルチと違い、セリオは来栖川の
研究所で長瀬のオッサンの助手のようなことをしているらしい。

 それにしてもマルチがオレの家で暮らすようになって、ずいぶんたつが、
セリオが来たのは初めてのことだ。

「あう・・セリオさん。どうぞ、ソチャですが」
「お構いなく、マルチさん」

 緊張した手つきで、セリオの前にカップを置くマルチ。
 どーでもいいが、マルチが言うと「粗茶」がどーしてもカタカナに聞こえるな。

 メイドロボである彼女たちは、人間のようにものを食べることが出来ない。せいぜい茶をすする程度だという。食べたとしても味は分からないし、ただたんに食物という「異物」を体内に蓄積するだけなのだそうだ。

(そういや、長瀬のオッサンが人工味蕾を開発してるとかいう話だけど・・・・)

 料理の味見なんかはちゃんとしているんだから、味(というか,調味料の割合なんか)は分かるはずなんだ。
 人間と同じように食事をするメイドロボット・・・・一人暮らしの老人の茶飲み友だちなんかに、けっこういいかもしれないな。

 そんなことを考えながら、おれはセリオとマルチの歓談を眺めていた。マルチは百点満点の笑顔で、オレとの生活がいかに幸せかをセリオに力説していた。
 ううむ、照れくさいぜ、マルチ。
 対するセリオはと言うと、やはりこいつも相変わらず無表情というか、落ち着いた雰囲気は変わらない。

(でも・・・・・オレの気のせいかな)

 マルチとおしゃべりしているセリオは、とてもリラックスしているように、オレには感じられたのだ。
 芹香センパイのほんのちょっとした仕草を完璧にマスターしたオレだ。よもや間違うはずがない。心なし、口元に小さな笑みを浮かべているようにさえ見える。

「長瀬主任の命令で、マルチさんのご様子を見に伺いました」

 なーんて冷静に言っていたけど、やはりセリオも旧友マルチに再会できてうれしいのだろう。性格も能力もまるで違うけれど、二人はほぼ同時期に造られた姉妹のようなものなんだから。
 マルチに人間と同じ、あったかな心があるように、一見無表情なセリオに「心」があったとしても、ちっとも不思議じゃない。
 そう考えると、オレはなんだかうれしくなってしまった。
 今日はセリオにゆっくりしてもらおう。きっとマルチも喜ぶはずだ。

「あっ、浩之さん。お茶のお代わりお持ちしますね」

 オレのカップが空になっていることに気づいたマルチが、慌てて席を立った。
 そんなのいいから・・・・といいかけたものの、小さな体は台所に消えてしまう。
 しゃあないな、オレはオレなりにセリオを歓迎してやるか。
 そう思ったオレは、居間のステレオの電源を入れ、音楽でもかけようと思った。

「ま、今日はゆっくりしていけよ、セリオ。マルチとも久しぶりにあったんだしさ」
「恐れ入ります、浩之さん」
「またまた、堅いんだからな、セリオは。どれ、音楽でも・・・・」

 オレはたまたま入っていたMDを再生した。
 しかし、そこから流れてきたやけに勇ましい唄は、オレの初めて聴く曲だった。
「なんだこれ・・・・オレのMDじゃねーぞ」


            (前奏)



       羽ばたけ!メイドロボ軍団(最強勇者ロボ軍団の節で)

        オレンジの髪のすごいヤツ 他社の追随許さない
        サテライトナビが魅力だぜ
        緑の髪のとろいヤツ ドジなところがたまらない
        魂揺さぶる愛らしさ
        この世にニーズがある限り
        我らの仕事は無限だぜ!
        タッタッタッタタ!(セリオの走る音)
        ズルッコケッボテ、あう〜(説明不要)
        メカの体にゃ見えないぜ
        働け!メイドロボ軍団

        マジでクールなイカすヤツ どんなプロにもなれる
        知的な瞳が輝くぜ
        学習型です 根気よく じっくり育てて欲しい
        あなたのお役に立ちたいの
        世界にユーザーいるかぎり
        みんなの幸せ守るぜ
        バリバリバリバリ!(セリオの働く音)
        わたわたわたわた(説明不要)
        メカの体は○○○付き
        輝け!メイドロボ軍団




「あう〜、トロいとかドジとか言うのは、ひょっとして私のことですかぁ?
 うううっ、ひどいですぅ」

 いつの間にかリビングに戻ってきていたマルチが、目にいっぱい涙をためていた。
「なんだ、このいかにもロボットアニメの挿入歌風の唄は?」

 こんな唄、初めて聞く。そもそも誰のMDだ、こりゃ?

「・・・・この唄は来栖川エレクトロニクスが発売した,新型メイドロボ[ HM-12 ]と
 [ HM-13 ]・・・・つまり私とマルチさんの量産タイプのCMソングとして社内公募
 されたものの一つです。
 アップテンポで力強い楽曲に人気が集まり、一時は最有力候補となったのですが、結局,別の唄に決定しました。
 表向きの理由は[ HM-12 MULTI ]の大幅な仕様変更のためとされていますが、
 本当の理由は2番の歌詞の一部にクレームが付いたという噂です。
 ちなみに原曲はズバリ,ロボットアニメ『勇者王ガオガイガー』の挿入歌です」

「ほへ〜っ?」

 あっけにとられるオレとマルチ。どうやらMDはセリオのものらしいが・・・・

「ねー浩之さん浩之さん。ちょっとお聞きしてもよろしいですか」
「おう、なんだマルチ」

 不意にマルチが尋ねてきた。さっきまでうるうるしていたのに、セリオの説明を聞く内に、もう機嫌が直ったらしい。じつに簡単なやつだ。

「あのぉ、○○○ってなんですかぁ?」

 ぴしっ。オレは凍り付いた。

「それはですね、マルチさん」
「わぁやめろ、説明するなーっ!」
「??????」

「ちなみに作詞者はHM開発課主任・長瀬源五郎氏です」
「あのオッサンわ・・・・(怒)」

 結局、セリオがどーゆーつもりであんなものを持ってきたのかは、分からずじまいだった。
 とゆーより、オレは恐ろしくて訊けなかった。

(やっぱセリオって・・・・・よくわからんやつ)

ちゃんちゃん






しょの2

     毒電波妄想系SS 「来襲?押し売りマルチ」


「はぁ・・・・」

 オレは憂鬱なため息を付いた。
 あの朝、小さなロボット少女を送り出して以来、
 オレの気分はずっと晴れずにいた。

(もう・・・・会えないんだよな、マルチ)

 朝日に浮かんだにっこり笑顔。
 ロボットでありながら、オレの心の底まで暖かくしてくれた、
 あの優しい笑顔。純粋な心。
 でも、あの笑顔に会うことは、もう二度と出来ない。
 そう考えると、また目頭がじんと熱くなった。

 ぴんぽーん。

 ドアチャイムが鳴った。くそ、誰だ、日曜日だってのに。
 オレは居留守を決め込むことにした。

 ぴんぽーん。ぴんぽーん。

 ええい、うるさい。オレは今、誰とも会いたくないんだ。

 ぴんぽぴんぽぴんぽぴんぽぴんぽ

「ええーいっ!なんなんだっ!」

 がば、と起きあがったオレは、どすどすともの凄い勢いで玄関に向かった。
 ダメだ、このままじゃ、相手がもしもあかりでも、
 いきなり怒鳴りつけてしまいそうだ。
 しかし、オレは自分を抑えることが出来ずに、玄関のドアを思い切り開いた。

「だれだっ、うるさ・・・・・・・」

 怒鳴りかけていたオレの目が丸くなった。
 そこにたたずんでいた小柄な少女に見覚えがあったからだ。
 いや、忘れるはずがない。この抱きしめると砕けそうな細い肩。
 オレを見上げる潤んだ瞳。緑の髪に、金属製のセンサー。

「マ・・・・・マルチッ!」
「あうぅ・・・・ひっ、ひどゆぎざぁあ〜ん・・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「・・・・・はぁあ?訪問販売ぃ?」

 再会の喜びを確かめあったオレは,もう二度と会えないと思いこんでいたロボット少女から、思いがけない言葉を聞いた。

「はい・・・・結局、次期主力商品はセリオさんに決定したんですけれど、私はまだ他の用途の可能性を調べるとかで・・・・」
「で、訪問販売?」
「はい。で、でも、どこのお宅に行っても,まるで相手にされなくて、私すっかり悲しくなってしまって・・・・そ、それで浩之さんのことを思い出して・・・・ううっ、本当は販売区域外なんですけど、どうしても浩之さんにお会いしたくなって・・・・・」

 そうか・・・・ずずうっと鼻水をすするマルチを、オレは強く抱きしめた。

「あうぅう、浩之さぁん。会いたかった、あいたかったですぅ」
「オレもだぜ、マルチ」

 オレたちはしばらく互いのぬくもりを感じた。
 そうして、マルチが落ち着いたところで、せっかくなのでオレは何かマルチから
買ってやることにした。
 この際、少しでもマルチに協力してやりたいもんな。

「で、何を販売してるんだ?化粧品か、学○の学習・科学か?」
「いえ、まあざっとこんなものなんですが・・・・」

 持っていた鞄を開くと、そこに入っていたものは商品カタログではなかった。
 ゴム紐に洗濯のり、パンストにのし袋に・・・・こ、小魚の干物?
 なんちゅーか、訪問販売っていうよりも「怪しすぎる押し売り」ぢゃねーか。

「・・・・・あのなぁ」
「あああっ、お気に召しませんでしたか?ええっと、他には,他には」

 おもいっきり腰の砕けきったオレの顔を見て、マルチは慌てて鞄の奥の方を
ごそごそ探った。そりゃま、あんな訳のわからんものを売りに来られてもなぁ。

「ひっ、浩之さん!こ、これはどうですか!『たほうとう戦車』です!」
「たっ、『たほうとう戦車』!?」
「はいっ!『たほうとう戦車』ですっ!」

 オレはマルチの取り出した、掌サイズの戦車を見て、呆気にとられた。

「こ、これはすごいんですっ。これを仏間かテレビの上にでも置いておくだけで、
 あっと驚くほどの幸運が舞い込むらしいんです!」
「あのな、マルチ・・・・」
「おまけにこの底蓋をはずせば、大事な印鑑やへその緒を入れておけますし、万が一の
侵入者の際には、この『たほうとう』部分を持って、賊をえいやっと殴りつけた後、
一斉射撃で敵を殲滅できますっ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「色はブルーにピンク、それにごーぢゃすなゴールドを加えた三種!今なら最高級
 桐タンス二棹をお付けして、な、なんと据え置き価格でこのお値段っ」
「だーかーらーっ!」
「あうぅ・・・・や、やっぱりダメでしょうか・・・・」

 うっ。
 マルチは「たほうとう戦車」を持ったまま、がっくりと肩を落としてしまった。
 せっかくマルチと再会できたってのに、オレってヤツは・・・・
 オレはひどい罪悪感に苛まれた。

「ごめん、マルチ・・・・そんな顔しないでくれよ。お前に怒った訳じゃないんだぜ」
「い、いえ・・・・気になさらないで下さい。わ、私みたいなダメロボットが、こんな
 チャンスをいただけただけでも、感謝しなくちゃいけないんです。
 たとえ、そのチャンスを生かせなくても、それは自業自得なんです」

 気丈に言いながらも、ふるふると肩を震わせるマルチ。
 その小さな白い頬には、幾筋もの涙が伝っている。

「ご、ごめんなさい、浩之さん。今日は、浩之さんにまた会えたと言うだけで
 嬉しいはずなのに・・・・」

 そう言って、とぼとぼと商品をなおそうとするマルチの小さな手を、オレは
きゅっと握りしめた。

「あっ、浩之さん?」
「買ってやる」
「・・・・・それ、買う!とりあえず鞄の中のもん、ぜんっっっっっっぶ買う!」
「ひっ、浩之さぁああああああんっ!」

・・・・・・・・・・・・・・・・。

 それからしばらくして。

 来栖川エレクトロニクスは[HM-13 SERIO]に続く新製品として、マルチの量産タイプを発売した。それもあのドジで人間らしいマルチそのもののモデルだった。
 主にセールスロボとして活躍するマルチの妹分のおかげで、来栖川グループは
一段とその資産を倍増させたという、もっぱらの噂であった。

「うううっ、やはり、買ってはいただけませんよね・・・・」

 うるうる涙をいっぱい溜めた瞳でこう言われ、断りきれるほどの度胸の持ち主は、そう多くはなかったということであった。

ちゃんちゃん


(元ネタがよくわかんない人は、あさりよしとお氏の「宇宙家族カールビンソン」
 少年キャプテン版を読んで下しゃい。それにしてもあっぶないネタやね・・・・)






しょの3

     突発的大バカSS 「マルチ危機一髪!ドール○○○の奇跡(劇場版)」


「おっ、それなんだよマルチ」

 メンテナンスから戻ってきたマルチは、えへへと笑って手首にはめた腕輪をオレに見せてくれた。
 HMX−12の型式番号を持つロボット少女は、オレのメイドロボであり、大切な家族であり、オレの愛する・・・・・ま、いーぢゃねえか、詮索するな。

「むっ,そんな腕輪、かってやった覚えはねーぞ。ううマルチ、おおお前、まさかオレの他に男でもできちまったのかよぅ」
 オレの嘘泣きにうろたえる素直なマルチ。
「ち、ちがいますよぅ。こ、これは主任さんからモニターしてくれって頼まれた試作品なんですぅ」
「試作品?ってことは、来栖川のメイドロボ用アクセサリーってところか」
 ものがメイドロボだけに、アクセサリーには2種類の意味があるとか。うむ、考え落ちだな。

「で、なんか特別な機能でもあるのか、それ」
「はいっ、なんでもメイドロボを危険から守ってくれるグッズだそうです」
「なるほど・・・・メイドロボは高級品だからな」

 いかにロボットとはいえ、車に跳ねられたり事故に巻き込まれたりしたら、故障、下手すれば廃棄処分にもなりかねない。人間なら怪我や死亡と言ったところだ。それに、メイドロボを誘拐、というか盗難して裏ルートで売り払う犯罪グループもあると聞く。
 近頃値下がりしたとはいえ、それでも高級国産車並の値段なのだから、メイドロボ用の防犯グッズはこれから需要を増すだろう。
 さすがはメイドロボ産業の大手、目の付け所が違うぜ。

「うんうん、マルチの身に何かあったら、オレ生きていけないぜ。長瀬のおっさんもたまにはいいものくれるよな」
「はうう、浩之さん、そんなにも私のことを大切に思って下さるなんて・・・・」
 ぽーっと頬を染めて目をうるうるさせるマルチ。おいおい、そのままハングアップなんてするなよな。

 はい、とマルチは腕輪のボタンをオレに示した。
 どーでもいいが、ちゃちなデザインだなぁ。子どもっぽいと言うか、色もドピンクだし・・・・まるで昔の魔女っ子アニメのおもちゃみたいだ、と思ったけれど、マルチは気に入っているみたいなので、それは言わないことにする。
 でも、マルチには似合ってるかな?

「使い方は至って簡単なんです。身に危険が迫ったとき、キーワードを叫んで、このボタンを押せばいいんです」
「そうすると、どうなるんだ?」
「さぁ・・・・よくわかりませんが、それで敵が降参しちゃうんでしょう」
 ・・・・はぁ?敵ぃ?
「敵ってなんなんだよ・・・・よっし、マルチ。それ押してみな」
「えっ,でもでも、私いま,特に危険ではないですけどぉ」
 大まじめに答えるマルチ。
 ううむ、穴があったら覗きたがり、ボタンがあれば押したがるオレとは大違いだな。

「いいから、いいから。なんならオレが、マルチを危険な目にあわせて進ぜよう」
「はうう、浩之さん、目がえっちもーどなのですぅ」
 ちっちゃな身体をくねくねさせて照れているマルチ。
 ふふふ、オレとゆー人間の性格をつかめてきたようだな。これも教育の賜物だ。
「さあマルチ、お前はこれからめちゃデンジャラスな状況に陥るのだぁ!ふっふふ,早くそのボタンを押した方が身のためだぞ」
「あうあう、個人的にはそのままデンジャラスな目にあいたいところですが・・・・んでは、押してしまうのですぅ!こおおぉーりんぐ、りんぐうぅーっ!」

 マルチはそう叫ぶと、腕輪のボタンをぽちっと押した。
 その瞬間、まばゆい輝きを放つ腕輪!
「おおっ?だが光るだけでは,このオレ様のデンジャラスは止められはしないぞ!」
 もおなんだかわからないが、オレは両手をわぎわぎさせながら、マルチに抱きつこうとした。すると、腕輪から放たれた一条の光に導かれるように、開け放していた窓から何者かが飛び込んできた!

「ドールマルチッ!見、参っっっっっっ!」

 窓から飛び込んできた少女は、マルチによく似たショートカットをなびかせ、決めポーズを取る。肩のところに飾りのついた、タカ○ヅカの男役のよーな、かっこいいスーツを着ている。
 ところが、少女がそのまま空中でくるくると回転すると、光の中で少女は「変身!」した。フリフリのついたワンピースと活動的なスパッツ姿がよく似合ってはいるが・・・・

 なぜ変身する?(しかもなんか守備力下がってるし)

「い、いまの変身にはなんか意味があるのか?・・・・・・それよりも、あ、葵ちゃん?」
「あっ、藤田センパイ・・・・あっ、ちちち違いますっ、わ、私はドールマルチですっ」
「いや、そりゃ髪型とか小柄なところとか、似てるけど(爆)・・・・それにドールマルチってのはなんなんだよう」

 突如出現したドールマルチ・・・・というか、オレの後輩であり、格闘技同好会代表のエクストリーマー・松原葵ちゃんは、困った顔でオレとマルチを見比べている。
「あ、あの、ですから私はマルチさまを陰ながらお守りするドールナイト・・・・」
「と、いう設定なんだな?」
 かまをかけたオレの言葉に、あっさり頷く葵ちゃん。
「まーた、長瀬のオッサンか・・・・葵ちゃんもよくそんなバイト、引き受けたよなぁ」
「はい、同好会で新しいサンドバッグが買いたくて・・・・って、ああ読まれてますぅ」
 とほほと肩を落とす葵ちゃん。
 マルチはなんのことかさっぱり分からず、きょとんとしている。
「あのー、確か、松原葵さん・・・・でしたよね」
「ああああっ、マルチちゃんにまでばれてるぅ。だからせめてマスクをつけようって」
 そーゆー問題か?

「んで、そのボタンで葵ちゃん、じゃない、ドールマルチを呼び出して敵をやっつける、と。長瀬のオッサンもおかしなテレビ番組ばっか見てんじゃねーよ」
「はぁ・・・・でも私は一応、仕事ですので。戦わせていただきたいんですが」
「相変わらず真面目だなぁ、葵ちゃんは・・・・って、オレとかい!わあっ、ちょっと!」
 いきなり身構えた葵ちゃんの右足が消えた。
 次の瞬間、咄嗟に身を反らせたオレの鼻面を、疾風のような前蹴りが通り過ぎる。
「よく避けましたね、センパイ!まだ腕は衰えてらっしゃいませんねっ」
 続けざまの左右のフック、そして流れるような動作で上下二段の回し蹴りのコンピネーション!
 オレは紙一重でそれを避け、あるいはブロックするものの、アッという間に部屋の隅に追いつめられてしまう。
「ちょ、ちょっとタンマ!」
「タンマなしです!マルチさまがコーリングリングを押した以上、私ことドールナイトはマルチさまを危険から守るために戦うんですっ!はあああ、必殺!しゃああああああぃにんぐうう!ふぃんがぁああああああーっ!!」
「しかも番組違ってるしいっ!どわっ」

 破壊力抜群の輝きを放って襲い来る葵ちゃんの掌底を頭上にかわしたオレは、鉄筋コンクリの壁が粉みじんに砕け散る、恐ろしい音を聞いた。
 冗談じゃない、あんなのまともに食らったら命がいくつあっても足りない。

「・・・・・・・・・・あ、あのっ!そ、そ、そんなことしないでください!ご主人様が怪我しちゃいますぅ」
 あまりに目まぐるしいオレたちの攻防にボーゼンとしていたマルチが、ようやく葵ちゃんを止めに入った。ううむ、とろすぎる反応だが、大助かりだ。
「そ、そうですか?マルチさまのご命令では仕方ないですね。それではここまでにしておきます」
 ドールマルチになりきった葵ちゃんは、マルチの言葉にあっさりと従った。
 真面目すぎるってのも考え物だなぁ。下手すると世界平和のために街の2つ3つもぶっ壊しておいて、謝りもしないヒーローの仲間入りだぞ、葵ちゃん。

「あっそうだ」
「ま、まだなにかあるのか?」
 ぽん、と手を打つ葵ちゃんに思わずオレは身構える。
「あの、一応決めポーズと共に決めゼリフって言うのがあるんですが、それを忘れていました。一応チェックが入るので、言わせていただいていいですか?」
「セリフくらい言ってもいいけど・・・・本当に葵ちゃんは真面目だなぁ」
「それでは・・・・言わせていただきます」
 わー、すごいですぅ、とマルチは無邪気に手を打って喜ぶ。なんだかなぁ、と半ばあきれているオレに、葵ちゃんは「びしいっ!」と指を突きつけた。やたら人を指さすと嫌がられるぞ、葵ちゃん。
「このっ!ドールマルチが来たからには・・・・・」
「わぁわぁ、かっこいいのですぅ」
「マルチさまには、指一本、入れさせないわっ!」

 ・・・・・・・・・・ぶっ。

「葵ちゃん・・・・セリフ、違うと思うよ」
「えっ?何か間違ってましたかっ?」
「いや、間違ってはないんだけどな(核爆)・・・・もう一度言ってみな」
「はい。えーと・・・・このドールマルチが来たからには・・・・」
「うんうん」
「マルチさまにはっ、指一本入れさせな・・・・」
「・・・・・・・・・・な?」
「あっ・・・・ああああああああっ!私ったら私ったら私ったら、なななな、なんてことをおおおおおおーっ!」
 よーやく自分の言い間違いに気づいた葵ちゃんは、たちまち耳まで真っ赤になった。当のマルチはやっぱりなんのことか分からずに、ほけっとしている。

「いやぁああああーっ!はっ、は、恥ずかしいですぅーっ!」
「うぐっ」
 おろおろする葵ちゃんの拳が、油断していたオレの鳩尾にまともに入った。
(みっ・・・・見事だ、葵・・・・・・いや、ドールマルチ・・・・)
 薄れ行く意識の中で、オレの耳には「いやああああ・・・・」と走り去る葵ちゃんの声がいつまでも聞こえていたのだった・・・・

ちゃんちゃん



(いやあ、すまんすまん。なんてお馬鹿なSSなんでせう。
「スーパードール・リカちゃん」は、あんましまともに見たことがないんで、よくわかりません。(なら書くなよな)
 いや、マルチと葵ちゃんが似てるって言うのは、割と皆さんあちこちでおっしゃってるので、一ひねりしようとしたら、こんなんなっちゃいました。)






ここまで読んで下さった方、あなたこそ誠の勇者に違いありません。
ほんとぉにありがとうございますぅ〜
                      RIN

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