…?
…おいおい!俺、何か泣かせるようなこと言ったか!?
「鬼シメじゃなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!お煮しめじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「耕一、今日は何食べたい?」
梓が楽しそうに聞いてきた。
最近、晩飯の支度をする時はいつもこんな調子だ。
初音ちゃんが言うには、
「お兄ちゃんが来ているからなんだよぉ〜」
…とのことだが。
「そうだなぁ…」
洋食は食い飽きてるし…かといって一品料理系は飲み屋で散々食ってるしな…。
うーん…。
「…煮物系統でいってみようか」
「煮物?どんなのがいい?」
どんなの…ねぇ。煮物もピンキリだからなあ。
「…おにしめなんていいんじゃないか?」
里芋や大根、人参にさつま揚げ…醤油でぐつぐつとね。
日本酒に合う割に飲み屋じゃ食えないんだよ。
久しぶりに食ってみたいな…。
「…梓?」
梓の反応が、ない。
よく顔を見てみると、恐怖に青ざめた表情で俺を見ている。
「どうした、梓…?」
次第に、表情が恐怖から悲しみへと変わっていく。
そして、その瞳からは涙の雫が一滴、また一滴とこぼれていった。
1人で俺がパニクってると、ようやく梓が口を開いた。
「…わかったよ…。耕一が食べたいって言うんなら作るよ、おにしめ」
…言ってることは何も変じゃないが、表情が尋常じゃないぞ!?
「ちょ、ちょっと待て梓。お前なにか勘違いしてないか?」
「いいのよ耕一…あんたが食べたいって言えば、あたしは何だって作ってあげる…」
ふふ…と涙を浮かべたまま、悲しそうに微笑んだ。
…おい、目がイっちゃってるぞ。
「梓、やっぱいいわ。別な物に…」
「大丈夫、心配しないで…おいしいおにしめを作ってあげるわ…」
な、なんかイヤな予感が…。
「耕一。誰にする?千鶴姉がいい?楓?それとも…初音?」
いきなり訳のわからないことを言い出す梓。
「へ?だ、誰って何のこと?」
俺が聞き返すと、梓はふふっと渇いた笑いをして…。
「もちろん…シメる鬼のことよ」
と、言った。
精一杯叫んだ俺であったが、イっちゃってる梓には効き目がなかった…。
しょうがなく俺は…。
次の日。
「長瀬さん!柳川が行方不明だそうです!」
「なんだって!?」
…うーん、シュールだ(^^;