孤高の心

written by 李俊

This is Side story between to Leaf-Fight97 from the Kizuato.
The hero is Yanagawa.
Please,read this story.

俺の名は柳川祐也。
一応『人間として』生きなければならぬ今は、その名で呼ばれている。
俺は…狩猟者だ。
人間を狩る、狩猟者なのだ。
その俺が…獲物と同じ姿で、生きなければならぬ。
…なんという屈辱だろう。
その屈辱を与えたのは…あの男。
柏木耕一…奴も狩猟者。
しかし、奴は俺とは違っていた。
圧倒的な力を持ちながら、その『人』の部分に支配されている。
…なぜだ!?
なぜ奴は、『人』であるのにあそこまでの力を出せるのだ?
『人』を切り離した俺よりも凌駕する力を!
…『人』の部分を奴が持ち続ける限り、俺もまた人であり続けなければならぬ。
不本意だ。
自分が自分の姿でいられぬ…その口惜しさ。
…見ていろ。
今に奴を超えてみせる。
それまではこの屈辱、甘んじて受けよう!

☆☆☆☆☆

「柳川くん」
不意に声をかけられた。
振り向くとそこには、見覚えのある男がいる。
…この男「長瀬」は、俺の上司ということになっている。
飄々とした風貌とは違い、なかなか切れる男だ。
「すまん柳川くん。ちょっと出張に行ってくれないか」
長瀬は資料を俺に手渡した。
「出張、ですか?」
パラパラ…とめくってみる。
ファックス用紙で、事件の概容などが書いてあった。
「…ああ、大した事件じゃないらしいが、何しろ規模が大きいらしく、人手が足りないそうなんだ」
「それを自分に行け、と?」
「うん、腕のいい若手をよこしてくれ、ということらしいのでね。例の猟奇殺人の方も一段落したし、まぁ息抜きだと思って行って来てくれないか」
ポンと俺の肩を叩く長瀬。
「…わかりました」
俺は承諾した。
…以前の『祐也』であれば、断っていただろう。
『貴之』がいたから。
しかし、連続猟奇殺人の容疑者として連行された貴之は、今は精神病院に移されている。
…俺を縛るものは、何も無くなってしまったのだ。
無くなってしまった…?
違う、『無くなった』だろう?
今の俺は何のしがらみもない、自由を手に入れているのだ。
まあいい、長瀬の言う通り、息抜きをさせてもらおう。
…俺流の、な。
フフフ…。

☆☆☆☆☆

夜。

「ぐわあああああああああああああっ!」
ふふふ…これだ。
この血のにおい、肉を切り裂くこの感触、そして断末魔の声…。
これこそ至上の快楽。
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」
一緒に歩いていた男を殺され、恐怖で大声を上げるもう1人の男。
「お前も…殺す」
ざっ!
俺の鬼の腕が、男の胴体を真っぷたつに切り裂いた。
「………!」
男は何か叫ぼうとしていたが、血が口を塞ぎ何も声は出てこなかった。
…ふふふ。
久しぶりの狩りだ。
この町であれば、奴がくることはない。
好きなだけ人間を狩れるのだ…。
好きなだけ、な。

「誰…?」
ふと、道の影から何者かが現れた。
…新たな獲物が現れたか。
俺はゆっくりと近付いていく。
「あなたは…」
その獲物は、少女であった。
制服を着ている。…高校生であろう。
「…女か」
…そうだ、女。
しばらく女の味も忘れていたところだ。
今夜の女はこいつにしよう。
まだ子供のような体つきだが、たまにはそういうのも良かろう。
「………」
…女は俺を見つめている。
おかしい…。
俺のこの鬼の姿を見て、動じずにいる。
何なのだ、この女。
そしてその瞳…俺を見ているようであり、見ていないようでもある。
まるで…俺の心を見ているような…そんな感覚を覚える。
「かわいそう…」
女の口から出た言葉は、近くに横たわる男たちに向けられたものではなかった。
見つめている、俺に向かっての言葉だった。
「なに…?」
俺が、かわいそう?
…何を言っているのだ?
俺は今、狩りを楽しんでいる。
それのどこがかわいそうだというのだ?
「もう1人のあなたが泣いている…」
女は、俺の心の疑問が聞こえたかのように言葉を続けた。
もう1人の俺…?
「そう…あなたを自分だとは思っていない、かわいそうな人…」
…気のせいではない。
この女、俺の心を見ている。
「お前は…祐也のことを言っているのか?自分を人間だと思っていた、あの臆病者のことを」
そう…俺の目覚める前に、自分を人間だと思いこんでいた男。
今は俺の中で、ずっと眠り続けている。
こくり。
…女はうなずいた。
「2つの心…1つにしてあげる…」
パチッ。
………!?
何かが今、音をたてた。
目には見えないが、女の周辺で何かが起こっている。
そして『それ』は、俺へ向かってきた。
「…ウウッ!」
奇妙な感覚。
痛いようで、それでいて心地いい。
何か…足りなかったものを手に入れたような感覚。
「………」
終わった。
女はふと微笑むと、俺に背を向け歩いていく。
俺は追う気にはならなかった。
彼女を獲物とは思えなくなっていたのだ。

…俺は人間ではない。
そして、狩猟者でもない。
柳川という、ひとつの生き物なのだ…。

☆☆☆☆☆

「これから作戦会議を始めます。…柳川さんも、出席されてください」
柏木千鶴…俺の姪が、話し掛ける。
…不思議なものだ。
仇敵と思っていた柏木耕一や自分の姪たちと、こうして一緒に戦っているのだからな。
何が自分を変えたのだろう。
…あの少女と出会ったからか?
だとすれば、感謝すべきなのだろうか。

…会議室に通された俺は、驚いた。
「君は…」
そこにいた少女は、いつか見せたように、また微笑んだのだった…。






-了-


あとがき
柳川の変化をテーマに、書いてみましたが…。
途中から何を書いてるかわからなくなってました(^^;
しかし書いてて思ったんですが、ベジー○そっくりですねー柳川。
やっぱりエルクゥってサイ○人なんでしょうか?

で、登場する少女ですが…わかりますよね?
瑠璃子さんです。
それっぽい彼女のしゃべりに出来なかったのが残念です…。

シリアスな話はやるもんじゃないな(^^ゞボリボリ

ではでは、感想お待ちしてますぅー。


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