雫の逆襲

written by 李俊

「聞いているんですか、社長!」
彼…長瀬祐介は、怒鳴った。
ここは「雫プロダクション」の社長室。
祐介の前には、彼の上司であり、叔父でもある長瀬源一郎が座っていた。
「…祐介、そうは言うがな…どうしようもないだろう」
源一郎はそう言って、手にしていたタバコに火をつけた。
ちなみにそのタバコは「わかば」である。
ばん、と机を叩き、祐介は大声を張り上げた。
「どうしようもない、じゃすまないでしょう? 雫プロの存続に関わる問題です!」

雫プロ。老舗の芸能音楽プロダクションである。
しかし、近年は痕プロ、東鳩興業、WAミュージックなどに押され、業績は悪化する一方だった。

「吉田と桂木の2人のデュオも全く売れなかったじゃないですかっ! 街で話を聞いても『吉田&桂木?誰だそれ?』状態なんですよっ!」
「…あれはまあ、まずかったと思ってるよ。しかしだな、中堅組が売れてない今、新人をデビューさせるしかあるまい?」
「そこですよ」
祐介は、いきなり声のトーンを下げた。
「…中堅が売れてないから、業績が悪くなるんです。だったら、中堅組を売れるようにすればいいんです」
源一郎はそれを聞いて、ため息をつく。
「簡単には言うがな…今のウチの状態じゃ無理だろう。新城くんがそこそこ売れてはいるが、ウチのスタッフにはスター性がない。なかなか売り上げを伸ばすのは容易じゃないぞ」
「1人1人を見れば、確かにそうかもしれません」
祐介はふっと意味ありげに笑った。
「…何がいいたい?」
「つまり、今のウチの中堅組をまとめて1グループとして売り出すんですよ。ちまたじゃ「ミニ○カポリス」とか「モー○ング娘。」とかが流行ってるじゃないですか」
自信たっぷりに話す祐介。
源一郎も納得したようだ。
「なるほど、つまり小粒タレントのまとめ売りだな!?」
「ミもフタもない言い方ですが、まあそのとおりです」

そして、その計画は実行に移された。

「というわけで、今日から君たちは『アストラルバスターズ』というグループ名で、再デビューしてもらう」
祐介は、その前に座っている新城沙織、月島瑠璃子、藍原瑞穂の3人にそう告知した。
「ちょ、ちょっと祐くんっ!」
「沙織くん、仕事の場で『祐くん』は止めなさい」
2人は恋人同士ではあるのだが、祐介は仕事には一切私情を持ちこまなかった。
「コホン。祐介さん、今さら3人まとめてやる必要はないと思うんだけど…」
沙織の言葉に、瑠璃子と瑞穂もコクリと頷いた。
しかし、祐介は首を横に振る。
「…じゃあ君たち3人は、自分たちの売り上げがどれくらいかわかってるのか?」
「確かにそんなに売れてませんけど…」
瑞穂がそう答える。
「そんなに、なんてものじゃない! 君たち3人合わせても、痕プロの4姉妹の1人にも及ばないんだぞ! 東鳩プロなんて、マルチ、神岸あかり、来栖川芹香、他にもスター揃いだし、WAミュージックだって飛ぶ鳥を落とす勢いだ! 雫プロとしては、ここらで一発ガツンと行かなきゃならないんだっ!」
一気にまくしたてた祐介は、ハアハアと荒い息をした。
「…長瀬ちゃん、お茶」
「あ、ありがと」
瑠璃子に渡された冷たい茶を、長瀬はグビッと一気に飲み乾した。
「…そういうことだ。すでに月島さんと太田さんにも『デンパーズ』という名でデビューしてもらうように言ってある。これは君たちだけの問題じゃないんだ」
沙織は、デンパーズなんて名前じゃ売れるわけないな、と思いつつも、祐介の言葉に頷くのであった。

やがて、アストラルバスターズはCDデビューを果たした。
デビュー曲は『私を電波で操って』。作曲はTatsuya Komoroである。
雫プロの社運を賭けたこのグループ、果たしてどうなるのか。
彼女たちは、セールスを伸ばすことができるのか…。

それは、またの機会に。



あとがき

ども。
今回は普段とは毛色の違う、ドラマ系のSSを目指して書いてみました。
結果的には短くなってしまいましたが…。

ちなみに、またの機会に、とか書いてありますが書きません。(^^;
感想等お待ちしてます。


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